マンションを高値で売るために、売却前にリフォームしたほうが良いと考えるかもしれません。しかし、安易なリフォームは費用に対しての効果が乏しく、かえって売却が難しくなる場合があるので注意しましょう。
売却前にリフォームしない方が良い理由は、次の4つです。
順番に解説していきます。
最初の理由は、リフォームしたとしても高く売れるとは限らないためです。これは、中古マンションの買い手はできるだけ安く購入し、自分の好みでリフォームすることを前提に考えていることも影響しています。
売却価格が類似物件と比べて高くなると、売買上不利になるばかりでなく価格に転嫁できないので注意が必要です。
売主がかけたリフォーム費用が無駄にならないように、売り手の判断だけでおこなうのはやめましょう。
中古マンションを探している人の多くが最重要視しているポイントは「価格」です。
そのためいくら室内をリフォームしたとしても、その分価格が高くなれば買い手はつきづらくなってしまいます。
実際に、株式会社AlbaLinkの全国の男女500人を対象にした「中古住宅の購入に関する意識調査」によると、以下のような結果が判明しています。
引用:株式会社AlbaLink「中古住宅の購入に関する意識調査」
このように、中古マンションの買い手の多くは、「安く購入し、自分好みにリフォームしたい」というニーズを持っています。このニーズと合致していないため、事前のリフォームは避けるべきなのです。
売却する際には、費用をかけてリフォームする以外にも室内を良く見せる方法があります。たとえば、ハウスクリーニングはその代表的な例です。
ハウスクリーニングはその名の通り、「住宅の掃除・整理」を代行してくれるサービスで、リフォームよりも非常に安価で済みます。
【ハウスクリーニングの相場】
ハウスクリーニングであれば、売却費用に上乗せしても買い手の予算を超えるほどにはならないでしょう。その上で、「綺麗に使われている」というプラスの印象を持たせることができます。
このように、室内の印象を上げる方法は他にもあるため、リフォームはおすすめできません。
ここまでの理由を踏まえると、リフォームをしても集客効果があるとは限らないことがわかるでしょう。むしろ、リフォームをしてしまうと集客効果が落ちる可能性まであります。
なぜなら、中古マンションの買い手は以下のように条件を設定しているケースが多いためです。 【中古マンション購入希望者の条件設定】
もしリフォームをして、購入価格が上がった場合、「築年数が古いが価格が高い物件」となり、上記の条件から漏れてしまうことがあります。
このように集客において、逆効果となってしまうこともあるのです。
売却前のリフォームをおすすめしない理由を説明しましたが、状況によっては以下のようにリフォームしておいたほうが良い場合があります。 【マンション売却前にリフォームしておくべきケース】
順に解説していきます。
建築から間もない10年未満のようなマンションは、状態が良いことが多いので購入希望者はあまり手を入れずそのまま住むことを期待しています。
買い手は設備の経年劣化や内装の汚れはある程度織り込み済みなので、あまりリフォームを気にする必要はありません。
しかし、売却するにはできるだけ綺麗な状態で引き継ぐ方が好まれるのも事実です。汚れがひどい場合には購入者のイメージと異なってしまうかもしれません。
このように築が浅い物件であれば物件の状態が良いことが多いので、軽微なリフォームをして整えておいたほうが良いでしょう。
ただし、リフォーム内容は広範囲にわたるので、不動産会社と相談の上で、無理なく効果の大きい範囲でおこなうことが大切です。
中古マンションを売買するには、内見をおこなうのが一般的です。内見に来た際に、あまりに内装がボロボロだと購入者の購入意欲をそいでしまうことがあります。
クロスや天井、フローリング、水回りの汚れがひどい場合には、張り替えるなどリフォームしておくことがおすすめです。生活していて普段から気になっている箇所があれば、この際手を入れておくのが良いでしょう。
子どもが汚したり水回りが汚れてしまったりした程度であれば、少し手を入れるだけでずっと見た目が良くなるのでおすすめです。
リフォームをする場合、なるべく50万円までに抑えることをおすすめします。なぜなら、費用をかけすぎると売却価格にリフォーム代を上乗せすることで価格が高くなり、売却しづらくなるためです。
50万円ほどであれば、価格に上乗せされたとしても買い手の予算に合う可能性が高いでしょう。
マンション売却時にリフォームは有効ですが、範囲を広げすぎると費用がかかりすぎる心配があります。安易なリフォームよりも、リフォーム以外に購入希望者の印象を良くして売買をスムーズにする方法を紹介します。
マンション売却時に、リフォーム以外にやるべきことは下記です。
これらは費用を安く抑えて効果が高いので、積極的に検討しましょう。
ハウスクリーニングをおこなうことは、リフォームよりも効果的な場合があります。どちらもマンションを綺麗にする点は同じですが、中味は違うので注意しておきましょう。
リフォームとハウスクリーニングの違いは次の通りです。
ある程度の内装の汚れは、ハウスクリーニングで綺麗にすることが可能です。内見の際には、リフォームで設備を取り替えるよりも、綺麗にしておくだけで印象は異なります。
専用の道具や洗剤があれば個人でもできますが、ハウスクリーニングの専門業者に依頼するのがおすすめです。依頼してから来てもらうのに10日程度時間がかかる場合もあるので、必要な場合は早めに連絡を取っておきましょう。
構造上のトラブルや設備の欠陥の有無を検査する専門家に、インスペクターと呼ばれる人がいます。中古マンションを売却するには、専門家によるインスペクションを受けておきましょう。設備に欠陥がある場合には売却後でもトラブルになり、後々、費用負担を求められることがあります。
専門家によるインスペクションで、マンションの欠陥や劣化など問題がないことを第三者に証明してもらうと、買い手の安心感が高まるのでおすすめです。
業者に依頼して大規模なリフォームをおこなうより、DIYで修繕しておくのも効果的です。DIYでは、床や壁の補修やドアノブ・電気スイッチの交換などをおこないます。
ホームセンターで機材を揃えれば、安価で簡単にできるのがメリットです。DIYによって資産価値が増えるわけではありませんが、丁寧に使ってきたことがわかるだけでも印象が異なります。
マンションを円滑に売却するには、日数が必要です。売却希望時期までに充分な時間がないと、売却を急ぐあまり、予定より低い金額で売却してしまうことになりかねません。
売却が必要になったら、引き渡し日の6ヶ月前までには売り出しましょう。
また、引き渡しまで6ヶ月以上の余裕があると、売主の引っ越しや手続きにも余裕があるのがメリットです。できるだけ早く売却を始めて、余裕を持って進められるようにしましょう。
瑕疵保険とは、マンションを売却する際に、雨漏りや構造上の欠陥などが見つかった場合に保障する制度です。保険に加入していると、買い手も安心して購入できます。
保険は5〜15万円程度加入できる商品もあるので、費用をかけてリフォームするより安価に抑えられるのがメリットです。
国土交通大臣が指定した住宅瑕疵担保責任保険法人は、国土交通省の「住宅瑕疵担保責任保険法人サイト」で公開されています。
支払われる保険金は、補修費用・調査費用・転居及び仮住まい費用です。
また、住宅ローン控除を受ける際には、マンションなどの築25年以上の耐火建築物の場合、瑕疵保険に加入していることも条件の1つになります。
参考までに、中古物件で控除を受ける場合に必要な証明書、は次の通りです。
マンション売却時のリフォームは、おすすめしません。理由は以下の通りです。
【マンション売却時のリフォームをおすすめしない理由】
ただし、以下の場合はリフォームしたほうが有利になる場合があります。
上記のような理由でどうしてもリフォームをしなければいけない場合には、できるだけ50万円までに抑えましょう。この範囲であれば、買い手の予算に影響を与えることも少なくなるでしょう。
この記事が、マンションをスムーズに売却する前にリフォームを検討する際にお役に立てば幸いです。
関西学院大学法学部法律学科卒。
宅地建物取引士、管理業務主任者、2級FP技能士(AFP)、登録販売者など多岐にわたる資格を保有。 数々の保有資格を活かしながら、有限会社アローフィールド代表取締役社長として学習塾、不動産業務を行う。