土地売却の相場を調べる前に、まずは事前に知っておくべき5つの価格があります。土地売却の相場をより正確な数値で出すためにも、ここでお伝えする下記の5つの価格について知識を得ておきましょう。
相場を調べるうえでとくに参考にすべきなのが、実勢価格です。実勢価格とは、実際に取引がされた価格のことで成約価格とほぼ同義といえます。
所有している土地と似たような条件の土地の実勢価格を調査することで、実際にどのくらいの金額で売却できるのかを予想できます。
しかし、エリアによって情報量に差があるため、取引が少ない地域に関しては精度が低くなってしまう可能性が高いです。すべてが正確に算出できるわけではないので注意しておきましょう。
国土交通省が設定するのが公示地価、都道府県が調査して公表するのが基準地価です。公示地価と基準地価の詳細は、以下の通りです。
公示地価や基準地価は、市場取引においても基準の価格帯として重要視される種類ですが、地点が限定的になってしまう特徴もあります。
道路に面する宅地1平方メートルあたりの価格を指し、相続税を算出するために使用されるのが相続税評価額です。
国税庁が過去の実例価格や公示地価などをもとに定めており、相続税路線価から公示地価を求めることができます。
固定資産税を算出するための額が固定資産税評価額です。前述した相続税評価額は、贈与税や相続税の算出のためのものとなるので、その違いをよく把握しておきましょう。
また、相続税評価額の公表機関は国税庁となりますが、固定資産税評価額に関しては市区町村によって定められます。
公示地価の70%ほどに設定されている相続税評価額は、原則として3年に1度見直されます。しかし、万が一土地そのものの価値が下がってしまった場合、3年という期間をあけずに下落修正されるケースも少なくありません。
売却相場を調べるための価格の種類について理解ができたところで、次は実際に相場を調べる方法について紹介します。
ここからは、上記の6つの相場の調べ方について詳しくお伝えするので、所有する土地の価値を把握するためにもぜひ実践してみてください。
1つ目は、大手の不動産総合サイトを利用する方法です。売り出し中の不動産広告は、全国どの不動産会社も掲載しているため、エリアに限らずチェックすることができます。
「東京都世田谷区」「神奈川県横浜市」など、土地情報を絞り込み検索して確認できるのがポイント。なかには写真が掲載されているケースも多くあるため、どのような土地がどの程度の価格となるのか、目安として知るにはとても良い参考情報となります。
国土交通省が提供している土地総合情報システムでは、全国の実勢価格を検索できます。検索方法は、以下の通りです。
上記が検索の手順です。多くのデータがあるので、売却を検討している土地と条件の似ている取引事例をいくつかピックアップしましょう。
公示地価は、上記で紹介した土地総合情報システムを活用して調べることが可能です。
全国を対象で調べたい場合は、都道府県選択ページの最下部にある「全都道府県検索の実行」をクリックすれば確認できます。
また、市区町村を選択せずに指定した都道府県全体での検索をしたい場合は、「都道府県単位で検索」にチェックを入れれば、細かなエリア指定をせずに結果が閲覧可能です。
1平方メートル当たりの公示地価を確認したら、下記の計算を用いて売却相場を算出してみましょう。
1平方メートル単価×面積×1.1=相場目安
1平方メートルあたりの公示地価が20万円・面積が146平方メートルの場合、計算式は下記のようになります。
20万円×146平方メートル×1.1=3,212万円
実際の取引価格は、公示価格の1.1倍と一般的にはいわれていますので、この計算式でおよその相場価格の目安がわかります。
国税庁が公表している相続税評価額は、全国地価マップで調べることが可能です。また、先ほど紹介した公示地価についても調べられるので、ぜひ活用してみてください。
相続税評価額を確認したら、下記の計算式で売却相場を算出してみましょう。
相続税路線価×面積÷0.8×1.1=相場
公示地価の8割ほどになるように設定されているため、計算式では0.8を用いて算出します。1平方メートルの相続税路線価が5万円・110平方メートルの面積の場合は、下記の計算となります。
5万円×110平方メートル÷0.8×1.1=756万2,500円
固定資産税評価額は、毎年送付される固定資産税課税明細書に記載があります。明細書のなかの「評価額」を確認してください。
評価額をもとに計算する場合は、公示地価の7割ほどの設定が主となるため、0.7を用いておこないます。
固定資産税評価額÷0.7×1.1=相場
固定資産税課税明細書に記載のある評価額が3,000万円の場合の計算は下記の通りです。
3,000万円÷0.7×1.1=約4,715万円
ただし、固定資産税評価額の評価替えは3年に1度しかおこなわれません。そのため、最新性に欠けてしまう点を理解しておきましょう。
自分で調べるのではなく、不動産のプロに依頼して査定価格を出してもらい、そこから売却相場を調べる方法もあります。とくに簡易的に査定価格を集めたい場合、一括査定がおすすめです。
一括査定は1度に複数会社へ依頼することが可能となるため、簡単に相場を出せるのが大きなメリットといえます。すべてネット上で完結できるので、遠方にある実家の査定依頼をしたい場合でも自宅で申し込みが可能です。
しかし、この査定価格がそのまま売却価格になるわけではありません。取引されるタイミングにおける周辺状況や買い主の事情などで変動するため、あくまで目安としての価格であることを理解しておきましょう。
土地売却の相場を調べる際には、必ず注意すべき重要なポイントがあります。
上記の3つのポイントについてそれぞれ詳しくお伝えするので、しっかりと内容を把握して効率よく土地売却を進めていきましょう。
土地売却の相場は、さまざまな方法で算出することが可能です。本記事でも実勢価格を参考にしたり、公示地価や固定資産税評価額をもとに計算したりするなど、いろいろな方法をお伝えしました。
しかし、これらはあくまでもある程度の目安に過ぎません。実際に土地の取引が行われる場合、正確な価格を出すために土地の形・周辺の環境など、多岐にわたる要素が加味されます。
そのため、相場と実際の売却価格は異なることが多いです。さらに、相場の価格で売り出したとしても、値引き交渉されるケースは多くあります。また、実際には道路付けや日当たり、あるいは周辺施設など、公示価格などのデジタル情報以外の要素でも価格は変動します。
さらに、売却した価格から手数料や税金などが引かれるため、売却価格がすべて手元に残るわけではないことも理解しておきましょう。
土地の売却相場は、一定ではありません。常に変化しているため、過去に一度査定してもらっていたとしても、その価格から大きく下がっていることもあります。
数年前に査定した価格を軸に売却を検討してしまい、思わぬ失敗を招いてしまうことも珍しくありません。必ず売却のタイミングで新たに査定してもらい、最新の売却相場を把握しておくようにしてください。
先ほどもお伝えしましたが、さまざまな方法で売却相場を出したとしても、それらはすべて目安の域を超えません。
もちろん、自分で算出した相場は1つの参考価格としてとても重要なので、意味がないということはありません。
しかし、あくまでも「相場は目安」という考えを持ち、実際の売却価格とは違うことをよく頭に入れておきましょう。
土地を売却する場合、多くの方が少しでも高く売りたいと考えるのではないでしょうか。そのようなときは、ここで紹介する下記の2つのポイントを意識してみましょう。
より高値で土地を売却するためには、小さなことでも注意して行動することが大切です。2つのポイントについて詳しく解説するのでぜひ参考にしてください。
不動産会社の繁忙期は、新生活が始まる前の1月から3月とされています。不動産業界は、この時期に合わせて多くの土地や物件をストックしたいと考えています。
そのため、繁忙期であれば不動産会社は積極的に土地を仕入れており、よっぽどの悪条件がなければ高値で売却することが可能です。
「100%必ず高値で買ってくれる」ということではありませんが、ほかの期間に比べると高値での売却成功率があがるタイミングといえます。
土地の査定価格は不動産会社によって金額が異なります。1社だけに依頼するのではなく、複数の不動産会社に査定してもらい、それぞれの内容を比較してみてください。
査定価格が出たら、なぜその金額なのか詳細に説明してくれる不動産会社を見極めましょう。なかには安く買い叩こうとする不動産会社もあり、悪質な業者であれば価格についての説明があやふやで到底納得できるものではありません。
自分で算出した相場や複数の会社の査定価格を比較し、適正な値段でしっかりと査定してくれる不動産会社を選べるようにしてください。
最後に、土地売却の相場に関するさまざまな質問のなかから、とくに多い質問に回答します。
どちらも土地を売却するうえで、必ず把握すべき大切なポイントです。ここでお伝えする内容を正しく理解し、少しでもお得に土地の売却ができるよう準備しておきましょう。
仲介手数料には相場がありません。しかし、ほとんどの場合で「宅地建物取引業法」という法律によって定められている上限になります。
上記が、仲介手数料の上限です。売却金額が1,000万円の場合、売買金額400万円超となるため「1,000万円×3%+6万円+消費税」といった計算式になります。消費税は変わることがあるので、そのタイミングで適応されている税率で計算してください。
もしも、不動産会社が上限を超えた仲介手数料を請求した場合は、法律違反となります。請求された仲介手数料が正しい金額なのかどうかを判断するためにも、上記で紹介したそれぞれの上限についてしっかりと把握しておきましょう。
建物の解体費用は、構造と広さによって異なります。相場は、以下の通りです。
解体作業のための人件費や重機の使用料といったさまざまな項目で費用が発生し、建物の構造や立地など、それぞれの状況に応じて価格帯は異なります。
売却を検討する場合、建物の解体費用の相場を計算し、どのくらいの支出となるのかを計算しておくことは大切です。立地によっては更地にした方が、買い手がつきやすくなるケースもあるため、不動産会社と相談して判断しましょう。
本記事では、土地の売却で重要となる金額の種類や自分で相場を出す方法などについて紹介しました。
土地の売却は成立すれば大きな利益となりますが、相場の把握や契約する不動産会社の選定などをしっかりとおこなわなければ、「もっと高く売れたかもしれない」と後悔してしまうこともあります。
納得のいく価格での土地売却ができるよう、本記事でお伝えした内容を参考に相場を調べて徹底した準備をしていきましょう。
公益財団法人日本賃貸住宅管理協会会員 「プリンシプル 住まい総研」所長 住宅情報マンションズ初代編集長
1988年株式会社リクルート入社し、リクルートナビを開発。 2002年より住宅情報タウンズのフリーペーパー化を実現し、編集長就任。 現スーモも含めた商品・事業開発責任者に従事。2011 年 12 月同社退職。
プリンシプル・コンサルティング・グループにて2012年1月より現職。 全国の不動産会社のコンサルティング、専門誌での執筆や全国で講演活動を実施。