「住宅借入金等特別控除」が正式名称となる住宅ローン控除は、個人がマイホームを購入する際に住宅ローンを利用する場合、定められている条件をクリアすることで所得税控除が受けられる制度です。
住宅ローン控除は、新築一軒家はもちろんのこと、中古不動産やリフォームなど、居住用住宅であれば利用可能の制度となるため、多くの方が住宅ローン控除という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。
住宅ローン控除が適用される条件は、下記の通りです。ほかにも細かな条件はありますが、まずは主な内容についてぜひチェックしてください。
住宅ローン控除は、売却した年から受けることが可能です。しかし、必ずしも受けられるとは限りません。まずは、住宅ローン控除が受けられるか受けられないか、3つのケースごとに紹介します。
所有している不動産を売却し、その結果がマイナスとなった場合、住宅ローン控除を受けられます。住宅ローン控除を売却した年に受ける場合、さまざまな条件をクリアしなければいけません。詳しい内容については後ほど紹介しますので、ぜひチェックしておきましょう。
売却して損失が出れば受けられますが、逆に言えば利益を得ると、控除を受けることはできません。
この場合、売却での利益におけるさまざまな特例を利用して節税が可能です。特例は、3,000万円特別控除、マイホームの買い替え特例などさまざまな種類があるため、どうすればうまく節税できるかをよく調べておくことが大切です。
建物だけではなく、土地購入でも条件をクリアできれば、住宅ローン控除を受けられます。新しく土地を手に入れてから2年以内に住宅ローンを利用したうえで住居の建築を新築する、土地の購入は宅建業者から購入するといった2つの条件があります。
宅建業者から購入する土地は建築条件つきです。このどちらかをクリアすれば、土地の購入で住宅ローン控除が受けられますので、建物だけではないことを頭に入れておきましょう。
住宅ローン控除を売却した年に受けるためには、定められた条件をクリアする必要があります。それぞれの内容をよく理解できていない場合、せっかくの制度を活用できず損してしまうことも少なくありません。ここでお伝えする4つのポイントについて、正しく把握しておきましょう。
控除を受ける年の12月31日まで住居として住んでいなければ、売却した年に控除を受けられません。売却後に引っ越す場合、必ず次の年に入ってからにしてください。
また、不動産の取引ではおよそ1ヶ月前後の引き渡し期間がかかるケースがほとんどになります。そのため、年末に売却できれば、その年の控除を受けやすいのが特徴です。
住宅ローンを利用している建物の床面積が、40平方メートル以上の広さが登記簿上にあるかどうか、必ず確認しておきましょう。40平方メートル以下の場合、住宅ローン控除を受けられません。
しかし、床面積が40平方メートル以上50㎡平方メートル未満の場合は、この要件を適用させるためには、年間所得1,000万円以下の条件があります。
売却した不動産の耐震基準が旧耐震基準の場合は、住宅ローン控除を受けられないため、新耐震基準を満たしているかどうかを必ずチェックしておくようにしましょう。
さらに、築年数も住宅ローン控除の重要なポイントです。
中古物件の場合は、以下の建物か、耐震証明書を取得している建物でないと対象外となります。
また、以下のいずれかをおこなえば、上記築年を超えていても控除の対象になります。
住宅ローン控除を適用させるためには、下記3つの特例を受けていないのが前提です。
これらは、住宅ローン利用で入居した年の以前3年間の適用がないことが要件です。後ほどそれぞれの特例について詳しく紹介するので、ぜひチェックしてください。
住宅ローンは、ある特定の特別控除であれば併用して利用することが可能です。ここで、住宅ローンと併用可能な2つの特例を紹介します。それぞれをうまく活用し、よりお得に控除が受けられるよう準備しておきましょう。
売却によって損失が出た場合、その損失分を他の所得と損益通算することによって節税することが可能です。また、売却しても損失のほうが大きくなってしまった場合、売却年から以降3年間その損失を繰越控除が可能です。
また、損失が出てしまってもしっかりと確定申告することで節税可能となるため、忘れないようにしましょう。
これまで住んでいた住居で、住まなくなった日から3年後の年末までに売却するのが条件をクリアすれば、買い替えで損失が出てしまっても損益通算と繰り越し控除特例が利用できます。
さらに、購入するマイホームは売却した前年1月1日から翌年末までに取得するようにしてください。また、床面積50平方メートル以上、住宅ローンの返済が10年以上であることも条件となります。
不動産を売却して利益が出た場合、下記の節税が可能となります。それぞれの内容について詳しくお伝えします。
住居の所有期間に関係なく、譲渡所得から最高で3,000万円の控除が受けられます。しかし、3,000万円の特別控除は、下記の要件が認められてしまった場合は受けられないので注意してください。
所有期間が10年を超えている場合、下記の金額によって税率が下がります。
また、所有期間が5年を超える場合は短期譲渡所得になり、5年を超える場合は長期譲渡所得となります。それぞれの税率は大きく異なるため、節税するためには最低でも5年、より高い節税をしたいのであれば10年の所有期間を経てから売却するのがおすすめです。
短期譲渡所得と長期譲渡所得の税率は下記の通りですので、チェックしておいてください。
所有期間10年以上のマイホームを売却した場合、買い替え特例を利用することで課税金を繰り延べることができます。
先送りできる期間は、買い替えたマイホームを売却するまでです。また、マイホームの買い替え特例は、上記でお伝えした居住用財産3,000万円の特別控除と10年超所有軽減税率の特例との併用はできません。この2つを選ぶか、買い替え特例を受けるかのどちらかになるため、今払う税金を繰り延べるか、税率を低くして支払うかを選択してください。
住宅ローン控除は、うまく活用することでお得なマイホームの購入が可能になります。しかし、そのためには事前に住宅ローン控除に関する正しい知識と情報を集めておかなければいけません。
マイホームの売却を検討している方はもちろん、まだ考えていないけれど、いつか売却するために知識を得たいといった方にもぜひ知ってほしい内容となっています。
住宅ローン控除の基本的な情報をはじめ、さまざまな特例についてお伝えしてきた本記事を参考に、ぜひ住宅ローン控除をうまく活用していってください。
公益財団法人日本賃貸住宅管理協会会員 「プリンシプル 住まい総研」所長 住宅情報マンションズ初代編集長
1988年株式会社リクルート入社し、リクルートナビを開発。 2002年より住宅情報タウンズのフリーペーパー化を実現し、編集長就任。 現スーモも含めた商品・事業開発責任者に従事。2011 年 12 月同社退職。
プリンシプル・コンサルティング・グループにて2012年1月より現職。 全国の不動産会社のコンサルティング、専門誌での執筆や全国で講演活動を実施。