不動産売却・査定

【家を売却した年に住宅ローン控除を受ける方法】併用できる特別控除も紹介

住宅ローン控除とは

「住宅借入金等特別控除」が正式名称となる住宅ローン控除は、個人がマイホームを購入する際に住宅ローンを利用する場合、定められている条件をクリアすることで所得税控除が受けられる制度です。

住宅ローン控除は、新築一軒家はもちろんのこと、中古不動産やリフォームなど、居住用住宅であれば利用可能の制度となるため、多くの方が住宅ローン控除という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。

住宅ローン控除が適用される条件は、下記の通りです。ほかにも細かな条件はありますが、まずは主な内容についてぜひチェックしてください。

新築住宅の住宅ローン控除適用条件
  • 住宅引き渡し日、もしくは工事完了から6ヶ月以内の住居
  • 合計所得金額2,000万円以下
  • 10年以上の住宅ローンがある
買取再販の住宅ローン控除適用条件
  • 宅建業者から住宅を取得する
  • 新築日から10年経過した物件
  • リフォーム費用が20%以上を占める建物価格
中古住宅の住宅ローン控除適用条件
  • 1982年1月1日以降に建てられている
  • 現在の耐震基準に当てはまる
リフォームや増築の住宅ローン控除適用条件
  • 現在の耐震基準に合わせる改修工事
  • 一定の省エネ改修工事、もしくはバリアフリー改修工事
  • 1つの工事で100万円以上の費用

売却した年に住宅ローン控除を受けられる?

住宅ローン控除は、売却した年から受けることが可能です。しかし、必ずしも受けられるとは限りません。まずは、住宅ローン控除が受けられるか受けられないか、3つのケースごとに紹介します。

損失が出た場合は受けられる

所有している不動産を売却し、その結果がマイナスとなった場合、住宅ローン控除を受けられます。住宅ローン控除を売却した年に受ける場合、さまざまな条件をクリアしなければいけません。詳しい内容については後ほど紹介しますので、ぜひチェックしておきましょう。

利益が出た場合は受けられない

売却して損失が出れば受けられますが、逆に言えば利益を得ると、控除を受けることはできません

この場合、売却での利益におけるさまざまな特例を利用して節税が可能です。特例は、3,000万円特別控除、マイホームの買い替え特例などさまざまな種類があるため、どうすればうまく節税できるかをよく調べておくことが大切です。

条件を満たせば土地購入時も受けられる

建物だけではなく、土地購入でも条件をクリアできれば、住宅ローン控除を受けられます。新しく土地を手に入れてから2年以内に住宅ローンを利用したうえで住居の建築を新築する、土地の購入は宅建業者から購入するといった2つの条件があります。

宅建業者から購入する土地は建築条件つきです。このどちらかをクリアすれば、土地の購入で住宅ローン控除が受けられますので、建物だけではないことを頭に入れておきましょう。

売却した年に住宅ローン控除を受ける条件

住宅ローン控除を売却した年に受けるためには、定められた条件をクリアする必要があります。それぞれの内容をよく理解できていない場合、せっかくの制度を活用できず損してしまうことも少なくありません。ここでお伝えする4つのポイントについて、正しく把握しておきましょう。

控除を受ける年の12月31日まで住んでいること

控除を受ける年の12月31日まで住居として住んでいなければ、売却した年に控除を受けられません。売却後に引っ越す場合、必ず次の年に入ってからにしてください。

また、不動産の取引ではおよそ1ヶ月前後の引き渡し期間がかかるケースがほとんどになります。そのため、年末に売却できれば、その年の控除を受けやすいのが特徴です。

床面積が40㎡以上の広さがあること

住宅ローンを利用している建物の床面積が、40平方メートル以上の広さが登記簿上にあるかどうか、必ず確認しておきましょう。40平方メートル以下の場合、住宅ローン控除を受けられません。

しかし、床面積が40平方メートル以上50㎡平方メートル未満の場合は、この要件を適用させるためには、年間所得1,000万円以下の条件があります。

耐震基準・築年数の条件を満たしていること

売却した不動産の耐震基準が旧耐震基準の場合は、住宅ローン控除を受けられないため、新耐震基準を満たしているかどうかを必ずチェックしておくようにしましょう。

さらに、築年数も住宅ローン控除の重要なポイントです。

中古物件の場合は、以下の建物か、耐震証明書を取得している建物でないと対象外となります。

  • 耐火建築物以外の場合(木造など):20年以内に建築された住宅であること
  • 耐火建築物の場合:25年以内に建築された住宅であること

また、以下のいずれかをおこなえば、上記築年を超えていても控除の対象になります。

  • 耐震基準適合証明書を取得する
  • 既存住宅性能評価書を取得する
  • 既存住宅売買瑕疵保険に加入する

一定の期間内に3つの特例を受けていないこと

住宅ローン控除を適用させるためには、下記3つの特例を受けていないのが前提です。

  • 3,000万円特例控除
  • 所有期間10年超の居住用財産を譲渡した場合の軽減税率の特例
  • 特定の居住用財産の買い替え特例

これらは、住宅ローン利用で入居した年の以前3年間の適用がないことが要件です。後ほどそれぞれの特例について詳しく紹介するので、ぜひチェックしてください。

住宅ローンと併用できる2つの特別控除

住宅ローンは、ある特定の特別控除であれば併用して利用することが可能です。ここで、住宅ローンと併用可能な2つの特例を紹介します。それぞれをうまく活用し、よりお得に控除が受けられるよう準備しておきましょう。

マイホームの譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例

売却によって損失が出た場合、その損失分を他の所得と損益通算することによって節税することが可能です。また、売却しても損失のほうが大きくなってしまった場合、売却年から以降3年間その損失を繰越控除が可能です。

また、損失が出てしまってもしっかりと確定申告することで節税可能となるため、忘れないようにしましょう。

マイホームを買い替えた場合の譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例

これまで住んでいた住居で、住まなくなった日から3年後の年末までに売却するのが条件をクリアすれば、買い替えで損失が出てしまっても損益通算と繰り越し控除特例が利用できます。

さらに、購入するマイホームは売却した前年1月1日から翌年末までに取得するようにしてください。また、床面積50平方メートル以上、住宅ローンの返済が10年以上であることも条件となります。

売却して利益が出た場合に利用できる特別控除

不動産を売却して利益が出た場合、下記の節税が可能となります。それぞれの内容について詳しくお伝えします。

居住用財産3,000万円の特別控除

住居の所有期間に関係なく、譲渡所得から最高で3,000万円の控除が受けられます。しかし、3,000万円の特別控除は、下記の要件が認められてしまった場合は受けられないので注意してください。

  • 3,000万円特例を受けるために入居したとされる場合
  • 新しい住宅を新築する期間のみの仮住まいとして使用
  • 趣味や娯楽のための施設で、主な居住物件ではない場合

10年超所有軽減税率の特例

所有期間が10年を超えている場合、下記の金額によって税率が下がります。

6,000万円以下の部分 住民税:4%
所得税:10%
6,000万円超の部分 住民税:5%
所得税:15%

また、所有期間が5年を超える場合は短期譲渡所得になり、5年を超える場合は長期譲渡所得となります。それぞれの税率は大きく異なるため、節税するためには最低でも5年、より高い節税をしたいのであれば10年の所有期間を経てから売却するのがおすすめです。

短期譲渡所得と長期譲渡所得の税率は下記の通りですので、チェックしておいてください。

短期譲渡所得 住民税:9%
所得税+復興特別所得税:30.63%
長期譲渡所得 住民税:5%
所得税+復興特別所得税:15.315%

マイホームの買い替え特例

所有期間10年以上のマイホームを売却した場合、買い替え特例を利用することで課税金を繰り延べることができます。

先送りできる期間は、買い替えたマイホームを売却するまでです。また、マイホームの買い替え特例は、上記でお伝えした居住用財産3,000万円の特別控除と10年超所有軽減税率の特例との併用はできません。この2つを選ぶか、買い替え特例を受けるかのどちらかになるため、今払う税金を繰り延べるか、税率を低くして支払うかを選択してください。

まとめ

住宅ローン控除は、うまく活用することでお得なマイホームの購入が可能になります。しかし、そのためには事前に住宅ローン控除に関する正しい知識と情報を集めておかなければいけません。

マイホームの売却を検討している方はもちろん、まだ考えていないけれど、いつか売却するために知識を得たいといった方にもぜひ知ってほしい内容となっています。

住宅ローン控除の基本的な情報をはじめ、さまざまな特例についてお伝えしてきた本記事を参考に、ぜひ住宅ローン控除をうまく活用していってください。

上野典行(プリンシブル・コンサルティング・グループ株式会社)
上野典行(プリンシブル・コンサルティング・グループ株式会社)

公益財団法人日本賃貸住宅管理協会会員
「プリンシプル 住まい総研」所長
住宅情報マンションズ初代編集長

1988年株式会社リクルート入社し、リクルートナビを開発。 2002年より住宅情報タウンズのフリーペーパー化を実現し、編集長就任。
現スーモも含めた商品・事業開発責任者に従事。2011 年 12 月同社退職。

プリンシプル・コンサルティング・グループにて2012年1月より現職。
全国の不動産会社のコンサルティング、専門誌での執筆や全国で講演活動を実施。

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