中古マンションの売却は、おおよそ下記の流れで進んでいきます。
「査定〜媒介契約」「売り出し〜売買契約」「決済・引き渡し」の3つのステップに分けて、詳しく解説していきます。
査定から媒介契約までにかかる期間は、1週間程度といわれています。この時期は、中古マンションを売り出す前の準備期間です。
具体的には、周辺の中古マンションを調査して相場を知る、不動産会社に出向き査定を依頼する、などの作業をおこないます。売却希望額と不動産会社の提示した査定額の折り合いを見つけながら、売り出し価格を決めていきましょう。
売り出し価格が決定したら、実際に買主を募集するために媒介契約を結びます。契約方法には下記の3つの種類があるので、希望にあう方法を選択しましょう。
売り出しから売買契約にかかる期間は、1ヶ月から場合によっては半年以上といわれています。この間、主に売主がしなければならないことは、「内覧時の対応」や「物件の清掃・管理」です。
買い手が見つかり、売買条件に買主と売主の双方が納得すれば、契約の締結となります。売買条件に折り合いがつかない場合には、ほかの買主が現れるのを待ちましょう。
一般的に、売買契約をおこなう際には売主・買主・不動産会社の3者が集まります。ここでは「重要事項説明書」「売買契約書の取り交わし」を行い、売主は買主から手付金の支払いを受け、不動産会社に仲介手数料を支払います。
買主が住宅ローンを組む場合は、ローン審査通過後に決済および引き渡しとなります。一般的に、決済日と引き渡し日は同日で、売主は代金を受け取ったら買主にマンションの鍵や規約、そのほかの書類の引き渡しをしましょう。
決済日と引き渡し日を同日としたくない場合には、売買契約書の段階で特約を定めておく必要があるので注意してください。
中古マンションの価格を調べる方法として、「不動産ポータルサイトを利用する」「周辺の不動産会社で市場調査をする」などの方法が挙げられます。中古マンションの価格は、主に下記の2つの要素で決定するので、売却したいマンションと照らし合わせて価格相場を調べていきましょう。
【価格相場を決定する要素】
都心部や駅に近く、利便性が高い土地は、価格が高くなる傾向にあります。また、今後開発予定が立っている土地も価格が上がる傾向にあるので、売却したいマンションの立地の相場を調査しましょう。
立地の調査には、国土交通省のデータ「不動産売却取引価格情報」が役立ちます。
次に築年数についてですが、築年数から見た首都圏の不動産流通市場は「東日本不動産流通機構」のデータが有用です。
下記に、東日本不動産流通機構のデータから算出した、築年数による中古マンションの資産価値の推移を表にまとめたので、ぜひ参考にしてください。
【築年数による中古マンションの資産価値の推移】
上記の表からも分かるように、中古マンションの資産価値は築10年を経過すると購入価格の約80%となり、築20年を経過すると50%になっています。もちろん上記はあくまでも平均値で、立地や管理状態等によって価格は異なります。
しかし、築年数を踏まえた上での相場感を知っておくことは、スムーズな売却に繋がるので覚えておいて損はないでしょう。
また、周辺の家賃相場も知ることは役に立ちます。「貸したらいくらになるのか=周辺の同じような物件の賃料」から、「その1年分」を参考にします。
例えば、隣の部屋が、家賃15万円で賃貸で貸されていれば、年間で15万円×12ヶ月=180万円の収入が得られるということです。
この物件を1800万円で売りに出せば、180÷1800=表面利回り10%の投資物件ということになります。3600万円なら表面利回り5%ということになります。
不動産売却の流れを把握した後は、必要書類について知っておきましょう。中古マンション売却には沢山の書類を用意する必要があり、なかには市役所に行かないと揃わない書類もあります。
後から慌てることのないよう、事前に必要書類を把握しておいてください。中古マンション売却に必要な書類は、以下の通りです。
上記に挙げた必要書類は、中古マンション売却にあたって最低限必要な書類です。
これらの書類以外にも、マンションに関する書類があればできる限り用意しておきましょう。
2022年5月からは、電子契約も解禁されるため、実印などは契約形態によっては必要なくなる場合もあります。よく仲介する不動産会社に確認しましょう。
続いて、中古マンション売却にかかる費用について解説していきます。一般的に中古マンション売却にかかる費用は、マンション売却額の5〜8%といわれています。
どのような項目に、いくら費用が発生しているのか、詳しく見ていきましょう。
登記費用とは、不動産登記にかかる費用です。登録免許税として10万円前後の費用が発生します。
不動産登記は個人でもできる手続きですが、司法書士に依頼する場合には、別途依頼費用が必要となります。
印紙税は、売買契約書に貼りつける収入印紙にかかる費用です。中古マンションの売却価格に応じて異なります。
下記に売却価格に応じた印紙税をまとめたので、ぜひ参考にしてください。
なお、2022年5月宅建業法が改正されることで電子契約が可能になります。
その場合は印紙税をカットすることができます。
売却したい中古マンションに住宅ローンの残債がある場合、そのままでは売却できないのでローンを返済する必要があります。このローンの返済にかかる手数料が、一括繰上返済手数料です。
一括繰上返済手数料は、借入を行った金融機関によって異なりますが、2〜5万円程度といわれています。選択している金利のタイプによって手数料が異なる金融機関もあるので、事前に確認しておきましょう。
譲渡所得税とは、中古マンション売却で利益が出た際に発生する所得税のことです。譲渡所得税の税率は売却した中古マンションの保有期間に応じて、以下のように異なります。
利益が出なかった場合には、この費用は支払う必要はありません。
中古マンションを売却する際、不動産会社選びは非常に重要です。大きなお金が動く契約なので、失敗するリスクを避けるためにも、不動産会社選びは慎重におこないましょう。
この項では、不動産会社選びのポイントについて解説していきます。
1点目のポイントは、マンションの売買実績で不動産会社を選ぶという点です。多くの不動産会社では「売買実績〇〇戸」「売買実績業界ナンバーワン」等のキャッチフレーズを掲げています。
販売実績の多さは、中古マンション売却のスキルが高くノウハウが豊富であることを意味しているので、信頼における不動産会社を判断する材料になります。
また、不動産会社の営業年数も選択する上でのひとつの指標になります。営業年数を確認するためには、宅地建物取引業の免許番号を確認しましょう。宅地建物取引業の免許番号は、不動産会社のHPにある「国土交通大臣免許(○)第〇〇〇号」という表記です。
括弧内には更新した回数に応じた数字が入ります。宅地建物取引業の更新は5年に1度なので、「国土交通大臣免許(5)第〇〇〇号」という免許番号を持つ不動産会社は、25年間営業しているということが分かります。
一概に、販売実績や営業年数のみで不動産会社の良し悪しは図れませんが、不動産会社選びの指標として覚えておくと失敗のリスクを軽減できるでしょう。
2点目のポイントは、査定額の詳細を提示してくれる不動産会社を選ぶという点です。査定額は「絶対に売れる価格」ではないため、根拠もなく高額を提示してくる不動産会社には注意が必要です。
査定の価格よりも、この査定価格に至った判断材料を多く提示してくれる不動産会社が信頼できます。高い査定額が出た不動産会社で高く売れるわけではないので、くれぐれも気を付けましょう。
最後は、複数の不動産会社で査定をおこなうという点です。不動産会社によって、売却したい中古マンションの査定額が異なることはよくあります。
なぜなら、査定額を付ける際の明確なルールは存在せず、全ては担当した不動産会社次第だからです。
つまり、売却したいマンションの価値を深く理解し、取引事例に精通している不動産会社が査定すれば査定額は高くなり、マンションの価値を理解していない会社が査定すれば、当然査定額は低くなるでしょう。
このような理由から、複数の不動産会社で査定を出す作業は非常に重要です。
中古マンション売却は、少しのコツで良い方向に進みます。すぐにできるコツばかりなので、ぜひ売却する際の参考にしてください。
1点目のコツは不動産会社に販売図面を作成してもらうことです。販売図面は買主に対する物件の資料として、非常に重要な役割を果たします。
間取りや平米数、物件概要や価格まで分かりやすくまとめられており、口頭や難しい資料で物件を紹介するよりも買主の興味を引きます。
販売図面はフォーマットで簡単に作成できるので、媒介契約を結ぶ際に不動産会社に作成の依頼をしてみてください。
2点目のコツは、売り出しの時期に気を配るという点です。中古マンション市場は4月の新生活を意識した1〜3月の時期に多く動きます。そのため、スムーズに売却したい方は1〜3月に売り出しをおこないましょう。
1〜3月に売り出しをスタートするためには、遅くても12月までには媒介契約を完了している必要があります。最適な売却時期から逆算して、査定や媒介契約を進めておきましょう。
最後に挙げられるコツは、内覧にしっかりと対応するという点です。買い手が内覧を希望した際、多くの場合で売主が立ち会いをおこないます。立ち会いの際には設備や共有スペースの説明をし、マンションの魅力を最大限伝えるようにしましょう。
また、マンションを少しでも良くみせるためにも、日々の清掃は欠かせません。地味なことかもしれませんが、買主は管理状態を注視しているので、しっかりと対応しましょう。
中古マンションを売却する際の注意点は、大きく分けて下記の3点です。
【中古マンションを売却する際の注意点】
それぞれ詳しく解説していきましょう。
マンションを売却しようと考えたら、あらかじめ自分で売却相場を調べておくことが重要です。相場を知っておくと査定額が適切なものか判断できる力が養われる上に、資金計画も立てやすいというメリットがあります。
売却相場は、東日本流通機構のサイトや各種不動産ポータルサイトで簡単に確認できるので、ぜひ調べてみてください。
不動産を売却する際は、準備期間から契約・決済に至るまで、多くの時間を要します。無理なスケジューリングは、望まない値下げや売れ残りなどのリスクの元になる可能性が高いです。「なかなか売れないけど、早く売って現金を手にしたかったので、安値で売却して後悔している」という人もいます。
妥協のない売却をおこなうためにも、余裕を持ったスケジュールを組みましょう。
「できるだけ高く売却したい」という気持ちから、中古マンションを売却前にリフォームしようと考える方は多くいます。
むしろ、リフォーム費用を反映させたせいで販売価格が相場よりも高くなり、逆に売れなくなってしまう物件は数多くあります。どうしてもリフォーム後に売却をしたい場合は、一度不動産会社と相談しましょう。
最後に、中古マンション売却に関するよくある質問に回答していきます。
【中古マンション売却に関するよくある質問】
納得できる売却をするためにも、気になることを少しでも無くしておきましょう。
中古マンションの売却を検討している方のなかには、築年数や立地等が理由で「本当に売れるの?」と思う方は多いでしょう。しかし、中古マンションの売却数は増加傾向にあり、需要は年々高まっています。
この背景には、2022年現在新築マンションの平均価格が6,260万円と高騰していることが挙げられます。バブル期の新築マンションの平均価格を大きく上回っているため、一般家庭ではなかなか手が届かない価格帯といえるでしょう。
さらに、中古マンションには買い手側から見て、新築マンションにはない下記のメリットが存在します。
【買い手側の中古マンション購入のメリット】
これらの理由から中古マンションの取引は年々増加しています。「売れないかもしれない」と嘆く前に、一度不動産会社に相談してみましょう。
入念な準備をしておいても、中古マンション売却が失敗に終わることがあります。よくある失敗理由を以下にまとめたので、ぜひ参考にしてください。
【中古マンション売却が失敗する理由】
上記からも分かるように、売却が失敗に終わる理由の大半は、調査不足や準備不足によるものです。事前に売却スケジュールを把握して不動産会社を比較・検討しておけば、上記のような失敗をする事態には陥らないでしょう。
本記事では、中古マンション売却の流れや必要書類、注意すべき点について解説していきました。
中古マンションを売却するためにはさまざまなタスクがあり、前もって用意しておかないとスムーズな売却が進められない可能性があります。
また、不動産会社選びも中古マンション売却の非常に重要な要素です。本記事を参考に、中古マンション売却の流れを理解し、良きパートナーとなる不動産会社選びをおこなってください。
公益財団法人日本賃貸住宅管理協会会員 「プリンシプル 住まい総研」所長 住宅情報マンションズ初代編集長
1988年株式会社リクルート入社し、リクルートナビを開発。 2002年より住宅情報タウンズのフリーペーパー化を実現し、編集長就任。 現スーモも含めた商品・事業開発責任者に従事。2011 年 12 月同社退職。
プリンシプル・コンサルティング・グループにて2012年1月より現職。 全国の不動産会社のコンサルティング、専門誌での執筆や全国で講演活動を実施。