そもそも不動産査定をインターネットでおこなうとは、どういったことなのでしょうか。
通常、不動産査定をおこなう際には、不動産会社に1社ずつ依頼をおこないます。そのため、店舗を訪れたり話を聞いたりする時間が必要となり、忙しい方にとっては手間のかかる行為です。1社だけに依頼する場合はそこまで手間がかかりませんが、相場を把握するためにも複数社に依頼するケースがほとんどであるため、面倒だと感じる方も多いようです。
そのような方におすすめなのが、インターネットを使った一括査定です。一括査定サイトで必要事項を入力するだけで、サイト運営会社が一括で複数社に査定依頼をしてくれるため、わざわざ店舗を回る必要がなくなります。
忙しい方にはぴったりなサービスと言えるでしょう。
インターネットを使って不動産査定をおこなうメリットには、以下の4つが挙げられます。
【インターネットを利用した不動産査定のメリット】
それぞれのメリットについて、詳しく見ていきましょう。
査定をおこなうことができるサイトの大半が、複数の不動産会社の見積もりを見ることができる仕様となっています。インターネットで不動産査定をおこなう最大のメリットといえるでしょう。
複数の会社の査定金額を見られることにより、以下のような恩恵を受けられます。
【複数の会社に査定を依頼するメリット】
この中で最もメリットといえるのは、透明性のある相場価格を客観的に見ることができるという点です。店舗に訪問する場合、手間がかかるため2~3社に査定依頼をしたら満足してしまう方が多くいます。一方、インターネットで一括査定をした場合、簡単に5~6社から査定を受けることが可能です。そのため、より正確な相場を把握できます。
このように、気軽に複数の会社から査定額を受け取れる点においてはメリットがあるでしょう。
チラシや広告を見て不動産会社に査定を依頼する場合、企業を探して1社ずつ依頼をおこなわなければいけません。どの会社も同じようなことを聞かれるので、手間も時間もかかってしまうでしょう。また、ただ訪問するだけではなく、それぞれの不動産会社に提出する書類の準備や連絡を取る手間、評判の良い会社を選ぶ手間もかかります。
不動産査定の依頼をするだけで、数か月もの時間がかかってしまうケースも少なくないようです。
しかし、インターネットで依頼する場合には、1回で複数の業者に査定を依頼できます。必要情報も不動産会社ごとに連絡する必要もなく、各サイトの専用フォームに入力するだけで良いので、面倒な手間を省くことができます。
よりスムーズに見積もりを出したいと考えている方は、インターネットを利用したほうが良いでしょう。
大手など、運営がしっかりとしている不動産一括査定のサービスでは、信頼できる不動産会社が事前に選ばれています。そのため、自分で評判の良い不動産会社を探す手間をかけずに、見つけることが可能です。
何度も不動産売却をしたことがある場合には、良い不動産会社を見つけるための基準がはっきりとしているでしょう。一方で、初めて売却する場合は、果たして何が良い不動産会社なのかが明確でないケースも多々あります。
そのような場合には、不動産のプロが運営している一括査定サイトで依頼する方ほうが賢明と言えるでしょう。
ネットでの不動産査定を複数社に依頼すると、結果や対応の違いが明確に出てきます。これにより、それぞれの不動産会社を一括で比較しやすくなるのです。
また、一般的なネット査定ではメールや電話で不動産会社の担当者から連絡があります。この時の対応で不動産会社だけでなく、その担当者の対応も一括で比較できるのです。
ネット査定を依頼した際には以下のポイントを注意して確認しましょう。
【ネット査定の際の比較ポイント】
それぞれの項目ごとに比較して、あなたにぴったりの不動産会社・担当者を見つけましょう。
インターネットを利用して不動産査定をおこなうことには、デメリットもあります。よく挙げられるデメリットは、以下の4つです。
【インターネットで不動産査定をおこなうデメリット】
ここからは、ネットを利用した不動産査定のデメリットについて、詳しくご紹介していきます。
インターネットで不動産の査定をおこなうときには、電話番号等の個人情報を入力します。そうすると、その電話番号に不動産会社から営業電話がかかってくることもあるようです。頻繁に電話がかかってくると長い時間をとられてしまうということもあるでしょう。
そのような心配がある場合には、一括査定を依頼する前に、メールでの連絡のみを希望する旨を伝えておきましょう。多くの場合、入力フォームに心配事や懸念点を記入する箇所があるので、忘れずに記載しておくことをおすすめします。
とはいえ、本気で不動産を売りたいと考えているなら、結局は不動産会社に直接相談したほうがベターです。そう考えれば、営業電話というよりは相談開始のタイミングと考えても良いはずです。
インターネットで不動産の一括査定を依頼する場合、地元に根ざした地域密着型の不動産会社が登録されていないケースがあることに注意しましょう。
地元密着型の不動産会社は、そのエリアの特性を理解しているため、売却活動の際に大手では見つけられないような買い手を紹介してくれるケースがあります。そのため、好んで地域密着型の企業を探している方も多いようです。
どうしてもそのような不動産会社に依頼したいのであれば、一括査定サイトではなく、それぞれのエリアの不動産会社に連絡するしか方法はありません。なかには、ホームページで査定依頼を受け付けている不動産会社もあるので、事前に確認をしておきましょう。
インターネットを使って査定する場合、気軽に5〜10社程度の企業に依頼することが可能です。査定の件数が増えることで、なかには不動産会社を選ぶことがより難しく感じる方もいるでしょう。
査定の結果は、ただ査定額が高い会社に依頼すれば良いというものではありません。そのため、もし迷った場合には以下のようなポイントを判断基準としましょう。
【不動産会社を選ぶポイント】
上記のようなポイントで少しでも気になる点があれば、その会社は避けるなどして選定することをおすすめします。
ネット査定では、不動産会社が査定していないケースもあります。その場合、サイトによっては査定価格の根拠が成約価格ではなく売り出し価格になっていることがあるので注意しましょう。
成約価格とは、実際に物件が買われた金額です。そのため、査定の根拠としては信憑性が高くなります。
一方で、売り出し価格はあくまで売主側が市場に公開している価格です。実際の取引では、売れなかったから値下げするなど、売り出し価格のまま成約していないケースも存在します。そのため、査定の根拠としては信憑性が低くなってしまうのです。
ネット査定をする際は、必ず不動産会社がおこなっているものを参照しましょう。
インターネットを利用して不動産の査定をおこなう場合、サイト選びが重要となります。より良いサイトを選ぶためのポイントは、以下の5つです。
【不動産査定サイトの選び方】
ここからは、上記の項目について詳しく解説していきます。
より効率的に不動産査定をおこなうためには、同時に多くの会社へ依頼できるところを選ぶことが重要です。多いところだと、一括で10社に査定を依頼することが可能です。
また、提携している不動産会社の数が多くても、エリアなどに偏りがあっては意味がありません。提携先の数を確認しつつも、幅広いエリアに提携しているサイトを選ぶようにしましょう。
多くの企業に査定を依頼したとしても、そこが悪徳業者だとトラブルが発生する可能性が高いです。そのため、優良企業と提携しているサイトを探すことも大切でしょう。
優良企業と提携しているかを調べる方法は以下の通りです。
【優良企業と提携しているか調べる方法】
上記のポイントを守れば、必ず悪徳業者を排除できるとは言い切れません。不動産の一括査定サービスに関するルールは、まだ業界として整備されているわけではないためです。
しかし、ランダムにサービスを選ぶよりは上記のポイントを抑えて選定した方が、より良い不動産会社と出合える確率は上がります。
不動産と一言で言っても、以下のようにさまざまな種類があります。
【不動産の種類】
それぞれに特化したサイトや取り扱っている不動産が多いサイトを選ぶことで、お持ちの不動産に適した一括査定サービスを選択することができます。ほとんどの一括査定サイトでは、扱っている不動産の種類に関する情報が以下のように記載されています。
(出典:home4u.jp)
事前に必ず確認しておきましょう。
匿名査定とは、個人情報を入力することなく査定を受けることができる仕組みです。自分が所有している不動産の査定をおこなったとしても、その後営業電話がかかってくることはありませんし、検討しているだけで利用することも可能なので、メリットが大きいと感じる方も多いでしょう。
ただ、匿名査定で出される数字は情報が少ない分、信憑性の点で劣る可能性があります。そのため、より詳細な価格を知りたい方は、本格的な診断をおこなってもらったほうが良いでしょう。
ネット査定は、簡易的に細かい個人情報を伝えずに査定をしてもらえます。しかし、住所や連絡先などの個人情報はフォームに入力する必要があります。
そのため、個人情報の取り扱いが適切であるかもひとつの判断材料となるのです。
個人情報の取り扱いが適切かどうかは、不動産会社のサイトで確認しましょう。「個人情報の取り扱いについて」といったような自社としてのポリシーを提示している場合には、個人情報に対する意識が高いと判断できます。また、以下のようなプライバシーマークがあればより安心です。
(参照:privacymark.jp)
プライバシーマークは、一般財団法人日本情報経済社会推進協会によって指定された民間事業者団体が、個人情報の取り扱い方を審査し、発行しているものです。
不動産会社のサイト内にこのプライバシーマークがある場合には、安心して個人情報の提供が行えるでしょう。
続いて、ネットで不動産査定をおこなった後の流れを確認していきましょう。
依頼後は不動産会社や査定サイトによって、結果の通達の違いがあります。しかし、ほとんどのサービスでは、以下のように後日メールなどで査定結果が送られてきます。
【ネットで不動産査定を行った後の流れ】
追加項目は必要な不動産会社もありますが、周辺環境やアクセスなどより精度の高い査定結果にするために求められることもあります。
提供したくない場合には、無理におこなう必要はありませんが、基本的には項目をすべて埋めて返信することがおすすめです。
また、査定結果に記載されている内容に関しては、次の章で解説しています。
ネット査定を依頼すると後日、不動産査定書が送られてきます。不動産査定書とは、査定価格やその根拠など不動産の査定結果がまとめられた書類のことです。
この不動産査定書の内容を理解することで、不動産の価値を正確に理解できますし、不動産会社ごとの違いを確認できます。
内容やどのような点を注意すれば良いのか確認しておきましょう。
ネットで依頼した不動産査定書には、以下の評価項目がそれぞれ記載されています。
【建物の項目】
【土地の項目】
提供している情報によって項目の多さは左右されますが、上記のようなポイントをひとつひとつ不動産会社が確認をして、最終的な査定額を提示します。
また、特に評価が高かったポイントや査定に影響を与えたポイントに関しては、不動産会社から一言コメントがついてきます。どのような観点で不動産会社が査定額を決めているのか必ず確認をしておきましょう。
不動産査定書に記載がない場合もありますが、査定書が送られてきたら必ず事例単価と流動性比率もチェックしておきましょう。
事例単価とは、周辺エリアの過去の取引事例を基にした査定のことです。多くの不動産会社では、この事例単価をもとにして査定額を算出しています。
また、流動性比率とは、「不動産の売れやすさ」を指します。1.00を基準として、非常に売れやすい時は最大1.10まで上がり、売れにくい時は0.85ほどまで下がる数字です。
流動性が1.00を超えている時に売却活動を開始することで、より早期での売却を実現することができます。不動産の売り時を判断する目的でこの数字は確認しておきましょう。
インターネットでおこなう不動産査定には、さまざまなメリットがあります。しかし、正しい査定額を知るためには、以下の2つの点に注意しておく必要があるでしょう。
【インターネットで不動産査定をおこなう際に意識するべきこと】
ではここからは、インターネットで不動産査定をおこなう際の注意点について詳しく見ていきましょう。
ユーザーは少しでも高く売りたいと考えているため、より高い査定金額を表示してくれる企業に任せたいと思うでしょう。しかし、不動産業者によっては、相場の査定額よりも見積もりを高く表示するところもあるようです。
これは、査定をおこなう企業が直接物件を購入するわけではないことが理由となります。具体的には、査定をおこなった企業はあくまで不動産会社との仲介役となっているということです。そのため、実際の金額よりも高く査定をし、自社で仲介できる不動産を増やそうとしているケースがあるのです。
このようなことを避けるためにも、査定後には算出した根拠を聞くようにしましょう。
インターネットを活用した不動産査定は、業者が訪問するわけではありません。そのため、実際の現地状況が加味されていない点に注意が必要です。
例えば、以下のような項目は査定に影響を与える要素ですが、インターネットでの査定では加味されません。
【現地でしかわからない要素】
これら以外にも査定額に影響を与える要素はありますが、上記のようなポイントが加味されていないため、実際の査定額とは異なる可能性があるのです。
なかには気になるポイントを事前に伝えられるサービスも存在します。しかし、伝えているのが不動産のプロではないため、抜け漏れや情報の正確さは保証できません。
このように、現地の状況が加味された査定額ではないことを知っておきましょう。
保有している不動産を売却する際に、初めにおこなうことが不動産の査定です。インターネットを使わない場合、1件ずつ店舗に訪問することになるため手間がかかるでしょう。
一方、インターネットで一括査定をおこなえば、5〜10社から気軽に査定額を受け取ることができるため、非常に便利です。
査定ができるサービスは複数あるため、この記事を参考に自分に合ったものを適切に選択しましょう。
公益財団法人日本賃貸住宅管理協会会員 「プリンシプル 住まい総研」所長 住宅情報マンションズ初代編集長
1988年株式会社リクルート入社し、リクルートナビを開発。 2002年より住宅情報タウンズのフリーペーパー化を実現し、編集長就任。 現スーモも含めた商品・事業開発責任者に従事。2011 年 12 月同社退職。
プリンシプル・コンサルティング・グループにて2012年1月より現職。 全国の不動産会社のコンサルティング、専門誌での執筆や全国で講演活動を実施。