不動産鑑定費用の相場|利用するケースやメリットについて徹底解説!

不動産鑑定費用の相場|利用するケースやメリットについて徹底解説!

不動産の価格を知る方法には、「不動産鑑定」と「不動産査定」があります。

不動産鑑定と不動産査定は、鑑定が有料で査定が無料という違いがありますが、「不動産鑑定にどれくらいの費用がかかるのか分からない」「そもそも鑑定と査定の違いが分からない」という人も多いでしょう。

この記事では不動産鑑定の費用を中心に、査定との違いや不動産鑑定が必要なケース、メリット・デメリットなどを分かりやすく解説していきます。

不動産鑑定費用の相場

不動産鑑定とは不動産の経済的価値を算出してもらうことをいいます。不動産鑑定士と呼ばれる国家資格保有者に、基準に沿って鑑定してもらい、不動産の評価額を算出するのです。

専門家に依頼する不動産鑑定は有料であり、不動産鑑定費用の相場は、20〜50万円ほどとなります。

ただし、鑑定してもらう不動産の種類や規模・資産価値によっても価格は異なってきます。建物や土地のみの鑑定より土地・建物のセットの鑑定のほうが費用は高くなり、資産価値の高い不動産も費用が高くなるのです。

また、不動産鑑定には、「不動産鑑定書」と簡易な鑑定である「調査報告書」があります。調査報告書であれば、不動産鑑定書よりも費用は安くなります。

不動産鑑定書の相場

不動産鑑定書とは、不動産鑑定基準に基づいて不動産評価額を算出した結果の書類です。不動産鑑定書には公的な証明力があり、裁判所や税金の計算など公的な機関で利用できます。

費用は鑑定する不動産によって異なりますが、一般的な住宅の場合は20〜30万円ほどが目安となるでしょう。

調査報告書の相場

調査報告書とは、不動産鑑定書の一部を省略した簡易的な書類のことを言います。簡易鑑定や意見書・価格調査書などと呼ばれることもあります。

調査報告書であれば、不動産鑑定書よりも10〜20%ほど費用は安くなるでしょう。

ただし、鑑定書のように法的な効力を持たないので、裁判所への提出などには利用できません。とりあえず不動産の価格が知りたい、公的機関に提出しないけど価格の参考資料として必要という場合は、調査報告書で事足りるでしょう。

調査報告書は、鑑定を依頼する事務所によって費用が大きく異なります。事前に依頼する事務所などに費用について確認や見積もりをとるようにしましょう。

不動産鑑定費用の算出方法

不動産鑑定費用は、主に次の3つの体系から費用が算出されます。

  • 報酬基準型
  • 積み上げ型
  • 定額型

報酬基準型

報酬基準型は、物件の種類ごとや評価額ごとに費用が決定する仕組みです。鑑定報酬額表に合わせた料金でいいため、金額が分かりやすいというメリットがあります。多くの鑑定事務所で採用されている費用体系も、この報酬基準型です。

積み上げ型

積み上げ型とは、作業量に応じて費用が上乗せされていく仕組みの費用です。報酬基準額のように基準となる価格が決まっていません。積み上げ型を採用している鑑定事務所は多くなく、複雑な鑑定を多く引き受けるように、事務所で主に採用されています。

定額型

依頼内容にかかわらず、一律の費用がかかる定額型なら、依頼者も費用が明確で依頼しやすいものです。しかし、鑑定士型にとっては労力に見合わない可能性も出てくるので、定額型を採用している事務所はとても少ないでしょう。

不動産鑑定費用は、基準に沿って鑑定するものですが、費用自体は依頼する事務所によって大きく異なります。また、どのような費用体系をとっているかによっても後から高額な費用になる可能性もあるので注意しましょう。

事前に費用について問い合わせて、見積もりをとってから依頼することが大切です。

不動産鑑定と不動産査定の違い

不動産の価格を知る方法には、「不動産鑑定」と「不動産査定」があります。

主な違いは次の通りです。

不動産鑑定 不動産査定
費用 有料 無料
法的な効力 ある(簡易鑑定にはない) ない
算出の基準 不動産鑑定基準に則る 不動産会社ごとの独自の基準で算出
鑑定する人 不動産鑑定士(国家資格) 資格不要(基本的に不動産会社の社員などが担当)

不動産鑑定は、先述したように不動産鑑定士が鑑定基準に沿って鑑定したものです。国土交通省の定めた鑑定基準に沿って鑑定されるため、鑑定士ごとに大きく価格が異なるということもありません。また、裁判など公的な目的で利用できるという特徴もあります。

ただし、鑑定には20〜50万円程の高額な費用がかかってきます。

一方、不動産査定とは、不動産会社がおこなう売値を決めるための査定です。一般的には「おおむね3ヵ月以内に売れる金額」を算出します。しかし、算出は不動産会社独自のルールでおこなわれ、さらに売主の事情も反映されるため依頼する会社ごとに大きく異なってくるものです。

不動産査定は、基本的に不動産会社の営業の一環として行われるので無料というケースがほとんどです。ただし、公的な証明力はなく、裁判所などへの提出には利用できません。

不動産鑑定は、不動産の純粋な経済的価値から算出される価格です。対して不動産査定は不動産市場や類似物件取引・売主の事情などを加味したうえで算出される価格となります。

不動産を一般的に売却するというケースであれば、無料の不動産査定で十分でしょう。有料の不動産鑑定の方が、効力があるように思えますが、不動産鑑定をしたからといって売値がその分高くなるわけではありません。

不動産鑑定が必要なケースについては、次の章で解説します。

関連記事:不動産査定書とは?種類や用途・入手方法まで徹底解説!

不動産鑑定を利用する必要があるケース

高額な費用のかかる不動産鑑定が必要なケースとしては、次のようなケースが挙げられます。

  • 相続財産の分割時
  • 親族間など個人間での不動産売買
  • 離婚での財産分与
  • 生前贈与をおこなうとき
  • 相続税の申告で評価額を下げたい時
  • 病院やゴルフ場など特殊な不動産の売買
  • 会社経営時の会計利用

上記のように、税金や財産分与が絡む場合は、公的な証明力のある不動産鑑定が適しています。親族や親子といった個人間で不動産を売買する場合も、適切な価格での売買でなければ贈与税の対象となるなどトラブルに発展する可能性があります。不動産鑑定で適正な価格を把握しておけば、個人間売買でのトラブルを避けやすくなるでしょう。

一般的な市場での不動産売却では不動産鑑定は必要ありませんが、病院・ゴルフ場といった特殊な不動産を売却する場合は不動産鑑定を依頼するケースがあります。また、法人が不動産を売買する際にも不動産鑑定を利用するケースが多いでしょう。

不動産鑑定のメリット・デメリット

ここでは、不動産鑑定のメリット・デメリットを解説します。メリット・デメリットは次の通りです。

メリット デメリット
  • 公的な証明力がある
  • 不動産トラブルを回避できる
  • 費用がかかる
  • 鑑定に時間がかかる

以下では、メリット・デメリットを詳しくみていきましょう。

不動産鑑定のメリット

メリット①公的な証明力がある

不動産鑑定の結果には公的な証明力があります。価格の算出も国土交通省の鑑定基準を基にしているため、信ぴょう性も高いと言えるでしょう。

メリット②不動産トラブルを回避できる

相続や離婚時の財産分与では、不動産の価格を巡ってトラブルに発展するケースが珍しくありません。不動産に関する財産分与でトラブルを防ぐには、不動産の客観的で公正な価値を示す必要があります。公的な手続きにも利用できる不動産鑑定であれば、適切な不動産価格を証明でき、公平な財産分与ができるでしょう。

不動産鑑定のデメリット

デメリット①費用がかかる

先述したように、不動産鑑定では20〜50万円ほどの費用がかかります。不動産査定であれば無料で受けられるため、売却が目的であれば鑑定までは必要ないでしょう。また、鑑定費用は事務所によって大きく異なるので、依頼先を慎重に検討する必要もあります。
ただ、不動産取引や相続は数千万円や億単位の金額が動くものでもあります。不動産の適切な価格を知ってトラブルを避けられるのであれば、費用がデメリットとならないこともあるでしょう。

デメリット②鑑定に時間がかかる

不動産鑑定には、2週間から1ヶ月ほどの時間がかかります。鑑定する際には、現地の確認だけでなく市場分析や基準に沿った計算・数十ページに及ぶ鑑定書の作成など、複雑で厳密な作業が必要なので時間がかかってしまうのです。簡易鑑定であれば不動産鑑定よりも短い期間で算出できるので、目的に応じて選択するとよいでしょう。

不動産鑑定を依頼する流れ

不動産鑑定を依頼する流れは、次の通りです。

  1. 不動産鑑定事務所を探す
  2. 鑑定の申込
  3. 鑑定評価
  4. 中間報告
  5. 鑑定書の交付

まずは、不動産鑑定を依頼する事務所を探します。事務所によって費用が異なるので、慎重に依頼先を選ぶようにしましょう。鑑定事務所の選び方のポイントは後述するので参考にしてください。

依頼する鑑定事務所が決まったら、鑑定を申し込みます。依頼の際には必要書類の提出も求められることもあるので、事前に書類について確認して用意しておくようにしましょう。

鑑定依頼後は、基本的に依頼者ですることは何もありません。不動産鑑定士が、不動産に出向いて現場調査や資料収集などを行い、評価額を算出します。鑑定結果が分かるまでは、2週間から1ヶ月ほどかかります。鑑定事務所によっては中間報告を実施しているので、不明点や疑問点がある場合はその際に確認しましょう。

鑑定が終了すれば、不動産鑑定書が交付されます。不動産鑑定書には、評価額だけでなくエリアの情報など評価額の根拠となるデータなども記載されています。鑑定書の内容を確認し、不明点があれば納得いくまで確認するようにしましょう。

不動産鑑定事務所を選ぶ際のポイント

不動産鑑定は鑑定がスタートすれば、依頼者ですることは基本的に何もありません。だからこそ、鑑定を依頼する不動産鑑定事務所選びが重要になるのです。事務所によって費用が異なるだけでなく、鑑定士にもさまざまな人がいます。信頼できる事務所かどうかを見極めて鑑定を依頼するようにしましょう。

不動産鑑定事務所を選ぶ際のポイントとして、次の2点を押さえておくことが大切です。

  • 実績は豊富か
  • 費用は適正か

実績は豊富か

不動産は全く同じものがなく、評価の仕方は不動産の状況に大きく左右されます。また、「鑑定中に埋設物が発見された」「土壌汚染があった」など、不測の事態が起きる可能性もゼロではありません。

どのような不動産であっても適切な評価ができるかは、不動産鑑定士の経験に大きく左右されるのです。また、事務所によっても得意・不得意は異なります。相続関係が得意・売買が得意というように、依頼する目的と事務所の強みが合っていると、より適正な評価が期待できるでしょう。

依頼を検討している事務所の実績や得意分野などは、よく確認するようにしましょう。

費用は適正か

不動産鑑定の費用は事務所によって大きく異なります。高額な費用のかかる不動産鑑定ですが、提示される金額を鵜呑みにせず、費用が適正かどうかを慎重に見極める必要があります。

できるだけ複数社に見積もりを取って依頼すると、「ほかの事務所より費用が高かった」という事態を避けられるでしょう。

まとめ

今回は、不動産鑑定の費用やメリット・デメリット、依頼の流れなどを解説しました。

不動産鑑定士が行う不動産鑑定では、公的な手続きにも使える不動産の評価額を知ることができます。しかし、20〜50万円費用がかかり、依頼する事務所によっても費用は異なってくるので注意しましょう。

依頼する事務所を選ぶ際は、実績や費用が適正かどうかなどを基準に、複数社を比較して決めることをおすすめします。

また、一般的な不動産売却であれば無料の不動産査定や調査報告書でも十分です。依頼する目的に応じて、鑑定と査定を使い分ける必要があります。

この記事を参考に不動産鑑定について理解を深め、適切な依頼先で鑑定できるようにしましょう。