まず、マンション経営の基本を押さえて理解を深めるために、メリットとデメリットについて解説しますので、詳しくみていきましょう。
マンション経営のメリットは、以下の4点です。
最大のメリットは、継続して家賃収入を得られることです。特に、駅近のマンションや設備が充実しているマンションであれば、需要が高く、大きな収入源となり得るでしょう。また、都心などの人気エリアであれば、マンションの取得費用は高いものの、地価の高騰などが影響してすぐに回収できるケースもあります。
このように、安定した収入源としてマンション経営をする人は多く、人気の投資方法となっているようです。
木造が多い戸建て住宅に対して、マンションは鉄骨造りや鉄筋コンクリート造りの構造が多いため、耐用年数が長いという特徴があります。そのため、法定耐用年数が長ければ減価償却の効果が長く続き、節税効果が大きく、物件が長寿命であることにより安定した経営を続けることができます。
また、安定して経営ができるようになると、マンションの長期的な資産運用も可能になります。一般的に、戸建てと比べると高い需要があるため、資産の流動性が高いのも魅力のひとつでしょう。
マンションは、それ自体が資産として高額なものです。さらに、マンションを売却したとしても、土地の価値は高いまま残るという特徴があります。
資産価値は、以下のように売却価値と収益価値に分けられます。
このように、資産価値が高いままであり続けるという点も、マンション経営をおこなう際のメリットといえるでしょう。
マンション経営の節税効果は、次の3つの税金において大きく発揮されます。
また、建物は固定資産税評価額で評価されるため、田舎よりも都市部の方が市場価格に対する割合が低く評価され、節税となります。現金を相続するよりもマンションなどの資産を相続する方が、相続税は安くなるメリットがあります。
また、所得税には損益通算という制度があり、不動産所得で赤字を計上しても、他の事業所得や給与所得と差し引きできるため、納税額を抑えることができます。
マンション経営のデメリットについて、4点説明します。
マンションの取得費用は、数千万円から数億円となり、戸建てやアパート経営と比べると高額の初期投資です。自己資金で準備できる金額には限りがあるため、一般的には金融機関から融資を受けて初期費用を用意する必要があります。
しかし、しっかりとした事業計画がたっているのであれば初期投資した資金を回収し、利益を残すことも可能です。
住民の家賃滞納もリスクとして考えられるでしょう。マンションはアパートと比べると家賃が高く設定されています。そのため、家賃滞納が発生すると影響額が大きくなり、被害は甚大です。滞納された家賃は、回収するまで未収金として計上され続けることとなります。
これを防ぐためには、保証会社を通した契約をするなど、住民の家賃滞納リスクを避ける取り組みが必要になるでしょう。
修繕費用に関して、大きなデメリットとなる可能性があります。マンションのような建物は10年から15年の間隔で大規模修繕が必要となり、その都度多額の修繕費用がかかってきます。
分譲マンションの場合は外観や共用部分、設備などには入居者から集めた修繕積立金が充てられますが、賃貸として貸し出す場合は、修繕積立金を納めるのは入居者ではなく大家さんです。
いずれの場合も、家賃や管理費(共益費)を設定する際は、将来の修繕費負担(維持管理にかかる費用)を考慮する必要があります。
災害リスクがあることも、デメリットになり得るでしょう。特に、日本は災害の多い国です。火災保険は割安で加入できますが、オーナーが加入する地震保険は、高額になるケースが多いです。地震には、緊急時対応や避難対策・耐震免震構造など、日頃から備えをしておかなければいけません。
ただし、このような災害リスクへの対策は、経営しているマンションの人気を上げることにもつながります。そのため、対策をしなければいけないことはデメリットだけではなく、メリットになる点もあるので、うまく対策を打ってアピールしていきましょう。
同じ不動産賃貸による投資でも、アパートよりもマンション経営の方がおすすめである理由を5つ解説します。それぞれ詳しくみていきましょう。
マンションは鉄骨造りや鉄筋コンクリート造りであることが多いため、耐震や耐火性能が高いです。具体的には、以下のようなポイントでマンションの方が、性能が高いでしょう。
【マンションとアパートの性能の違い】
上記のように、性能の良さはマンションの価値につながり、収益性にもつながります。
アパートと比較するとマンションの方が、家賃相場が高い傾向にあります。なぜなら、以下のような理由でマンションの需要が高いためです。
同じ平米数のアパートとマンションを比較すると、立地にもよりますが家賃相場はマンションの方が1.2~2倍ほど高い傾向です。マンションはアパートに比べて初期投資額が高いですが、長期運用を考えているのであれば収益性がより良いマンション経営がおすすめです。
マンションやアパートを経営する上で、空室期間をできるだけ減らすことは重要です。そのためには、各部屋の回転率を上げる必要があります。その点、マンションはアパートよりも需要が高いため、空室が生じても入居者が見つかる可能性が高いです。
こうした回転率の高さも、マンション経営をおすすめする理由のひとつです。
鉄筋コンクリートの耐用年数は、木造よりも約2倍長く設定されています。耐用年数が長ければ、その分節税効果があり、資産価値も下がりにくくなります。
<所得税法上の法定耐用年数の例>
(参照:国税庁「主な減価償却資産の耐用年数表」)
マンションやアパート経営において、「耐用年数」は意外と見過ごされるポイントですが、長期経営では必ず考慮に入れるべきです。
2階建てなどの低層アパートと違い、鉄骨造りや鉄筋コンクリート造りのマンションは3階建て以上の建築が可能です。その分部屋数を多く確保できるため、入居者を確保できれば高収益化を図ることができます。
また、階数にもよりますが、高層階は一定の人気があり、低層マンションよりも好む客層がいる点もマンション経営をおすすめできるポイントです。
マンションを経営すべき人には、3つのタイプがいます。それぞれ詳しく解説していきます。
すでに広い土地を保有している人は、土地の購入費が不要なので、初期投資が削減されます。そのため、初期投資の回収までを短くすることができ、黒字経営に移るまでの期間を短縮できます。
またランニングコストをみても、土地を更地で保有するよりマンションなどを建設した方がメリットがあります。それは、固定資産税が軽減されるためです。
マンションを含めた不動産を経営する際は、税金対策をおこない利益を確保することが重要です。広い土地をすでに保有している人は、マンション経営をおこない固定資産税の削減にもつなげると良いでしょう。
自己資金に余裕がある人も、マンション経営にチャレンジしてみると良いでしょう。一般的に、マンション経営をおこなう際の自己資金は全体の3割程度といわれますが、マンションは高額なので多額の自己資金が必要です。自己資金に余裕があれば借入額を削減でき、頭金や当面の運営費に回せるでしょう。
また、相続においても現金より不動産の節税効果は高くなるため、自己資金は不動産に投資する方が節税となります。
マンション経営は、高い収益を目標とする資産運用や相続税対策に有効です。家賃収入が続けば、老後の安定した収入になり、いざとなれば不動産売却も可能です。
相続税の評価上、現金に比べてマンションなどの不動産は評価が低いため、相続税対策にもおすすめです。
不動産投資で人気のマンション経営ですが、いくつかの注意点があります。順番にみていきましょう。
マンション経営の仕組みを適切に理解することは、投資をおこなう上での最初の一歩となります。マンション経営の基本は、建築・購入したマンションに入居者を集めて家賃収入を得ることです。収入は、家賃収入やマンションの売却益となります。
一方、費用は管理会社への委託費やローンの返済、固定資産税等などです。収入から費用を差し引いて利益を出しますが、単年度が黒字にさえなれば良いというものではありません。10年から15年の頻度で必要な大規模修繕費用も、毎年蓄積された利益から積み立てていく必要があります。
収益性を高めるために管理費を抑えつつ、他のマンションとの差別化を図るための投資と、入居率を上げるための営業戦略が欠かせません。
以下のような、マンション経営における費用を事前に把握しておくことも重要なポイントです。
耐用年数で変わる減価償却費は、マンション経営に占める大きな費用のひとつです。減価償却とは、「収益を目的としている建物や設備などの時間とともに価値が減少する資産」の取得にかかった費用を、各年分に分割して必要経費として償却するための手続きを指します。
ここでいう「各年分」とは、マンションの法定耐用年数のことです。コストとしてかかった最初の年に全てを経費化するのではなく、耐用年数分、毎年経費となることを知っておきましょう。
固定資産税などの税金は固定費なので、毎年変動しない経費として考える必要があります。ただし、さまざまな優遇制度があり、うまく活用することで軽減することができます。
また、先ほどの減価償却費などを経費とすることで、節税対策にもなります。どれぐらいのコストが毎年生じるのか、税金対策の手段などをしっかり押さえておきましょう。
マンション経営においては、委託管理料金や修繕費などのその都度かかるコストも考慮すべきでしょう。特に、委託管理料金は、「もったいない」と削減してしまう方も多いです。
しかし、管理会社の手腕によって、大きく収益性が変わってきます。安さだけが売りの委託管理料の管理会社を選ぶのではなく、成果としてどれだけの見返りがあったかを常に把握し、コスト管理する必要があります。
また、大規模修繕は10年から15年に発生するものとして、修繕費も考慮した事業計画を立てておきましょう。
マンションに火災保険や地震保険は必須です。万が一の事態に備えておくことも、マンション経営をする上での必要スキルです。しかし、一度保険会社と契約したら終わりではありません。適宜、無駄がないかを見直し、効率的な経営をすることを心がけましょう。
なかには、長期契約で保険料が多少安くなるサービスもありますが、途中解約などのリスクもあるため、契約の際はしっかり検討するようにしましょう。
マンション経営は初期投資が大きいため、利益がでるまでに時間がかかります。鉄筋コンクリート構造の耐用年数が47年とされているところからも、長期的な視野で経営が必要なことがわかるでしょう。
マンション経営では、入居者からの家賃収入が収益の基本となります。長い間空室が発生しないように入居率を高め、資産価値を維持するために大規模修繕をおこなうなど、地道な経営努力が必要です。
マンションで収益をあげるために、需要を喚起する立地が重要です。
そのためには、次の点に注意して、立地を選びましょう。
すでに土地を保有している場合は別ですが、立地は需要を左右する大きなポイントです。いくら設備が整っていても、人気のない立地だと収益性が下がってしまいます。
マンション経営における利回りは、表面利回りで10%程度、実質利回りでは5%程度が目安とされています。不動産業界では、投資適格性を判断する際に必要とされる表面利回りの最低ラインは3%といわれており、さらに5%以上が目指すべき数字の目安です。
家賃収入を見込む際は、空室リスクもあり継続的に家賃収入を確保できないケースもあるため、現実的な数字で判断しましょう。
表面利回りと実質利回りの概要は、次のとおりです。
マンション経営は、収益性の高い投資として人気です。家賃や売買で得た収益は、将来の老後資金となるだけではなく、相続税などの節税対策としても効果があります。
また、マンション経営はアパート経営と比べて多額の費用を必要としますが、経営が軌道に乗れば収益性は高くなります。また、立地条件や建物設備で差別化し、需要を高め、計画的な大規模修繕も事業計画に組み込むことで資産価値を高めることができます。その上で、入居率を上げることができれば、マンション経営の利回りを高めることになります。
この記事を読んで、収益性の高いマンション経営をしていきましょう。
関西学院大学法学部法律学科卒。
宅地建物取引士、管理業務主任者、2級FP技能士(AFP)、登録販売者など多岐にわたる資格を保有。 数々の保有資格を活かしながら、有限会社アローフィールド代表取締役社長として学習塾、不動産業務を行う。