自分の持ち家を購入する際には多くの方が住宅ローンを利用しますが、その負担額を軽くしてくれるのが「住宅ローン控除」です。 控除の申請をする前に、「そもそも住宅ローンの控除とは何か」についてのほか、申請条件を知っておきましょう。
住宅ローン控除とは、正式には「住宅借入金等特別控除」と呼ばれ、「住宅ローン減税」と呼ばれることもあります。 この制度を活用すると、住宅ローンを利用して不動産を購入した際に、「12月31日時点での住宅ローン残高の1%相当額(最大40万円)」が、所得税から控除されます。 認定長期優良住宅では50万円、個人間売買の中古住宅では20万円の控除が可能です。所得税から引き切れない場合は、所得税の課税総所得金額の最大の13万6,500円が住民税からも控除できます。
控除される期間は10年間なので、合計最大400万円分が国から還付を受けられるため、活用しない手はありません。
また、新型コロナウイルス感染拡大の影響に対する経済対策で、2019(令和元)年10月1日から2022(令和4)年12月31日までに入居した場合、住宅ローンの控除期間は13年間に延長されました。今、住宅ローン控除を考えている方には、非常にお得な状況といえます。
ただし、延長された控除(11年目〜13年目)に関しては、「消費税増税分(2%)÷3(年)」で算出した額と、従来通りの計算で算出した額のどちらか小さい方が控除額となるので、注意が必要です。 住宅ローン控除額については、以下にまとめたので参考にしてみてください。
【住宅ローン控除早見表】
2014年3月
2021年12月
2022年12月
住宅ローンの控除を受けるためには、以下5つの条件をすべて満たす必要があります。
【住宅ローン控除の条件】
これらの条件は、新築・中古やマンション・一戸建てに関わらず、共通の条件となります。ただし、中古住宅とリフォーム済みの住宅の場合、「築20年以下の物件に限る」という条件が新たに追加されるのを忘れないようにしましょう。
ここで紹介した住宅ローン控除に関する5つの条件は、2022年4月時点の情報です。条件は適宜変更になる可能性もあるので、最新の情報は、国税庁のホームページで参照するか、税務署に問い合わせることをおすすめします。
住宅ローン控除の確定申告をおこなう際には、以下のような住宅ローン控除を受けるための書類を入手し、作成・提出しなければなりません。
【住宅ローン控除を受けるための必要書類】
それぞれの必要書類について、詳しく解説していきます。
確定申告書はAとBの2種類が存在し、申告者の職種により適切な方を選択します。 確定申告書Aは会社員などの雇用されている人のための書類です。申請時に記載する所得が以下の4種類なので、シンプルで申請しやすいものになります。
【確定申告書Aで申請する4種類の所得】
一方、確定申告書Bは、個人事業者などの雇用されていない人のための書類です。以下の所得がある人は確定申告書Bを用いて申請が必要となります。
【確定申告書Bで申請する3種類の所得】
確定申告書は、税務署で直接入手できるほか、国税庁のウェブサイトからダウンロードもできます。国税庁のe-Taxというシステムを使ってネットで作成し、提出することも可能です。
(参考:国税庁「e-Tax」、「確定申告書等の様式・手引き等(令和3年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告分)」)
源泉徴収票とは、1年間に会社から支払われた給与の金額と、自分が支払った所得税額が記載されている書類です。また、配偶者控除や扶養控除・各種保険控除(生命保険料・社会保険料)なども記載されています。
この源泉徴収票は、年末から年始にかけて勤務先から発行されるものですが、万が一紛失してしまった場合は勤務先に依頼することで再発行が可能です。
マイナンバーとは、日本に住民票がある人に対して割り振られた1人に1つだけの個人番号です。
個人番号が記載されているマイナンバーカードや通知カードのどちらかのコピーが必要になります。通知カードのコピーを用意する場合は、運転免許証かパスポートといった本人確認書類のコピーも一緒に提出が必要です。
また、マイナンバーが記載された住民票のコピーや住民票記載事項証明書でも代用することができます。すべて自身が居住している役所から入手が可能です。
住宅借入金等特別控除額の計算明細書とは、簡単に言うと「住宅ローン控除を申請するための根拠となる計算式が記載されている書類」です。
住宅ローンの対象となる家の値段や敷地の広さ・年末ローン残高など、必要事項が細かく記載されています。この書類を制作するためには、計算で使う数字が網羅的に記載されている「売買契約書」や「登記事項証明書」があると便利です。
もし、住宅ローンの債務が連帯債務にかかるときは、「連帯債務がある場合の住宅借入金等の年末残高の明細書」も必要になります。
居住している地域の税務署で直接入手するか、または郵送で取り寄せる方法や、国税庁のウェブサイトで、フォーマットをダウンロードすることも可能です。
住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書とは、年末時点における住宅ローン残債が記載された書類のことです。
基本的には、ローンを借用している金融機関から送付されます。しかし、12月末になってもこの証明書が届かないときは、金融機関へ問い合わせが必要です。さらに、複数の金融機関から住宅ローンを借用している場合は、各金融機関の証明書が必要になります。
建物・土地の登記事項証明書は、契約した土地の情報や契約内容が記載された書類のことです。入手方法は、土地を管理している法務局で直接受け取るか、法務局のホームページからオンラインで申請をして交付を受け取れます。
建物・土地の売買契約書・請負契約書の写しとは、土地や住宅の建築・購入をおこなったことを証明する契約書です。住宅ローン控除の際の確定申告では、「土地の売買契約書」と「建物の工事請負契約書」のコピーが必要です。
土地や住宅の購入・建築をおこなった際の不動産会社や建築業者から入手できます。
耐震改修や認定長期優良住宅などの特例要件を証明するための書類とは、年末残高等証明書や登記事項証明書などには記載されていない、その他の申請書類のことです。
中古住宅で住宅ローン控除を受ける際は、「耐震基準適合証明書」または「住宅性能評価書」のコピーの他、築年数や耐震基準を達成しているのかの証明書が必要になります。長期優良住宅や低炭素住宅の認定を受けた際には、その通知書も必要です。
住宅ローン控除の確定申告の手順を解説していきます。具体的には、以下のようなステップです。
【住宅ローン控除の手順】
それぞれについて、詳しく解説していきます。
確定申告では、確定申告書や源泉徴収票などの前章で挙げた以下の8点の書類を準備することから始めましょう。
必要な書類はとても多いので、漏れがないように集めてください。また、書類によっては金融機関や勤務先から得るものもあるので、必要書類を揃えるのに時間がかかる可能性があります。早めの準備を心掛けましょう。
住宅借入金等特別控除額の計算明細書を確認して、算出された控除額を確定申告書に記入します。記入が終わり次第、8点の書類を揃えて税務署の窓口に提出しましょう。
確定申告が初めての場合や慣れていない人は、必要書類に漏れがあったり、記入方法が間違っていたりすることがあります。もし、不明点や不安があれば、税務署に確認を取るほか、税理士などに相談するのも良いでしょう。
ただし、税務署は確定申告の時期にはたくさんの相談者で溢れ返っていることが多いです。税務署に相談する場合や提出の際は、余裕をもって訪れるようにしてください。
ステップ②まで完了すると、書類に記載した預貯金口座に還付金が振り込まれます。振り込まれるまでの期間は、30日から50日ほどです。オンラインで申請した際は、3週間ほどで振り込まれます。
ただし、控除の条件に合致していない場合などは、還付金が振り込まれることはありません。上記の期間を過ぎても振り込みを確認できない場合には、書類にミスがあるか条件に合致していないことがあるので注意が必要です。
2年目以降の住宅ローン控除の手続き方法は、会社員と個人事業主で異なります。具体的に必要になる書類や申告の必要性も異なるため注意が必要です。それぞれ解説していきます。
会社員は、2年目以降の確定申告は必要がありません。年末調整を通して住宅ローン控除を受けられます。しかし、以下の書類を用いた手続きが必要になります。
【2年目以降に必要になる書類(会社員の場合)】
1と2は、確定申告をした年の10月頃に、以降9年分の書類がまとめて届きます。消費税率10%で住宅を購入、またはその他の条件を満たしている際は、12年分の書類が届きます。3つの書類は、一度に提出するのではなく、毎年の年末調整時に提出しなければなりません。
年末調整をおこなわない個人事業主は、2年目以降も確定申告が必要です。しかし、初年度より確定申告の必要書類が少なくなります。2年目以降の確定申告で提出の必要がある書類は、以下の通りです。
【2年目以降に必要になる書類(個人事業主の場合)】
1年目と比べて申請が比較的楽にはなりますが、忘れないようにしましょう。
住宅ローン控除を受ける際には、以下3つの注意点があります。
【住宅ローン控除の注意点】
それぞれ解説していきます。
現在借入れている住宅ローンを借換えた場合でも、引き続き住宅ローン控除を受けられます。しかし、すべての場合で控除を受けられるわけではありません。以下2つの条件を満たしている必要があります。
【住宅ローンの借換えの場合の条件】
この条件が満たせない場合には住宅ローン控除が受けられないので、気をつけましょう。
住宅ローン控除を利用している場合、ふるさと納税による所得税や住民税の控除と重複してしまいます。これにより、ふるさと納税で税金の控除を受ける金額が少なくなったり、無くなったりする場合もあるので、注意しましょう。
ただし、「ワンストップ特例制度」を活用すれば、控除額が減ることを抑えられます。「ワンストップ特例制度」とは、ふるさと納税分を住民税のみからすべて控除できる仕組みです。
これを活用することによって、住宅ローン控除額の残りをふるさと納税分の控除とすることができます。そのため、住宅ローン控除に影響を及ぼすことなく、両方の控除を受けられるのです。
基本的には、1年目に確定申告をしないと住宅ローン控除を利用できません。しかし、万が一確定申告を忘れてしまっても、5年以内に還付申告すれば住宅ローン控除を受けられます。そのため、初年度の確定申告が間に合わなかったとしても、そこまで心配する必要はありません。
ただし、以下2点に注意が必要です。
【初年度の確定申告に間に合わないときの注意点】
借入れをした年からの確定申告書類をすべて用意しなければいけないのは手間がかかりますし、書類を集めるのも大変です。そのため、初年度の確定申告をしっかりと済ませておくことが大切です。
また、所得税の控除は5年以内の申告で受けられますが、住民税の控除は納税通知書が発送される前に申告しなければなりません。注意しましょう。
今回は、住宅ローン控除の必要書類について解説してきました。
住宅ローン控除は、税金の減額といった恩恵を受けることができます。そのためにはさまざまな必要書類の準備が必要です。また、確定申告には毎年決められた期日があるので、その期間内に作業をおこなわなければいけません。滞りなく控除を受けるために、なるべく早くから準備する必要があるでしょう。
住宅ローン控除は、適用されれば最大400万円減税されるため、非常にお得です。この記事を参考にしながら、不備なく必要書類の準備を進めましょう。
関西学院大学法学部法律学科卒。
宅地建物取引士、管理業務主任者、2級FP技能士(AFP)、登録販売者など多岐にわたる資格を保有。 数々の保有資格を活かしながら、有限会社アローフィールド代表取締役社長として学習塾、不動産業務を行う。