【不動産登記とは?】申請手続きに必要な書類や費用、基礎知識を徹底解説

不動産登記は不動産という財産を守るうえで大変重要な手続きですが、日常的におこなうことではないため、あまりピンとこない方が多いでしょう。
当記事では、不動産登記の仕組みや必要性、そして登記にかかる費用などを詳しく解説していきます。不動産登記についての理解を深めたい方は、ぜひ参考にしてください。
不動産登記とは?
はじめに、不動産登記の内容や目的について解説していきます。不動産登記について詳しく知る前に「登記」の意味を知っておきましょう。
登記とは、権利関係を明らかにするために設けられている制度です。不動産登記以外にも商業登記・船舶登記・法人登記などの様々な登記があり、手続きをおこなうことで入手した物が誰のものなのかをはっきりさせます。
つまり、不動産登記の場合には、土地や建物などの不動産が誰の所有物なのかを明らかにさせるための手続きということです。
不動産登記をおこなうと、法務局が管理する帳簿に下記の情報が記録されます。
- どこにある土地・建物なのか
- 所有者の氏名
- 金融機関からいくらお金を借りているか(金融機関から借り入れがある場合)
上記の情報は登記した本人以外でも閲覧が可能で、登記内容が記載された登記簿謄本の発行もできます。
登記簿謄本(登記事項証明書)に記載されている内容
続いて、登記簿謄本(登記事項証明書)に記載されている内容について解説していきます。登記簿謄本には、大きく分けて下記の3つの内容が明記されています。
- 表題部
- 権利部(甲区)
- 権利部(乙区)
それぞれ詳しくみていきましょう。
表題部
表題部は、土地・家屋の物理的な状態について明記されている箇所です。明記される内容は、土地と建物の場合で異なります。
下記にそれぞれの明記されている内容をまとめたので、参考にしてください。
種類 | 明記されている内容 |
---|---|
土地 | 所在・地番・地目・地積など |
家屋 | 所在・家屋番号・構造・床面積など |
所在には、土地・建物がある場所について市町村まで記載されています。地番は土地ごとに付与された番号のことで、所在と地番を合わせたものが住所です。
地目では土地の種類や用途について記してあります。宅地や田んぼ、畑など何に使用している土地なのかを知ることができます。
地積や床面積は土地や建物の面積が記されている箇所です。その他登記された日付なども記載してあるので、しっかりと内容を確認しておきましょう。
権利部(甲区)
権利部(甲区)は、土地・家屋を所有している人の情報が知れる箇所です。
所有者の住所や氏名などが記されており、不動産を取得した原因や日付までもが記載されています。不動産を手に入れるまでの経緯についても詳しくわかるでしょう。
権利部(乙区)
権利部(乙区)では、所有権以外の権利について確認できます。具体的には抵当権・地役権・地上権などで、登録されている権利によっては不動産の用途が制限されてしまう可能性があるでしょう。
このため、不動産の購入前には権利部(乙区)をよく確認しておくことが大切です。
不動産登記が必要なシーン
では、不動産登記はどのようなシーンに必要なのでしょうか。一般的には不動産を取得する際に利用するイメージですが、実はそれだけではありません。
下記に不動産登記を利用するタイミングをまとめたので、ぜひ参考にしてください。
- 不動産を取得したとき
- 建物を取り壊したとき
- 不動産を相続したとき
- 住所や姓に変更があるとき
- 住宅ローンを完済したとき
それぞれ詳しくみていきましょう。
不動産を取得したとき
不動産登記は、不動産を取得したときに利用します。相続や購入などで取得した場合、「所有権の移転登記」をおこなう必要があるからです。
また、新築などのまだ登記されていない建物を購入したケースでは、「建物の表題登記」と「所有権の保存登記」が必要です。
建物を取り壊したとき
建物を取り壊した際にも不動産登記が必要です。その際には、「建物の滅失登記」をします。
また、建物の建て替えをする際にも一度登記をしなければいけません。
不動産を相続したとき
遺産相続などの理由で不動産を相続した場合にも「所有権の移転登記」をおこないます。
現在では、相続時に相続後移転登記をしないまま死亡してしまった際の登録料が免除される制度も作られました。
住所や姓に変更があるとき
登録名義人の住所や姓に変更があった場合には、その都度「住所・氏名の変更登記」が必要です。
姓が変わることはあまり頻繁ではありませんが、結婚などで苗字に変更があった際には変更登記をおこなってください
住宅ローンを完済したとき
最後に挙げられるのが、住宅ローンを完済したタイミングです。住宅ローンの返済中には、不動産登記に抵当権が金融機関にある旨が記載されています。
抵当権の記載は住宅ローンを完済しても自動的に消えるものではないので、ご自身で「抵当権の抹消登記」をおこないましょう。抵当権の抹消登記には、金融機関から発行される住宅ローンの完済を証明する書類が必要です。
不動産登記にかかる費用
不動産登記にかかる代表的な費用には、以下のようなものが挙げられます。
- 登録免許税
- 司法書士や土地家屋調査士への手数料・報酬
それぞれ詳しく確認していきましょう。
登録免許税
登録免許税は、登記を受けることに対して発生する税金です。課税される金額は登記の種類によって下記のように異なります。
登記の種類 | 登録免許税 |
---|---|
売買時の所有権移転登記(土地) | 評価額の1.5% |
売買時の所有権移転登記(建物) | 評価額の2%(一定の条件を満たす住宅用家屋の場合には0.3%の軽減税率が適用) |
相続時の所有権移転登記(土地・建物) | 評価額の0.4% |
贈与時の所有権移転登記(土地・建物) | 評価額の2% |
抵当権抹消登記 | 建物と土地それぞれ1つ当たり1,000円 |
司法書士や土地家屋調査士への手数料・報酬
不動産登記の手続きは、司法書士に依頼するのが一般的です。その際の報酬は、登記の内容や地域によって大きく異なります。
下記に、おおよその司法書士への報酬をまとめたのでぜひ参考にしてください。
登記内容 | 報酬の目安 |
---|---|
所有権移転登記(相続) | 6万~8万円程度 |
所有権移転登記(売買) | 4万5,000~6万5,000円程度 |
所有権保存登記 | 2万~3万円程度 |
抵当権抹消登記 | 1万5,000~万円程度 |
住所・氏名の変更登記 | 1万2,000円程度 |
この他にも、土地家屋調査士への報酬も必要になることがあります。土地家屋調査士には、不動産の調査・測量・法務局への申請などをおこなってもらえ、地目変更登記では約4万5,000円、表題部登記では約8万円が全国平均です。
不動産登記に必要な書類
続いて、不動産登記に必要な書類について解説していきます。不動産は長期間保有するケースが多いので、なかには必要書類を紛失してしまっているケースも多くあるでしょう。
その際には事前に各種書類を取り寄せる必要があるので、登記に必要な書類を確認しておいてください。
登記の種類に関わらず必要な書類
はじめに、どの登記をおこなう場合でも必要になる書類を確認していきます。下記にそれぞれの書類の取得方法もまとめたので、ぜひ参考にしてください。
書類 | 内容 | 取得方法 |
---|---|---|
司法書士への委任状 | 登記を司法書士に依頼する場合に必要な書類 | 司法書士 |
本人確認書類 | 免許証などの顔つきの証明書 | – |
印鑑証明書と実印 | 実印が本物であることを証明する書類 | 市役所もしくはコンビニ |
住民票の写し | 現住所や氏名が記載してある公的な書類 | 市役所もしくはコンビニ |
所有権移転登記に必要な書類
所有権移転登記をおこなう場合、売買で取得したか相続で譲り受けたかによって用意すべき書類が異なります。下記に売買と相続の場合の必要書類をそれぞれまとめたので、ぜひ参考にしてください。
パターン | 必要書類 |
---|---|
売買(売主) | 登記識別情報 印鑑証明書 固定資産評価証明書 委任状(司法書士に依頼する場合) |
売買(買主) | 身分証明書 印鑑証明書 |
相続 | 住民票 固定資産評価証明書もしくは課税証明書 被相続人の戸籍謄本 法定相続人の戸籍謄本 委任状(司法書士に依頼する場合) |
相続の場合には、状況に応じて遺言書や相続関係図の提出が求められるケースもあります。
表題登記に必要な書類
表題登記に必要な書類は、下記の通りです。
- 登記申請書
- 建物図面・各階平面図
- 所有権証明書(建築確認書のコピーと原本・施工業者の引き渡し証明書)
- 住民票
- 案内地図
- 委任状(司法書士に依頼する場合)
申請は近くの法務局でおこないましょう。
所有権保存登記に必要な書類
不動産において最初におこなわれる登記が、「所有権保存登記」です。権利部の登記が存在しない不動産を対象におこなわれる手続きなので、新築を建てた場合などに作成しましょう。
所有権保存登記の必要書類は、下記の通りです。
- 住民票
- 住宅用家屋証明書
- 登記申請書
- 委任状(司法書士に依頼する場合)
所有権保存登記をおこなわない場合、住宅ローンが組めない・建物の売却が難しくなるなどのデメリットが発生するので、必ずおこなっておきましょう。
抵当権設定登記に必要な書類
抵当権設定登記に必要な書類は、抵当権者とローン利用者でそれぞれ異なります。下記にそれぞれの必要書類をまとめたので、ぜひ参考にしてください。
対象者 | 必要書類 |
---|---|
抵当権者 | 登記原因証明情報 登記委任状 印鑑 本人確認書類 |
ローン利用者 | 権利証 印鑑証明書 実印 本人確認書類 |
本人確認書類は、原則として免許証などの顔つきの物を用意しましょう。
不動産登記に関するよくある質問
最後に、不動産登記に関するよくある質問をまとめました。
- 不動産登記は自分でできる?
- 不動産登記簿謄本の閲覧・取得方法は?
- 不動産登記に期限はある?
それぞれ詳しくみていきましょう。
不動産登記は自分でできる?
不動産登記は自分でおこなえます。自分で不動産登記をおこなえば司法書士に支払う報酬は不要なので、比較的安価に登記ができるでしょう。しかし、下記のような注意点を知っておく必要もあります。
【自分で不動産登記をおこなう際の注意点】
- 詐欺にあう可能性がある
- 金融機関の了承が必要
- 表題登記には専門的な知識が必要
自分で不動産登記をおこなう最大の注意点として挙げられるのが、詐欺のリスクです。不動産の取引では売主が本物であるか、取引は違法ではないかを見極める必要があります。
一般的には、不動産登記の際に司法書士がこれらの確認をおこないます。しかし、自分で不動産登記をおこなう場合には、自身の目で詐欺かどうかを見極める必要があるでしょう。
不動産の知識を有していないのであれば、リスク回避の意味もこめて司法書士に依頼した方が無難です。
不動産登記簿謄本の閲覧・取得方法は?
不動産登記簿謄本は一般にも公開されているので、手数料を支払えば誰でも閲覧・取得できます。下記に不動産登記簿謄本を閲覧・取得する方法をまとめたので、ぜひ参考にしてください。
- 法務局で交付してもらう
- 郵送で交付請求する
- オンラインで交付請求する
- オンラインで閲覧する
以前は、不動産を管轄している法務局まで行く必要がありましたが、現在では全国どこの法務局からも取得できるようになっています。近くの法務局から申請をおこないましょう。
不動産登記に期限はある?
不動産登記の登記申請には、原則として期限が存在しません。
しかし、登記をせずにそのままの状態にしておくと、思わぬトラブルや追加の手続きが必要になる可能性は否めません。面倒な事態に発展して後悔する前に、不動産登記は早めにおこなっておきましょう。
まとめ
当記事では、不動産登記の基礎知識や申請方法などを詳しく解説していきました。不動産登記は、土地や建物などの不動産の所有権をはっきりさせるために必要な手続きです。
土地や建物を相続する際はもちろん、不動産を購入する際にも重要な役割を果たす手続きです。ぜひ内容をしっかりと理解しておきましょう。