アパートを売却するには?売却手順や費用・税金のほか、売る際の注意点を解説

「アパート売却したいけれど、どのくらいの費用がかかるかわからない」「アパート売却するために準備する書類は?」。このように、アパートを売却したくてもわからないことが多く、なかなか思い切れないと悩んでいる方は少なくありません。
本記事では、アパート売却でかかる費用や税金のほか、何を準備すべきか、どのような手順でおこなうのかについて、詳しく紹介します。
さらに、アパート売却を成功させるためのコツや注意点についてもお伝えします。スムーズなアパート売却を進めていくためにも、ぜひ本記事を参考にしてください。
アパートを売却する前にやっておくべきこと
アパート売却の前に、まずは事前にやっておくべきことがあります。アパート売却はこうした事前準備を徹底することで、よりスムーズに進めていくことが可能です。アパートを売却する前に、必ずやっておくべき3つのポイントについて、ここでしっかりと把握しておきましょう。
ローン残高の確認
まず、必ず確認すべきは、ローン残高です。アパートを売却する際に、まだローンが残っていることは珍しくありません。ローンがあっても売却は可能ですが、アパートを売って得た利益からローン返済をする必要があります。
返済額よりも売却益のほうが大きければ問題はありませんが、もしも足りない場合は、自らが負担して返済しなければいけません。事前にローン残高を確認せず売却してしまった場合、予想以上に返済に充てなければならず、手元にまったく残らないどころかマイナスになってしまうこともあります。
現時点でローンは残っているのか、どのくらいの残債かをまずは明確にし、しっかりと把握しておくようにしてください。その後、売却した後の金銭的な計画をしっかりと立てるようにしましょう。
所有期間の確認
アパートをどのくらいの期間所有しているかにより税金の額が変わってくるため、必ず所有期間は確認しておくようにしてください。アパートを売却した際に利益が出ると、そこに譲渡所得税が課税されます。
この譲渡所得税は、アパートの所有期間が5年以下か5年超かによって、下記のように異なります。
5年以下:短期譲渡所得 |
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5年超:長期譲渡所得 |
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5年を超えるか超えないかで課税される税率は大きく変わるため、売却タイミングが適切かどうかの判断材料にもなります。5年をギリギリ超えないタイミングで売却してしまうと税金も高くなるため、事前に所有期間は正しく把握しておきましょう。
売却相場を調べる
アパート売却で必ずやっておくべきことは、売却相場の調査です。相場に大きな影響を与えるのは、立地、築年数の2つとされています。駅から近ければ評価は高く、逆に周辺に騒音問題などがあれば価値は下がります。
また、20年を超えてしまうと価値が下がり、買い手が見つかりにくいといった特徴があります。その理由は、築年数が原因で融資を受けることが難しくなるため、自分自身で現金を準備できる買い主に購入者が限られるからです。
アパートの周辺環境や駅からの距離、築年数が20年を超えているかどうかなどでアパートは評価されます。こうしたポイントをよく把握し、周辺の似た物件や取引された過去物件などを参考に、相場を調べておきましょう。
賃貸アパートの売却にかかる費用・税金
賃貸アパートの売却には、さまざまな費用や税金がかかります。売却は、単純にアパートを売るだけではありません。さまざまな手続きなどにより生じる費用、売却することで発生する税金など、支出として把握しておくべきものはいくつもあります。
ここからは、賃貸アパートの売却にかかる6つの費用・税金について詳しくお伝えします。それぞれの内容を深く理解しておきましょう。
印紙税
売買の契約書には、収入印紙を貼りつけなければいけません。収入印紙とは、手数料や租税など、さまざまな収納金徴収のための証票です。収入印紙の金額は契約金額により異なりますが、おおよそ2万円~6万円です。
収入印紙は、郵便局や法務局、お住まいの役所で入手することができます。また、コンビニエンスストアでも扱いはありますが、基本的に200円の収入印紙のみしか扱っていないケースが多いです。
もしも、収入印紙を貼り忘れてしまった場合、過怠税が課せられてしまい、当初払うべき金額の3倍の印紙税が必要となります。しかし、税務調査前に貼り忘れを自己申告すれば、過怠税は1.1倍と大きく軽減されるため、貼り忘れた場合は早めに申告するようにしてください。
抵当権抹消登記
住宅ローンの返済が滞ってしまった場合、不動産を差し押さえて競売にかけることが可能になる権利を「抵当権」といいます。この抵当権を抹消するために必要となる登記が、「抵当権抹消登記」です。抵当権抹消登記は、自分自身で申請しなければ、抹消されることはありません。
抵当権がついたままのアパートは売却できないため、早めに申請しておきましょう。抵当権抹消登記にかかる費用は、下記の通りです。
登録免許税 | 1筆につき1,000円 |
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登記情報代 |
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もしも法務局に行かずに申請するのであれば、郵送料、返信用郵券が必要です。また、司法書士に依頼しておこなう場合、さらに依頼料がかかるため、事前にチェックしておきましょう。
譲渡所得税
アパートを売却して利益が得られた場合、そこに課税されるのが譲渡所得税です。本記事でもお伝えしているように、アパートの所有期間によって税率が異なるのが大きな特徴といえます。譲渡所得税は、まず譲渡所得を計算して算出します。
譲渡所得は、売却金額から不動産を取得・譲渡した際にかかった費用や、売却時に利用可能な控除などを引いて算出します。計算式で見ると、下記の通りです。
(取得費+譲渡費用)-売却価格=譲渡所得
譲渡所得税は、5年以内の所有期間で39.63%、5年を超える所有期間で20.315%課税されます。
消費税
アパート売却には消費税が発生しますが、土地は課税対象にはなりません。消費税とは、消費するものに対してかかる税金です。土地は消費するものではないため消費税がかかりませんが、建物の場合、永久的に使用できるものではありません。そのため、消費税の対象となります。
アパートも建物に分類されるため、アパートを売却すれば建物部分に消費税が課税されます。しかし、必ずしも課税対象となるわけではありません。消費税は、事業として繰り返しおこなっている人や会社を対象に課税されるため、個人が1回限りでアパートの売却をした場合は、課税対象から除外されます。
アパート売却で課税対象となるケースは、前々年の課税売上高が、1,000万円を超えた場合などになります。課税対象となるかどうかわからない場合は、不動産会社などに相談し、詳しく話を聞いておくと安心です。
立ち退き料
売却を希望するアパートにまだ誰か入居者が残っている場合、立ち退き料を支払うことでスムーズに立ち退きの交渉を進めることが可能です。もしも、入居者数が多ければその分立ち退き料も必要となるため、事前にどのくらいかかるか計算しておきましょう。
一般的に、立ち退き料は家賃の半年分から10か月分、もしくは新しい家に入る際に必要となる初期費用分の額が相場とされています。複数人いればかなりの額となるので、前もって立ち退き料はしっかりと準備しておくようにしてください。
仲介手数料
アパート売却をする場合、不動産会社に仲介してもらうことが大半ですが、その際に発生するのが仲介手数料です。不動産会社により仲介手数料の料金は異なりますが、法律により上限が定められているため、下記表以上の金額を請求される心配はありません。
取引額が200万円以下 | 取引額5%以内 |
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取引額が200万円以上400万円以下 | 取引額4%以内 |
取引額が400万円以上 | 取引額3%以内 |
例えば、取引金額が100万円の場合、仲介手数料の上限は5万5,000円、400万円の取引であれば19万8,000円となります。先述したように、不動産会社によって仲介手数料は異なるため、見積もり依頼などでは必ず複数の不動産会社を比較しておきましょう。
アパートを売却するまでの流れ・手順
アパート売却の具体的な流れはどのようになるのか、ここで詳しくお伝えします。アパートを売却する場合、まずは必要な書類を準備し、不動産会社の査定を受けます。その後契約を結び売却となりますが、それぞれの詳しい内容についてよくわからないといった方は少なくありません。
ここで、アパート売却の書類準備から、売却・引き渡しまでの一連の流れについて、何をどのように進めていくのかしっかりと把握しておきましょう。
①必要書類の準備
まずは、アパート売却に必要な書類を準備します。書類が足りない場合、査定や契約が長引いてしまったり、もう一度書類を再提出しなければいけなかったりなどの手間がかかるため、入念にチェックし、不備がないようにしておきましょう。
身分証明書 | 運転免許証など本人確認できるもの |
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登記簿謄本(登記事項証明書) |
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固定資産税納税通知書 | 納税額を確認するために必要な書類 |
地積測量図 |
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境界確認書 |
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建築確認済証および検査済証・建築設計図書・工事記録書など | アパート建築後に建設会社より発行される書類 |
売買契約書・重要事項説明書 | 購入時に不動産会社から発行される書類 |
印鑑証明書・印鑑 | 共有名義のアパートを売却する場合、全員分が必要 |
また、アパートをリフォームしたことがあれば、リフォームに関する資料なども必要となります。さらに、販売時のパンフレットなども重要な情報となるため、あればこれらも準備しておきましょう。
②不動産会社に査定を依頼
不動産会社に査定を依頼します。このとき、事前に一括サイトなどを利用してある程度の売却目安を把握しておくようにしてください。
また、訪問査定を依頼する不動産会社は、アパート売却に強みを持っている業者を選ぶのがおすすめです。査定依頼は多すぎても少なすぎても適正価格がわからなくなってしまうため、なるべく3社ほどに絞って依頼するようにしてください。
③不動産会社と媒介契約
査定依頼し、金額に納得できる、不動産会社が信頼できると感じたら媒介契約を交わします。媒介契約は3つの種類があり、状況などに合わせてどの契約方法にするか選んでください。
一般媒介契約 |
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専任媒介契約 |
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専属専任媒介契約 |
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購入希望者がすでにいる場合、立地条件に優れたアパートであれば一般媒介契約がおすすめです。それ以外の場合は専任媒介契約を選びましょう。
④売却活動
不動産会社との契約が終わったら、売却するための活動がスタートします。基本的に売却するための活動は不動産会社が請け負ってくれるため、アパートの清掃、内見の立会などがメインです。
不動産会社の売却活動は、広告制作やWebへの掲載をすることでアパートを宣伝し、購入希望者を募ってくれます。内見希望の方が現れた場合、不動産会社から連絡が入るため、スケジュールを確認し、なるべく希望者の予定に合わせておこなうようにしましょう。
⑤引き渡し
価格の交渉などさまざまな話し合いがおこなわれ、買い手との折り合いがついたら、売買契約を締結します。売買契約書には、定められた引き渡し日が記載されています。その引き渡し日にアパートを引き渡して、一連の流れは完了です。
アパート売却を成功させるコツや注意点
アパート売却を成功させるためには、うまく進めていくためのコツや気をつけるべき注意点を把握しておく必要があります。ここで、5つの大切なポイントについてそれぞれの内容を詳しくお伝えしますので、アパート売却の参考にしてください。
複数の不動産会社に査定を依頼する
アパート売却する際の査定は、複数の不動産会社に依頼するようにしてください。アパートに限らず、不動産を売却する際には、必ず査定をしてから売却となります。不動産会社には査定の基本となるマニュアルがあり、そこまで大きな差額が出ることはあまりありません。
しかし、なかには立地や周辺環境などによって基本査定額に上乗せされるケースもあります。どのくらいの査定額を出してくれるか、また、査定金額の根拠について明確に説明してくれるかどうかも大切な判断材料になります。
まずは、一括査定のサイトを利用し、そこからいくつかの不動産会社に絞って査定依頼をすると、スムーズに進めることが可能ですので、ぜひ試してみてください。
長期譲渡所得を活用
本記事でもお伝えしているように、アパートは所有期間によって譲渡所得税が異なります。5年を超える所有期間となれば税率が低くなるため、売却タイミングをよく見極めておきましょう。
長期譲渡所得が適用されるのは、売却年の1月1日時点で5年を超えている不動産です。2016年6月購入のアパートを2021年10月に売却しても、カレンダー上は5年以上の所有となりますが、長期譲渡所得は売却する年の1月1日時点で判断されるため5年未満とみなされてしまいます。
そのため、2016年6月購入のアパートの場合、2022年1月1日以降でなければ、5年以上の長期譲渡所得にはならないため注意が必要です。
囲い込みに注意
不動産会社が、物件の買い手と売り手を自社内で見つけ、成約となるのが囲い込みです。通常、不動産会社はネット上のデータベースに物件情報を登録し、共有する義務があります。しかし、登録をしない、登録後すぐに削除するなどほかの業者にアパートを売却しないようにする不動産会社もいます。
また、もしも売却アパートに対する問い合わせがあったとしても、「今もう申し込みが完了してしまった」「すでに売却された」などとうそを言うケースも少なくありません。
その結果、売却までに時間がかかってしまい、値下げを余儀なくされることもあります。どちらにせよ、囲い込みされて損をするのは売主のみです。不動産会社がレインズに登録すると登録証明書が発行されるため、事前に確認しておきましょう。
空き部屋の多い物件は売れにくい
アパートの空き部屋が多い場合、稼働が悪く利益率が低いとみなされてしまいます。そのため、好条件での売却をするためには、稼働率が高いタイミングを見計らいましょう。多少の空きがあっても、稼働率が高ければ問題ありません。
入居者が多ければ稼働率が良く、物件にニーズがあると判断されます。現状の入居者が多ければ、大きな問題なくスムーズな売却が可能となります。
売却後は確定申告が必要
アパートを売却したら、必ず確定申告をしてください。もしも確定申告を忘れてしまった場合、納めるべき税金が未納となってしまうためペナルティが生じてしまいます。無申告による追加課税が発生した場合、本来納めるべき税額の最大20%ほどになります。
一方、故意に確定申告せずに利益を隠そうとすると、重加算税として約40%のペナルティが課せられます。
アパート売却で利益が出なかった場合も、その他の所得から控除できる特例を利用することで減税が可能となるため、必ず確定申告をしましょう。
まとめ
本記事でお伝えしたポイントは、下記の通りです。
- 売却前にローン残高や売却相場、所有期間を確認
- アパート売却に必要な費用・税金がある
- 売却するためには事前に書類を準備しておく
アパート売却を検討する方は、ぜひ本記事でお伝えした内容を参考に、徹底した準備を怠らないようにしましょう。入念な準備をしなければ、アパート売却をうまく進めることが難しくなります。
本記事でお伝えした内容を参考に、ぜひアパート売却を成功させるためのポイントをしっかりとおさえておきましょう。