不動産売却でかかる税金をシミュレーション|特例など税金を抑える内容について解説!

不動産売却でかかる税金をシミュレーション|特例など税金を抑える内容について解説!

不動産を売却すると、税金がかかります。

高額な取引になる不動産売買ではかかる税金も高額になりかねないので、事前にどれくらい税金がかかるか把握したうえで売却計画を立てることが重要です。ただし、税金は特例を利用することで節税できるケースもあります。

この記事では、不動産売却でかかる税金のシミュレーションや内容・活用できる特例について解説していきます。

不動産売却でかかる税金をシミュレーション

まずは、どれくらいの税金がかかるのか、具体例でシミュレーションしてみましょう。なお、ここでは税金の中でも最も大きな割合を占める「譲渡所得時税」について、減価償却費や特例は考慮せずにシミュレーションしていきます。譲渡所得税と他の税金については、後ほど詳しく解説するので参考にしてください。

【譲渡所得税の計算方法】
課税対象譲渡所得額=売却益-(取得費+譲渡費用)-特別控除
譲渡所得税=課税対象譲渡所得額×税率

<ケース1>

  • 売却額:3,500万円
  • 所有期間:6年
  • 購入価格:2,500万円
  • 購入にかかった費用:100万円
  • 売却にかかった費用:150万円

譲渡所得=3,500万円-(2,500万円+100万円+150万円)=750万円

譲渡所得税=750万円×20.315%=152万3,625円

このケースでは、約152万円の譲渡所得税が発生します。

次は、所有期間が短い不動産の売却をみていきましょう。条件は次の通りです。

<ケース2>

  • 売却額:4,000万円
  • 所有期間:3年
  • 購入価格:3,000万円
  • 購入にかかった費用:150万円
  • 売却にかかった費用:200万円

譲渡所得=4,000万円-(3,000万円+150万円+200万円)=650万円

譲渡所得税=650万円×39.63%=257万5,950円

ケース1よりも譲渡所得額は低いですが、こちらのケースでは約257万円とケース1以上の税金が発生しています。

相続した家を売却する、長年住んでいる家を売却するというケースでは、購入額や購入にかかった費用が不明という場合も珍しくありません。最後に、こうしたケースでシミュレーションしてみましょう。

<ケース3>

  • 売却額:1,500万円
  • 所有期間:30年
  • 購入価格:不明
  • 購入にかかった費用:不明
  • 売却にかかった費用:50万円

概算取得費=1,500万円×5%=75万円

譲渡所得=1,500万円-(75万円+50万円)=1,375万円

譲渡所得税=1,375万円×20.315%=279万3,313円

このケースでは、約280万円の譲渡所得税がかかります。

譲渡所得税は、所有期間や購入費が証明できるかなどによって大きく異なってくるのがわかります。また、売却時には他にも税金が発生するのでどのような税金がかかるのかを把握しておくことが大切です。

不動産売却でかかる税金

不動産売却でかかる税金には、主に次の4つがあります。

【不動産売却でかかる税金】

  • 譲渡所得税
  • 印紙税
  • 登録免許税
  • 消費税

それぞれ詳しくみていきましょう。

譲渡所得税

譲渡所得税とは、不動産売却の利益に対してかかる税金です。売却の利益は譲渡所得に区分され、所得税・復興特別所得税・住民税の対象となります。その譲渡所得にかかる所得税・住民税を合わせて譲渡所得税と呼びます。

譲渡所得税は、次の2つのステップで計算します。

  • 課税対象譲渡所得額=売却益-(取得費+譲渡費用)-特別控除
  • 譲渡所得税=課税対象譲渡所得額×税率

まず、売却の利益にあたる「譲渡所得」を計算します。譲渡所得は、売却額から取得にかかった費用である「取得費」と売却にかかった「譲渡費用」を差し引くことで求められます。

所得費には、購入代金だけでなく不動産会社の仲介手数料や印紙税などが含まれます。しかし、相続した不動産など取得費が分からないケースや領収書など証明するものがないケースは珍しくありません。そのような場合には、「概算取得費」として売却額×5%を取得費に計上することになります。

概算取得費で計上すると、利益から差し引ける額が小さくなりかかる税金も大きくなってしまうので、領収書や売買契約書などはしっかりと保管しておくようにしましょう。

また、建物は経年劣化で資産価値が落ちるものであるため、取得費からは建物の減価償却費を差し引く必要がある点にも注意が必要です。

取得費=(建物の購入価格-建物の減価償却費)+土地の購入価格+諸費用

一方、譲渡費用とは売却にかかった仲介手数料や印紙税・解体費用などが含まれます。こちらも領収書など金額を証明する書類が必要なので、大切に保管しておくようにしましょう。

譲渡所得が計算できれば、税率をかけることで譲渡所得税を算出できます。譲渡所得税の税率は、不動産の所有期間に応じて異なり次の通りです。

所有期間 所得税・復興特別所得税 住民税 合計税率
短期譲渡所得 5年以下 30.63% 9% 39.63%
長期譲渡所得 5年超 15.315% 5% 20.315%

所有期間5年を境に、長期と短期に分かれます。短期に該当すると約40%もの高い税率になってしまうので売却する際には所有期間も意識することが大切です。ただし、所有期間は、売却した年の1月1日を基準に計算する点には注意しましょう。

譲渡所得税は、売却した年の翌年に確定申告して納税します。確定申告時期は、例年2月16日から3月15日です。確定申告や譲渡所得税の計算に不安がある人は、税理士や自治体の無料相談などを活用するとよいでしょう。なお、譲渡所得の計算で譲渡所得が発生しない(もしくは赤字)の場合は、税金がかからないので確定申告も不要です。

印紙税

印紙税は、課税対象の文章を作成した際にかかる税金です。不動産の売却では、売買契約書が印紙税の対象となります。

印紙税は、作成した書面に収入印紙を貼付・消印して納税します。納税額は、書類にかかれている金額(売却代金)によって異なり、一般的な不動産取引の価格帯での税額は次の通りです。

記載金額 税額
1,000万円超5,000万円以下 10,000円
5,000万円超1億円以下 30,000円
1億円超5億円以下 60,000円

印紙が必要な書類に、印紙がない・消印忘れといった場合、本来の印紙税の3倍の額を過怠税として納めることになるので注意しましょう。

登録免許税

登録免許税とは、登記を作成・変更する際にかかる税金です。登記とは、状況や権利関係を公的に示すもので、不動産だけでなく会社などで登記があります。不動産の場合も、新築や売却などした際には、登記の作成・変更が必要です。登記の手続きは、不動産を管轄する法務局で行うことになり、そのための手数料として登録免許税がかかります。

不動産登記には、次のような種類があります。

  • 所有権保存登記:新築した不動産を新しく登記する
  • 所有権移転登記:売却や相続などで所有権が移る際にする登記
  • 抵当権設定登記:不動産に抵当権を設定する登記
  • 抵当権抹消登記:抵当権を抹消するための登記

不動産売却で必要な登記は、抵当権抹消登記です。住宅ローンを組んで不動産を購入した場合、不動産に抵当権が設定されます。抵当権が設定されたままでは売却できないため、住宅ローンを完済し、抵当権を抹消する必要があるのです。

抵当権抹消登記にかかる費用は、「不動産個数×1,000円」です。一般的には、土地と建物をセットで抹消登記するため2,000円かかります。なお、売却後には所有権を買い手に移す所有権移転登記も必要ですが、基本的に所有権移転登記は買主が手続きし、税金を負担します。

登記手続きは自分でもできますが、書類の準備や手続きに手間がかかるため、司法書士に依頼するのが一般的です。司法書士に依頼する場合は、司法書士費用も発生します。依頼する司法書士や内容によって異なりますが、1〜3万円ほどが目安となるでしょう。

消費税

消費税とは、物やサービスなどの取引にかかる税金です。不動産を売却すると消費税がかかるのではと不安に思う方もいるでしょう。しかし、事業者ではない個人がマイホームを売却する場合、売却額に対して消費税はかかりません。ただし、投資用物件などマイホーム以外の物件を売却すると建物に対しては消費税がかかるので注意しましょう。

売却自体には消費税はかかりませんが、次のような費用には消費税がかかります。

  • 不動産会社への仲介手数料
  • 司法書士費用

不動産売却時に使える特例

売却益に課税される譲渡所得税は、100万円を超えることも珍しくない税金です。しかし、譲渡所得税はさまざまな特例が用意されており、特例を活用することで節税できます。ここでは、不動産売却時に使える主な特例として次の3つを解説します。

【不動産売却時に使える特例】

  • 3,000万円の特別控除の特例
  • 軽減税率の特例
  • 被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除制度の特例

3,000万円の特別控除の特例

3,000万円特別控除とは、マイホームの売却時に譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例です。

例えば、譲渡所得が4,000万円であれば、3,000万円を差し引いた1,000万円が課税対象となります。譲渡所得が3,000万円以下であれば、この特例を適用することで税金が発生しなくなるため、大きな節税が見込めるでしょう。

この特例を適用するには、次のような要件を満たす必要があります。

  • 自分が住んでいる家・敷地の売却である
  • 以前に住んでいた場合は住まなくなった日から3年を経過する日の12月31日までの売却である
  • 売った年とその前年・前々年にこの特例や他の特例を適用していない
  • 売主と買主か夫婦や親子といった特別な関係でない

また、次のようなケースは適用外となります。

  • 特例目的の入居
  • 仮住まいなど一時的な使用での入居
  • 娯楽や保養のための家屋

参照:国税庁|No.3302 マイホームを売ったときの特例

軽減税率の特例

軽減税率の特例とは、「10年超所有軽減税率特例」のことです。この特例では、所有期間が10年を超えるマイホームを売却した場合、譲渡所得税の税率を次のように軽減できます。

譲渡所得額 所得税・復興特別所得税 住民税 合計税率
6,000万円以下の部分 10.21% 4% 14.21%
6,000万円超の部分 15.315% 5% 20.315%

譲渡所得6,000万円以下の部分は、税率が14.21%に軽減されます。

この特例を適用するには、次のような要件を満たす必要があります。

  • 自分が住んでいる家・敷地の売却である
  • 売った年の1月1日時点で家屋・敷地の所有期間が10年を超えている
  • 以前に住んでいた場合は住まなくなった日から3年を経過する日の12月31日までの売却である
  • 売った年とその前年・前々年にこの特例や他の特例を適用していない
  • 売主と買主か夫婦や親子といった特別な関係でない

所有期間は、売った年の1月1日時点が基準となり、建物・敷地両方が10年を超えている必要がある点に注意しましょう。

10年超所有期間軽減税率の特例は、3,000万円特別控除との併用が可能です。併用することでより節税が期待できるので、要件をチェックするようにしましょう。

参照:国税庁|No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例

被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除制度の特例

実家を相続したけど、住まないなどの理由で相続した家の売却を検討している人もいるでしょう。相続した空き家を売却する場合、この特例を利用することで譲渡所得から最大3,000万円を控除できます。

この特例を適用するには、次のような要件を満たす必要があります。

  • 相続で取得した家であること
  • 相続開始直前において被相続人の居住用の家であること
  • 昭和56年5月31日以前に建築されている
  • 相続開始直前で被相続人以外に居住者がいないこと
  • 相続開始から譲渡までの期間居住用に使用されていない
  • 売却代金が1億円以下
  • 売主と買主か夫婦や親子といった特別な関係でない

また、この特例を適用するには更地にして売却するか、耐震改修工事をしてから売却する必要があります。適用条件が厳しく適用できるケースが限られている点には注意しましょう。

参照:国税庁|No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例

不動産売却でかかる税金を少しでも抑えるポイント

不動産売却の利益を手元に多く残すため、かかる税金は少しでも抑えたいものです。ここでは、税金を抑えるポイントとして次の2つを解説します。

【不動産売却でかかる税金を少しでも抑えるポイント】

  • 所有期間や居住年数をチェック
  • 購入額のわかる書類を用意しておく

所有期間や居住年数をチェック

譲渡所得税は、所有期間5年を境に税率が大きく異なります。特例によっても条件に所有期間や居住年数が含められているものも多いので、所有期間は正確に把握しておくようにしましょう。

また、所有期間だけでなく算出基準にも注意が必要です。例えば、譲渡所得税の所有期間は、売却した年の1月1日が基準です。仮に、2015年6月1日に購入し、2020年6月2日売却した場合を見てみましょう。

実際の所有期間は5年を超えていますが2020年1月1日では5年超えていないため短期譲渡所得になってしまうのです。所有期間は税額にも大きく関わってくるので、所有期間や適用条件を把握したうえで売却時期も検討するようにしましょう。

購入額の分かる書類を用意しておく

譲渡所得を計算する際、購入にかかった費用がわからなければ、概算取得費で計上することになります。概算取得費は、基本的に、正しく購入費を計上するよりも低くなります。例えば、次のケースを見てみましょう。

  • 売却額:3,000万円
  • 物件の購入価格:2,000万円
  • 購入の諸費用:150万円
  • 譲渡費用:200万円

なお、ここでは減価償却費・特例は考慮せずに計算します。物件の購入額や諸費用を証明できる場合、譲渡所得は次の通りです。

譲渡所得=3,000万円-(2,000万円+150万円+200万円)=650万円

しかし、物件の購入額や諸費用を証明できない場合は、次のようになります。

概算取得費=3,000万円×5%=150万円

譲渡所得=3,000万円-(150万円+200万円)=2,650万円

650万円と2,650万円では、かかる税額も大きく変わってきます。税額を抑えるためには、経費計上をしっかりする必要があるため、購入額のわかる書類はきちんと保管しておくようにしましょう。

まとめ

不動産売却にかかる税金の種類やシミュレーション・節税方法について解説しました。売却では「譲渡所得税」「印紙税」「登録免許税」「消費税」の税金がかかります。特に譲渡所得税は税額も大きくなるので、特例を活用するなど、本記事で紹介した方法で節税を検討するとよいでしょう。

また、不動産売却では税金以外にも費用がかかります。手元に少しでも多くお金を残すには高値で売却する必要があり、そのためには信頼できる不動産会社を選ぶことが大切です。

不動産売却の基礎知識や不動産会社の選び方に関して詳しくは、こちらの記事をご覧ください。

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