抵当権とは?根抵当権や担保権との違いを分かりやすく解説
抵当権(ていとうけん)とは、金融機関が債務者の土地や建物を担保に貸付を行い、返済できない場合にその不動産を売却して債権を回収できる権利のことです。
抵当権を設定することにより、お金を貸す側は、ローンの返済が滞った・できなくなった際、抵当権が設定された不動産を売却して返済に充てる権利を得られます。
(参照:g-gov 法令検索:民法 第三百六十七条及び第三百六十八条 第十章抵当権)
この記事では、抵当権の基本的な仕組みから、登記の手続きや費用、根抵当権・担保権との違いまで、初心者でもわかりやすいように解説します。
抵当権とは
抵当権は、債務者の返済が滞る、もしくは困難に陥ったときに、担保とした不動産を売却することで債権者が優先的に弁済を受けられる権利です。抵当権の登記を行うことで第三者に「自分が優先的に弁済を受ける権利がある」と主張することができます。
たとえば、住宅ローンを組むとき、債権者である金融機関は債務者の不動産に抵当権を設定し、融資を行います。
- 金融機関が住宅ローンなどで融資するときに設定される
- 債務者が返済不能になると、債権者が不動産を差し押さえて売却できる
- 登記簿に登記することで効力が発生する
次章では、この抵当権の仕組みを「わかりやすく」説明します。
抵当権の仕組み
抵当権は、土地や建物といった不動産に設定されます。設定するのは「お金を貸す人(債権者)」であり、設定される側の「借りる人(債務者)」は抵当権設定者と呼ばれます。
- 抵当権は不動産に設定するのが原則
- 債権者(主に銀行)が設定する
- 返済不能となった場合、債権者は裁判所を通じて該当する不動産の競売・差し押さえが可能になる
債務者がローンを滞納すると抵当権が実行されます。債権者は裁判所を通じてその不動産を差し押さえ、競売にかけます。 この一連の手続きを「抵当権の行使」と呼び、最終的にその売却代金から債権者は債権を回収することができます。
【監修者コメント】
住宅ローンの滞納が始まってから、実際に抵当権が実行され、不動産が競売にかけられるまでには、一般的に8ヶ月~1年程度かかります。
- 滞納開始(1~3ヶ月): 金融機関からの督促
- 期限の利益喪失の予告(3~6ヶ月): 「催告書」の送付
- 期限の利益喪失と代位弁済(6~7ヶ月): 保証会社による一括返済と債権の移動
- 競売開始決定(8~9ヶ月): 裁判所からの「競売開始決定通知」の送付と不動産の差押え
- 現況調査: 裁判所の執行官らによる不動産の現地調査
- 期間入札の通知と入札開始: 競売物件として情報が公開され、入札が始まる
- 開札・売却・立ち退き: 落札者が決定し、代金納付後に所有権が移転。元の所有者は立ち退く。
抵当権が設定されるタイミング
抵当権が法的に設定されるのは、住宅ローンの融資が実行され、あなたが物件の代金を支払う「決済日」の当日です。この日は不動産取引において最も重要な一日と言えます。
あなた、売主、不動産会社の担当者、そして司法書士が金融機関に集まり、お金の流れと権利の移転を同日中にすべて完了させます。なぜなら、所有権があなたに移った瞬間に、間髪入れず抵当権を設定しなければ、金融機関は無担保でお金を貸した状態になってしまうからです。
イメージがつきづらいと思うので、抵当権が設定される流れを、時系列で見てみましょう。
-
関係者集合・本人確認
決済日の朝、金融機関に全員が集まり、司法書士が売主と買主の本人確認と意思確認を厳密に行います。 -
融資実行と代金支払い
確認後、あなたの口座に住宅ローンが振り込まれ、その資金で売主に物件の残代金を送金します。 -
登記申請へ【最重要】
着金が確認できた瞬間、司法書士は登記に必要な書類一式を預かり、その足で法務局へ向かいます。そして「(売主からあなたへの)所有権移転登記」と「(あなたの不動産への)抵当権設定登記」を連件で申請します。この申請が受理された時点で、抵当権は法的に有効となります。
抵当権と根抵当権の違いは?
抵当権と根抵当権は、いずれも不動産に設定する担保の権利ですが、仕組みに大きな違いがあります。
抵当権は1回限りの借入に対応するのに対し、根抵当権は一定の上限まで何度でも借入ができる柔軟な形式です。
| 項目 | 抵当権 | 根抵当権 |
|---|---|---|
| 概要 | 特定のローンを担保するために設定 | 継続的な取引を担保するために設定 |
| 借入額 | 最初から金額が確定している | 極度額(根抵当権で保証される借入の最大額)の範囲内で自由に借入・返済が可能 |
| 利用ケース | 住宅ローンなどの単発借入 | 企業融資や運転資金の信用供与など |
| 追加借入 | 不可(別途設定が必要) | 可能(極度額内であれば自由) |
| 消滅条件 | 借金を完済したときに消滅 | 継続的な取引が終了し、清算後に消滅 |
また、抵当権と他の担保制度との違いも整理しておきましょう。
| 種類 | 意味 |
|---|---|
| 担保権 | 借金が返せないときに、財産を処分して回収する権利の総称 |
| 質権 | 不動産以外のモノ(動産や権利)を預けて借金の担保にする制度 |
抵当権は担保権の一種であり、動産ではなく不動産に対して設定する点が特徴です。これにより、不動産購入に必要な多額の資金を低金利で借りられます。
抵当権を設定するメリット
抵当権を設定する最大のメリットは、低金利で高額な資金を借りられることです。金融機関は担保が取れれば債権回収不能となるリスクが低いので、債務者にとって有利な条件で融資を受けることができます。
| 項目 | 抵当権設定(有担保ローン) | 無担保ローン(抵当権なし) |
|---|---|---|
| 担保 | 不動産あり | なし |
| 金利 | 低め | 高め |
| 借入限度額 | 高額まで可能 | 比較的少額 |
| 審査 | 通りやすい傾向 | 厳しくなる傾向 |
特に住宅ローンでは、抵当権の設定が前提となるため、選択肢の幅が広がります。無担保で同等の金額を借りようとすると、返済条件が厳しいケースが多いでしょう。
参考:抵当権を設定した場合の借入可能額と年収の目安
| 年収 | 借入可能額の目安 (年収倍率 5~7倍) |
借入可能額の目安 (返済負担率 25%) |
毎月の返済額の目安 (返済負担率 25%) |
|---|---|---|---|
| 300万円 | 1,500万円 ~ 2,100万円 | 約2,120万円 | 約6.3万円 |
| 400万円 | 2,000万円 ~ 2,800万円 | 約2,820万円 | 約8.3万円 |
| 500万円 | 2,500万円 ~ 3,500万円 | 約3,530万円 | 約10.4万円 |
| 600万円 | 3,000万円 ~ 4,200万円 | 約4,240万円 | 約12.5万円 |
| 700万円 | 3,500万円 ~ 4,900万円 | 約4,940万円 | 約14.6万円 |
| 800万円 | 4,000万円 ~ 5,600万円 | 約5,650万円 | 約16.7万円 |
| 1,000万円 | 5,000万円 ~ 7,000万円 | 約7,060万円 | 約20.8万円 |
抵当権を設定するデメリット
抵当権を設定しても、きちんと返済していれば問題ありません。 一方で、返済が滞った場合には大切な不動産を失う可能性があります。本章では、抵当権設定で生じる債務者側のリスクについて紹介します。
- 登記や手続きに費用がかかる
- 支払いができなくなると差し押さえの対象になる
- 売却や転居の際に制限がかかることがある
- 競売にかけられると安値で処分される恐れがある
住宅ローンの融資を受けるうえで必要不可欠な抵当権について、しっかりと理解しておきましょう。
抵当権設定には費用が発生する
抵当権の設定には、登記費用や司法書士への報酬などの初期コストがかかります。
特に住宅ローンでは銀行指定の司法書士に依頼することが多く、自分で行うことは現実的には難しいのが実情です。
- 登録免許税や登記手数料が必要
- 司法書士への報酬が別途かかる
- 自力での登記も可能だが、金融機関の了承が必要
実務上は、ほぼすべてのケースで司法書士に依頼して行います。自分でやってはいけないという法律はありませんが、専門知識がないとミスをするリスクが高く融資実行に影響するため、金融機関に断られることがほとんどです。
| 費用項目 | 費用目安 |
|---|---|
| 登録免許税 (国に納める税金) |
債権額(借入額)× 0.4% ※ただし、一定の要件を満たすマイホームの場合は、軽減措置により税率が0.1%に軽減されます。 |
| 司法書士報酬 (司法書士への手数料) |
3万円 ~ 10万円程度 ※報酬は司法書士事務所や地域、手続きの複雑さによって変動します。住宅ローンの場合は、所有権移転登記など他の手続きとセットで依頼することがほとんどです。 |
| その他実費 | 数千円 ~ 1万円程度 登記情報の事前調査に必要な「登記事項証明書」の取得費用(1通600円程度)、登記完了後の謄本取得費用、郵送費、交通費などが含まれます。 |
差し押さえのリスクがある
返済が滞ると設定された抵当権が行使され、裁判所が物件を差し押さえて競売にかけられる可能性があります。
つまり、所有権を失ってしまうリスクが現実化するのです。
- 支払い不能になると抵当権が行使される
- 不動産は強制的に売却される
- 債務者には競売による明け渡し義務が生じる
ローンを組むということはこのようなリスクを背負うことでもあるため、無理のない返済計画を立てることが重要です。
【監修者コメント】
マイホームは多くの人の夢であり、家族の憩いの場となります。でも、その後の生活が苦しくなっては本末転倒です。差し押さえという最悪の事態を避けるため、ローンを組む前に知っておきたい計画のコツをお伝えします。
まずはこれを守ろう!安心な計画の立て方
- 返済額の目安は「手取り月収の25%以内」が鉄則です。これなら、急な出費や将来のための貯金も考えられます。
- お子さんの教育費や車の買い替えなど、将来の大きな出費も計画に入れておきましょう。
- 少しでも頭金を用意すると、月々の返済がぐっと楽になりますよ。
これは危険!避けるべきNGケース
- 「今の家賃と同じくらいだから大丈夫」という考え。固定資産税や修繕費など、持ち家ならではの出費を忘れずに。
- ボーナス払いに頼りすぎる計画はちょっと危険。業績によっては減る可能性も考えておきましょう。
一番やってはいけないのが、銀行に言われた「借入上限額」でローンを組むこと。自分たちの家計に合った額で計画することが何より大切です。
住宅を売却しにくくなる
抵当権がついたままの物件は、売却が難しくなることがあります。なぜなら、買主が抵当権が付いたままの物件の引き渡しを受けた場合、前所有者のローン滞納などで抵当権が実行され、不動産からの立ち退きを求められる可能性があるからです。
そのため、買主の購入判断に大きく影響します。
- 抵当権の登記が残っていると、買主に敬遠される
- 引き渡し前に抵当権抹消登記が必要となる
- 購入価格も下がりやすくなる
住宅ローンが残ったまま抵当権が付いた状態で物件が売り出されることは実際によくあります。居住中で売りに出されるケースが多く、このような場合には売却資金などで住宅ローンを完済し、抵当権を抹消して物件の引き渡しをする資金計画が組まれています。
「抵当権が残っている」というだけで売却を妨げるケースは少なく、多くの場合は立地や築年数、周辺環境や建物の状態などの要素が購入価格に影響を与えます。
競売だと相場より安く売却される
競売では市場価格より2〜3割安く売却されるのが一般的です。通常の取引と比べて事前に得られる情報が少ないことで、買主のリスクが高いことが主な要因となります。
- 内覧ができない
- 検討期間が短い
- 隠れた欠陥に買主が対応する必要がある
- 情報が少なく比較検討が難しい
- 引渡義務がない(売主が不在)
これらの要因から、競売物件はどうしても買い手側のリスクが大きくなり、それに見合った安値でしか売れなくなります。
その結果、本来の価値に比べて大きく損をする恐れがあるのです。
完済後に抵当権の抹消登記をする必要が生じる
住宅ローンを完済しても、自動的に抵当権が消えるわけではなく、抵当権抹消登記が必要です。不要な権利は早めになくし、売却や相続時のトラブルを防ぎましょう。
- 完済後も登記簿には抵当権が残る
- 売却時に金融機関の協力が必要になる
- 抹消登記には費用と手間がかかる
完済証明書を受け取ったら、すみやかに抹消登記を行うことが望ましいです。放置すると数年後に思わぬ不利益を被る場合があります。
抵当権の登記で必要な手続き
抵当権の登記手続きは、住宅ローンの融資が実行される「決済日」に、ミスなく完了させることが絶対条件です。そのため、金融機関が指定する司法書士に依頼するのが一般的であり、あなたが直接法務局へ行くことはほとんどありません。
「なんだか難しそう…」と感じるかもしれませんが、あなたがやるべきことは意外とシンプルです。全体の流れと、それぞれのタイミングで誰が何をするのかを見ていきましょう。
手続きの役割分担
登記手続きは、主に以下の3者で連携して進められます。
- あなた(買主):司法書士の案内に従い、必要書類を準備して渡すのがメインの役割です。
- 司法書士:手続きの司令塔。書類作成から法務局への申請まで、すべてを代行します。
- 金融機関:司法書士を指定し、登記に必要な情報や書類を提供します。
【タイミング別】具体的な手続きの流れ
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【タイミング:住宅ローン契約後】司法書士から連絡が来る
住宅ローンの契約が終わると、金融機関から指定された司法書士の連絡先を教えられます。その後、司法書士から電話やメールで連絡があり、決済日に向けた手続きの案内と、あなたに用意してもらう書類の説明があります。 -
【タイミング:決済日の1〜2週間前】あなたが書類を準備する
司法書士の案内に従って、以下の書類を準備します。有効期限(通常3ヶ月以内)があるため、早すぎず、遅すぎずのタイミングで取得するのがポイントです。- 印鑑証明書
- 住民票
- 実印
- 本人確認書類(運転免許証など)
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【タイミング:決済日当日】書類に署名・捺印する
決済の場で、司法書士が用意した「登記委任状」などの書類の内容を確認し、署名・捺印します。これが「登記手続きを司法書士に正式にお願いします」という意思表示になります。書類の準備さえできていれば、当日は10分程度の作業です。 -
【タイミング:決済日当日・融資実行後】司法書士が法務局へ申請
融資が実行され、あなたが売主に代金を支払ったことを確認すると、司法書士がその足で法務局へ向かい、登記を申請します。これで、あなたの役割はすべて完了です。
【監修者コメント】
「自分で登記すれば費用を節約できるのでは?」と考える方もいらっしゃいます。しかし、金融機関は「融資と同時に100%確実に抵当権を設定すること」を融資の絶対条件としています。万が一の書類不備も許されないため、実務上は専門家である司法書士への依頼が必須となっているのです。あなたは安心して司法書士に任せ、指示された書類を準備することに集中してください。
抵当権の登記費用はいくらかかる?
抵当権の登記費用は、司法書士への依頼費用を含めて10万円前後が目安となりますが、物件価格や借入額によって変動します。
| 項目 | 費用目安 |
|---|---|
| 登録免許税 | 借入額の0.4% |
| 司法書士報酬 | 約5万円〜6万円 |
| 登記事項証明書などの実費 | 数千円程度 |
抵当権の登記費用は8〜12万円程度を準備しておきましょう。司法書士事務所により登記費用は異なるので、事前に見積もりを取ると安心です。
抵当権に関するよくある質問(FAQ)
最後に、抵当権についてお客様からよくいただく質問にお答えします。
Q1. 抵当権が設定された家に住み続けることはできますか?
A1. はい、全く問題ありません。
抵当権の大きな特徴は、所有者が占有(住み続けること)を続けながら担保にできる点です。住宅ローンをきちんと返済している限り、あなたの居住権が脅かされることは一切ありません。
Q2. 抵当権が設定された不動産を売却することはできますか?
A2. はい、可能です。ただし、条件があります。
売却は可能ですが、買主に所有権を引き渡すタイミングで、売却代金を使って住宅ローンを全額返済し、抵当権を抹消する必要があります。これを「抵当権抹消」と呼び、通常は不動産会社と司法書士がサポートしながら、売却と同時に手続きを行います。
Q3. 抵当権が設定された不動産を相続した場合はどうなりますか?
A3. ローンの返済義務も一緒に相続することになります。
不動産というプラスの財産だけでなく、住宅ローンというマイナスの財産も一緒に引き継ぐことになります。相続人は、引き続きローンを返済していくか、家を売却してローンを完済するか、あるいは相続自体を放棄するかを選択する必要があります。
まとめ
抵当権は、住宅ローンを組む際に欠かせない重要な知識です。
返済が滞ると不動産を失う可能性がある一方、金利や借入条件が有利になるというメリットもあります。
デメリットとしては手続き費用や抹消登記の手間がありますが、きちんと返済を続けていれば問題はなく、物件は最終的に自分のものになります。
この記事を通して、抵当権の基本的な仕組みを正しく理解し、安心して住宅ローンを利用できる一助となれば幸いです。