不動産売却に必要な書類を見ていきましょう。不動産には、マンション・土地・戸建てなどがありますが、どの不動産を売却する際も、必要な書類はほとんど共通しています。具体的には、以下のような書類が必要です。
【不動産売却に必要な書類】
それぞれの書類の意味や取得方法について、詳しく確認していきましょう。
身分証明書や実印、印鑑証明書は、売主本人であることを確認するための書類です。売却したい不動産の名義人が複数の場合には、名義人の数だけ必要となります。
印鑑証明書は、市区町村にある役場で取得が可能です。有効期限は取得から3か月以内なので、注意しましょう。ただし、電子契約で捺印が不要であれば、実印・印鑑証明は不要です。
権利証とも呼ばれる登記済権利書は、登記名義人を示す書類です。不動産の取得時に、法務局から登記名義人に公布されます。
売却したい不動産が平成17年以降に取得したものである場合、登記済権利書ではなく、登記識別情報が発行されるケースもあります。このような場合には、登記済権利書ではなく、登記識別情報を提出するようにしてください。
また、万が一これらの書類を紛失してしまった場合には、本人確認のために法務局に郵送で事前通知をおこないましょう。
固定資産納税通知書は、売却したい不動産の納税額を確認するために必要になります。必ず最新のものを用意してください。
書類が手元にない場合は、市区町村の役場で固定資産税評価証明書を取得できます。
境界確認書や土地測量図は、戸建てや土地を売却する際に必要な書類です。特に、土地を売却する場合には、「1平米あたりの単価×面積」で売買価格を決めるケースが多いので、必ず用意しておきましょう。
また、隣地との境界線が明確でない土地の場合、後々のトラブルにもなりかねません。境界線が未確認の場合には、隣地の所有者の承諾を得て、測量図を作成しましょう。
土地測量図は法務局で取得可能ですが、境界確認書は公的な保管はされていません。万が一紛失している場合には、測量をおこなった会社に問い合わせ、再発行してもらってください。
建築確認済証や検査済証は、戸建てを売却する際に必要な書類です。売却する戸建てが建築基準法に則った建築をしているか証明するための書類です。
この他にも、途中でリフォームや耐震補強をおこなった場合には、工事記録書などがあると良いです。
建物図面や建築協定書は、簡単に言えば建物の設計図や設計に関するルールが記載された書類です。これらの書類は、買主が新たにリフォームや建て替えをおこなう際に必要となります。
一般的には、新築購入時に受け取る書類ですが、紛失している場合には建築を担当した会社に連絡して、再発行を依頼してください。
購入時にもらった売買契約書には、地盤調査や住宅性能など、不動産のさまざまな情報が記載されています。必ず必要ではありませんが、用意できると良いです。
この他にも、マンションを売却する場合には、購入時のパンフレットもあると良いでしょう。パンフレットには、マンションのアピールポイントや利点が多く記載されているので、買主に良い印象を与えます。
日本は地震大国であるため、不動産を売却する際には耐震診断報告書や地盤調査報告書が求められるケースがあります。特に、旧耐震基準で建築された建物の場合には、耐震診断報告書が求められるケースが多いです。
また、有害物質の有無を診断する「アスベスト使用調査報告書」の提出を求められることもあります。提出は必須ではありませんが、すでに工事をする際には2020年に調査が義務化、2022年4月には調査報告の義務化がされています。また、過去に工事がされている場合は、アスベスト調査結果の説明義務があります。いつ・どういう調査会社がどの範囲を調査したのか、その結果の説明義務があるのです。
住宅ローンの借入がある場合には、ローン残高証明書やローン返済予定表が必要です。ローンが残る不動産は原則として売却できないため、売却金額で残債をまかなえるか判断します。
書類を紛失している場合には、借入をしている金融機関で再発行しておきましょう。
マンションを売却する際には、管理規約や維持費について記された書類を用意してください。管理規約には、ゴミ捨てのルールをはじめ、ペット飼育の可否などが記載されています。
また、マンションには毎月住宅ローン以外にも、管理費や修繕積立金などの維持費もかかってきます。買主の立場で考えると、維持費などのランニングコストに関する情報は必ず知っておきたいので、早い段階で用意するようにしてください。
この項では、不動産売却に必要な書類一覧をチェックリスト形式でまとめました。必要な書類には〇、任意で必要な書類には△、不要な書類には×をしてあるので、ぜひ参考にしてください。
売却する不動産に応じて必要な書類が異なるので、しっかりと確認しておきましょう。
不動産の売却に必要な書類が揃ったら、いよいよ売却活動をしてくれる不動産会社を選んでいきましょう。一口に不動産会社と言っても、会社ごとに特徴が異なるため、「有名だから」「不動産から近いから」などの理由で選ぶのは危険です。
不動産売却を失敗しないためにも、不動産会社は下記のポイントを押さえて選びましょう。
【不動産会社を選ぶ際のポイント】
それぞれ詳しく解説していきます。
1点目のポイントは、不動産会社の得意分野で選ぶことです。それぞれの不動産会社には、賃貸・売買・管理などの得意分野があります。
いくら有名な不動産会社であっても、不動産の売買を得意としていない会社であれば、売却はスムーズにいかないでしょう。不動産売却を成功させたいのなら、売買を得意としている会社に依頼してください。
不動産会社の得意分野は、会社のホームページを見るとわかります。販売実績などの活動情報を参考に、良い不動産会社を見つけてください。
不動産会社が売買に特化していることも大切ですが、担当する営業担当者の実力も売却に大きく影響します。なぜなら、不動産売却には不動産のみではなく、税金や控除の知識も必要だからです。
満足のいく売却をおこなうためには、優秀な営業担当者に依頼しましょう。下記に優秀な営業担当者の特徴をまとめたので、ぜひ参考にしてください。
【優秀な営業担当者の特徴】
上記に該当する営業担当者は、信頼に値すると言えます。
不動産会社の免許番号を見れば、その会社の営業年数が調べられます。免許番号は「国土交通大臣(3)第9876号」というように記載されており、括弧の中の数字で営業年数を調べることが可能です。
括弧の中の数字は免許の更新回数を表しており、更新は5年に一回の頻度でおこなわれます。つまり、上記の免許番号を持つ不動産会社は3回更新しており、11年以上営業しているのがわかります。
営業年数がすべてではありませんが、古くから営業している不動産会社は、それだけで信頼に値するでしょう。
また、宅地建物取引業者名簿では、行政処分歴を確認できます。行政処分歴に登録されている不動産会社は、過去に宅地建物取引業法に違反していることになるので、判断基準の1つとして確認しておいても良いでしょう。
不動産売却は、大きなお金が動く人生の一大イベントです。そのため、慎重に取引をしていく必要があります。
この項では、不動産売却を成功させるために大切なことについて確認していきましょう。
【不動産売却を成功させるために大切なこと】
1点目のポイントは、希望条件を明確にすることです。不動産会社と媒介契約を結ぶ際は、必ず希望する価格やスケジュールを明確にしましょう。
希望条件を明確にしていないと、今後の資金・販売計画を立てられません。緻密な計画を立てることが成功への近道なので、価格や期間を明確に決めてください。
不動産売却の流れや手続きについて理解しておくのも、成功の秘訣です。一般的には、下記の8つのステップで進んでいきます。
【不動産売却の流れ】
それぞれのステップでやるべきことや用意すべき書類が異なるので、全体の流れをしっかりと確認しておきましょう。
また、不動産売却は契約まで3か月から半年の時間を要すると言われています。そのため、売却したい時期から逆算し、余裕を持った不動産売却をおこなってください。
最後に挙げられるコツは、売買契約を締結する前に今一度内容を確認することです。契約書に誤りがないか確認し、しっかりと自分自身で内容を理解してください。
特に、売却金額に誤りはないか、支払い日や支払い方法はどのようになっているかを確認しましょう。自身にとって無理・不利な条件がないかを確認してから、契約に進んでください。
最後に、マンションや一戸建てを高く売るコツを紹介します。マンションや一戸建てを少しでも高く売りたい方は、下記のポイントを押さえておきましょう。
【マンションや一戸建てを高く売るコツ】
住宅診断をおこなっている不動産は、高く売れる傾向にあります。なぜなら、買主にとって購入後の不安を払拭できるからです。
中古住宅では、購入後に欠陥が見つかり、トラブルになることがあります。しかし、住宅診断をおこなえば、このような心配がありません。住宅診断は住宅診断士に依頼しておこないます。
複数の不動産会社に査定依頼をすることも大切です。不動産の査定結果は、会社によって大きな差があります。
そのため、1社のみの結果を鵜呑みにせず、複数社の査定額から平均的な相場を導き出しましょう。複数社に査定の依頼をすることで、会社ごとのサービスや特徴も理解できます。
複数社に査定を依頼することは面倒ですが、不動産一括査定サービスを用いれば簡単です。いくつかの情報を入力すれば複数社に一括で査定を依頼できるので、ぜひ活用してみましょう。
不動産売却を成功させるためには、部屋の清掃も欠かさずにおこないましょう。不動産の売り出しがスタートすると、買主候補が内覧に訪れます。部屋を不潔な状態にしておくと、せっかくの良い物件も印象が悪くなり、契約に結びつきにくくなるでしょう。
内覧は契約の可否に関わると言っても過言ではありません。大変かもしれませんが、内覧時には部屋を掃除して綺麗にしておきましょう。
部屋を綺麗にしておくほかに、家の臭いにも気をつけなければなりません。毎日暮らしていると気づきませんが、家にはさまざまな臭いが染みついています。
特に、喫煙者やペットを飼育している方は、事前に換気をする・臭い消しをするなどの工夫を凝らしましょう。細かいことかもしれませんが、些細な努力が不動産売却を成功に導きます。
当記事では、不動産売却に必要な書類をチェックリスト形式でご紹介しました。不動産売却には多岐にわたる書類が必要になります。なかには取り寄せが必要な書類もあるので、不動産売却を決めたらすぐに必要書類を用意していきましょう。
また、不動産売却では不動産会社選びも大切です。当記事でご紹介したポイントを参考に、理想の不動産会社を見つけてスムーズな売却をおこなってください。
公益財団法人日本賃貸住宅管理協会会員 「プリンシプル 住まい総研」所長 住宅情報マンションズ初代編集長
1988年株式会社リクルート入社し、リクルートナビを開発。 2002年より住宅情報タウンズのフリーペーパー化を実現し、編集長就任。 現スーモも含めた商品・事業開発責任者に従事。2011 年 12 月同社退職。
プリンシプル・コンサルティング・グループにて2012年1月より現職。 全国の不動産会社のコンサルティング、専門誌での執筆や全国で講演活動を実施。