住宅を購入する際、住宅ローンを組んでの購入が一般的です。「オーバーローン」とは、その住宅を売却する際に、売却価格よりも住宅ローンの残りの金額(残債)が上回っている状態です。
オーバーローンの状態にあると、家を売却したくても、難しいケースがあります。
逆に、住宅ローンの残りの金額が売却価格より少ない場合は、「アンダーローン」と呼びます。
住宅の売却を検討する際は、自分の返済がオーバーローンの段階にあるかを確認しましょう。
オーバーローンになっているかどうかを確認するためには、以下のステップでおこないます。
それでは、上記の具体的な流れについて説明します。
普通預金とは違い、住宅ローン返済期間中の残高は、ATMやインターネットバンキングでは確認できません。ローン残高を確認するためには、以下の方法があります。
住宅ローンを組んだ当初に、「〇年目で残額〇万円」という返済予定表が郵送されてきます。どこに保管したらわからず出てこない場合は、借り入れ先の金融機関窓口での確認が近道です。
金融機関でネットサービスに加入している場合は、インターネットサイトで簡単にチェックできます。ただし、ネットサービスを運営していない金融機関も少なくありません。また、秋頃には確定申告のために「残高証明書」が郵送で届きます。
住宅の売却相場は、以下のインターネットサイトで簡単にチェックできます。
国土交通省運営の「土地総合情報システム」では、過去に実際にあった不動産取引価格情報を検索できます。他にも、住宅・不動産ポータルサイトでは、市区町村・駅などのおおまかなエリアごとに相場を把握可能です。
ローンが残っていても、転勤・子育て環境・近隣と合わないなどの理由で住宅を売却したい状況はそれぞれです。不利に見えるオーバーローンですが、家が売却できないわけではありません。
オーバーローンで不動産を売却するためには、以下の5つの方法が挙げられます。
ここからは、オーバーローン状態でも売却するための方法について、それぞれ詳しく解説していきます。
オーバーローン状態で売却ができない理由の1つが、「ローンの借り入れをした金融機関が売却を認めてくれない」というものです。
しかし、金融機関側としてもローンを完済してくれるのであれば、何の問題もありません。売却した金額と貯蓄を併せてローン完済が可能であれば、金融機関も売却を許可してくれます。
「オーバーローンだから金融機関が許してくれない」と諦めるのではなく、住宅評価額と貯蓄を確認して、金融機関に相談してみましょう。
売却後、次に購入する家が決まっている場合は、「住み替えローン」という方法があります。
住み替えローンとは、オーバーローンとなってしまう場合に、次に購入する住宅の購入資金+オーバーローン残債分の資金を借りるというものです。さらにローンを組むことになるため、金融機関の審査も厳しい・金利が高いというハードルがあります。
「ローンがあるけれど家を売って、新しく買い替えたい。でも貯蓄を崩すのはちょっと…」という方におすすめです。家を買い替えるという意味で、「買い替えローン」という別名もあります。
通常、住宅ローンは土地・住宅を担保とするものですが、土地・住宅を担保としない「無担保ローン」というものがあります。無担保ローンで借りたお金で、オーバーローンの残債を返済するという方法です。
ただし、担保がないだけに、借り入れできる金額は低め。ローン残高によっては、オーバーローンの残債分には足りないケースもあります。
また、通常の住宅ローンや住み替えローンに比べて、無担保ローンは金利が高い点に注意してください。
「そのうち家を売りたいけれど、今すぐじゃなくていい」という方は、アンダーローンになるまで待ってはいかがでしょうか。ローン残高を減らしておけば、将来、家を売却したお金でローン完済の目途も立つことでしょう。
注意点として、売却期間が遅くなるほど、資産価値は落ちていきます。売却金額も目減りするため、時期をずらしてもオーバーローンになる可能性も否定できません。
再開発が進んで人気の高い地域であれば、資産価値の下落も緩やかです。売却したい住宅の予想価格・地価の変動を考慮して検討してください。
オーバーローンであっても、借り入れ先の金融機関がOKといえば、売却可能です。ローンが完済できない場合は、最終手段として、審査を経ての「任意売却」という方法もあります。
住宅ローンが返済できなくなった場合、金融機関が担保となる住宅を競売にかけて残債分を回収します。任意売却とは、金融機関の合意の元、オーバーローンとなってしまう住宅を売却するものです。
金融機関の合意を得る以外に、審査を受けて「ローンを返済できない状態にある」と認められるなどの条件があります。あくまで最終手段として覚えておきましょう。
不動産の価値や状況によっては、オーバーローンでも売却できます。方法には以下の3つが挙げられます。
ここからは、オーバーローンで不動産を売却する3つのポイントを紹介しましょう。
住宅が高く売れるかは、不動産会社の力量次第です。また、会社によって査定金額も異なります。積極的に広告を発信し、より高く販売してくれる会社もあるので、複数の不動産会社に見積もりを依頼しましょう。
査定された金額が何を根拠に出されたものなのかを明確にしてくれる、こちらの質問にも丁寧に回答してくれるといったように、信頼できる会社なのかを知るためにも、複数社の比較をおすすめします。
家を売却した際、売れた金額がそのまま入金されるわけではありません。売却を仲介した不動産会社に対して、仲介手数料を支払い、その他の諸経費を引いた金額が自分のものです。
不動産会社は、この仲介手数料によって利益を得ています。仲介手数料は売却金額に応じた上限額が設定されていますが、不動産会社によっては手数料を減額してくれる場合もあるようです。
強引な交渉は、不動産会社の担当者も気を悪くしてしまうので、信頼関係を損ねない程度に相談してみましょう。
不動産会社への仲介手数料の他にも、売却時に費用が発生します。自分に入る金額を少しでも増やすためには、節約し、経費を少なく抑えるしかありません。
費用を節約するには、以下のポイントがあります。
ハウスクリーニングをしておけば購入希望の方が内覧に来た際の印象がよくなり、より早く、高く売れる可能性があります。クリーニングも引っ越しも業者に依頼すると高額になるため、できるところを自分でやって節約するのがポイントです。
住宅の売却には、細かい費用が発生するため、「合計の費用が意外に高かった!」と驚くこともあります。どの作業・どの項目にどれくらいの費用がかかるのか、書き出して把握しておくことも大切です。
条件次第ではオーバーローンでも住宅が売却できるとはいえ、おすすめできない手段もあります。
オーバーローン状態でやってはいけない不動産の売却方法として、以下の3つに注意してください。
「早く売らなくては!」と焦るあまり、上記の方法での売却をすると大きな損になりかねません。ここからは、オーバーローン状態でのNG売却について解説します。
不動産会社は、不動産売買の仲介だけでなく、「不動産の買取」にも対応しています。すぐに売却できる点がメリットですが、売却価格は通常の売買よりも金額が少ない点がデメリットです。
少しでも高く売ってオーバーローンの返済にまわしたいのであれば、不動産売却ではなく、不動産の仲介契約を結びましょう。
住宅ローンの返済が滞り、返済が難しくなった場合、裁判所の命令で強制的に自宅を差し押さえされ、競売にかけられてしまいます。競売では、不動産会社が仲介に入るよりも売却価格は低くなり、ローンの完済も当然難しくなります。
強制的に売却されてしまうと、生活資金や引っ越しなどの目途が立たず、その後の生活が非常に困難です。
万が一、住宅ローンの返済が難しくなった場合は、早めに金融機関に相談し、返済計画を見直しましょう。競売を回避するために、金融機関の承認を経て「任意売却」という手段もあります。
売る時期が遅くなるほど資産価値が落ちるため、「早く売らなくては大変だ!」と焦ってしまう方もいることでしょう。しかし、焦りは禁物です。
焦るあまり、低い価格で不動産売却をしたり、「査定が一番高い会社を選んだら悪質な不動産会社で、高い仲介手数料を吹っかけられた!」という被害にあったりという失敗パターンも少なくありません。
金融機関に相談すると、返済計画や売却先の提案をしてくれることもあります。落ち着いて、自分の資産と将来計画を見直してください。
家を売却してもローンが残ってしまう状態がオーバーローンです。ローンが残っていては、家を売りたくても売却できないこともあります。しかし、オーバーローンであっても、家の売却を諦める必要はありません。
オーバーローンでも売却する方法として、以下のものがあります。
自分の貯蓄や他のローンを使って、オーバーローンになった分を返済する方法はあります。自己資産や売却したい住宅の価値を把握して、無理のない計画を立てましょう。売却時に発生する費用を減らすことも、オーバーローン完済への一歩です。 焦らず、金融機関と相談しながら計画を立てましょう。
関西学院大学法学部法律学科卒。
宅地建物取引士、管理業務主任者、2級FP技能士(AFP)、登録販売者など多岐にわたる資格を保有。 数々の保有資格を活かしながら、有限会社アローフィールド代表取締役社長として学習塾、不動産業務を行う。