不動産売却・査定

不動産売却を始める前に|知っておきたい売却の流れや費用・税金について解説

不動産売却をする主な理由と目的

不動産売却をする主な理由と目的

そもそも不動産を手放す方は、どのような理由から土地や建物を売却するのでしょうか。
下の図は、2020年に国土交通省が調査した結果を表したグラフです。

国土交通省が調査した結果を表したグラフ

【引用元】2020年土地保有・動態調査(2019年取引分)|国土交通省

最も割合が大きい要因は「買主や仲介人から希望されたから」というものですが、背景としては不動産投資をおこなっている方が、付き合いのある不動産会社や投資家から、不動産の譲渡を打診されて売却したケースと考えられます。

居住している家や日常的に使っている土地とは別に、「収益物件としての不動産」を保有している方が、売却した際の要因と考えられます。

その上でこのグラフをもとに考えると、不動産投資家を除外した場合の不動産売却の主な理由と目的は、以下の4つに分類できます。

  • 住み替えのため
  • 相続税の支払いのため、
  • 転勤・転職のため
  • 金銭的な理由のため(生活費に充てる・借入金の返済)

それぞれ、考えられる状況を詳しく解説します。

住み替えのため

自宅を所有しても、家族構成やライフステージが変化すれば、最適な住まいの形も変化していきます。結婚・出産で家族が増えたり、子どもの進学先を考えて学校近くに引っ越したりといった変化は、人生にはつきものです。

また、子どもが独立すると、広い家を持て余すケースもあるでしょう。住み替えでは、売却と平行して新居も探さなければなりません。スケジュールに余裕をもって、計画的に進めましょう。

また、新居を購入するならば、売却価格と新居を購入する予算のバランスが取れているかも重要なポイントです。

転勤・転職のため

マイホームを購入しても、転勤・転職のため売却するケースもあります。転勤しても再び今の場所に戻る予定があるならば、単身赴任や一時的に自宅を賃貸に出すといった選択肢もあるでしょう。しかし、転勤先でその後も働き続けるならば、不動産売却という選択肢も出てきます。

とくに、転勤は辞令が下りてから限られた時間で業務の引き継ぎと住宅関係の手続きをしなければなりません。子どもがいるならば、学校関係の手続きも同時進行となるので、家族の協力が不可欠です。

素早い判断・対応とともに、家族の理解が得られるよう、家庭内での話し合いも重要となってきます。

金銭的な理由のため(生活費に充てる・借入金の返済)

経済状況の変化から、不動産売却するケースもあります。リストラや病気による退職、社会情勢による収入減など、思いがけない変化によって生活の維持が難しくなることもあるでしょう。これまで通りの生活ができず、ローンやクレジットの支払いが滞る可能性もあります。

不動産売却によって金銭的な問題を解決する場合は、早めの対処が重要です。滞納が長引き、自宅をはじめとする財産を差し押さえられてしまうと、自由に売却できません。また、住宅ローンが残っている場合は、売却価格でローンを完済できるかシミュレーションしておきましょう。

相続税の支払いのため

相続や遺贈、生前贈与などで不動産を得た場合、その価値に見合った相続税(または贈与税)が課せられます。もし支払う税金が高額であれば「不動産を売却して現金化」する必要があるでしょう。

なお、譲り受けた不動産を売却するなら、不動産登記簿への相続登記が必要です。登記を省略した売却はできませんし、登記手続きにも費用がかかることを覚えておきましょう。

不動産売却の流れ

不動産売却の流れ

ここからは不動産売却の流れを、下記8つのステップに分けて解説します。

  1. 事前準備
  2. 査定を依頼
  3. 売出し価格の決定
  4. 媒介契約
  5. 売却/販促活動
  6. 買い付け申し込みと売買契約
  7. 決済・引き渡し
  8. 確定申告

それぞれのステップについて詳しく見ていきましょう。

①事前準備

不動産会社へ相談する前に適切な売却価格を知り、相場知識を身につけておきましょう。価格は築年数やエリアだけでなく、間取りや内装、マンションであれば専有面積など、さまざまな要素から決まります。難しく感じられますが、実際の売却情報を検索できるサイトを利用すれば、売値の目星が付けられるでしょう。

国土交通省の「土地総合情報システム」や不動産流通機構の「レインズ・マーケット・インフォメーション」では、全国の不動産売却情報が検索できます。

なお、最終的な売却価格は買主との交渉によって決定されるので、売出し価格がそのまま売却価格になるとは限りません。相場価格を調べる際は、売出し価格ではなく実際の成約価格を確認しましょう。

②査定を依頼

事前準備ができたら、不動産の売却価格を客観的に判断するために不動産会社へ査定依頼をしましょう。査定を依頼した段階では費用は請求されないので、複数の不動産会社で査定・比較し、依頼先を決めます。査定価格の比較はもちろん、不動産会社の対応も重要なポイントです。

不動産売却は高額な取引であり、売却中は長く付き合う相手になります。こちらの要望を理解してくれるか、説明がわかりやすいかなどをチェックし、気持ち良く付き合える相手を選びましょう。

また、査定には「机上査定(簡易査定)」と「訪問査定」があります。

  • 机上査定:不動産を見学せず、周辺の類似物件情報からおよその金額を査定
  • 訪問査定:不動産を見学し、状態を細かく確認したうえで金額を査定

査定依頼の際、以下の関係書類を持っていくと相談がスムーズです。

<査定依頼時に必要な書類>

  • 登記済権利証(登記識別情報)
  • 所有不動産の物件概要書
  • 間取り図と測量図

③売出し価格の決定

査定結果と事前準備で調べた相場情報から、自分自身が納得できる「売出し価格」を決定します。あくまで売出し価格なので、必ずその金額で交渉がまとまるわけではありません。

価格決定時は「こんなに高くして売れなかったらどうしよう?」と不安になるかもしれませんが、最初から募集価格を極端に低くするのは禁物。不動産は値上げしにくく、値下げしやすい商品だと心得ましょう。売り出してみて反応が少なければ、価格の見直しも可能です。

また、最終的な売却価格は買主との交渉で決まるので、交渉中に値下げできるよう、余裕を持った金額を設定しておくほうが良いでしょう。

④媒介契約

仲介をお願いする不動産会社を決めたら「一般媒介契約」「専任媒介契約」「専属専任媒介契約」のいずれかの媒介契約を交わします。

1社のみに売却を任せたい場合は「専任媒介契約」または「専属専任媒介契約」を、複数の不動産会社に依頼するなら「一般媒介契約」を選びましょう。

3つの媒介契約を表にまとめると、以下の通りです。

一般媒介契約 専任媒介契約 専属専任媒介契約
複数の不動産会社に依頼 可能
(明示型であれば他社への通知義務あり)
不可 不可
自己発見取引 可能 可能 不可
媒介契約の有効期間 任意 3か月以内 3か月以内
指定流通機構への登録 任意 7日以内 5日以内
業務状況の報告義務 任意 2週間に1回以上 1週間に1回以上

■一般媒介契約

複数の不動産会社に依頼でき、買主を自分で見つけて直接取引もできる自由度の高い媒介契約です。複数の不動産会社を競わせられる反面、不動産会社としては最終的な利益他社に流れる懸念があるので、積極的な販売活動がなされない可能性もあります。

■専任媒介契約

自己発見取引は可能ですが、複数の不動産会社に同時進行での依頼はできません。1社に絞って依頼するため、熱心に販売活動をしてくれる可能性があります。

不動産情報を共有する指定流通機構へ登録することを7日以内と決められており、業務報告も2週間に1回以上あるので、進捗状況がわかりやすいでしょう。

■専属専任媒介契約

専任媒介契約では可能だった自己発見取引ができません。より縛りが強い媒介契約といえるでしょう。自由度は低いものの、不動産会社側の義務も多く、指定流通機構への登録は5日以内、また1週間に1回以上の業務報告となっており、密な連絡が受け取れます。

また媒介契約の際は、以下の書類が必要となりますので、準備しておきましょう。

<媒介契約時に必要な書類>

  • 印鑑と身分証明書
  • 登記済権利証(登記識別情報)
  • 【戸建ての場合】建築確認済証および検査済証
  • 【土地の場合】地積測量図と境界確認書
  • 【マンションの場合】管理規約・使用細則

以下は必須ではないですが、あるとベストな書類

建築設計図書/工事記録書/耐震診断報告書/アスベスト使用調査報告書/地盤調査報告書/住宅性能評価書/既存住宅性能評価書/購入時の契約書/重要事項説明書/パンフレットやチラシ広告/ローン残高証明書/ローン返済予定表(住宅ローンの償還表)

⑤売却・販促活動

媒介契約を結ぶと、不動産会社が売却・販促活動を開始します。物件の売出し情報が広告掲載されたり、不動産会社のホームページで紹介されたりと、活動内容はさまざまです。販促は売主の要望を聞き、不動産会社がプランを決定。

多少時間がかかっても希望通りの価格で売却したいのか、値下げしてでも早く買手を見つけたいのかなど、売主が優先したい事柄によって活動内容も変わります

販促がスタートしても問い合わせ件数が少なく、成約につながる反響がなければ、価格を見直したり、リノベーションで価値を高めたりといった施策が必要です。

⑥買付申込と売買契約

購入希望者が現れたら「買付証明書(購入申込書)」が提出されます。買付証明書を受け取った時点では、まだ売買は成立していません。人気のある地域の不動産なら、複数の購入希望者から買付証明書を受け取る場合もあるでしょう。

買付証明書には購入金額や手付金、物件の情報などの売買時の条件が記載されているので、内容を確認し、問題なければ物件の引き渡し日を決めて、売買契約へと進みます。

売買契約の際は日程を調整し、売主と売主側の仲介業者、買主と買主側の仲介業者が集まるのが一般的です。売買契約を結んだら、買主から手付金(物件の購入代金の一部)を受け取り、仲介をしてくれた不動産会社には仲介手数料の半額を支払います。

また、売買契約時には、以下の書類が必要になるので、参考にしてください。

<売買契約時に必要な書類>

  • 実印と印鑑証明書(3ヶ月以内に発行されたもの)
  • 登記済権利証(登記識別情報)
  • 写真付きの身分証明書
  • 収入印紙
  • 【マンションの場合】管理規約・使用細則

⑦決済・引き渡し

決済日には、先に受け取っていた手付金を差し引いた残りの売却金が、買主から支払われます。買主が住宅ローンを組んで購入する場合は、借り入れる金融機関に関係者が集まって決済するケースが多いです。このとき、物件がマンションであれば管理費や修繕積立金が、それ以外の不動産では固定資産税の精算がおこなわれます。

不動産売却の決済が完了すると、引き渡し義務が発生します。

通常は決済日と物件の引き渡し日を同日に設定するケースが多いです。物件を引き渡す際には、物件の鍵や設備の取扱説明書、設計図書などを買主に渡します。

不動産会社に残りの仲介手数料を支払い、抵当権抹消の手続きを司法書士に依頼した場合は、その報酬を支払って、不動産の売却は完了です。

以下は、売買決済時に必要な書類になります。

<売買決済時に必要な書類>

  • 銀行口座書類・通帳
  • 住民票
  • 固定資産税評価証明書・固定資産税納税通知書
  • 登記関連の書類(登記済権利証・登記識別情報・その他関連する書類)
  • 写真付きの身分証明書
  • 実印と印鑑証明書(3ヶ月以内に発行されたもの)
  • 売却する物件の鍵一式

⑧確定申告

売却価格から各種費用と特別控除額を差し引いた金額は、譲渡所得として課税対象になります。売却した年の翌年の2月16日から3月15日までに確定申告をして、納税しましょう。

ただ、自宅を売却した場合は3,000万円の特別控除が適用され、課税対象となる所得が差し引かれます。

節税につながるので、ぜひ活用しましょう。また、売却価格が安く、損失が出た場合も、確定申告で「損益通算」をおこない、かかる所得税を減額します。

会社勤めの人にはなじみのない手続きですが、税負担を軽くするため、忘れず手続きをしましょう。

不動産取引にかかる費用と税金

不動産取引にかかる費用と税金

不動産売却では資金が得られるだけでなく、さまざまな手続きでかかる費用や税金などの金銭的負担も発生します。不動産取引の際に、共通して発生するものと、状況次第では必要なものを分けて、どのような費用・税金がかかるのかを表にまとめました。

なお、いずれも不動産売却の完了時にかかる費用であり、査定を依頼したり媒介契約を結んだりした時点では原則として費用はかかりません。

<共通してかかる費用一覧>

費用項目 費用詳細 費用目安
契約前 ホームインスペクション(住宅診断) 隠れた瑕疵や修繕が必要な箇所など、住宅の状態を診断する費用 戸建てなら5~12万円程度
マンションなら5万円程度
(面積・調査内容により異なる)
契約後 仲介手数料 成約時に仲介を依頼した不動産会社に支払う報酬費用 (売却額×3%)+6万円+消費税
※売買価格400万円超の場合
印紙代 売買契約書に貼り付ける収入印紙代
売買契約を結ぶ際不動産会社に代金を渡すのが一般的
1万円~10万円
※契約金額(売却価格)によって決まる
3,000万円の不動産なら2万円(2022年4月1日以降の場合)
登記関係書類の取得費用 登記事項証明書の取得費用 480円~600円(請求・受取方法により異なる)
ローン一括返済手数料(ローンが残っている場合) 一括返済のため借入金融機関に支払う手数料 5,000円~3万円程度(金融機関により異なる)
抵当権抹消費用(住宅ローンが残っている場合) 司法書士に支払う報酬 1万円~3万円程度
(不動産により異なる)

<各種税金一覧>

費用項目 費用詳細 費用目安
各種税金 譲渡所得税 不動産売却で得た利益に対してかかる
確定申告によって納付
売却した年の1月1日での保有期間によって異なる
保有期間が5年以下なら譲渡所得の39.63%、保有期間が5年超なら譲渡所得の20.315%
印紙税 売買契約書にかかる
金額相当分の収入印紙を貼り付けて納付
1万円~10万円
※契約金額(売却価格)によって決まる
3,000万円の不動産なら2万円(2022年4月1日以降の場合)
登録免許税(ローンが残っている場合) 抵当権抹消の登録登記 1不動産につき1,000円(登記されている土地1筆ごと、建物1個ごとにかかる)
消費税 仲介手数料やローンの一括返済手数料に対してかかる 課税対象となる取引金額による
固定資産税 毎年1月1日時点での不動産所有者が支払う
年の途中で売却するなら、売主・買主の負担割合を決めて決済時に精算
固定資産税課税明細書を確認

<売却する不動産ごとに必要となる費用一覧>

費用項目 費用詳細 費用目安
土地の場合 測量費 専門家に依頼して測量をする際にかかる費用
※隣地との境界が不明瞭な場合にかかる
一般的な一戸建てなら50万円前後
※土地の大きさや測量方法によって変わる
解体費 建物を取り壊し、さら地にする際にかかる費用 坪単価3万円~8万円程度
※構造や立地により異なる
マンション・戸建ての場合 クリーニング費用 引き渡し前にハウスクリーニングをする際にかかる費用 4万円~5万円程度
※広さ・条件により異なる
リフォーム費用 売主側でリフォームしてから売却する際にかかる費用 リフォーム内容による
引き渡し関連費用 引っ越しや家財処分など必要に応じて発生する費用 内容による

不動産の売却方法

不動産の売却方法

不動産売却の方法には、買主を探してもらう「仲介」と、不動産会社に購入してもらう「買取」があります。

仲介と買取の違い

不動産を売却する際、多くの方は不動産会社に「物件を売りたい」と相談します。相談を受けた不動産会社は売り主と相談し、その不動産を「仲介」するか「買取」をおこなうのかを選択して、手続きを進めるのです。

仲介と買取では、売却にかかる期間や金額、仲介手数料の有無などが違うので、あらかじめ注意しておきましょう。「仲介」は、不動産会社が不動産を買いたい「買主(主に個人)」を募り、応募してきた買主と売主の間に入って取引上の諸条件を調整し、取引を成立させる仲介業務をおこないます。

買主が現れなければ、物件はいつまでも売れないままなので、不動産の状態や希望価格によっては、売却に時間がかかるケースもあるでしょう。ただ、売却価格はおおむね相場通りの金額で売却できるので、売却期間に余裕がある場合は「仲介」を選び、不動産を売却すると良いでしょう。

一方の「買取」では、不動産会社が買主となり、売主から物件を譲り受けます。仲介のように購入希望者を探したり交渉したりする必要がありません。売却にかかる時間を短縮できますが、仲介と比較すると売却価格が下がる傾向にあります。

また、買取では仲介手数料が発生しません。売却価格だけでなく、負担する手数料も加味して売却方法を検討すると良いでしょう。

仲介手数料の計算方法
仲介手数料の上限 200万円以下の部分 200万円超400万円以下の部分 400万円超の部分
売買金額×5% 売買金額×4% 売買金額×3%
仲介手数料上限の合計(税込) 3分割して算出された金額の合計+消費税
【速算式】
売買金額200万円超400万円以下のとき「売買金額×4%+2万円+消費税」
売買金額400万円超のとき「売買金額×3%+6万円+消費税」

【参考】宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額|国土交通省

また、上記の方法をもとに算出される仲介手数料ですが、以下のような早見表にもまとめられています。

売買価格 仲介手数料(税込) 仲介手数料 消費税(10%)
500万円 231,000円 210,000円 21,000円
600万円 264,000円 240,000円 24,000円
700万円 297,000円 270,000円 27,000円
800万円 330,000円 300,000円 30,000円
900万円 363,000円 330,000円 33,000円
1,000万円 396,000円 360,000円 36,000円
1,500万円 561,000円 510,000円 51,000円
2,000万円 726,000円 660,000円 66,000円
2,500万円 891,000円 810,000円 81,000円
3,000万円 1,056,000円 960,000円 96,000円
3,500万円 1,221,000円 1,110,000円 111,100円
4,000万円 1,386,000円 1,260,000円 126,000円
4,500万円 1,551,000円 1,410,000円 141,000円
5,000万円 1,716,000円 1,560,000円 156,000円

【参考】宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額|国土交通省

上記の表を参考にしつつ、妥当な金額の仲介手数料を支払うようにしましょう。

不動産会社選びのコツ

不動産会社選びのコツ

不動産売却の流れや売却方法がわかったら、次は具体的にどんな不動産会社に相談をすれば良いかを解説していきます。以降では、不動産会社を選ぶ際のコツを、4つに分けて紹介します。

大手・中小を比較して選ぶ

不動産会社は大手と中小とでは、それぞれ強みが異なります。大手不動産会社は知名度や資金力に優れ、さまざまな媒体で販促活動をおこないます。付き合いのある不動産投資家や事業者も多いので、豊富な販売経路を活かし、早期かつ高値での売却が期待できるでしょう。

一方、中小の不動産会社は地域に根付いた不動産売買を得意としている会社が多いです。地元ならではのツテやノウハウを持っています。大手にはない親身な対応で、不動産売却に付き合ってくれるでしょう。築古物件や、不動産市場では弾かれがちな立地・条件の不動産であっても、仲介に応じてくれる可能性があります。

大手・中小、それぞれの強みを理解して、状況に適した不動産会社を選びましょう。

売却活動を比較して選ぶ

希望通りの不動産売却ができるかは、不動産会社の売却活動によっても左右されます。不動産情報の掲載媒体は、新聞広告やチラシだけではありません。不動産ポータルサイトや自社メディアといった発信先を備えている不動産会社も少なくないのです。もちろん、物件の価値が伝わる魅せ方をしているかどうかといった発信方法にも、会社ごとに特色があります。

また、不動産会社に売却の相談をすると「販売計画」や「売却価格の根拠」について説明を受けますが、これらが的確でなければ不動産の売却は難しいのが実情です。他社と比べてどのような強みを持っているのか、という点も踏まえて依頼する不動産会社を検討しましょう。

買い手からの問い合わせが少ない場合は金額の見直しも必要ですが、「不動産会社の販促活動は適切か」という点にも着目しつつ、誠実な対応が見込める不動産会社を選びましょう。

売却経験者による評価・口コミを元に選ぶ

利用者の評価や口コミは、実体験に基づいた意見であり、不動産会社選びのポイントになります。

不動産売却をした人が身近にいるならば、利用した不動産会社やその対応について聞いてみると良いでしょう。
良い不動産会社であれば、紹介してもらう手もあります。また、口コミサイトには多くの意見が寄せられており、自分の状況と近い人の意見は参考になります。

不動産一括査定で複数社から選ぶ

不動産会社選びは、複数の候補から比較・検討して決めたいところですが、個別に査定依頼をするには手間がかかってしまいます。

不動産一括査定サイトを利用すると、こうした手間を省略でき、大まかな不動産の売却価格を算出できます。

一括査定する場合は、不動産の所在地を選択し、面積や間取り、築年数などの不動産情報と連絡先を入力。査定依頼したい不動産会社をいくつか選び、一括査定に進むだけです。その後、査定結果が各不動産会社から来るようになります。

このとき、依頼する不動産会社は、大手だけ・中小だけに絞り込まないのがポイント。幅広い選択肢から比較できるようにしましょう。

不動産売却によくあるトラブル

不動産売却によくあるトラブル

不動産を売却する際には、以下の3つのトラブルが散見されます。

  • 仲介手数料に関するトラブル
  • 見えない瑕疵があった際のトラブル
  • 契約キャンセルに関するトラブル

不動産売却では仲介手数料や見えない瑕疵、契約キャンセルに関するトラブル事例が見受けられます。よくある「仲介手数料」に関するトラブルですが、そもそも手数料は法律で上限が定められています。

請求のタイミングも「売買契約が成立してから」と決まっています。とはいえ、トラブルを避けるためにも、売主側が仲介手数料の上限や請求のタイミングを把握しておきましょう。

また、売却した物件に「見えない瑕疵」があった場合、その瑕疵を買主に伝えなかった売主の契約不適合責任が問われます。引き渡し後に建物のシロアリ被害が判明し、売却時の説明がなかったとして、売主への損害賠償請求がなされたことも、事例としてあります。

また、「契約キャンセル」もトラブルになりやすく、仲介してもらう予定だった売買契約をキャンセルしたのち、売主・買主間で直接売買をおこなったため、不動産会社が手数料相当額の被害を被ったとして訴訟を起こしたケースがあります。

こうしたトラブルが生じると、金銭的にも精神的にも消耗してしまいます。高額な取引なので、トラブルが起こると裁判沙汰にもなりかねません。不動産売却時の対応には十分に注意しましょう。

納得のいく不動産売却をするために

納得のいく不動産売却をするために

不動産売却は高額な取引であり、失敗したくないものです。しかし、多くの人には慣れない手続きの連続であり、戸惑う場面もあるでしょう。そんな不動産売却で失敗せず、納得できる取引を実現するため、意識しておきたい心がけを3つ、紹介します。

不動産売却のノウハウを身につける

不動産売却では、不動産会社に任せきりにせず、わからない内容や疑問に思った点については、都度確認する姿勢が大切です。

売却価格が適切か、どのような契約を交わすのか、などを理解していないまま契約するのは危険です。不動産売却は、大切な財産を売り渡す高額な取引なので、手続きを進める前に必要な知識を身につけ、理解しながら進めましょう。

余裕のあるスケジュールで

不動産売却は準備開始から契約成立、引き渡しまで数ヶ月に渡って取り組むケースが多く、かなりの時間がかかります。

スケジュールに余裕がないと、焦りから「妥協した条件での売却」に合意してしまうかもしれません。仮に適正価格での取引であっても、「もっと時間をかけて比較検討していれば、さらに良い条件で売却できたのではないか?」といった考えが浮かび、後悔する可能性もあります。

時間的にも精神的にも余裕を持って、不動産売却の計画を立てましょう。売却後の未来もイメージしつつ、譲れない条件や金額を決めておかないと、後悔が残ってしまいます。

売却する不動産の良いところに自信を持つ

不動産を過小評価して価格を低くしたり、買主との交渉で譲歩しすぎたりするのも、後悔につながるポイントです。

自分が住んでいた家であれば、どうしても謙遜するような気持ちになってしまうのも無理はありません。しかし、売却後に「もっと高値でも売れていた」と知ってもやり直せないのです。

ポイントは自分の不動産を「客観的に判断」すること。さらに踏み込んでいえば、明確な「数字」に落とし込んでいくことが大切です。

築年数や賃貸した場合の利回りは分かりやすい数値ですし、設備の時価総額を算出したり、周辺物件の相場を調べてみたりするのも良いでしょう。不動産の良いところはしっかり評価し、数字に落とせない「内装のこだわり」なども踏まえて、自信を持って納得できる売却価格を決めましょう。

まとめ

不動産売却の流れは、相場を確認する事前準備から始まり、査定依頼、媒介契約、販促活動、売買契約、引き渡し、確定申告というステップで進行します。

納得のいく不動産売却を実現するには、必要な知識を身につけた上で、余裕を持ったスケジュールや心持ちで行動することが重要です。

契約内容を理解しないまま手続きを進めたり、焦りや不安から価格を下げすぎたりするのは禁物。
相場を知り、売却にあたって優先したい事柄を決めて、不動産会社と相談しながら売却を進めましょう。

また、売却が上手くいくかは、不動産会社の手腕にも左右されます。
複数の不動産会社を比較し、価格・対応ともに満足できる相手を選びましょう。

小泉寿洋(ライズアップ)
小泉寿洋(ライズアップ)

家業の眼鏡店経営、訪問販売会社立ち上げ・運営、司法書士助手等の仕事を経て、1部上場グループに所属する管理会社で賃貸仲介、賃貸管理部門で社員から管理職まで約15年程経験。

その後、空室対策・シニアの住まいに関する総合サービス・不動産・リノベーション工事の会社を仲間と起業・経営。

現在はフリーランスで賃貸経営や終活に関してのコンサルティングやアドバイスを行う。

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