「そろそろ新しい家に住み替えたいな…」子どもの成長などで住み替えを検討している人もいるでしょう。
しかし、住み替えは今の家の「売却」と新しい家の「購入」を同時に行うため、タイミングが重要になります。タイミングによっては費用が余計にかかるなど、失敗してしまう可能性もあるので、慎重に判断することが大切です。
本記事では、住み替えのタイミングや流れ・費用から、失敗しないための注意点まで詳しく解説していきます。これから住み替えを検討している方は、ぜひ参考にしてください。
住み替えは、人生の中でも大きなイベントです。ライフスタイルが大きく変化するだけでなく、高額な資金も動くため、慎重にタイミングを見極めなければなりません。
資金の面で考えるなら「高く売れて安く購入できるタイミング」で住み替えるのが理想的です。ただし、家族構成の変化などライフステージの変化も重要になります。
ここでは、住み替えを検討したいタイミングとして、次の5つを紹介します。
住み替えでは、新しい家の購入が必要になります。その際、住宅ローンを組むことを検討しているなら、金利が低い時がおすすめです。
住宅ローンは高額・長期間の契約になるので、金利がわずか数%変わるだけでも最終的に支払う金利負担の差が大きく異なってきます。たとえ新しい家を安く購入できたとしても、金利が高いと支払総額は高額になってしまう可能性があるので注意しましょう。
近年、住宅ローンは低金利が続いており、急激に上がる可能性は低いです。しかし、2022年に日銀が利上げを公表したことで、今後住宅ローンの金利が上昇する可能性がゼロというわけではありません。住み替えを検討しているなら、金利動向には注意しておくようにしましょう。
住宅ローン控除とは、家の購入で住宅ローンを利用した場合、ローン残高に応じた額を所得税から控除できる税制優遇措置のことです。
2022年以降に入居した新築住宅の場合、「年末時点のローン残高×0.7%」を13年間所得税から控除できます。住宅ローン控除を利用することで、所得税の大きな節税効果が期待できるのです。
しかし、適用できる年数を超えると控除できなくなるため、節税効果が見込めません。そのため、上限年数を超えているタイミングで住み替えを検討するのもおすすめです。
なお、住宅ローン控除の上限年数は、取得したタイミングによって大きく異なるので注意しましょう。現在の控除期間13年は、2022年以降に入居した場合であり、それ以前に入居している場合は10年(入居年よっては13年)となります。
また、新築か中古かによっても上限年数は異なるので、まずは自分の家の住宅ローン控除がいつまで適用できるのかを把握しておくようにしましょう。
土地の価格が高いタイミングなら、売却額全体を高くできるので売却に適していると言えるでしょう。
建物は経年劣化により資産価値が減少するため、どうしても売却額は年々下がっていきますが、土地は経年劣化で資産価値が減少することはなく、状況によっては上昇する可能性もあります。そのため、土地価格が上昇したタイミングを見極めると、売却額を上げやすくなるのです。
土地価格は、毎年公表される公示価格などを参考にするとよいでしょう。また、近隣で大型商業施設の開発が予定されているなどエリアの需要が上がる要因があると、土地の価格は上昇する可能性があるので、あらゆる情報にアンテナを張っておくことも大切です。
建物は経年劣化で資産価値が低下します。一般的な木造住宅の場合、築20年を超えると資産価値はゼロに近くなるといわれ、その時点で売却しても高値での売却は期待できません。
さらに、リフォーム費用など修繕費が高くつくことで売却が難しくなる恐れもあるため、今住んでいる家を売却したお金で新しい家の購入を検討しているなら、「資産価値が高いうち=築年数が浅いうち」に売却することをおすすめします。
また、建物の資産価値はメンテナンスの状況によっても変わってきます。適切にメンテナンスされた建物であれば資産価値の低下を抑えやすくなるので、居住期間中のメンテナンスには気を配るようにしましょう。
売却・購入のしやすさだけでなく、家族の変化も重要なポイントです。特に、子どもの成長に関する生活環境の変化は住み替えを判断するタイミングとして代表的と言えるでしょう。
子どもに関する住み替えのタイミングとしては、次のようなことが挙げられます。
子どもの人数が増えたり成長したりすることで、それまでの部屋では足りなくなる可能性があります。その状況で高く売却できるのを待って手狭な家で生活を続けるのは、ストレスにもなりかねません。部屋が狭いと感じたタイミングで、住み替えを検討するのをおすすめします。
また、子どもの進学では学区や通学距離が重要になります。希望の学校のある学区への住み替えや、通学距離を短くするための住み替えというケースもあるでしょう。
さらに、子どもが成長し独立すると、それまでの部屋では夫婦二人では持て余してしまいます。子どもが独立するころ、親はある程度高齢にもなっているので、バリアフリーを見越した家への住み替えも良いでしょう。
住み替えのタイミングは、一概にいつが良いとは言い切れません。家庭ごとに住み替えの事情や目的は異なるので、各々に合ったタイミングで検討することが大切です。
とはいえ、ほかの家庭がどのようなタイミングで住み替えしているかは、自分の住み替えのタイミングを検討するうえで参考になるでしょう。国土交通省の「平成30年度住生活総合調査」によると、住み替えの目的には次のようなことが挙げられます。
もっとも割合の多い回答は、「通勤・通学のしやすさ」の35.1%であり、次いで「広さや部屋数」「世帯からの独立」となっています。勤務先や進学先によっては引越しが必要になり、そのタイミングで住み替えする人が多いと言えるでしょう。部屋数や広さを理由にした住み替えも、子どもの出産や成長が関わっていることが推測されます。
また、老後の生活のしやすさを理由にする人も多く、家族構成の変化は住み替えの大きな目的となると言えます。そのほか、安全性や住宅の性能向上を目的としておこなう住み替えもあります。
このように、住み替えの目的は人によって異なります。自身の資金状況やライフスタイルなどから、家庭に合った住み替えのタイミングを見極めるとよいでしょう。
住み替えでは、今の家の売却と新しい家の購入が必要になるので、売り時と買い時も意識しなければ資金面で失敗しかねません。
購入と売却のタイミングによって、住み替えには次の3つの方法があります。
どの方法で進めるかによって資金計画も変わってくるため、それぞれの方法について理解しておくことが大切です。
以下では、各方法について詳しく解説します。
今住んでいる家を売却してから新しい家を購入する方法を「売り先行」といいます。
売り先行の場合、売却を先にするため資金計画を立てやすくなります。住宅ローンの完済を売却額で検討している場合も、売り先行を選ぶことになるでしょう。
転勤など引っ越しの時期が決まっていないのであれば、じっくり売却に時間をかけられます。売り急ぐ必要がないため不要な値引きを避けられ、高値での売却も望めるでしょう。
ただし、売却が決まってから新居を選ぶため、新居選びに時間をかけにくくなります。新居の条件を妥協するか、妥協したくない場合は仮住まいが必要になる点に注意が必要です。
仮住まいになると、その期間の賃料がかかるだけでなく、「旧居から仮住まい」「仮住まいから新居」と2回引っ越しが必要になり、引っ越し費用などのコストが多くかかってしまいます。
売り先行のメリット・デメリット
新居を購入してから旧居を売却する方法を「買い先行」といいます。買い先行なら新居選びにじっくり時間をかけられるので、納得いく新居を見つけやすくなるでしょう。
新居が決まった状態で売却を進めるので、仮住まいの必要がなく余計なコストがかかりません。
ただし、売却額が入る前に購入するので、購入の諸経費や引越し費用などは自己資金で対応しなければならなくなります。また、購入前に売却額が分からないので資金計画が立てにくく、想定より安値での売却になると資金計画が大きく狂う可能性があるので注意しましょう。
資金計画上、売却を早期でしなければならない場合、売り急ぐことで値下げが必要になる可能性もあります。そのほか、売却に時間がかかってしまうと新居のローンと旧居のローンの二重ローンになり、経済的に大きな負担になる可能性がある点もデメリットです。
買い先行は自己資金にかなり余裕がある人や、旧居がすぐに高値で売却できる見込みがある場合に適しています。
買い先行のメリット・デメリット
売却と購入を同時に進めることができれば、売り先行・買い先行のデメリットを解消できるため、理想的な住み替えといえます。
しかし、売却・購入共にそれぞれに手続きが必要です。また、それぞれ取引相手があって初めて進められるため、自分のタイミングですべてを進めることは難しいでしょう。売り・買いを同時に進めるのはスケジュールのコントロールが難しく、現実的には売り先行・買い先行のどちらかになるケースが多い点には注意が必要です。
同時進行をうまくおこなうためには、「購入と売却を同じ不動産会社に依頼する」「引越し業者を早めに決める」など、しっかりと準備しておくようにしましょう。
同時に進めるメリット・デメリット
・同時進行にできないケースが多い
住み替えでは「売却」と「購入」の2つを行っていきます。ここでは、売却と購入のそれぞれの流れをみていきましょう。
まずは、売却の流れです。大まかには次のような手順で進めます。
不動産会社に査定依頼し、おおよその売却額を把握しながら不動産会社を比較して選んでいきましょう。
不動産会社を選んだら、媒介契約を結んでいきます。媒介契約には「一般媒介契約」「専任媒介契約」「専属専任媒介契約」の3種類があるので、自分に適した契約方法を選ぶことが大切です。
媒介契約を結んだ後は、基本的に不動産会社で売却活動を進めてくれます。ただし、内覧対応などは必要となるので、しっかりと内覧に向けて準備しておくことが大切です。
購入希望者と条件面での合意が済んだら、売買契約を結び、その後決済・引き渡しとなります。一般的に、売却には3ヵ月~半年ほどかかるものですが、物件の条件によっては1年以上かかるケースもあります。
次に、購入の流れを見ていきましょう。購入の大まかな流れは次の通りです。
物件購入には、さまざま費用がかかります。それらの費用をどのように調達するのかを綿密に計画立てることが大切です。売却額を充てるのか、自己資金で進めるのかによっても資金計画は大きく異なってくるでしょう。売り先行か買い先行かをあらかじめ決めておくと、資金計画も立てやすくなります。
資金の目処が立てば、新居探しをスタートします。新居探しはインターネットや不動産会社のサイト・直接不動産会社に問い合わせるなどして探すのが一般的です。売却を依頼している不動産会社がいるなら、購入についても相談しておくとスムーズに進めやすくなります。
また、新居探しの際には事前に希望条件と優先順位を付けておくと、効率よく探しやすくなるでしょう。新居の目星がついたら、住宅ローンの仮審査を受けます。仮審査に通過し、売主との条件に合意すれば、売買契約に進みます。
売買契約後は速やかに住宅ローンの本審査手続きに進めることが大切です。仮審査に受かっても本審査に必ず通るとは限りません。本審査に落ちてしまうと一から新居の選び直しとなるので注意しましょう。本審査に通れば、決済引き渡しとなります。
「購入」と「売却」のそれぞれの流れを把握したら、売り先行か買い先行かを選んで、住み替えの計画を立てていくとよいでしょう。売り先行か買い先行かで悩む人は、資金計画の立てやすい売り先行がおすすめです。
住み替えにはさまざまな費用が発生します。高額な取引になる住み替えではかかる費用も高額になるので、どのような費用が必要かを把握して資金計画を立てることが大切です。
売却と購入でかかる費用の目安は、次のようになります。
例えば、2,000万円で旧居を売却し、3,000万円の新居を購入する場合は、以下の費用が必要になります。
ここからは、売却と購入それぞれの費用を分けてみてきましょう。
まずは、売却にかかる費用です。売却では、売却額が入るだけでなく、仲介手数料などの支出も伴います。ここで支出について理解しておかないと、思ったよりも手元に残らない可能性もあるので注意しましょう。
売却でかかる費用は次の通りです。
上記のうち、印紙税と登録免許税は必ず発生する税金です。譲渡所得税については、利益が発生した場合のみかかるため、利益が出なければ税金は発生しません。また、利益が出る場合でも「3,000万円特別控除」など特例を利用することで税額を抑えることができるので、利用を検討してみるとよいでしょう。
住宅ローン返済中の物件の場合、繰り上げ返済のための費用や抵当権抹消にかかる費用も発生する点には注意が必要です。
次に、購入にかかる費用を見ていきましょう。
購入では、下記のような費用が発生します。
購入時には、物件価格だけでなくさまざまな費用が発生します。これらの費用はローンに組み入れられない場合があり、自己資金で調達する必要がある点には注意しましょう。
住み替えの注意点として、次の4つが挙げられます。
それぞれ詳しくみていきましょう。
住み替えでは売却と購入を同時に進めていくため、それぞれ費用が必要となり、その出費も高額になります。特に、売却額でローン返済を検討している場合、売却額によっては住み替えができない可能性がある点には注意しましょう。売却額でローンを完済できない場合、足りない分を自己資金で補うなどの工夫が必要です。
ローン残債がある場合は残債の正確な額と売却予定額を比較して、住み替え計画を慎重に進める必要があります。
また、売却・購入後にも税金の支払いや引越し・家具家電購入など、さまざまな費用が必要です。しっかりとした資金計画ができていないと、予定と大きく費用が異なり資金が厳しくなる可能性もあるでしょう。資金計画が大きく狂ってしまうと、その分を自己資金で対応するか、新居を妥協するかを選択しなければなりません。
それでも対応できないと住み替えできない可能性も出てくるので、支出をできるだけ詳細に把握し余裕のある資金計画を立てるようにしましょう。
住み替えには、3ヵ月から1年ほどかかります。どんなに段取りよく進めていても、売却・購入共に相手がある取引のため、予測していない事態も起こり得ます。売却が思うように進まず、新居の購入ができなかったり、ダブルローンになったりする可能性もあるでしょう。新居がなかなか見つからなければ、仮住まいが必要になる場合もあります。
余裕のないスケジュールでは、売り急いで価格を下げざるをえなかったり、新居を妥協する羽目になったりもするでしょう。購入と売却の流れを把握するとともに、不動産会社と相談しながら余裕のあるスケジュール感で進めていくことが大切です。
少しでも早く売りたいと、売却額を下げる人も少なくありません。また、買い手から値引き交渉を受ける可能性もあるでしょう。
しかし、売却額は新居の費用やローン完済費用などに関わってくるため、安易に下げ過ぎることはおすすめできません。もちろん、ある程度の値引きには応じる姿勢も大切ですが、過度な値引きは避けるべきです。ローン残債や新居への必要な資金などをしっかりと把握し、どこまで下げられるのかを理解しておけば、売却で失敗することを防げます。
反対に、価格設定を相場よりも高く設定するのもおすすめできません。資金調達を踏まえて少しでも高値で売却したいところですが、相場よりも高値ではなかなか買い手が付きにくくなります。買い手が付かないことで売却に時間がかかって、新居購入に進めなかったり、新居を先に購入してダブルローンになってしまったりする可能性もあるでしょう。
また、買手が付かないと最終的に値下げが必要となり、結果として売却が失敗してしまうこともあり得ます。値決めは低すぎず・高すぎず、適正価格を設定することが大切です。
適正価格を設定するには相場を理解する必要があります。複数の不動産会社に査定依頼し、相場を把握しておくと、相場からかけ離れた値段を付けることを避けられるでしょう。
不動産の査定については、以下の記事でも詳しく解説しているので参考にしてください。
関連記事:【不動産の見積もりとは?】有料と無料のメリット・デメリットや注意点を徹底解説
住宅ローンを利用するには、仮審査・本審査の両方を通過する必要があります。
仮審査自体は物件が決まる前でも受けることが可能です。インターネットでの仮審査に対応している金融機関も多く、仮審査だけなら即日から1週間ほどで結果が分かります。
事前に仮審査を受けておくことで、自分がいくらまで借りられるのかを把握することができ、予算も立てやすくなるでしょう。また、不動産会社から予算に合う物件を紹介してもらいやすくなることも期待できます。
今回は、住み替えのタイミングについて紹介しました。
住み替えの最適なタイミングは家庭の事情によって異なります。家族構成や資金計画などから、自身の家庭に合わせたタイミングで検討することが大切です。
また、住み替えでは購入・売却のそれぞれの手続きを進める必要があり、売り先行・買い先行・同時進行の3つの方法から選ぶことになります。それぞれメリット・デメリットが異なるので、自分に合った方法で進めていきましょう。
この記事で紹介した住み替えタイミングや流れ、注意点を参考に、満足いく住み替えを実現してください。