まずは、家を解体するために必要な費用とその相場について詳しくみていきましょう。一般的に、家の解体工事には以下のような費用がかかります。
まず、通常の工事と同様に、養生費や足場組の費用がかかります。さらに、家の構造によっては、取り壊し作業に重機が必要です。重機はレンタルになることが多く、使用日数・使用台数によって費用が変動します。よって、解体工事には大量の産業廃棄物が発生するため、処分費用もかかってしまうでしょう。
また、解体工事には人手が必要なため、人件費もかかります。人件費は現場作業をする人だけでなく、重機の運転手や廃棄物を積んで運搬する人手も必要になります。作業に携わる人数によって、費用は変動するでしょう。
このように、条件によって費用は大きく異なるのです。
次に、家を解体するために必要な費用を詳しくみていきましょう。家の解体費用の内訳は、以下の通りです。
一般的に、家が大きく頑丈であるほど、解体時間とコストが必要です。しかし、複雑な構造をした家屋や重機搬入経路が確保しにくい狭小住宅など、解体費用が高額になるケースも存在します。
家の解体費用は敷地の広さだけでなく、家の構造や周辺環境によっても変動することがあることを知っておきましょう。
次に、家の解体費用の相場を構造別にみていきましょう。以下は、代表的な家の構造における1坪あたりの解体費用相場をまとめたものです。
鉄骨造は、鉄合金(鋼・スチール)を柱や梁などの骨組みに使う構造のことです。また、鉄筋コンクリート造は鉄骨造と異なり、コンクリートに鉄筋を埋め込んで固めたものを指します。
戸建て住宅の一般的な坪数は平均30坪といわれています。この住宅を解体するためには、90〜120万円ほどの費用が必要になります。柔らかく壊れやすい構造であるほど解体が簡単なので、費用も安くなるのです。
しかし、家の構造以外の要因によって、解体費用が相場より高くなってしまうこともあります。解体費用が高くなる・安くなる条件を詳しくみていきましょう。
家の解体費用が高くなる条件は、以下の通りです。
ゴミ処理施設や業者の営業所が遠方にある場合は、追加の交通費がかかってしまうでしょう。さらに、重機を使った解体が不可能となると、解体・運搬作業に時間・人的コストのかかる「人力解体」で対応せざるを得なくなります。
解体を考えている家が上記のような条件に当てはまっているかは、事前に確認をしておいた方が良いでしょう。
家の解体費用が安くなる条件には、以下のようなものがあります。
解体現場の立地・敷地条件は、変更できるものではありません。しかし、家財道具の運び出しや近隣業者への依頼など、工夫次第で費用が抑えられるケースもあります。少しでも安く依頼したい場合には、上記の条件に当てはまっているかを事前に確認しておきましょう。
家の解体費用は、地域によっても変動します。地域別の解体相場は、以下の通りです。
なぜ、地域ごとに相場の違いが出るのでしょうか。その理由には、以下のようなものがあります。
例えば、解体作業で重機をレンタルする場合、都市部と地方では金額に差が出ることがあります。事務所や重機置き場の土地代は地域によって異なるので、重機の維持費も変動するためです。
さらに、作業が円滑におこなえるかどうかも関係しています。施工に十分なスペースがあれば、養生作業や廃材運搬も円滑になるでしょう。
一方、都市部の狭小住宅などは、隣り合う敷地同士が近い特徴があります。狭い土地ほど作業効率が下がり、解体に時間やコストがかかってしまうのです。
家の解体費用は大きな出費です。基本的には一括での支払いを求められますが、条件に合致する場合は助成金やローンを利用できることもあります。 金銭的な理由から解体依頼をためらっている人は、ぜひ参考にしてみてください。
国土交通省では「空き家対策総合支援事業」として空き家除去・活用の促進をおこなっています。そのため、各自治体は空き家の所有者に解体費用の補助をおこない、積極的に空き家を減らすよう取り組んでいるのです。
しかし、補助が受けられる条件は自治体ごとに異なっているので、注意しましょう。さらに、補助金制度を利用するには、事前申請が必要です。解体工事をおこなう前に、住んでいる地域の補助金・助成金制度についての要件を確認し、対象かどうかチェックしておくことをおすすめします。
また、「老朽危険空き家解体補助金」や「空き家解体補助金」など、住んでいる自治体によって補助金制度の名称は異なるので、詳しくは自治体のホームページを確認するか、直接問い合わせてみましょう。
家の解体費用にローンを利用できるケースもあります。売却を前提にした解体工事なら、「フリーローン」や「空き家解体ローン」が適用可能です。また、解体後に新築工事する場合は、解体費用を新居の住宅ローンに組み込める可能性もあります。
銀行などで取り扱っているフリーローンは、目的に関わらず利用できるローンです。低い金利で使えるメリットがありますが、厳しい審査をクリアしないと融資してもらえないので、注意しましょう。
また、「空き家解体ローン」は地方銀行などで多く取り扱われている金融商品です。扱う金融機関によって対象となる空き家の定義が異なるため、売却前の解体費用には適用できない可能性があります。空き家解体ローンを利用したい場合は、解体予定の家がローンの対象かどうか、確認しておく必要があるでしょう。
家の解体費用は、安く見積もっても数十万はかかるものです。補助金の利用以外にも、解体費用を安く抑えるにはいくつかのコツがあります。
【家の解体費用を安く済ませるコツ】
家の中に家財道具が残った状態で解体を依頼すると、追加費用がかかる場合があります。業者に搬出してもらう場合、解体費用の1〜2割ほどの追加費用が必要です。家財道具の量・サイズや、建物の大きさ(運びやすさ)によっても変動しますが、可能な限り事前に搬出しておけば節約になるでしょう。
さらに、「庭に放置された草木がある」「大きな木がある」などの場合は、工事の前に処理しておくことをおすすめします。大きな木は対応できなくても、可能な範囲で処理しておくと工事にかかる日数を減らせるかもしれません。
上記のコツを押さえて、かしこく解体工事を依頼しましょう。
家の解体工事は、以下のような手順で進んでいきます。
工事に着手するまでは、施工主にもやることが沢山あります。解体工事で失敗しないためにも、見積もりや事前準備をしっかりおこないましょう。
まずは、解体業者を探して費用の見積もりをおこないます。見積もりをもらうまでの手順は、以下の通りです。
解体業者への見積もり依頼は、電話・メールなどで簡単に申し込み可能です。依頼を受けた業者は、見積もりのための現場調査をおこないます。
このとき、建物の内部もしっかり確認してもらう必要があるため、可能であれば施工主も同席しましょう。解体作業に重機が必要か、重機の通路は確保できるかどうかも併せて確認してもらうと効率的です。
また、現場調査に同行した場合は、その場でおおよその金額を聞いておけるメリットもあります。現場調査後は、書面で詳細を記した「見積書」を提出してもらいましょう。
見積書を取ることで、気になる業者同士を比較することもできます。
見積もりをもらったら次は、解体工事の事前準備です。解体工事の前には、以下のことを済ませておきましょう。
家の取り壊し作業には、重機の搬入・搬出や騒音などが発生するため、近隣住宅への配慮が不可欠です。挨拶回りは業者が対応してくれるケースもありますが、施工主が同伴したほうが良い印象なため、トラブル防止につながります。
また、解体工事の前には、電気・水道・ガスなどのライフラインの停止・撤去をしておかなければなりません。基本的には解体業者が対応してくれますが、ときには施工主自身の対応を求められるケースもあるので、注意しましょう。
準備が整ったら、解体工事に着手していきます。解体工事の手順は、以下の通りです。
まずは、解体に必要な足場組をおこない、粉塵・騒音防止のための養生シートを貼ります。次に、建物内部の設備(ドアや断熱材・住宅設備機器など)を分別しながら解体し、最後に柱・屋根などの構造体を解体する流れです。
建物の解体完了後、コンクリート基礎を掘り起こします。
解体作業の終了後は、後処理をおこないます。解体作業後は、以下の2つの処理が必要です。
家の解体後は、廃材を分別・搬出しなければなりません。木材・ガラスなどの産業廃棄物をそれぞれトラックに積み込み、廃材処理施設へと搬出します。全ての処理が完了したら、土地を整地して仕上げ完了です。
しかし、敷地内に草木が茂っている状態だと抜根作業が追加されてしまうので、注意しましょう。
ここからは、家を解体する前に知っておくべき注意点について、解説していきます。家の解体に関する注意点は、以下の通りです。
家や土地の状況によっては、解体しないほうが良いケースもあります。損をしないためにも、しっかりチェックしておきましょう。
建物の解体後は、必ず「建物消失登記」をすることが義務づけられています。解体業者は関与しない部分なので、忘れずに手続きをおこないましょう。万が一手続きしなかった場合は、以下のような問題が発生します。
【手続きしなかった場合のリスク】
建物消失登記をしなかった場合、不利益を被るだけでなく罰金が発生してしまう可能性もあるので、十分注意しましょう。登記手続きの流れは、以下の通りです。
【建物消失登記の手続きの流れ】
手続きは、土地家屋調査士に依頼して代行してもらうことができます。しかし、比較的簡単に手続きできるので、費用を抑えたいなら自分で対応するのがおすすめです。
家を解体することにより、その土地に再建築できなくなる可能性があることも、考えられるでしょう。
新たに建物を建てる際は、建築基準法で定められている基準を満たしている必要がありますが、時代とともに法律も改正されていきます。家を建てた当時は基準を満たしていたとしても、改正後の基準に土地が適応しているとは限りません。
建物を再建築できない土地を売却するのは、難しいものです。解体工事の前に、現在の建築基準法の基準を満たしているかどうか、確認しておく必要があるでしょう。
また、家を解体せずとも売却できるケースもあります。建物を残したままのほうが、土地売却に有利な可能性もあるのです。家を解体せずに「古家つきの土地」として売り出すことで、買い手は家を残すか・解体するのかを自由に選べるメリットがあります。
つまり、リフォームやリノベーションをすることで住み続けられる家・耐震基準を満たしている家であれば、古家つきのほうが売れやすくなるのです。
土地売却を検討している場合は、家を解体する前に一度、不動産会社へ相談してみても良いかもしれません。
解体工事の前に、家の中のゴミはきちんと処分しておきましょう。
解体作業で出る廃材は「産業廃棄物」として処理できますが、家の中にある家庭ゴミは「一般廃棄物」となるため、解体業者は処分することができません。そのため、解体工事を始める前に、家庭ゴミを確実に処分しておく必要があります。
ゴミを処分しておかなければ追加費用を請求される可能性があり、余分なコストがかかってしまうでしょう。あらかじめ、自分で処理できる範囲の片づけを済ませておくようにしましょう。
家の解体業者を探す方法は、以下の通りです。
家の売却が前提である場合は、売却を仲介してくれる業者に依頼すると良いでしょう。解体が必要かどうかを判断し、必要に応じて解体業者も紹介してくれるメリットがあります。
また、信頼できる解体業者を見つけるために「相見積もり」を取るのもおすすめです。複数の業者に問い合わせて、金額・対応などの印象が良いところに正式に依頼することで、業者選びに失敗するリスクを軽減できます。
いずれにしても、解体についてよく知っているプロに相談をして決めることがおすすめです。解体費用は安くはないため、後から損しないよう慎重に業者を選びましょう。
家の解体費用は決して安い金額ではありません。そのため、いかに安く費用を抑えられるかが重要になります。安くなる条件やコツを押さえ、可能な範囲で対策していきましょう。
また、解体費用の相場や手順だけでなく、家を解体する必要性・解体した際のデメリットについても正しく理解しておくことが必要です。解体してしまってから後悔することのないよう、十分に下調べをしてから工事を依頼するようにしましょう。
関西学院大学法学部法律学科卒。
宅地建物取引士、管理業務主任者、2級FP技能士(AFP)、登録販売者など多岐にわたる資格を保有。 数々の保有資格を活かしながら、有限会社アローフィールド代表取締役社長として学習塾、不動産業務を行う。