固定資産税は、マンションや住宅などを所有する方が支払う税金です。地方税となるため、住所のある自治体に納めるのが基本で、毎年1月1日の時点で所有している方が支払います。
建物だけではなく、所有している土地や償却資産も固定資産税の対象になります。固定資産税の対象となる土地・建物・償却資産の主な種類は、下記の通りです。
償却資産の場合、事業用資産はすべて対象となり、会社で使用しているコピー機なども該当します。
土地・住居の場合は、固定資産税課税台帳に氏名の記載があれば、その場所に住んでいなくても所有者と認められた際には支払わなければいけません。
固定資産税は、固定資産税評価額に標準税率の1.4%をかけることで求められます。計算式は下記のようになりますが、自治体によっては標準税率が1.5%や1.6%のこともあるため、事前にチェックしておいてください。
固定資産税評価額×1.4%=固定資産税
固定資産税評価額は、国土交通省が運営する土地情報総合システムの「地価公示 都道府県地価調査」もしくは役所で「固定資産税評価証明書」を取り寄せることで確認が可能です。
基本として、土地は時価の60%から70%ほど、建物は建築費の50%から70%ほどが標準額となります。
実際に、新築3,000万円の戸建ての固定資産税をシミュレーションしてみましょう。下記の条件における固定資産税について紹介します。
土地の面積:120平米 建物の面積:80平米 土地の取得費:1,400万円 建物の建築費:1,600万円
評価額を70%として計算すると、土地の固定資産税評価額は980万円、建物は1,120万円です。また、新築なので軽減措置が適用され、建物の固定資産税は2分の1になります。さらに、住宅用地の特例により土地の課税評価額が6分の1になります。計算式は、下記の通りです。
この2つの金額を合計すると、2万2,000円+7万8,000円=10万円となり、新築3,000万円の戸建ての固定資産税は10万円です。ただし、あくまで目安としての計算となるため、必ずこの金額になるということではありません。
では、6年後・10年後・20年後の固定資産税がどのように変化していくのかを詳しくみていきましょう。土地の固定資産税は2万2,000円のままなので、建物の固定資産税の変化を詳しくお伝えします。
新築の軽減措置が終わると、当然ですが税額は元通りとなります。しかし、建物の場合は経年劣化が生じるため、築年数により評価額が下がっていくのが特徴です。
そのため、上記のように築10年の場合は新築時と大差のない税額となり、築20年になればそれ以上に下がります。上記の減価補正率は、「東京法務局管内新築建物課税標準価格認定基準表」を参考にしているので、チェックしてみてください。
固定資産税には、負担を軽減する制度があります。
新築住宅の建物に対する軽減措置 住宅用地の特例
ここでは上記の2つについて詳しく解説します。
住宅の床面積が50㎡(戸建て住宅以外の貸家住宅の場合は40㎡)以上280㎡以下の建物を、新築で購入した場合に限り受けられる軽減措置です。減額率は、以下の通りになります。
住宅一戸あたりの居住面積が120㎡を超えている場合は、120㎡に相当する部分の固定資産税額が50%減額されます。
建物の課税標準額が2,000万円の新築一戸建ての場合、固定資産税の計算式は下記の通りです。
2,000万円×1.4%=28万円
上記の計算で算出した28万円の50%軽減となるため、ここでは課税金額は14万円となります。
建物ではなく、住宅が建てられる土地の特例です。面積が200平米を超えるかどうかによって軽減率が異なります。
特例が適用された場合のそれぞれの計算式は、下記の通りです。
固定資産税=固定資産税評価額×1/3×税率 固定資産税=固定資産税評価額×1/6×税率
固定資産税評価額が下がるので、その分固定資産税も安くなります。
本記事でお伝えしているように、固定資産税には定められた計算方法があります。そのため、軽減措置や特例以外に減額となることはありません。固定資産税を安くするためには、所有する固定資産を増やさないのがポイントです。
屋根と三方を囲む壁があれば固定資産とみなされるため、ガレージや物置は対象となる可能性が高くなります。
また、基礎が固定されているかどうかなど課税対象におけるルールがあるため、まずは事前に確認し、少しでも固定資産を少なくできるようにしておきましょう。
固定資産税は、毎年1月1日に固定資産を所有している方が支払うべき税金です。住宅を1月2日に購入した場合は、支払いは翌年からとなります。納税通知書と振込用紙が毎年4月から6月あたりに届くため、そこに記載された案内を確認して支払ってください。
固定資産税は地方税となるため、支払先は住所のある自治体です。一般的に4回にわけて支払いますが、分割せずに一回で支払う方法もあり、どちらを希望するか選択できます。しかし、一括払いをするからといって割引されるようなことはなく、分割での支払いであってもトータルの金額は変わりません。
固定資産税には、以下3つの注意点があります。
滞納すると遅延損害金が発生する 軽減措置を受けるためには期限内に申請が必要 軽減措置が切れるタイミングに注意
固定資産税についてわからない部分は多いでしょう。それぞれの内容を正しく把握し、固定資産税に対する理解を深めてください。
固定資産税は、通知書や振込用紙に記載された期限内に支払わなければいけません。支払いが遅れてしまうと、最大で1年間に14.6%の延滞金が生じてしまいます。
分割の場合は、6月・9月・12月・2月のようにわけられていますが、必ずその月に支払わなければいけないというルールはないため、忘れないうちに早めに支払いを済ませておくと安心です。
軽減措置を受けるためには、必ず期限内に申請しなければいけません。自治体の窓口に「住宅用地等申告書」を提出するだけなので、とくに難しいことはありません。建築した翌年の1月31日が申請期限なので、忘れないようにしましょう。
申請しない場合、軽減措置が受けられずに固定資産税が高くなってしまいます。少しでもお得に納税するためにも必ず申請するようにしてください。
新築の一戸建ては3年間、マンションは5年間の軽減措置がありますが、この期間を過ぎれば固定資産税の軽減はなくなります。支払い額がこれまでよりも高くなることもあるので、気をつけてください。
本記事でもお伝えしたように、10年・20年と築年数に応じて固定資産税評価額は下がります。しかし、3年・5年などの短い期間では、そこまで大きな差が出ることはありません。そのため、軽減措置がなくなったらどのくらいの支払が必要になるのか、事前に計算しておくことをおすすめします。
新築の一戸建ては、軽減措置を受けることで固定資産税を安くすることが可能です。新築住宅の建物に対する軽減措置では、建物の固定資産税が50%も減額されます。さらに、住宅用地の特例も適用されれば、土地の固定資産税も安くなります。
しかし、申請しなければせっかくの軽減措置や特例を受けられないので、忘れないように注意しましょう。
固定資産税は、家を買ったら払わなければいけません。本記事で紹介した固定資産税の正しい算出方法やシミュレーションを参考に、自宅の固定資産税についてしっかりと理解しておきましょう。
関西学院大学法学部法律学科卒。
宅地建物取引士、管理業務主任者、2級FP技能士(AFP)、登録販売者など多岐にわたる資格を保有。 数々の保有資格を活かしながら、有限会社アローフィールド代表取締役社長として学習塾、不動産業務を行う。