3,000万円で買った家がいくらで売れるのか、いつ売るのが良いのかについて知りたい方も多いでしょう。一般的に、家の売却価格は、購入したときより低い価格になります。建物の価値が築年数に応じて徐々に下がるためです。
本記事では、3,000万円で買った家を例にして、築年数ごとの売却価格の目安と高く売るためのコツ、売る際の注意点を詳しく解説します。この記事を読んで売却のコツや注意点がわかれば、3,000万円で買った家をできるだけ高く売却できるでしょう。
住宅の売却価格は、購入したときの価格よりも低い価格になるのが一般的です。建物は、築年数の経過によって徐々に価値が下がるためです。
住宅の価格は、土地の価格と建物の価格を合計した金額になります。土地の価格は、評価額や周辺相場などから算出されるため、経年によって価値が下がることはありません。一方、建物は建築されたときから価値が下がるため、住宅全体の売却価格は年数が経つにつれて低くなります。
また、建物は入居によっても価値が下がる点に注意が必要です。例えば、建築から1年未満でも入居すれば中古物件の扱いとなるため、新築未入居の建物より低い価格となります。
では、3,000万円で買った家がいくらで売れるのか、築年数ごとに見てみましょう。
以下の図は、国土交通省が公開した資料「中古住宅流通、リフォーム市場の現状」の中で、建物の価値が新築から経過した年数ごとにどれくらい下がるのかをグラフにしたものです。
引用:国土交通省「中古住宅流通、リフォーム市場の現状」
建物は構造により法定耐用年数が決められており、木造住宅の場合は22年間、鉄筋コンクリート造の場合は47年間です。つまり、木造住宅は22年を経過すると、建物の価値がほぼゼロに近くなります。実際に上記のグラフを見ると、新築から徐々に価値が下がり、築22年までに建物価値が90%まで下がっています。
ただし、実際の建物価格は、法定耐用年数だけでは決まりません。立地や建物の使用状況などさまざまな条件から算出されます。近年では、住宅性能が向上し、法定耐用年数の22年を過ぎても使用できる木造住宅は珍しくありません。法定耐用年数はあくまでも税制上定められた年数であり、実際に使用できる年数とは異なると考えましょう。
実際に売却する際の建物価格は、原価法を用いて算出するケースが多いです。原価法とは、対象の建物を新築したと仮定したときの価格(再調達原価)に、耐用年数と経過年数による減価修正をおこなって算出する方法です。原価法の計算式は以下のとおりです。
原価法による価格=再調達原価×(耐用年数-築年数)÷耐用年数
原価法では、築年数により建物価格が減少します。上記のグラフによると、築5年で30%、築20年で85%まで価格が下がると試算されています。
では、この試算に基づき、3,000万円で買った家の建物価格がどれくらい現象するのかをシミュレーションしてみましょう。
3,000万円のうち、建物価格が2,000万円、土地価格が1,000万円として計算すると以下の表のとおりです。土地価格は変動しないと仮定します。
例えば、築1年の場合、建物価格の価値の減少率は5%のため、売却価格の目安の計算式は以下のとおりです。
建物価格2,000万円×(100%-5%)+土地価格1,000万円=2,900万円
年数が経過すると建物価格は徐々に下がり、築10年の時点で新築時の約5割です。築30年になると、建物の価格は90%以上減少するため、売却価格はほぼ土地価格となります。
ここからは、築年数ごとの売却価格の目安を詳しく解説します。
参照:公益財団法人東日本不動産流通機構|2022年首都圏不動産流通市場の動向|p8 参照:国税庁|主な減価償却資産の耐用年数表|p1 参照:国土交通省「中古住宅流通、リフォーム市場の現状」|p11
築5年未満の場合、3,000万円で買った家の売却価格の目安は2,500~2,900万円です。
築5年未満だと建物の劣化や汚れが少なく建物がきれいだと想定されるため、建物価格はほとんど下がりません。建物の状態がよければ高く売れる可能性もあります。
築浅物件は、新築を購入したいけれど予算的に届かない層に需要があります。築浅物件は販売されている物件数が少ないため、高値での売却が期待できるでしょう。
築5年の場合、3,000万円で買った家の売却価格の目安は2,400万円です。以下の計算式で算出できます。
建物価格2,000万円×(100%-30%)+土地価格1,000万円=2,400万円
築5年は一般的に認識される「築浅物件」には該当しなくなるため、購入層にも変化が生じます。そのため、築浅物件と価格の面で差別化しなければなりません。ただし、しっかりとメンテナンスされて設備や建物の劣化が少ない場合は、相場より高く売れる可能性もあります。
築10年の場合、3,000万円で買った家の売却価格の目安は1,900万円です。計算式は以下のとおりです。
建物価格2,000万円×(100%-55%)+土地価格1,000万円=1,900万円
築10年になると建物価格の減少割合が50%を超えるため、築5年に比べて売却価格は大きく下がります。
建物の汚れや傷みがあることが想定され、外壁塗装や屋根塗装、水回りのリフォームなど建物のメンテナンスが必要な場合もあるため、価格の交渉を受ける可能性もあるでしょう。
築20年の場合、3,000万円で買った家の売却価格の目安は1,300万円です。以下の計算式で求められます。
建物価格2,000万円×(100%-85%)+土地価格1,000万円=1,300万円
築20年になると木造の減価償却年数に近くなるため、建物の価値の下落率は80%を超え、土地価格で取引される物件が多くなります。
ただし、築年数が経過した物件はリフォームの需要があるため、購入価格を抑えてリフォームに予算を割きたい層に人気があります。公益財団法人東日本不動産流通機構が公表している「2022年首都圏不動産流通市場の動向」によると、首都圏で成約した中古戸建の平均築年数は18~23年です。市場でも築20年前後の物件が多く売買されていることがわかります。
参照:公益財団法人東日本不動産流通機構|首都圏不動産流通市場の動向|p8
築30年の場合、3,000万円で買った家の売却価格の目安は1,200万円です。算出する計算式は以下のとおりです。
建物価格2,000万円×(100%-90%)+土地価格1,000万円=1,200万円
築30年では、建物の価値がほとんど加算できないため、土地の価格で売買されるケースが多く見受けられます。
築古の物件は、中古戸建として売却するか、土地として売却するかの判断が大切です。土地として売却する場合は、建物の解体費用や土地の測量費用を売主と買主どちらが負担するかにより最終的な手残り金額が異なります。どのような方法で売却するかを不動産会社とも話し合いましょう。
3,000万円で買った家の売却価格は、3,000万円より低くなるのが一般的です。しかし、なかには購入時よりも高く売却できるケースもあります。それは、土地価格が上昇しているケースです。
家の売却価格は、土地価格と建物価格の合計であるため、土地の価格が上昇すれば売却価格が高くなる可能性があります。
土地の価格が値上がりするのは、主に以下のケースです。
都心部などの人口集中地域では、土地価格が上昇する傾向にあります。公益財団法人東日本不動産流通機構が公表している「首都圏不動産流通市場の動向(2022年)」によると、首都圏における2022年に成約した100~200㎡の土地の㎡単価は前年比15%、価格は前年比15.2%上昇しています。
また、近隣に再開発や街の整備などの予定があると、周辺環境や利便性が良くなることが想定されるため、土地価格が高くなる傾向があります。
将来的に、買ったときの購入価格より高く売却したい場合は、土地の上昇が予想される地域で購入するのがおすすめです。
参照:公益財団法人東日本不動産流通機構|首都圏不動産流通市場の動向(2022年)|P9
不動産会社が建物価格を査定する際は、築年数や建物の状況、立地、周辺環境、市場の動向などの条件を鑑みて、算出します。そのため、コツをつかめば買ったときより高く売却できる可能性があります。
3,000万で買った家を高く売るためのコツは、以下のとおりです。
本章では、これらの3つのコツを詳しく解説します。
家を高く売るには、築浅のうちに早く売り出すことが大切です。早く売りに出せば、建物価格が下がる前に売却できるためです。
例えば、築10年で売るより築5年で売るほうが建物価格の下落率が25%も異なります。親の介護で同居を検討している場合など、将来的に売却を予定している場合は、5年後に売却するより今売却したほうが高く売却できます。
将来を予測することは困難ですが、早めに決断することで高く売却できる可能性が広がり、将来の選択肢も増えるでしょう。
3,000万円で買った家を高く売るためには、余裕を持った売却期間を設定することも重要です。
売却期間が短いと、早く売却を決めるために売却価格を高めに設定できません。また、購入希望者から条件交渉があった場合、早く売りたいと焦ってしまい、希望の売却金額より安くても交渉に応じてしまいがちです。
売却活動を始めてから売却が決まるまでは、約3か月かかります。引渡しまでの期間を含めると6か月~1年かかる可能性もあります。売却期間に余裕があれば、良い条件の希望者が出てくるまで待つことが可能です。
高く売るためには、売却する最低限の希望価格を決めておき、希望額で売れるまで待つ余裕をもちましょう。
不動産の査定価格は不動産会社によって異なります。そのため、少しでも高く売るには、複数の不動産会社に査定を依頼しましょう。
複数の会社に査定を依頼することで、物件の適正価格を判断できます。また、不動産会社ごとにサービス内容が異なるため、サービス内容でも比較しましょう。例えば、無料のハウスクリーニングや、壁・床の補修をしてくれるサービスなどもあります。サービスを活用することで物件に付加価値が付くため、より高値で売却できる可能性が高まるでしょう。
3,000万円で買った家を売る際には、以下の3つに注意しましょう。
本章では、それぞれの注意点について詳しく解説します。
住宅ローンの返済が残っている場合は、売却時までに完済する必要があります。住宅ローンを組んでいる物件には金融機関の抵当権が付いているため、引き渡しまでに抹消しなければなりません。
売却が決まったら金融機関に連絡して残債の金額を確認しましょう。手持ちの資金で完済する場合は、売却の決済までに残債を支払う必要があります。買主から受領する売買代金で完済する場合は、売却の決済と残債の完済を同時に行います。売買価格が残債を下回る場合は、事前に差額を口座に入金しておかなければならないため注意が必要です。
住宅ローンが残っている家を売却する方法については、以下の記事も参考にしてください。
関連記事:住宅ローン返済中の家を売却する方法!注意点や失敗しないためのポイントを解説
築浅の住宅を売る場合は、売却理由の伝え方に注意が必要です。せっかく購入した家を数年で売却するのはなぜだろうと疑問に感じる方がいるためです。不良物件ではないか、近隣トラブルがあったのではないかなど、不安を膨らませてしまう方もいます。
購入希望者の不安を解消し売却をスムーズに進めるために、売却理由は丁寧に説明することが重要です。例えば、親の介護が必要になった、急に転勤になったなど、購入者が納得できる理由を伝えましょう。
家を売って利益が出たら確定申告が必要です。家を売って得た利益には譲渡所得税が課されるためです。
一方、売却しても利益が出なければ確定申告は必要ありません。ただし、税制上の特例を受ける場合は確定申告が必要です。
確定申告は、売却した翌年の2月16日から3月15日の間に申告します。間際になって慌てないように、前もって必要書類などを準備しておきましょう。
不動産売却の確定申告に必要な書類や手続きの流れ、計算方法などは、こちらの記事で詳しく解説しています。
関連記事:【不動産売却の確定申告を完全攻略】必要書類や手続きの流れ、計算方法を解説!
3,000万円で買った家を売却する際に、売却価格がいくらなのか知る方法は以下のとおりです。
家を売却する際は、必ず不動産会社に売却査定を依頼しましょう。不動産会社は、現在の不動産市場の動向や地域性、過去の成約事例、建物の状態などから、現在の適正な売却価格を決めます。
不動産会社に査定を依頼する以外に、ご自身で売却価格を調べるには、レインズマーケットインフォメーションと不動産取引価格情報検索の2つの方法があります。
レインズマーケットインフォメーションは、国土交通大臣指定の不動産流通機構が運営するポータルサイトで、過去の取引の成約価格情報を検索できます。地域を入力すると、成約価格や面積、接道、用途地域、築年数などの情報を見られます。
不動産取引価格情報検索は、国土交通省が運営するポータルサイトで、不動産の取引価や地価公示、都道府県地価調査の価格を検索できる土地総合情報システムのひとつです。地域を入力すると、不動産取引の成約価格や坪単価、面積、接道、用途地域などの情報を得られます。
同じ地域で実際に売買された住宅の売却価格や築年数、面積などがわかれば、3,000万円で買った家の売却価格の目安がわかります。
また、住宅の売却相場の調べ方については、こちらの記事で詳しく説明しています。ぜひ参考にしてください。
関連記事:家の売却相場はいくら?戸建ての売却相場の調べ方や築年数別の目安を紹介!
3,000万円で買った家を売却する場合、築年数が浅ければ販売価格はほとんど下がりません。しかし、年数が経過すると徐々に建物の価値が下がり、売却価格も下がります。
3,000万円で買った家を高く売るには、できる限り早く売却活動を始め、長めの売却期間を設定して、希望の売却価格で売れるまで待つ余裕をもつことが大切です。また、複数の不動産会社に査定を依頼するのも、家を高く売るコツのひとつです。
家を売る際の心構えや不動産会社の選び方は、こちらの記事で詳しく解説しています。
関連記事:不動産売却の基礎知識をプロが解説!知らなきゃ損する売却時の心構えと不動産会社の選び方
1978年生まれ。不動産会社に勤務後、大手ポータルサイトに入社。退社後、株式会社南総合研究所を2018年に設立。
大手から中小不動産会社様向けに幅広くコンサルタント支援を実施。支援業務として、不動産会社への経営戦略の策定から実行支援、各営業支援をメインに展開している。
また、不動産会社向けのオリジナル営業研修の提供や複数の不動産事業者向けメディアへのコラム掲載も高い評価を受けている。