土地の名義変更とは、所有者が変更になったときに登記簿の名義変更をおこなうことです。具体的には、法務局の登記簿に記載されている不動産所有者の情報を変更することを指します。
そもそも、土地を含めた家屋・建物などのすべての不動産の所有者情報は、法務局の登記簿で管理されています。相続や売却などで土地の所有者が変わった場合には、登記簿の名義を変更しなければなりません。
また、上記の不動産の所有者情報が記載された登記簿は、誰もが閲覧できるように公開されています。その理由は、主に以下の2つです。
登記簿は誰でも確認することができるため、名義変更の際には現在の所有者情報を事前に把握してからおこなう必要があります。
土地の名義変更に必要な書類はタイミングによって若干変わりますが、主に以下の通りです。
登記原因証明書は、指定されたフォーマットで自作する必要がある点に注意しましょう。もし、自分で作成することが難しいようであれば、司法書士に安価で作成を依頼することが可能なので、検討することをおすすめします。
土地の名義変更が必要なタイミングは、次の4つです。
上記のそれぞれのタイミングについて、土地の名義変更と絡めて詳しく説明していきます。
土地の名義変更が必要なタイミングの1つ目は、相続のときです。相続が名義変更の理由として最も多いものになります。
相続が起因の土地の名義変更は、「相続登記」とも呼ばれます。しかし、この相続登記自体は、法的な手続き義務はありません。手続きのタイムリミットも特に定められていません。
では、なぜ相続のときに土地の名義変更をしておいたほうが良いのでしょうか。その理由は、相続人が将来的に土地売却をすることになった場合に、所有権を書類として証明しておかないと、買主との間でトラブルに発展するリスクが潜んでいるからです。そのため、タイムリミットが定められていなくても、土地を相続するタイミングで必ず名義変更をおこなうようにしましょう。
相続時の土地の名義変更については、基本的に司法書士に依頼するのがベストでしょう。司法書士は、法務局に提出する書類を作成するエキスパートです。土地の名義変更の手続きに必要な書類は法務局に提出することになるので、最初から司法書士に一任すると手間がかからないでしょう。
遺言書がない場合の相続時の土地の名義変更に必要な書類は、以下の通りです。
【相続による土地の名義変更に必要な書類(遺言書がない場合)】
なお、遺言書がある場合や遺言書が公正書遺言の場合は、必要書類が上記と少し違ってきますので、注意しましょう。
土地の名義変更が必要なタイミングの2つ目は、贈与のときです。相続では土地の所有者が亡くなってからの話でしたが、贈与では所有者がまだ生きている内の話です。存命の所有者が将来を見越して相続人に無償で土地を譲ると、「贈与」ということになります。
贈与契約はほとんどの場合、実の親子で交わされるのが一般的です。しかし、実の親から譲り受けたからといって、土地の名義をそのままにしておくと、将来的にデメリットが生まれるリスクがあります。そのデメリットとは、相続時の土地の名義変更のときと同様に、土地を売りたくなったときに自分のものだと証明ができずに、売れない可能性があることです。
贈与時の土地の名義変更は、実の親子間の取引でも契約書をしっかりと作成する必要があります。そのため、贈与する側とされる側の判断能力がはっきりとしている段階で、早めに土地の名義変更をおこなうのが得策です。
贈与時の土地の名義変更も相続時と同じように、司法書士に依頼すれば漏れがなく、スピーディーに手続きができるでしょう。また、依頼するときは、親子で住んでいる場所が離れていたとしても、必ずしも親の居住地に拠点がある司法書士に限定する必要はありません。場所は考慮せずに、幅広い選択肢のなかから司法書士を選択できます。
贈与時の土地の名義変更に必要な書類は、以下の通りです。
土地の名義変更が必要なタイミングの3つ目は、財産分与のときです。財産分与とは、夫婦が離婚したときに財産を分けることです。このときの財産は金銭だけではなく、土地などの不動産を含めることも可能です。そして、土地を財産分与するときには、名義変更をおこなわなければなりません。
また、財産分与による土地の名義変更の場合は、離婚してから2年以内におこなわなければいけないという期限がありますので、気をつけましょう。
財産分与による土地の名義変更は、夫婦がお互いに納得していれば、司法書士に依頼するのが一般的です。司法書士は、名義変更の書類と一緒に離婚協議書の書類も作成してくれます。一方、夫婦間の意見交換ができないほど関係が悪化している場合は、弁護士を挟む形になることが多いです。その場合は、財産分与および土地の名義変更も弁護士に任せることが多いでしょう。
財産分与時の土地の名義変更に必要な書類は、以下の通りです。
土地の名義変更が必要なタイミングの4つ目は、不動産売買のときです。土地などの不動産を売買するときは、所有権移転登記をおこなうことになります。所有権移転登記とは、土地の所有権を売主から買主に移し、所有者の氏名を変更する手続きのことです。つまり、所有権移転登記が不動産売買時の土地の名義変更になります。
不動産売買時の土地の名義変更は、不動産会社が仲介することがほとんどです。不動産会社に支援してもらいながら、売主と買主が協力して手続きを進めていきます。不動産会社から司法書士を紹介してもらうことも可能です。また、不動産会社に許可を取れば、自分で司法書士を選ぶこともできます。
注意点としては、名義変更の費用を負担するときに売主と買主のどちらになるかが、地域によっては慣習で決まっていることです。費用負担のときに揉めないように、事前に地域の慣習の有無などをチェックしておきましょう。
不動産売買時の土地の名義変更に必要な書類は、以下の通りです。
土地の名義変更にかかる費用は、主に以下の4つになります。
それぞれの費用について詳しくみていきましょう。
1つ目は、登録免許税です。法務局に土地の名義変更手続きを申請するときに発生する税金が、登録免許税になります。登録免許税の納付方法は、別途収入印紙を購入し、法務局に提出する土地の名義変更の申請書に貼る流れです。
また、土地の名義変更手続きの種類によって、登録免許税の税率は以下のように変動します。
上記の表より、例えば土地の評価額が500万円だった場合、相続の登録免許税は500万円の0.4%なので2万円です。一方、贈与・財産分与・不動産売買の登録免許税は、2%の10万円になります。
2つ目は司法書士報酬です。土地の名義変更は自分ですることもできますが、手間と時間がかかってしまいます。司法書士に依頼したほうがスムーズで、時間を短縮できるので便利です。
司法書士に土地の名義変更手続きを依頼した場合は当然、報酬費用の負担が発生します。司法書士の報酬費用の相場は、5~7万円が一般的です。ただし、司法書士の腕やキャリアによっても多少変動することを頭に入れておきましょう。
また、相続のときの土地の名義変更の司法書士報酬は相場より高くなり、10万円ほどになる場合もあります。理由は、相続の土地の名義変更では、ほかの手続きより煩雑になる傾向があるからです。
3つ目は、各種税金です。税金は土地の名義変更そのものにかかるものではなく、手続きごとに発生するものになります。手続きごとにかかる税金は、以下の通りです。
手続きのときに発生する税金に不安があれば、税理士に相談してみるのも1つの手でしょう。
4つ目は、申請時に必要書類を取得するときに発生する費用です。土地の名義変更をおこなうときには、いろいろな必要書類を準備しなくてはいけません。
たとえば、住民票や印鑑証明書を役所で1枚発行してもらう場合は、自治体にもよりますが300円ほどの料金がかかります。また、登記簿謄本(登記事項証明書)を法務局で1通発行してもらう場合は、600円の料金が発生します。
このように少額ですが、書類を発行してもらうのに手数料がかかることに注意しましょう。
土地の名義変更の申請をしてから完了までにかかる期間は、法務局の混雑状況によって変わってきます。具体的な混雑状況が知りたい場合は、WEBで「法務局完了予定」と検索してみましょう。
通常であれば、法務局の窓口か郵送で申請してから、特に書類の不備などがなければ1~2週間で審査が完了します。
しかし、法務局に申請をする前には、戸籍謄本や住民票などさまざまな必要書類を揃えなければなりません。本籍地が遠方にあり、仕事で忙しいなどの事情で直接役所の窓口に行けない場合は、郵送によるやり取りで書類を取り寄せる必要があります。郵送によるやり取りが発生した場合は、すべての必要書類を揃えるのに、最大1ヶ月程度は見ておいたほうが良いでしょう。
そして、必要書類がすべて揃ってから、法務局に提出する申請書類を作成する流れになります。少しでも準備期間を短縮したい場合は、司法書士への依頼がおすすめです。
今回は、土地の名義変更に必要な書類、発生のタイミング、費用、申請から審査に通るまでの期間などについて解説しました。
名義変更のときに法務局に提出する申請書は、自分で作成することもできますが、時間や手間がかかります。スムーズに手間をかけずに完了させたい場合は、書類作成のエキスパートである司法書士に依頼をしたほうが良いでしょう。
あらかじめかかる費用やスケジュールを把握しておくことで、トラブルのない名義変更を実現することができます。この記事を参考に、スムーズに土地の名義変更をおこなっていきましょう。
公益財団法人日本賃貸住宅管理協会会員 「プリンシプル 住まい総研」所長 住宅情報マンションズ初代編集長
1988年株式会社リクルート入社し、リクルートナビを開発。 2002年より住宅情報タウンズのフリーペーパー化を実現し、編集長就任。 現スーモも含めた商品・事業開発責任者に従事。2011 年 12 月同社退職。
プリンシプル・コンサルティング・グループにて2012年1月より現職。 全国の不動産会社のコンサルティング、専門誌での執筆や全国で講演活動を実施。