はじめに、マンションオーナーの経営の仕組みについて解説していきます。マンションオーナーの経営方法は非常にシンプルです。
一般的には、購入もしくは建築したマンションに入居者を募集し、家賃を収入源として経営していきます。つまり、物件を取得して入居者を決めれば、毎月安定した副収入が得られるのです。
しかし、支払われる家賃は、全額懐に入るわけではありません。マンションを取得すると固定資産税や管理費、修繕積立費などの費用が発生するため、それらを差し引いた額が収入になります。
また、空室対策も欠かせません。需要の低い土地やその地域の顧客ニーズに合っていない物件を取得しても、空室に悩まされ赤字経営となってしまうでしょう。
このようなリスクを軽減するためには、市場調査やパートナーとなる不動産会社選びが非常に重要です。
続いて、マンションオーナーになるメリットとデメリットを解説していきます。マンションを取得するためには、不動産投資ローンを組む必要があるため、人生を左右する一大事と言っても過言ではありません。
しっかりとメリット・デメリットを理解しておきましょう。
マンションオーナーになるメリットとしては、以下のような点が挙げられます。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
1点目のメリットは、実物資産として形に残るという点です。マンションオーナーと比較されやすい副業として、株・債券・仮想通貨等が挙げられます。これらは、収入を得るのに有効な副業ではありますが、社会情勢や債券発行先の経営業況によって価値がゼロになるリスクを含んでいます。
しかし、マンションオーナーをはじめとした不動産投資は、どんなに社会情勢が悪くなっても物件が実物資産として残ります。さらに、住み手が見つからないという状況になっても、自分の住居として使用することが可能です。
少ない自己資金からスタートできるのも、マンションオーナーの魅力のひとつです。投資用マンションを購入する場合、金融機関から購入資金を借り入れる「不動産投資ローン」を組むことが多いです。
そのため、初期投資額がほとんどない状態でも始めることが可能です。もちろん月々のローン返済はありますが、家賃収入の1部から返済していくことができるため、自己資金を減らすリスクも軽減できます。
マンションオーナーになることは、大きな節税効果も期待できます。投資用不動産を贈与・相続する場合、現金を贈与・相続する際と比較すると、評価額を大幅に下げられるため、評価格にかかる相続税・贈与税を軽減することができます。
子どもや家族に資産を残したい場合は、現金で相続するより不動産に代えた方が節税できます。
マンションを持つことは、生命保険に加入することの代わりになり得るという点も大きなメリットです。不動産投資ローンを組む際は一般的に、「団体信用生命保険」に加入する必要があります。
団体信用生命保険とは、契約者に万が一のことがあって返済が難しくなった場合に、ローン残債を保険金で返済してくれる保険です。
つまり、ローン返済の途中で契約者が亡くなっても不動産は残り、残された家族はローン返済していくことなく、家賃収入を得ながら暮らすことができるのです。このように、不動産投資は生命保険の代わりとしても役立つでしょう。
マンションオーナーになることで、デメリットになる点も存在します。
後悔することのないよう、デメリットについてもしっかりと把握しておきましょう。
不動産は流動性が低いことから、貨幣や株式のような流動性の高い資産に投資する場合と比較すると、売却による現金化が容易ではありません。
また、周辺環境の変化で価値が低くなる可能性を含んでいることも、加味しておく必要があります。
不動産投資の最大のデメリットと言っても過言ではないのが、空室や災害のリスクです。特に、1室のみのマンションオーナーの場合には、空室の期間は無収入になってしまいます。空室が続くということは、その分不動産投資ローンの返済額分の赤字が出るということです。
さらに、地震や洪水などの災害によるリスクもつきまといます。建物が被災してしまった場合には、想定外の修繕費用が発生してしまうでしょう。
ランニングコストがかかる点も、デメリットのひとつです。不動産投資でかかるランニングコストには、固定資産税や修繕積立金があります。
不動産投資ローンは、完済すれば支払う必要はありませんが、固定資産税や修繕積立金は不動産を所有し続ける限り発生する費用です。そのため、初期費用のみではなく、ランニングコストも加味した収益の計算をおこないましょう。
実際にマンションオーナーは儲かるのかどうか、シミュレーションしていきましょう。一棟マンションと区分マンション1室の場合で収益は大きく異なるため、2つのパターンに分けて解説していきます。
一棟マンションの収益を見ていきましょう。ここでは、「1,200万円の価値がある部屋が合計8つあるマンションを、25年間のフルローンで購入した」という条件で、利回りを想定していきます。
金利は2%、想定家賃収入は1部屋あたり月8.5万円です。
上記の表からもわかるように、利回りは3.1%で家賃収入は月々24.8万円になります。8部屋だけでも会社員の初任給の平均以上の収入を得ることが可能です。
続いて、区分マンション1室のオーナーになった場合の利回りを見ていきましょう。ここでは、「1,200万円の居室1室のオーナー」と想定して計算していきます。
25年のフルローンで金利は2%、想定家賃収入は1部屋あたり8.5万円です。
上記の表からもわかるように、マンション1部屋の区分オーナーになった場合、年間の利回りは3.2%となります。一棟オーナーと区分オーナーをした場合、その利回りは大きく変わりません。
しかし、区分オーナーをする場合は、入居者がいなければ家賃収入を得られないため、空室リスクが大きいというデメリットがあります。まとまった収益を得たい、安定した家賃収入を得たい方は、一棟マンションのオーナーを検討した方が良いでしょう。
マンションオーナーとして安定した収益を得るためには、どのような仕事をすれば良いでしょうか。結論から言うと、不動産管理会社などのプロに管理を委託すれば、オーナーがおこなう仕事はほとんどありません。
しかし、管理会社に委託せずに全て自分でオーナー業をする場合には、以下のような業務が必要になります。
上記に挙げた仕事はごく一部です。この他にも、細かな業務が数多く存在します。基本的には難しいことはないので、マンションオーナーを本業とする場合には、大した業務ではないかもしれません。
しかし、マンションオーナーを副業として始める場合には、タスクが多岐に渡り、本業に割く時間もあるため、多忙を極めてしまうことでしょう。手間を減らして効率の良い副業をおこなうためにも、オーナー業務は不動産管理のプロに委託するのがおすすめです。
マンションオーナーになると、家賃収入(インカムゲイン)が得られます。この他にも、不動産を売却することで得られる売却益(キャピタルゲイン)や、確定申告の際に経費として申請できる費用も存在します。
この項では、マンションオーナーの収入と費用について見ていきます。
マンションオーナーの主な収入源は、家賃収入です。家賃の他にも毎月徴収する共益費や、入居時に契約者から支払われる礼金も収入の一部になります。
毎月得られるものと随時得られる費用があるので、しっかりと確認しておきましょう。
マンションオーナーとして収益を得る方法は、家賃収入のみではありません。購入した時よりも高い金額で不動産を売却できれば、売却益(キャピタルゲイン)も期待できます。
購入した金額よりも不動産査定額が低くなる場合には、無理に売却する必要はありませんが、土地の高騰などで売却益が出ると予想される場合には、思い切って売却してみるのも良いでしょう。
マンション経営にかかった費用は、確定申告の際に経費として申請できます。具体的には、下記の項目を経費として申請できるので、ぜひ参考にしてください。
上記からもわかるように、マンションに関わる費用のほとんどが経費として申請可能です。しかし、不動産投資で得た収入を確定申告する際の所得税や住民税などは、経費として申請できないので注意が必要です。
マンションオーナーになるためには、以下の7つの手順を踏む必要があります。
マンションオーナーになるためには、はじめに所有する物件を決める必要があります。そのため、予算をしっかりと定めて、予算内の最良物件を探しましょう。
物件を探す際には、国土交通省が運営している「土地総合情報システム」を参考にすると、相場感がつかめるでしょう。また、他にも不動産会社が運営している情報サイトなども参考になります。
良い物件が見つかったら、次は現地調査をおこない、収益を出せそうな物件かどうか確認しましょう。具体的には、マンションの立地や管理状態、周辺地域に問題がないかを確認していきます。物件の綺麗さのみではなく、その地域に暮らす住民にとってニーズのある物件かどうかを見定めましょう。
しかし、自分だけでは物件の良し悪しを判断できないこともあるでしょう。その場合は、不動産投資会社などの不動産のプロに相談するのがおすすめです。
投資用物件の契約の話がまとまったら、売主や仲介業者に購入する意思を伝えましょう。その際、買付証明書といわれる、購入の有効期間が記された書類を提出する必要があります。買付証明書には、下記のような事項を記入します。
買付証明書の提出が完了したら、不動産投資ローンの審査を受けましょう。
ローンの審査が無事完了し、買付が成立したら、いよいよ売買契約を結んでいきます。売買契約の際には買主・売主の他に、宅地建物取引士が立ち会います。
重要事項説明を受けて契約書に捺印し、手付金を支払いましょう。その際、契約内容に間違いや相違がないかをしっかりと確認してください。
不動産投資ローンで不動産を購入する場合には、金銭消費賃貸契約を結ぶ必要があります。金銭消費賃貸契約を結ぶためには、手順④で取得した「売買契約書」が必要です。
売買契約と金銭消費賃貸契約の双方が完了したら、投資物件の決済と引き渡しをおこなっていきましょう。決済時には、金融機関が売主に購入費用の全てを支払い、代わりに不動産の所有権を引き受けます。
ここまでの工程を無事に完了できれば、物件は自分の所有物となります。
最後に物件を管理してもらう管理会社を選び、管理委託契約を結びます。委託する管理会社は、物件管理を本業としている会社がおすすめです。ただし、管理会社への委託は、絶対ではありません。
とはいえ、集客・管理・契約などの業務をオーナー1人でおこなうには、限界があります。手間や空室のリスクを減らして、効率よく家賃収入を得るためには、管理会社との契約を結ぶことをおすすめします。
マンションオーナーになって儲けるためには、闇雲に不動産を購入することはおすすめできません。確実な不動産投資をおこなうためには、下記の4つのポイントを押さえましょう。
それぞれ詳しく見ていきます。
1つめのポイントは、マンションの立地をしっかりと調べることです。不動産投資は、需要と供給があってはじめて成立します。
具体例を挙げると、近隣に大学がある郊外のエリアは、ファミリー層よりも単身層の需要が高いです。一方で、病院・幼稚園・郵便局などのライフラインが整っているエリアであれば、ファミリー層の需要が高いといえるでしょう。この他にも、地域人口の増減も立地選びの参考になります。
このように、マンションの広さ・設備と地域の需要を加味して、不動産選びをおこないましょう。
2つめは、利回りを考慮して新築物件が中古物件かを選択するという点です。新築物件の場合には、土地の購入費用もあるため、多額の初期費用がかかります。一方で、長期のローンが組みやすく、中古物件よりも耐用年数が長いため、長期間の運用が可能です。
中古物件の場合は、新築物件よりも費用を抑えられるというメリットがある一方、耐用年数が短いため、利益率としては高くないというデメリットがあります。
一般的には、利回りは新築物件の方が良い傾向にあるので、初期費用がかかっても利回りの良い新築物件を選ぶのか、初期費用は低く抑えられるが利益率の低い中古物件を選ぶのか、しっかり検討するようにしましょう。
メリット・デメリットから物件タイプを選択することも大切です。下記に区分マンションオーナーと一棟マンションオーナーのメリット・デメリットをまとめたので、ぜひ参考にしてください。
それぞれのメリット・デメリットをしっかりと理解して、自分にとってリスクの少ない方を選択しましょう。
最後に挙げるポイントは、借入金返済額を減価償却費以下にするという点です。減価償却費とは、建物の取得原価を各会計期間に配分する際に生じる費用のことです。
減価償却費は、家賃収入に対して50%程度が適正とされています。つまり、家賃収入が毎月10万円の場合は、減価償却費は5万円以下が適性になります。
しかし、これに対して借入金返済額が6万円である場合は、経営として危険な「デッドクロス」と呼ばれる状態になります。マンションオーナーとして不動産を選ぶ際には、借入金返済額を減価償却費以下にするように心がけましょう。
最後に、マンションオーナーに関するよくある質問をまとめました。
それぞれ詳しく解説していきましょう。
マンション以外にオーナーになれる不動産として代表的なのが、アパートです。アパートはマンションと比較すると、建設費用などの初期費用が安価であるという特徴があります。
自己資金が少ない方や、多額の不動産投資ローンを返済し続けられる見込みがない場合は、アパートオーナーという道を検討してみるのも良いでしょう。
利回りでは、購入する不動産が儲かるかどうかを判断できます。一般的には、3〜4%の利回りがある不動産が、収益を十分に期待できるといわれています。郊外の場合は、不動産を安く購入できるという理由から、利回りが7〜8%程度という不動産もあるようです。
利回りには、3種類があります。それぞれの利回りの計算方法をまとめたので、参考にしてください。
いずれも不動産投資を始める上で、欠かせない知識です。必ず覚えておきましょう。表面利回りや想定利回りは、あくまでも予想値になります。実際の収益として比較検討する場合には、実質利回りに重点をおいて検討するようにしてください。
近年、マンションオーナーとして副収入を得るサラリーマンが増加しています。不動産投資というと、資産家がおこなう投資方法であると思われがちですが、実はサラリーマンに適した副業なのです。
下記にサラリーマンがマンションオーナーに向いている理由をまとめたので、参考にしてください。
これらの理由から、マンションオーナーはサラリーマンに向いているといわれています。
マンションオーナーになるために、特別な資格は必要ありません。しかし、収益を上げるためには、物件や経営に関する会計の知識は必要でしょう。
もちろん、不動産取引が適正におこなわれているかどうか判断する、「宅地建物取引主任者」といった資格もあります。しかし、信頼できるパートナーと物件や市場の調査をおこない、収益の出る不動産を探し出すことがもっとも重要です。
当記事では、マンションオーナーの経営の仕組みや、マンションオーナーになる際の物件購入の流れなどについて、詳しく解説していきました。
マンションオーナーになるには、特別な資格やスキルは必要ありません。物件の市場調査とパートナー選びさえ上手くいけば、素人でも安定した収益を得られるでしょう。
当記事を参考に、ぜひマンションオーナーとしての道を目指してみてください。
関西学院大学法学部法律学科卒。
宅地建物取引士、管理業務主任者、2級FP技能士(AFP)、登録販売者など多岐にわたる資格を保有。 数々の保有資格を活かしながら、有限会社アローフィールド代表取締役社長として学習塾、不動産業務を行う。