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マンションの売却で後悔する理由は?失敗例と回避策をまとめて解説
マンションの売却は、数千万円規模の大きなお金が動き、法律や税金、必要書類の準備など複雑な知識が求められる取引です。
そのため、「相場を知らずに安く売却してしまった」「不動産会社選びを間違えた」「諸費用や税金を見落として、手元資金が想定より大きく減ってしまった」といった失敗は珍しくありません。
特に、売却前の準備不足や不動産会社選びの失敗は、売却価格の低下や法的なリスクにも直結しかねないため注意が必要です。
この記事では、マンションの売却でよくある失敗例と、その回避策をわかりやすく解説します。
マンション売却の準備段階である売却前のタイミングは、後悔につながる判断をしてしまいがちなため特に注意が必要です。この章では、特に多く見られる、売却前の3つの失敗例を紹介します。
良かれと思って行ったリフォームが、売却価格に反映されず費用を回収できないケースがあります。
フルリノベーションなどで買主が自由に改装したいと考えている場合、リフォームコストがそのまま無駄になることも珍しくありません。
不動産市場では「きれいな状態」は有利ですが、多額の費用をかけたリフォームのデザインが買主の趣味に合わなければ評価されません。結果として、投じた費用を回収できずに損失となり、「何もしなければよかった」という後悔につながる場合があります。
必要な書類の準備が遅れると、マンションの販売開始が大幅に遅れることがあります。
たとえば、登記事項証明書や管理規約、耐震診断報告書などが揃わないと、内覧時に説明できなかったり広告に掲載できない場合があります。
販売期間が長引くことで、物件への注目度が下がり、値下げせざるを得ない状況にもなりかねません。
複数の不動産会社から見積もりを取らず、「高値査定」を提示した業者に即決したことで後悔する人も少なくありません。
不動産会社の中には、自社と契約してほしいがために、意図的に相場より高い「見せかけの査定額」を提示するところもあります。査定額に期待して契約しても、実際には買い手が見つからずに値下げを促され、最終的には他の会社が提示した現実的な査定額より低い価格で売却するケースもあります。
宅地建物取引業法では、不動産会社が価格について意見を述べる際に「その根拠を明らかにしなければならない」と定めています。査定額だけでなく、必ず根拠や市場動向の説明を求め、複数業者を比較検討しましょう。
売却活動が本格化する売却中のタイミングにも、後悔につながる落とし穴が潜んでいます。この章では、売却中の失敗例を5つ紹介します。
住み替えや転勤などで売却を急ぐあまり、相場よりも明らかに安い価格で売り出してしまう失敗はよくあります。
公開直後にすぐ成約した場合、売却後に市場価格が上昇するケースも多く、「もう少し高く売ればよかった」と強く後悔する人もいます。
早く売りたい気持ちを優先するあまり、本来得られたはずの利益を自ら手放してしまう失敗は避けなければなりません。
購入希望者から値下げの要望が入った時に、成約のために交渉内容に応じ過ぎてしまうのもよくある後悔の一つです。
必要以上の譲歩は手取り額の減少に直結するため、値下げ交渉の際には、最低希望価格や譲歩できる上限を事前に設定しておくべきです。
媒介を依頼した不動産会社が、物件情報をレインズ(不動産流通標準情報システム)に正しく登録せず、自社顧客にだけ紹介する「囲い込み」が起きることがあります。
囲い込みが起きると、販売の機会が限定されるため競争が起こらず、結果として適正価格よりも安い価格での売却につながります。
不動産情報サイトなどに掲載される物件写真の質が低く、購入希望者を逃してしまう失敗例もあります。
写真が暗かったり、部屋が散らかっているなど、部屋の魅力が伝わらない写真は、物件の第一印象が悪くなります。
閲覧数が伸びず問い合わせにもつながらない結果、物件に「人気のない売れ残り」というネガティブな印象がつき、値引きの要因になることも少なくありません。
不動産会社と結ぶ「専任媒介契約」のルールをよく理解しないまま契約し、後悔するケースもあります。
専任媒介契約や専属専任媒介契約は、たとえその会社の活動に不満があっても、原則として最長3ヶ月間は他の会社に切り替えることはできません。
契約の仕組みやリスクを十分に理解せずに締結したことで、市場の変動や販売戦略の見直しが遅れ、売却の機会損失や長期間売れ残りにつながる事例も少なくありません。
マンションを売却できた後にも「こんなはずじゃなかった」と後悔するケースがあります。この章では、契約後に発覚する可能性がある金銭的・法的なトラブルに関する5つの失敗例を紹介します。
売買契約締結後に見つかった欠陥や不具合について、売主が補修費や損害賠償を求められることがあります。
2020年4月1日に施行された改正民法で、「瑕疵担保責任」は「契約不適合責任」へと変わりました。「契約不適合責任」では、雨漏りやシロアリ被害といった物理的な欠陥だけでなく、契約書に記載された内容と物件の状態が異なるすべての不具合が対象となる、売主にとって厳しい内容です。
売却前に物件調査を徹底し、正確な情報を開示しておくことがトラブル回避のポイントです。
売却にかかる税金を正しく理解していなかったために、納税額が予想を大きく上回り、資金計画が大きく狂ってしまう失敗例もあります。
たとえば、特例が使えると思い込んでいたものの、要件を満たしていなかったことが確定申告時に判明して多額の納税が必要になり、新居の購入資金が足りなくなるという事態も起こる場合があります。
売却時の税金や特例については、事前にしっかりと理解しておきましょう。
マンションの売却代金が住宅ローン残高を下回る「オーバーローン」の状態になると、決済時に現金を追加で用意する必要が生じます。
不足分を補うための自己資金がない場合、「住み替えローン」を利用したり、別途無担保ローンを組んだりして資金を工面する必要があり、その後の生活設計を大きく圧迫するケースもあるので注意しましょう。
過去に経験した騒音問題などの隣人トラブルを買主に伝えずに売却し、後から損害賠償を請求される失敗例もあります。
売主には、物件の物理的な欠陥だけでなく、平穏な生活を妨げる「心理的瑕疵」についても買主に告知する義務があります。
近隣住民とのトラブルや騒音、訴訟歴があったにもかかわらず、売買契約時に買主へ説明しなかった場合、告知義務違反として損害賠償や契約解除を求められる可能性があるので注意が必要です。
マンションの売却後、譲渡所得に関する確定申告を忘れてしまい、無申告加算税や延滞税など追加の税金を払うことになるケースもあります。
特に注意したいのは、「3,000万円の特別控除」などの特例を適用して納税額がゼロになるケースです。この場合でも、特例の適用を受けるためには確定申告の手続きが必須となります。
手続きを忘れたままでいると、税務署から申告漏れを指摘され、本来の税額に加えて追徴課税が発生してしまいます。
マンションの売却でこうした後悔をしないためには、売却活動を始める前の入念な準備が欠かせません。この章では、売却前に最低限確認しておくべき6つのポイントを解説します。
マンションの売却を成功させるには、まず自分の物件が現在どれくらいの価格で売れるのかを客観的に把握することが重要です。
国土交通省が公表している「不動産情報ライブラリ」や、不動産流通機構が運営する「REINS Market Information」を参考に、直近の成約単価や売却事例を調べることで、根拠のある価格設定が可能になります。
これらのデータを活用することで、不動産会社から提示される査定額が妥当なものか判断する基準を持つことができ、安すぎる価格で売り出す失敗を防ぐことができます。
不動産会社と専任媒介契約などを結んだら、囲い込みを防ぐためにレインズへの登録状況を確認しましょう。
レインズへの登録が完了すると「登録証明書」が発行されるので、この証明書を不動産会社から必ず受け取り、物件情報が正しく掲載されているかを確認してください。
また、販売活動中は、他社からの問い合わせ状況などを定期的に報告してもらうようにしましょう。
マンションの売却代金で住宅ローンを完済できるか、正確な数字を把握しておきましょう。
まずは、金融機関から最新の「残高証明書」を取り寄せ、ローン残高を確認します。その際に、ローン残高と繰上返済時の手数料、売却にかかる費用を合算し、最終的な手取り額をシミュレーションしてください。
最終的な手取り額を把握することで、オーバーローンによる資金ショートという最悪の事態を回避できるでしょう。
売却による税金がいくらぐらいかかるのかも、事前にシミュレーションしておきましょう。
国税庁のウェブサイト「タックスアンサー」などを活用すれば、「3,000万円の特別控除」や「10年超所有軽減税率の特例」といった制度の適用要件を確認できます。
もし特例が適用できない場合には、どのくらいの納税額になるのかを概算しておく必要があります。税金の有無や金額によって売却のタイミングや価格設定の方針も変わってくるため、必ず事前に確認しておきましょう。
マンションの修繕積立金や管理費は、引き渡し日を基準に日割りで清算するのが一般的です。
管理規約で定められた条項や支払いサイクルを確認し、未納金がないかも事前に確認してください。
清算タイミングの誤りや未納があると、買主とのトラブルや追加請求が発生する可能性もあるので注意しましょう。
売却活動をスムーズに始めるために、必要書類を早めに準備しておくことも重要です。
登記事項証明書や耐震診断報告書、管理規約など、売却手続きに必要な書類は多岐にわたります。特に、法務局で取得する登記事項証明書や、物件によっては耐震診断報告書など、発行に時間がかかる書類もあります。
必要書類は日数に余裕を持って早めに請求し、余裕を持ったスケジュールで準備を進めましょう。
売却活動が始まると、価格交渉や内覧などの対応が増えてきます。この章では、売却中の後悔を避けるために特に注意したい6つのポイントを解説します。
マンションの売却時に結ぶ媒介契約には、「一般媒介」「専任媒介」「専属専任媒介」の3種類があります。契約期間や自己発見取引(自分で買主を見つけること)、レインズへの登録義務、販売活動報告の頻度などが異なるため、違いをよく理解したうえで自分に合った契約方法を選びましょう。
契約の種類 | 複数社との契約 | レインズへの登録義務 | 売主への業務報告義務 | 自己発見取引の可否 |
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一般媒介契約 | 可 | なし(任意) | なし(任意) | 可 |
専任媒介契約 | 不可(1社のみ) | 7日以内 | 2週間に1回以上 | 可 |
専属専任媒介契約 | 不可(1社のみ) | 5日以内 | 1週間に1回以上 | 不可 |
※参考:宅地建物取引業法
一般媒介は複数の会社に同時依頼できる一方で、専任系は1社限定となり、契約解除や販売戦略の柔軟性に差が出ます。
希望の売却方針やスピード感に合わせて契約を検討しましょう。
冷静に数値で判断できる仕組み作りが、納得感ある売却価格につながります。
まずは、近隣の成約事例などを基準に適正な初期価格を決定します。その上で、「公開から4週間経っても内覧の反響が〇件以下なら、価格を3%見直す」というように、価格を改定する際の具体的な数値ルールを不動産会社と設定しておきましょう。
客観的な判断基準を設けることで、「焦って値下げし過ぎてしまった」という失敗を防ぎ、機会損失のリスクを抑えることができます。
内覧時の第一印象は、購入意欲や成約価格に直結するため、準備を徹底してください。
室内の汚れや生活臭、照明の暗さを改善し、できる限り生活感を抑えた状態で迎えましょう。
また、意外と見られているのが、エントランスやゴミ置場といった共用部の状態です。管理組合と連携して清潔な環境を保つことも、物件全体の価値を高める上で重要なポイントになります。
契約トラブルを未然に防ぐためにも、買主の資金力や購入意欲をしっかり見極めましょう。買主が住宅ローンの審査に通らなければ、売買契約は白紙に戻ってしまうことを忘れないでください。
事前審査済証の有無や頭金の割合、希望する入居時期などを確認し、支払い能力が高く決済遅延や契約解除のリスクが少ない相手を優先すると取引の確実性が高まります。
万が一の契約解除に備え、手付金や違約金の条件を具体的に取り決めておくことがトラブル防止に役立ちます。
手付金の額は売買代金の5%〜10%、違約金は20%以内が一般的な目安です。
金額だけでなく、どのような場合に違約金が発生するのか、手付解除が可能な期間はいつまでかなどの詳細な条件を契約書に盛り込み、双方で確認しておきましょう。
購入後のトラブルを未然に防ぐため、物件の情報を正確に不動産会社に伝え、重要事項説明書の内容に漏れや誤りがないかをしっかりと確認しましょう。
物件の建築年や構造、用途地域、管理費の滞納、未登記部分の有無、修繕履歴や検査結果など、重要事項説明書の記載内容は多岐にわたります。
知っている情報はすべて正直に提供し、不動産会社が作成した重要事項説明書の案に事実と異なる点や記載が抜けている点がないか、厳しくチェックしてください。
引き渡しと決済が完了しても、やるべき手続きが残っています。この章では、売却後に注意すべき4つのポイントを解説します。
売買契約後、所有権移転登記は原則として買主が行いますが、売主も登記情報提供サービスを利用し、確実に名義が変更されたかを確認しておくと安心です。
登記が未了のまま放置されていると、固定資産税の納付書が自分に届いたり、予期しないトラブルに巻き込まれるリスクもあります。
権利移転がきちんと完了したことを証明する書類を取得し、課税や管理の負担が残らないよう最終確認を行いましょう。
マンションを売却した際に譲渡所得が発生した場合、売却の翌年には、譲渡所得に関する確定申告と納税を必ず行わなければなりません。
特に「3,000万円の特別控除」などの特例を適用した結果、納税額がゼロになった場合でも、確定申告の手続きが必須である点に注意しましょう。
手続きを忘れると、特例が適用されないだけでなく、無申告加算税や延滞税といったペナルティが課されるため、忘れずに期限内に申告を済ませてください。
マンションの引き渡し後に、買主から欠陥や不具合の申告があった際には、売主には契約不適合責任に基づく修補や損害賠償の義務が発生する可能性があります。
このような事態に備え、トラブル発生時の対応手順を売買契約書で明確に定めておくことが紛争の円滑な解決につながります。
事前にルールを整備しておくことで、万が一の際にも冷静かつ迅速な対応ができるでしょう。
新居へ引っ越した後は、様々な住所変更手続きが必要です。転居後14日以内に、役所で住民票の転出・転入届やマイナンバーカードの住所変更を行いましょう。
あわせて、運転免許証の記載事項変更、銀行やクレジットカード、保険会社への届出、郵便局への転送届の提出なども行う必要があります。
手続きを後回しにすると、旧住所宛てに送られた重要書類を受け取れなくなるなど、生活上の不便やトラブルの原因となるため注意が必要です。
マンションをできるだけ高く売却するためには、以下の3点がポイントです。
もし問い合わせや内覧の反響が鈍い場合は、価格や広告の内容の見直しなど、早期に販売戦略を見直す柔軟性を持つことも重要です。
マンションの売却にまつわる失敗の多くは、準備不足と情報不足が原因です。
よくある失敗例や注意点、回避策をこの記事でしっかりと押さえることで、損失やトラブルのリスクを減らしましょう。
特に、後悔の根本的な原因となりやすいのが、最初の不動産会社選びです。まずは複数の不動産会社に査定を依頼し、査定額の高さだけでなく、その根拠や販売戦略までをしっかりと比較検討することから始めてみてはいかがでしょうか。