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マンションの売却で後悔する理由は?失敗例と回避策をまとめて解...
スケルトン物件を売りたいと考えていても、「内装が何もないままの状態で、本当に売れるのだろうか」と不安になる人もいるのではないでしょうか。
スケルトン物件は、内装を解体・撤去した状態で取引するため、売主はリフォーム費用や工事期間をかけずに素早く売却できるメリットがあります。一方で、買主層が限定されやすく、購入希望者からは内装工事費用を理由に値下げ交渉を受けやすいというデメリットがあるのも事実。
この記事では、スケルトン物件をそのまま売却するメリット・デメリットや、居抜き物件との違い、高く売るための方法を解説します。
スケルトン物件は、内装や設備がないそのままの状態で売却しても問題ありません。
スケルトン物件とは、内装がまったくない、建物の「骨組み」だけが残った状態の物件を指します。この状態で不動産を売買することは、法律的にも認められているのです。
民法では、売買契約時に双方の合意があれば物件の状態を問わず取引が可能となっています。そのため、スケルトン物件の場合はその旨を契約に明記すれば、法律的には問題ありません。
また、費用対効果の観点から見れば、スケルトン物件のまま売却する方が合理的なケースは少なくありません。
スケルトン物件を売却する際、事前にリフォームや内装工事を実施すると多額の費用が必要になります。
例えば、売主が多額の費用をかけて物件全体をフルリフォームし、その費用を売却価格に上乗せしたとしても、相場以上に高く売れる保証はありません。特に築年数が古い物件の場合、リフォーム費用をかけても費用対効果が悪く、売主にとって大きな損失となる可能性もあります。
スケルトン物件と似た物件として「居抜き物件」があります。2つの大きな違いは、内装や設備が残っているかどうかという点です。
スケルトン物件 | 居抜き物件 | |
---|---|---|
内装・
設備の状態 |
すべて撤去済み(骨組みのみ) | 既存内装・設備を残したまま |
想定買主 | 初期費用や準備期間をかけても一から内装を作りたい人 | 同業種の居抜き開業で費用を抑えて即営業したい人 |
居抜き物件は、前のテナントが使用した設備や内装をそのまま利用できます。特に飲食店など同業種であれば短期間での開業が可能で、初期費用も大幅に抑えられます。
スケルトン物件は、内装設備が全て撤去され、骨組みだけが見える状態の物件です。買主は、一から内装を構築する必要があるため、初期費用が高額になり、準備期間も長くなる傾向があります。しかし、その分、レイアウトやデザインを自由に設計できる点が魅力です。
つまり、居抜き物件は、同業種ですばやく低コストで事業を始めたい人、スケルトン物件は、自分の好きな内装を一から作りたい人や、既存のレイアウトが事業内容に合わない人に最適だと言えます。
スケルトン物件をそのまま売却するメリットは、売却前に発生する費用や時間を削減できることです。また、内装がない物件を探している特定の需要を取り込める点もメリットです。
ここでは、それぞれのメリットを詳しく解説します。
スケルトン物件をそのまま売却する金銭的なメリットは、売主が負担するリフォームや工事費用を削減できることです。
不動産をスケルトン状態に戻すための解体や原状回復は、一般的な目安として、1㎡あたり1.5万〜2万円(坪あたり5万〜7万円)程度が必要とされ、60㎡の物件であれば90万〜120万円ほどの出費になることも珍しくありません。物件の構造によっても費用に差があり、木造が最も安価で、鉄筋コンクリート(RC)構造が高価になる傾向です。
※国土交通省「我が国の住生活をめぐる状況等について(補足)」、国税庁「地域別・構造別の工事費用表(令和6年分用)」を基に筆者算出
スケルトン状態で売却すれば、売却前にかかる解体や原状回復の費用負担をゼロにすることが可能です。そのため、売却後に手元に残るお金を増やすことにつながるでしょう。
リフォームや工事工程を省略できるため、売却までの期間を短縮できるのもスケルトン物件のまま売却するメリットです。
通常、不動産を売却する前にリフォームを行うとなると、工事内容の計画から業者の選定、施工まで、数ヶ月単位の期間が必要です。その間は当然ながら物件を売却することができません。
しかし、スケルトン状態であればすぐに市場に物件を出すことが可能で、早ければ数週間〜1ヶ月程度で買い手が見つかり、引き渡しが完了するケースもあります。
特に、資金回収を急ぎたいオーナーにとって、キャッシュフローを早期に確定できる点は大きなメリットになるでしょう。
スケルトン物件の売却は、内装を自由に設計したい買主のニーズを取り込めるというメリットもあります。
内装や設備が撤去されたスケルトン状態の物件は、購入後に自由に内装を決定できるため、既存の間取りや設備に縛られることなく、自分の理想とする空間をゼロから構築したいという購入希望者にとって魅力となります。
例えば、飲食店経営を目指すオーナーであれば、理想の店舗設計を最初から実現できるスケルトン物件に魅力を感じることが多くあります。また、内装が全くないことで、購入希望者が「自由設計できる」という付加価値を感じ、短期間で購入を決断することも少なくありません。
「自分だけのこだわりの空間を創ることができる」という魅力を訴求して特定の層に物件の価値が響けば、スムーズに売却できるケースも期待できるでしょう。
スケルトン物件を売却する時は、その特性から、買主が限定されやすい、値下げ交渉をされやすいといったデメリットもあります。ここでは、スケルトン物件をそのまま売却するデメリットを解説します。
スケルトン物件は、一般的な即入居可能な物件とは違い、内装が施されていないため、購入を検討する人の層がどうしても限られてしまいます。
一般的な不動産市場において、多くの購入希望者は、購入後すぐに入居可能で追加の工事費用が不要な物件を求める傾向です。一方、スケルトン物件は、購入後に内装工事や設備設置のために多額の自己資金や融資が必要になります。そのため、自己資金に余裕があり、リフォーム工事を前提とした購入が可能な一部の買主に限られます。
買主が特定の層に限定されることで、結果的に売却までの期間が長引く可能性もあります。一般的な不動産を探す人に比べて、スケルトン物件の買主の母数が少なくなる傾向にあることを覚えておきましょう。
スケルトン物件は、購入後に高額な内装工事費用が発生するため、値下げ交渉を受けやすい傾向があります。
買主は、物件の購入費用とは別に、数百万から数千万円の高額なリノベーション費用を負担する必要があります。そのため、スケルトン物件の場合、将来かかる工事費用を算出し、それを根拠に値下げを要求してくるのが一般的です。
不動産の価格評価は、国土交通省の資料や不動産鑑定評価基準などでも、建物の新築時のコストや耐用年数、リフォームの必要性などを考慮して個別に評価する旨が示されています。内装がないスケルトン物件は、「リフォームの必要性」が非常に大きいと判断されるため、価格交渉の余地が大きいと見なされやすい点に注意しましょう。
売主としては、あらかじめ内装工事費用を考慮した上での価格設定や、第三者機関によるインスペクション結果の提示で物件の状態を客観的に評価してもらい、価格交渉を最小限に抑える努力が必要です。
スケルトン物件の売却相場は、一般的に近隣にある内装済み物件の市場価格を基準に、その物件を購入した後にかかる内装工事やリフォーム費用を差し引いた金額が基本となります。
買主が物件購入後に自己負担することになる工事費用が具体的な価格交渉の根拠となるため、売却相場を正確に理解しておきましょう。費用相場は、物件の種類や規模によって大きく異なります。
項目 | 費用相場 | 備考 |
---|---|---|
住宅スケルトンリノベーション(マンション) | 300万~1,200万円 | 面積や仕様により変動 |
住宅スケルトンリノベーション(戸建て) | 450万~2,500万円 | 面積が広く、構造補強等が必要な場合はさらに高額になる |
店舗スケルトンからの開業(小規模飲食店) | 1,000万~1,200万円 | 居抜き物件(約300万円)と比較して大幅に高額 |
店舗内装工事(坪単価) | 25万~100万円超 | 業種(特に飲食店は高額)、立地、仕上げグレードにより大きく変動 |
スケルトン状態への解体(坪単価) | 3万~5万円 | 退去時の原状回復費用として発生 |
※費用相場は、各社のWebサイトなどの情報を基に筆者算出
スケルトン物件はリフォーム済みの物件と異なり、設備や内装の有無により評価が分かれやすく、不動産会社によって査定額にばらつきが出やすくなります。そのため、複数の不動産会社に査定を依頼し、客観的な相場を把握した上で販売価格を設定することをおすすめします。
Point
- 価格交渉に備え、売却前に専門家によるインスペクション(建物状況調査)を実施し、客観的に評価した報告書を準備する
- 買主が購入後の工事計画をスムーズに立てられるよう、管理規約を整理しておく
- 購入後のライフスタイルや利用シーンをイメージしやすくなるよう、内装デザイン案を提示する
- 一括査定でスケルトン物件の売却が得意な不動産会社を見つける
スケルトン物件を高く売却するためには、「何もない」ことを最大の武器として捉え、「自由に空間設計できる物件」としての可能性や魅力をアピールすることがポイントです。
まず、売却前に専門家によるインスペクション(建物状況調査)を実施し、構造躯体や配管、配線などの状態を客観的に評価した報告書を準備することで、購入希望者に対して物件の安全性や健全性を示すことができます。物件に対する買主の不安が減れば、交渉時に価格を下げられる可能性も低くなるでしょう。
マンションの場合はどこまでリノベーションして良いかが管理規約によって定められています。そのため、事前に管理規約を整理し、「どこまで手を加えられるか」「どのような工事が可能なのか」を明確に提示しておくことで、買主に安心感を与えることができます。
また、何もない空間を見せるだけでは、多くの人は完成した状態をイメージしにくいものです。複数の内装デザイン案やリノベーションの完成イメージを具体的に示すことで、買主が物件の将来的な価値や可能性を明確にイメージしやすくなります。買主が物件に対して魅力を感じれば、価格交渉でも優位に立つことが可能でしょう。
最後に、インターネット上の一括査定サービスを利用し、スケルトン物件の売却を得意とする不動産会社を見つけ出してください。一括査定では、各社の相場感を掴むことができます。その上で、査定額の高さだけでなく、スケルトン物件の販売実績が豊富で、価値を正しく理解し、高く売るための戦略を提案してくれる会社を選びましょう。
スケルトン物件の売却は、リフォームの費用や期間を削減できる大きなメリットがある一方で、購入者が限定され、価格交渉が入りやすいというデメリットもあります。
高値売却を目指すには、デメリットをきちんと理解した上で、物件が持つ「自由な空間設計」というポテンシャルを最大限にアピールすることがポイントです。
スケルトン物件の売却相場を理解し、インスペクションやデザイン案の提示、管理規約の整理、一括査定サービスなどの活用を通じて、戦略的に売却活動を進めましょう。