太陽光発電付き住宅の売却方法は?査定への影響や必要な手続きも解説 - GMO不動産査定

太陽光発電付き住宅の売却方法は?査定への影響や必要な手続きも解説

太陽光発電付きの家を売却しようと考えた時に「設備がプラスの価値になるのか」「手続きが複雑でかえって損をしてしまうのではないか」と不安に思う人も少なくありません。

太陽光発電付き住宅の価値は、FIT(固定価格買取制度)の残存期間や蓄電池の有無で大きく変動し、最適な売却方法も状況によって異なります。

また、売却益にかかる税金は、土地・建物と太陽光設備で計算方法が全く違うため、想定外の納税リスクに注意が必要です。国の補助金を受けている場合は売却前にJPEA(太陽光発電協会)への申請が必要になるほか、経済産業省と電力会社への二重の名義変更手続きも欠かせません。

この記事では、太陽光発電付き住宅の売却準備を進められるよう、売り方や注意点をまとめて解説します。

太陽光発電付き住宅の価値とは

  • 電力コストの削減と余剰電力の売電による経済的メリットがある
  • 環境への貢献や災害時のエネルギー自給といった暮らしの質を高める魅力がある

太陽光発電システムが住宅にもたらす価値は、大きく2つに分けることができます。

1つ目は、毎月の電気代を削減できる「自家消費」と、使いきれなかった電気を電力会社に売る「売電」による、直接的な経済的メリットです。

2つ目は、クリーンなエネルギーを利用することによる環境への貢献や、災害による停電時でも電気が使えるという安心感といった、暮らしの質を高める定性的な魅力といえるでしょう。

特に近年は、電気料金の高騰が続いていて、電力会社から電気を買う量を減らせる自家消費の価値はますます高まっています。また、東京都が2025年4月から大手ハウスメーカー等を対象に新築住宅への太陽光パネル設置を義務化する制度を開始するなど、社会全体で太陽光発電への注目度は向上していて、住宅の資産価値を高める重要な要素として認識されています。

※参考:太陽光パネルの設置を義務付ける制度が2025年4月から始まります|東京都

価値を左右する主な要因

太陽光発電システムの資産価値は、すべての物件で同じように評価されるわけではなく、複数の要因によって総合的に判断されます。特に重要なポイントは以下のとおりです。

主な要因 ポイント 査定への影響度
FIT残存期間 固定価格買取制度(FIT)が残っている年数。設置後10年が大きな節目となる 非常に高い
蓄電池の有無 発電した電気を貯蔵できるかどうか。特に卒FIT後の自家消費率を高める 高い
発電・売電実績 過去のデータに基づいた、実際の発電量や売電収入の実績 高い
メーカー・保証 システムの製造メーカーの信頼性や、機器保証・出力保証が残っているか 中程度
メンテナンス履歴 定期的な点検や清掃が実施されているか。システムの健全性を証明する 中程度
システムの状態 パネルの傷や汚れ、パワーコンディショナーの動作状況など物理的な状態 中程度

特に重要なのがFIT(固定価格買取制度)の残存期間です。「再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法」に基づいて、国が電力会社に対して一定期間・固定価格での買取を保証する制度で、権利が残っている住宅は、安定した収益が見込めるため、資産価値が非常に高く評価されやすい傾向にあります。

また、FIT期間が満了した「卒FIT」の物件では、売電収入よりも自家消費による電気代削減が重要です。発電した電気を貯めておける蓄電池の有無が、将来的な価値を大きく左右するポイントとなります。

査定額への影響

太陽光発電システムは、売電収入や電気代の削減といった経済的なメリットを通じて、住宅の査定額にプラスの影響を与えるケースが一般的です。

特にFITの買取期間が残っている場合、収益性が査定の大きな基準となります。

売却査定の時に、不動産会社が目安として用いることがある簡易的な計算式の一つに「年間売電収入 × 残存FIT年数 ÷ 2」という考え方があります。例えば、年間の売電収入が12万円で、FITの残存期間が5年ある場合、12万円×5年÷2=30万円が査定額に上乗せされる一つの目安となるのです。

ただし、あくまで交渉の出発点となる参考値で、実際の査定額は蓄電池の有無やメンテナンス状況、市場の需要など、ほかの要因も総合的に加味して決定されます。

近年、資源エネルギー庁の発表でも示されている通り、燃料価格の変動によって電気料金は上昇傾向にあります。

電力の購入量を抑えられる自家消費の価値はますます高まっているため、査定における強力なアピールポイントになると言えます。

自宅の設備がいくらで評価されるかは、専門知識を持つ不動産会社に査定してもらいましょう。

太陽光発電付き住宅の売却方法

  • 住宅と一緒に売却する
  • 撤去して売却する
  • 新居へ移設して売却する

太陽光発電付き住宅を売却する方法は、大きく3つにわけることができます。それぞれのメリット・デメリットを理解し、状況に合った方法を選択しましょう。ここでは、各方法の特徴を解説します。

住宅と一緒に売却する

住宅と一緒に売却する方法は、最も一般的で、多くの場合で推奨される方法です。

メリットは、撤去費用がかからない点と、太陽光発電システムがもたらす売電収入や高い省エネ性能を、物件の付加価値として買主にアピールできる点にあります。買主にとっても、初期投資なしで経済的メリットを享受できるため、魅力的に映る可能性が高いでしょう。

一方で、デメリットとしては、経済産業省への事業計画変更や電力会社への名義変更など、専門的な行政手続きが必須となる点が挙げられます。手続きには時間と手間がかかるため、事前に流れを把握しておくことが求められます。

撤去して売却する

撤去して売却する場合は、売却前に太陽光発電システムをすべて取り外して処分する必要があります。

メリットは、不動産売買の手続きがシンプルになる点です。太陽光発電に関する複雑な手続きが一切不要になるため、買主が将来的なメンテナンスや故障のリスクを懸念しているようなケースでは、かえって取引がスムーズに進むこともあります。

しかし、デメリットとして、15万円以上の撤去費用がかかることに加え、パネルを外した後の屋根の補修費用が別途発生する可能性があります。また、システムが持つ本来の資産価値を完全に放棄することになるため、経済的な観点からは慎重な判断が求められるでしょう。

システムの老朽化が進んでいる、あるいは故障しているといった状況で検討されることが多い方法です。

新居へ移設して売却する

新居へ移設する方法は、現在の住まいに設置されている太陽光発電システムを取り外し、ご自身がこれから住む新居に再度設置する方法です。

愛着のある設備を引き続き自分で使用できる点がメリットといえますが、100万円を超える高額な費用がかかる可能性があるため、あまり推奨されない方法です。撤去、運搬、再設置の費用に加えて、現在の住まいの屋根補修費用も必要になります。

さらに、一度取り外したシステムはメーカー保証の対象外となってしまうのが一般的です。多大なコストがかかる上に保証もなくなることを考えると、経済的な合理性は極めて低いといえるでしょう。

太陽光発電付き住宅を売却する時の注意点

  • 売却益の税金計算が複雑になる
  • 補助金の返還が必要になる場合がある
  • システムのローンは完済しておく
  • 名義変更の手続きを忘れない
  • 太陽光発電が負債になるケースもある

太陽光発電付き住宅の売却には、通常の不動産売買にはない特有の注意点があります。知らないまま売却を進めると、後々思わぬトラブルや想定外の出費につながる可能性があるため、必ず事前に確認しておきましょう。

売却益の税金計算が複雑になる

売却益にかかる税金の計算方法は、土地・建物と太陽光発電設備とで全く異なる点に注意してください。

売却によって利益(譲渡所得)が出た場合、その利益に対して所得税と住民税が課税されますが、土地・建物と太陽光発電設備では以下のように異なります。

土地・建物 他の所得とは合算せずに税額を計算する「分離課税」
太陽光発電設備 「機械装置」とみなされ、給与所得など他の所得と合算して税率が決まる「総合課税」

太陽光設備の売却益が給与所得などに上乗せされることで、所得税の税率区分(累進課税)が上がり、想定をはるかに超える納税額が発生するリスクがあります。

このような事態を避けるためにも、売買契約書で土地・建物と太陽光設備の内訳価格を明記したり、事前に税理士などの専門家に相談して納税額をシミュレーションしたりしましょう。詳しくは、国税庁のウェブサイトもご確認ください。

※参考:No.1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)|国税庁No.1490 一時所得、譲渡所得(一時所得及び譲渡所得の概要)|国税庁

補助金の返還が必要になる場合がある

もし、太陽光発電システムを設置する際に国からの補助金を受けていた場合、売却時にその一部を返還しなければならない可能性があります。

補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律」(通称:補助金適正化法)に基づくルールで、補助金を受けて取得した財産は、法定耐用年数(住宅用太陽光発電は17年)が経過する前に売却などの方法で処分する場合、事前に管理団体である太陽光発電協会(JPEA)の承認を得て、残りの年数に応じた金額を国に返還する義務があります。

もし、事前申請を怠って無断で売却してしまうと、補助金の全額返還を求められるといった厳しい罰則が科されるリスクがあります。補助金を利用したかどうかわからない場合は、当時の契約書などを確認し、必ず売却活動を始める前にJPEAへ問い合わせましょう。

※参考:財産処分承認申請の手続|JPEA 太陽光発電協会

システムのローンは完済しておく

太陽光発電システムを設置した時のローンが残っている場合、原則として住宅の売却代金で全額を完済する必要があります。

特に、ローン契約時にシステム自体が担保(抵当権)に設定されているケースでは、ローンを完済して抵当権を抹消しなければ、売却手続きを進めることができません。

買主にローンを引き継いでもらう、といった交渉は、後々の金銭トラブルの元凶となるため絶対に行うべきではありません。ローン残高が売却価格を上回る「オーバーローン」の状態であっても、自己資金で補填するなどして、必ず売却のタイミングで完済しましょう。

名義変更の手続きを忘れない

太陽光発電付き住宅を現状のまま売却する場合、不動産の所有権移転登記とは別に、太陽光発電に関する2つの名義変更手続きが必須となります。

経済産業省への「事業計画変更認定申請」
FIT制度上、太陽光発電は「事業」と位置づけられているため、事業の所有者が変わることを国に届け出る手続きが必要です。
電力会社への「売電契約の名義変更」
売電収入の振込先を買主の口座に変更するための手続きです。

これら2つの手続きは連動していないため、それぞれ個別に行う必要があります。もし手続きを忘れると、売電収入が旧所有者である売主の口座に振り込まれ続けてしまい、金銭トラブルに発展しかねません。売買契約を結んだら、不動産会社と協力しながら、速やかに手続きを進めましょう。

太陽光発電が負債になるケースもある

「太陽光発電が付いていれば、必ず家が高く売れる」というわけではない点にも注意が必要です。状況によっては、太陽光発電システムの存在が、逆に査定額を下げる要因(負債)と見なされることもあります。

査定額を下げる要因になる例

  • FIT期間がすでに満了している(卒FIT)
  • 経年劣化でシステムの発電効率が著しく低下している
  • 長期間メンテナンスされておらず、故障のリスクが高い

買主にとっては、将来の修理・維持管理コストや、最終的な撤去費用が大きな懸念材料となります。その結果、査定額が伸び悩んだり、売却価格の交渉で不利になったりする可能性があることを理解しておきましょう。

太陽光発電付き住宅の売却の流れ

  • 必要書類を準備する
  • 不動産会社に査定を依頼する
  • 売買契約を締結する
  • 太陽光発電の名義変更手続きを行う
  • 決済・引き渡し後に補助金を返還する

太陽光発電付き住宅の売却は、通常の不動産売却の流れに加えて、太陽光発電特有の手続きが加わります。スムーズに売却するためにも、大まかな流れを理解しておきましょう。

①必要書類を準備する

本格的な売却活動を始める前に、太陽光発電に関する書類一式を手元に揃えておきましょう。これらの書類は、正確な査定額を算出するためだけでなく、買主への信頼性を高め、後の名義変更手続きを円滑に進めるためにも重要なポイントになります。

具体的には、以下の書類を準備してください。

  • システムの仕様書、メーカーの保証書
  • 定期メンテナンスの記録、点検報告書
  • 補助金交付決定通知書(補助金を利用した場合)
  • 過去1年分以上の発電量や売電収入がわかる電力会社の明細書

これらの書類が揃っていることで、システムの価値を客観的に証明でき、不動産会社との査定交渉や買主へのアピールを有利に進めることが可能になるでしょう。

②不動産会社に査定を依頼する

書類の準備が整ったら、不動産会社に査定を依頼します。ここで重要なのは、太陽光発電付き住宅の売却実績が豊富な不動産会社を選ぶことです。専門知識のない会社では、システムの価値が正当に評価されず、本来よりも安い査定額を提示される恐れがあります。

専門性を見極めるために、査定を依頼する際には以下のような質問を投げかけてみましょう。

  • 「太陽光発電システムの価値を、具体的にどのように査定額へ反映しますか?」
  • 「経済産業省への事業計画変更手続きのサポート経験はありますか?」
  • 「JPEAの補助金返還手続きについて、どのような注意点がありますか?」

これらの質問に対して、明確で的確な回答が得られるかどうかで、その会社の専門知識やサポート体制を判断できます。必ず複数の会社に査定を依頼し、システムの価値を正しく評価してくれる信頼できるパートナーを見つけましょう。

③売買契約を締結する

買主が見つかり、売却価格や条件の合意に至ったら、売買契約を締結します。後々のトラブルを未然に防ぐため、契約書には以下の項目を明確に記載しておくことが重要です。

  • 売買の対象に太陽光発電システム一式(ソーラーパネル、パワーコンディショナー等)が含まれること
  • 物件の引き渡し日までの売電収入は売主に帰属し、引き渡し日以降は買主に帰属すること
  • 経済産業省や電力会社への名義変更手続きに、売主と買主双方が協力する義務があること
  • 名義変更手続きにかかる費用(もしあれば)の負担者をどちらにするか

これらの内容を契約書に盛り込むことで、双方の権利と義務が明確になり、安心して取引を進めることができます。

④太陽光発電の名義変更手続きを行う

売買契約を結んだ後、不動産の引き渡しと並行して、太陽光発電システムの名義変更手続きを進めます。手続きは「経済産業省」と「電力会社」の2ヶ所に対して、それぞれ個別に行う必要があります。

まず、経済産業省に対しては、FIT制度の事業者が変わることを報告するための「事業計画変更認定申請」を電子申請システムで行います。再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法に基づく法的な手続きで、完了まで数週間から数ヶ月かかる場合があるため、早めに着手しましょう。

並行して、管轄の電力会社で売電契約と売電収入の振込先口座の名義変更手続きを行います。これらの手続きは複雑な部分もあるため、不動産会社のサポートを受けながら、売主と買主が協力して進めていくことになります。

⑤決済・引き渡し後に補助金を返還する

もし、売却する太陽光発電システムが国の補助金を受けて設置されたもので、かつJPEAへの財産処分承認申請を行った場合は、不動産の引き渡しが完了した後に最終的な手続きが待っています。

具体的には、不動産の引き渡しが完了した後、その旨を報告する「財産処分報告書」をJPEAに提出します。後日、JPEAから補助金の返還額に関する通知書が届くので、指定された方法で補助金を返還します。

以上の手続きをもって、補助金に関するすべてのプロセスが完了となります。

太陽光発電付き住宅を高く売るコツ

  • データで価値を証明する
  • システムの信頼性を高める
  • 専門知識を持つパートナーを選ぶ
  • 柔軟な売却戦略を立てる

太陽光発電付き住宅の価値を最大限に引き出し、より良い条件で売却するためには、以下のポイントを意識してみましょう。

単に「太陽光発電付きです」とアピールするだけでは不十分です。過去1年以上の月別の発電量や売電収入、さらには電気代がどれだけ削減できたかといった客観的な数値を提示すれば、買主は将来得られる経済的メリットを明確にイメージでき、購入意欲が高まります。

また、売却前に、専門家によるシステムの点検やソーラーパネルの清掃を実施しておくのもおすすめです。「点検報告書」があればシステムの健全性を証明でき、「購入後すぐに故障するのではないか」という不安を払拭できるため、価格交渉においても有利になるでしょう。

さらに、売却の成功は信頼できる不動産会社を見つけられるかどうかにかかっています。

太陽光発電付き住宅の取引経験が豊富な担当者は、適切な価値評価や売却戦略を提案してくれるだけでなく、煩雑な手続きもスムーズにサポートしてくれます。

「現状のまま」で売りに出し、「もし不要であれば、売主負担で撤去することも可能です」といった柔軟な条件を提示するのも有効な戦略です。不動産会社と相談しながら工夫するとよいでしょう。

高値で売却できるかどうかのポイントは、パートナー選びが大きく左右するとも言えるため、複数の会社を比較し、安心して任せられる不動産会社を選びましょう。

まとめ

太陽光発電付き住宅の売却は、通常の不動産売買に加えて、税金、補助金、名義変更といった特有の手続きや注意点があります。複雑に感じるかもしれませんが、正しく理解し、一つひとつのステップを確実に進めていけば、決して難しいものではありません。

高く売るための重要なポイントは、太陽光発電システムが持つ経済的価値や定性的価値を客観的なデータで示し、その価値を正しく評価してくれる専門知識の豊富な不動産会社をパートナーに選ぶことです。そして、計画的に手続きを進めることで、トラブルを未然に防ぎ、システムの価値を最大限に引き出した有利な条件での売却が実現できるでしょう。

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