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鉄骨造の建物を所有していて「耐用年数が近づいているが、売却にどう影響するのだろう」と、不安を感じている方もいるのではないでしょうか。耐用年数という言葉を聞いても、それが具体的に何を意味し、売却価格やタイミングにどう関わるのかわかりにくいものです。
そこで本記事では、鉄骨造の耐用年数の概要や適切な売り時の考え方、耐用年数を超えた物件を売却するポイントなどを詳しく解説します。
耐用年数とは、建物などの固定資産が使用できる期間を示す指標のことです。以下のように建物の構造によって耐用年数が異なり、木造であれば22年、鉄骨造は骨格材の厚さによって19年から34年、鉄筋コンクリート造は47年と定められています。

また耐用年数には以下の3種類があり、それぞれ異なる視点から建物の寿命を表しています。
| 耐用年数の種類 | 定義・概要 |
|---|---|
| 法定耐用年数 | ・税務上の減価償却計算に使用される年数で、国税庁が建物の構造や用途ごとに定めている ・あくまで税法上の基準であり、建物の実際の寿命を示すものではない ・この年数に基づいて毎年の減価償却費を計算し、経費として計上できる |
| 物理的耐用年数 | ・建物が構造的・物理的に使用できる実際の寿命を指す ・適切なメンテナンスや修繕を行うことで、法定耐用年数を大きく超えて使用できる ・建物の倒壊や使用不能になるまでの期間を意味し、「実際の寿命」とも呼ばれる |
| 経済的耐用年数 | ・建物が経済的な価値や収益性を維持できる期間 ・修繕費用の増加、賃料収入の低下、設備の陳腐化などにより、経済的なメリットが薄れるまでの年数 ・物理的には使用可能でも、経済合理性が失われる時期を示す |
鉄骨造の売却を検討する際は、これら3つの耐用年数の違いを正しく理解しておくことが重要です。
鉄骨造の耐用年数を正しく理解するには、以下の3つの視点から見ることが大切です。
それぞれの意味と具体的な年数を詳しく解説します。
法定耐用年数とは、税務上の減価償却計算に使用される年数で、国税庁が建物の構造や用途ごとに定めています。あくまで税法上の基準であり、建物の実際の寿命を示すものではありません。この年数に基づいて毎年の減価償却費を計算し、不動産所得の経費として計上できます。
鉄骨造の法定耐用年数は、骨格材の厚さによって以下のように異なります。
| 種類 | 耐用年数 |
|---|---|
| 軽量鉄骨造 (鋼材の厚さ3㎜以下) |
19年 |
| 軽量鉄骨造 (鋼材の厚さ3㎜超~4㎜) |
27年 |
| 重量鉄骨造 (鋼材の厚さ4㎜超) |
34年 |
年数の違いは、鋼材の厚みが増すほど建物の耐久性が高まるという考え方にもとづいています。自身が所有する建物がどの分類に該当するかは、建築時の設計図書や建築確認申請書で確認可能です。売却を検討する際には、まず自分の物件の正確な法定耐用年数を把握してみましょう。
鉄骨造の法定耐用年数は、建物の用途によっても以下のように異なります。
| 種類 | 住宅・店舗 | 事務所 | 飲食店・車庫 | 旅館・ ホテル・病院 | 公衆浴場 | 工場・倉庫 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 軽量鉄骨造 (鋼材の厚さ3㎜以下) |
19年 | 22年 | 19年 | 17年 | 15年 | 17年 |
| 軽量鉄骨造 (鋼材の厚さ3~4㎜) |
27年 | 30年 | 25年 | 24年 | 19年 | 24年 |
| 重量鉄骨造 (鋼材の厚さ4㎜超) |
34年 | 38年 | 31年 | 29年 | 27年 | 31年 |
同じ鉄骨造でも用途によって法定耐用年数に差があるのは、建物の使用頻度や劣化のスピードが用途によって異なるためです。所有している物件の構造と用途をもとに、該当する法定耐用年数を確認しておきましょう。
物理的耐用年数とは、建物が構造的・物理的に使用できる実際の寿命を指します。鉄骨造の物理的耐用年数は法定耐用年数よりも長く、30〜60年程度とされることが多いです(維持・管理方法によって前後します)。適切なメンテナンスを行った場合に、建物が実際に使用できる期間を示しています。
たとえ法定耐用年数を超えても、建物の構造自体に問題がなければ十分に居住や使用が可能です。また以下のようなメンテナンスを行うことで、物理的耐用年数を伸ばせます。

特に鉄骨造は錆が問題になりやすいため、定期的な防錆処理を行うことで建物の寿命延長につながります。売却時には法定耐用年数だけでなく、実際の建物状態も重視されるため、適切なメンテナンス履歴があることが強みになるでしょう。
経済的耐用年数とは、建物が経済的な価値を維持できる期間を指します。基本的に賃貸物件で重要となる概念で、一概に何年程度と言い切ることは難しいですが、30年程度を過ぎると経済的なメリットが薄れてくることが多いです。建物自体は使用可能であっても、修繕費用が増加したり、設備の陳腐化により賃料収入が低下したりするためです。
例えば築30年を超えると、新しい設備を備えた競合物件と比較されて入居者が集まりにくくなり、家賃を下げざるを得ない状況になりがちです。売却を検討する場合、経済的耐用年数内であれば比較的買い手が見つかりやすく、適正価格での取引が期待できるでしょう。
鉄骨造の売却タイミングは、築年数や法定耐用年数だけで判断できるものではありません。実際には、法定耐用年数・物理的耐用年数・経済的耐用年数を踏まえた「期待耐用年数」の視点から、総合的に判断することが重要です。期待耐用年数とは、定期的な点検や計画的な大規模修繕を実施することで期待できる建物の使用年数のことです。
例えば、居住用の鉄骨造住宅では、法定耐用年数を超えていても建物の構造や管理状態が良好であれば、十分に売却対象として評価されます。一方、賃貸アパートやマンションなどの投資用物件では、経済的耐用年数が重要な判断基準になります。賃料の下落や修繕費の増加によって収益性が低下すると、建物自体は使用可能であっても、売却価格や買い手の付きやすさに影響するためです。
このように、鉄骨造の売り時は「何年経過したか」ではなく、建物の種類や用途ごとに「今後どの程度の期間、合理的に使用・運用できるか」という期待耐用年数を基準に考えることが大切です。3つの耐用年数を組み合わせて判断することで、過度な値下げや不要な修繕費を避け、より納得感のある売却判断につながります。
鉄骨造の建物は、法定耐用年数を超えても使用できるケースがほとんどですが、売却の場面では不利に働く要素が増えていきます。ここでは、耐用年数を超えた鉄骨造物件が「売りにくい」とされる主な理由を5つ解説します。
法定耐用年数を超えた建物は、金融機関の評価が低くなりやすく、住宅ローンの審査が厳しくなる傾向があります。具体的に考えられるケースは、以下のとおりです。
希望する借入期間や融資額を確保できない場合、買主は多くの自己資金を用意する必要があります。その結果、購入できる層が現金買いの買主や一部の投資家に限定され、買い手が見つかりにくくなるため、売却までに時間がかかりやすくなります。
耐用年数を超えた鉄骨造物件では、外壁や屋根、給排水設備など、将来的な修繕費用が高額になる可能性があります。買主は、購入価格だけでなく「購入後にどれだけの維持費がかかるか」を重視するため、築年数が進んだ物件ほど慎重に判断されがちです。修繕履歴が不明確な場合や、大規模修繕が控えていると判断されると、価格交渉が入りやすくなり、売却条件が不利になることもあります。
賃貸アパートやマンションなどの投資用鉄骨造物件では、築年数の経過とともに「デッドクロス」のリスクが高まります。デッドクロスとは、経費計上できる減価償却費よりもローンの元金返済額が大きくなり、帳簿上は利益が出ているのに手元にお金が残らない状態のことです。
特に築年数が法定耐用年数に近い、または超えている物件は、購入後すぐにデッドクロスを迎える可能性があるため注意が必要です。投資目的で不動産を購入する買主にとって、デッドクロスのリスクが高い物件は敬遠されやすく、購入価格も抑えられる傾向にあります。
法定耐用年数を超えた鉄骨造物件は、新築や築浅物件と比較して資産価値が低下します。国土交通省が公表している、建物価値の一般的な推移は以下のとおりです。

例えば、減価償却年数47年のRC造中古マンションでも、築35年の段階で新築時のおよそ30%まで価値が下落していることがわかります。償却期間を超えることで建物部分の評価額がほとんどなくなり、実質的には土地の価値のみで評価されることも多いです。新築や築浅物件と比べると、見た目や設備面での競争力も劣るため、購入検討者の選択肢から外されやすくなります。
築年数の古い鉄骨造物件では、建築当時の法令と現在の建築基準が異なるケースがあります。その場合、再建築不可や、建て替え時に建物規模が縮小されるといった制限が生じる可能性があります。
また、用途変更やリノベーションを前提に購入を検討している買主にとって、法的な制約が多い物件は敬遠されがちです。こうした将来の制限リスクも、売却が難しくなる要因の一つといえるでしょう。
耐用年数を超えた鉄骨造物件であっても、適切な準備と工夫を行うことで、売却の可能性を高めることは十分に可能です。売却を有利に進めるために押さえておきたいポイントは、以下の3つです。
それぞれ詳しく解説します。
耐用年数を超えた物件を売却する際は、建物診断(インスペクション)を実施しておくことが有効です。第三者の専門家によって建物の劣化状況や不具合の有無を客観的に示すことで、買主の不安を軽減できます。具体的には、以下のような調査を行えます。
診断結果を買主に提示することで、建物の状態が良好であることを証明でき、購入時の不安軽減につながるでしょう。建物の状態を「見える化」することで、価格交渉を有利に進めやすくなる点もメリットです。
売却前に、物理的耐用年数を意識したリフォームを行うことも有効な手段です。すべてを大規模に改修する必要はないですが、以下のように、劣化が目立ちやすい部分を整えることで物件の印象を改善できます。
買主にとって将来的な修繕リスクが低いと判断されれば、築年数に対するマイナス評価を抑えられ、結果として売却のしやすさや価格面での評価向上につながります。ただし過剰なリフォームは費用対効果が悪くなる可能性があるため、不動産会社と相談しながら、必要最低限かつ効果的な箇所に絞って実施することが重要です。
耐用年数を超えた鉄骨造物件は、不動産会社によって評価の考え方が異なるケースがあります。築年数だけを重視する会社もあれば、立地や建物状態、活用方法を踏まえて柔軟に評価する会社もあります。
そのため1社だけで判断せず、複数の不動産会社に査定を依頼することが重要です。査定額や提案内容を比較することで、物件の強みを正しく評価してくれるパートナーを見極めやすくなります。また査定時には、以下のようなポイントを確認することも大切です。
また、単に高い査定額を提示する会社を選ぶのではなく、根拠が明確で信頼できる説明をする会社を選ぶことが、最終的な売却成功につながります。なお、一括査定サイトを利用すれば、効率的に複数社の査定額を比較できます。物件情報を一度入力するだけで複数の不動産会社に査定を依頼でき、手間をかけずに相場感を把握することが可能です。
鉄骨造の耐用年数は、法定耐用年数だけで判断するものではなく、物理的耐用年数や経済的耐用年数を含めて総合的に考えることが重要です。特に売却を検討する際は、建物の種類や用途に応じた「期待耐用年数」を意識することで、適切な売り時を見極めやすくなります。耐用年数を超えた物件でも、事前準備や売却戦略次第で十分に売却は可能です。建物の状態や市場価値を正しく把握するためにも、複数の不動産会社に相談してみましょう。