不動産の買取とは、「不動産会社に直接、建物や土地などの不動産を買い取ってもらうこと」です。
個人が不動産を売却する際には、一般的には不動産会社に仲介を依頼し買い手の候補を探してもらい、買い手と売買契約をおこなうことが多いです。一方で、不動産の買取では、不動産会社に直接物件を買ってもらう形式を取ります。
通常の「仲介」では、買い手の候補と不動産の価格や条件などをすり合わせて契約を進めるため、時間がかかってしまいます。
一方で「買取」の場合には、直接不動産会社に買ってもらうことで、現金化までの期間を短くすることができます。その分相場よりも安く売ることが多くデメリットもありますが、売り手にとってやむを得ない事情がある場合などには有効な手段の一つであるといえます。メリットとデメリットについては次の章以降で詳しく解説していきます。
不動産を売却する際におこなわれる「仲介」と、今回解説する「買取」には、以下のような違いがあります。
仲介では、第三者が買い手となるため、売り手は不動産会社を通して販売活動をして、より好条件で購入してくれる買い手の候補を探します。一方で、買取の場合は、売り手が選んだ不動産会社と個別交渉するため、販売活動はおこないません。 そのため、通常の「仲介」であれば市場価格で売却できるはずの不動産も、「買取」では個別交渉となるため、相場よりも安く売却しなければならないケースが多いです。
ただし、売却までの期間は「買取」の方が早いため、不動産を早く手放したい方にはおすすめの選択肢です。 どちらも良い面・悪い面があるので、時間と価格のいずれを優先させるかをはっきりさせ、売買方法を決めましょう。
不動産の買取には「即時買取」と「買取保証」の2種類が存在します。それぞれを解説していきます。
即時買取は、不動産会社と売却額の交渉が終わり次第、すぐに買い取ってくれるという契約形態です。 不動産会社もすぐに買取をするつもりで契約の手続きをするため、取引のスピードが非常に早いというのが最大の特徴です。 ただし、不動産会社との交渉だけで価格が決定されるので、市場価格よりも2割ほど安く売却されるケースが多く、注意が必要です。 売却額は下がっても良いので、とにかく早く売却したい、現金化したいという方にはおすすめの契約形態となります。
買取保証は即時買取と異なり、「仲介を目的とした販売活動を一定期間行い、買い手が見つからなかった場合に不動産会社が買い取る」という契約形態です。最初に取り決めた期間は販売活動をするため、もしその間に買い手との交渉が成立すれば、買取はなくなります。
一方で、買い手が見つからなかった場合には、事前に決めた金額で不動産会社に買い取ってもらいます。この買取保証の形態では、仲介の「買い手がいつ現れるか分からない」というデメリットを、不動産会社の買取で保証するものとなります。
買取保証は、一定期間市場での販売活動をすることから、即時買取と比較して高値で売却することができる点が特徴です。当然、現金化までのスピードは即時買取には負けますが、ある程度の期間の余裕があり、できる限り市場価格で売却したいと考えている方にはおすすめの契約形態となります。
ここまで、仲介買取の違いについて解説しましたが、不動産買取には次の4つのメリットがあります。
順にそれぞれ解説していきましょう。
不動産買取では、その不動産会社が直接買取をする場合には、仲介手数料がかかりません。 仲介手数料は、物件の売買価格によって異なりますが、以下のように上限が決められています。
【不動産手数料の上限】
なお、それぞれ該当する金額帯に分けて仲介手数料を計算し、合計しますが、物件価格が400万円を超える場合には、速算式として3%+6万円で計算をすると簡単に計算ができます。
例えば、5,000万円の建物を売却する場合に必要な仲介手数料の上限は、以下の通りです。
(5,000万円×3%=150万円)+6万円(速算式)+15.6万円(消費税10%分)=171.6万円
171.6万円もの手数料が全くかからないという点は、不動産買取の大きなメリットの一つでしょう。
ただし、不動産買取をおこなう場合でも、仲介した不動産会社と別の会社が買取をおこなう場合には、仲介をする不動産会社に仲介手数料を支払う必要がある場合がありますので、本当に仲介手数料がかからないかについては、あらかじめ確認しておきましょう。
不動産買取は、すぐに現金化できる点も大きなメリットです。
特に即時買取の場合は、早ければ不動産会社に連絡をして数日以内に売却が完了となるケースもあります。買取保証の場合でも、例えば仲介手続きを3ヶ月ほどおこなっても買い手が見つからない場合はすぐに買取をするなどの条件を付けておくことで、一般的な仲介よりも早く確実に現金化することが可能です。
もちろん、市場価格での販売ができなくなることから、売却金額は落ちますが(1~2割引きが目安)すぐに現金化できる点においてはメリットといえるでしょう。
不動産買取の場合には、契約不適合責任を免除することができるというメリットがあります。
契約不適合責任とは、不動産の売買契約の成立後に、売り手が事前に通告していない欠陥が見つかった場合に生じる、売り手側の責任です。具体的には、不動産購入後に雨漏りや配管の水漏れなどが見つかった場合に、売り手がその修繕費を全て支払う責任などが該当します。
不動産買取の場合には、契約不適合責任を免除することができるため、その場合にはこのような補償をする必要がなくなるのです。
不動産買取では、近所に売却をしていることが知られるリスクが少なくなります。一方で、仲介を依頼する場合には、以下のような販売活動をおこないます。
もちろん、不動産会社に相談することで、これらの活動を控えてもらうことは可能です。しかし、売却活動を控えることは、同時に買い手を見つける機会を減らしてしまうことにも繋がりますので、どちらを優先するかを判断する必要があります。
もし、近所の人に売却をすることを知られたくない理由がある場合には、不動産買取を利用することはメリットがあるといえます。
一般的な仲介と比較して、不動産買取を利用するデメリットには、次の2つが挙げられます。
それぞれを解説していきます。
最大のデメリットは売却価格でしょう。 仲介と違い、不動産買取では特定の不動産会社とのみ交渉をするため、市場価格の2割引きを目安に、安く買い取られてしまう可能性があります。
不動産会社側はできるだけ安く不動産を仕入れて、リノベーションなどで付加価値をつけた上で、その後に販売することを考えています。そのため、利益を得るために安く買いたいと考えています。
当然、物件の状態やエリアなどによって価格は異なりますが、できるだけ高値で売却したい場合には、不動産買取ではなく時間をかけて仲介で売り出すことをおすすめします。
築年数が浅い物件や人気エリアの物件などは、不動産買取のメリットを活かしづらいでしょう。
築浅物件や人気エリアの物件などは、仲介でも十分に売却できる可能性が高いと考えられるためです。
通常、不動産買取の場合には、不動産会社がリフォームを行い販売します。しかし、特に築浅物件は既に綺麗な状態であることが多く、リフォームをする必要がほとんどないことから、不動産会社は買取をしても利益を出しづらいという事情があります。リフォームが不要で売れるような不動産であれば、売り手は買取を選択せずに、仲介で売っても早く売れる可能性があるのです。
築浅物件や人気エリアの物件を売却する場合は、仲介を選ぶことをおすすめします。
ここまで、「不動産買取」と「仲介」のそれぞれのメリットとデメリットについて紹介しました。以下に、それぞれに向いている物件や状況をまとめましたので、参考にしてみてください。
【不動産買取が向いている物件・状況】
【仲介が向いている物件・状況】
個人や物件の状況に合わせて、適切な売却方法を選ぶようにしましょう。
不動産買取を実際におこなう場合の流れを確認しておきましょう。
具体的なステップを以下にまとめました。事前に全体像を把握して、準備をしていくことをおすすめします。
また、以下は任意で必要になる場合がある書類です。念のため準備しておくと良いでしょう。
相場の確認では、不動産の情報サイトなどで、売却したい物件と似た条件を入力して、検索結果の金額を見るのが簡単な方法です。
1~2社では不当な価格を提示された場合に判断がつきづらいので、より妥当な金額を知るためには3社以上に依頼することがおすすめです。
早ければ契約の際に手付金を不動産会社から受け取ることができます。
確定申告は売却をした翌年の2月中旬〜3月中旬におこないます。忘れないように注意しましょう。
今回は、「不動産買取」と「仲介」の違いと、不動産買取の流れについてまとめました。
不動産買取は「不動産会社に直接、建物や土地などの不動産を買い取ってもらうこと」です。不動産の売却の際には、まずは不動産買取か仲介かを判断し、買取の場合には「即時買取」と「買取保証」の2種類から自分に合った方法を選択しましょう。
不動産買取と仲介との違いのメリットとデメリットを理解して、自分に合った方法で売却活動を進めましょう。
大学卒業後、2011年に大手不動産会社に入社し現在まで不動産メディアづくりや組織づくりに従事。 不動産に興味を持ち個人でも戸建てや区分マンション、商業ビルなどの売買を経験。 会社員を続ける傍ら、学生時代に起業した会社とあわせて現在は株式会社を2社経営。投資家として若手実業家の支援なども手がけている。