土地売却・査定

【土地売却にかかる税金はいくら?】計算方法や具体的なシミュレーション、節税対策を徹底解説

【土地売却にかかる税金はいくら?】計算方法や具体的なシミュレーション、節税対策を徹底解説

土地売却にかかる税金の種類

土地売却にかかる税金の種類

それでは早速、土地売却にかかる税金の種類を確認していきます。土地売却には下記の税金が必要です。

  • 印紙税
  • 登録免許税
  • 譲渡所得税(所得税・住民税)

それぞれの税金の意味や金額を詳しく見ていきましょう。

印紙税

印紙税は、経済取引に伴った契約書などを作成した際にかかる税金です。売買契約書に直接印紙を貼り付けることで納付できます。課税額は下記のように契約金額に応じて変化します。

契約金額 印紙税
1万円未満のもの 非課税
1万円以上、10万円以下のもの 200円
10万円を超え、50万円以下のもの 400円
50万円を超え、100万円以下のもの 1,000円
100万円を超え、500万円以下のもの 2,000円
500万円を超え、1,000万円以下のもの 1万円
1,000万円を超え、5,000万円以下のもの 2万円
5,000万円を超え、1億円以下のもの 6万円
1億円を超え、5億円以下のもの 10万円
5億円を超え、10億円以下のもの 20万円
10億円を超え、50億円以下のもの 40万円
50億円を超えるもの 60万円

印紙税の支払いのタイミングは売買契約時となります。

不動産売買取引では、取引単価が高く、印紙税がかなりかかります。しかし、2022年5月に解禁された電子契約では、印紙税がかかりません。契約を電子化することによって、節税効果があります。

登録免許税

登録免許税は、土地を引き渡すタイミングに発生する税金です。売主が登録免許税を負担するケースは、土地に銀行の抵当権が設定されている場合のみとなります。

銀行から住宅ローンを借りている場合、その土地には抵当権が設定され、売主の都合で売却できません。住宅ローンを全額返済して抵当権を抹消する必要があります。

この抵当権の抹消登記に登録免許税が必要です。費用は不動産一件につき1,000円となるので、土地売却にかかる登録免許税は1,000円になります。

また、抵当権抹消登記は司法書士への依頼が一般的です。そのため、登録免許税の他に数万円程度の司法書士費用も見込んでおきましょう。

譲渡所得税(所得税・住民税)

土地売却のなかで、最も大きな税金は譲渡所得税です。譲渡所得税は、土地売却で売却益が出た場合にのみ支払う必要があります。

譲渡所得税でかかる税金は「所得税」と「住民税」の2種類です。支払うタイミングは、売却した年の翌年の確定申告時となります。

譲渡税は不動産を所有した期間で計算方法が異なるので、次の項で詳しく確認していきましょう。

譲渡所得税(所得税・住民税)の仕組み

所得税と住民税の税率は、不動産を所有した期間で異なります。下記に所有期間に応じた税率をまとめたのでぜひ参考にしてください。

所有期間 所得税率 住民税率 合計
長期譲渡所得(所有期間5年超え) 15.315% 5% 20.315%
短期譲渡所得(所有期間5年以内) 30.63% 9% 39.63%

譲渡所得税は、土地を売却して売却益が出た場合にのみ発生します。土地売却で損失が出た場合には支払う必要はありません。

譲渡所得税(所得税・住民税)の計算方法

譲渡所得税は、単純に売却した金額に対して税金がかかるのではなく、譲渡所得に対して課税されます。

譲渡所得とは、土地の取得費用や経費などを売却額から差し引いた金額です。下記に譲渡所得を求める式をまとめたのでご覧ください。

【譲渡所得の求め方】

課税譲渡所得=譲渡価格-取得費用(土地を購入した際の費用)-譲渡費用(仲介手数料などの売却にかかった費用)-特別控除

上記の計算式で算出した課税譲渡所得に、上の項で解説した所有期間に応じた税率を掛ければ所得税と住民税が算出されます。

取得費用や譲渡費用には以下のような項目を計上できるので、譲渡所得税を算出してみましょう。

費用 計上できる項目
取得費用
  • 土地を購入した代金
  • 購入時に支払った税金(印紙税・登録免許税・不動産取得税等)
  • 仲介手数料
  • 測量費
  • 建物解体費
譲渡費用
  • 仲介手数料
  • 印紙税
  • 測量費
  • 建物解体費

土地売却時にかかる税金の節税方法

土地売却時にかかる税金の節税方法

ここまで、土地売却にかかる税金について解説してきました。土地売却時には、印紙税・登録免許税・譲渡所得税の3つが発生するので、ある程度の金額がかかります。

しかし、下記のポイントを押さえることで土地売却にかかる税金は節税が可能です。

  • 所有期間が5年を超えるようにタイミングを見極める
  • 特例控除を利用して譲渡所得税を軽減する
  • 相続税を支払った場合は3年以内に売却する

それぞれのポイントを詳しく解説します。

所有期間が5年を超えるようにタイミングを見極める

1点目のポイントは、所有期間が5年を超えるようにすることです。土地売却で売却益が出た場合に支払う譲渡所得税は、不動産の所有期間によって大きく税率が異なります。

所有期間が5年以内の場合の税率が30%であるのに対し、所有期間5年超えの場合の税率は半分の15%です。6年以上不動産を所有するだけで、負担する税率が半分にまで減少します。

所有期間は売却した年の1月1日時点でカウントされます。そのため、売却したい年の1月1日の時点で所有期間が5年を過ぎているか確認しましょう。

特別控除を利用して譲渡所得税を軽減する

土地の売却で利益が出た場合、一定の要件を満たせば特別控除が利用できます。下記に一般の土地売却で利用できる特別控除をまとめたので、ぜひ参考にしてください。

特例 詳細
居住用財産の3,000万円特別控除 居住用財産を売った場合に最大3,000万円控除できる
10年超えの居住用財産を譲渡した場合の軽減税率の特例 居住用財産の所有期間が10年以上の場合に税率を軽減できる
被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除の特例 相続した土地でも要件を満たすことで最大3,000万円の特別控除が受けられる

また、公共事業や土地区画整理事業などの特別な理由から土地を手放す場合にも利用できる特例があります。下記に特例と特別控除の額をまとめたのでご覧ください。

売却理由 特別控除
公共事業のために土地を売却した場合 5,000万円
特定土地区画整理事業のために土地を売却した場合 2,000万円
農地保有の合理化のために土地を売却した場合 800万円
特定住宅地造成事業のために土地を売却した場合 1,500万円
平成21年に取得した土地を平成27年以降に売却した場合 1,000万円
平成22年に取得した土地を平成28年以降に売却した場合 1,000万円

どのような土地を売却したのかによって利用できる特別控除は異なります。特例の内容をしっかりと把握して、ご自身の条件に当てはまるものを見つけましょう。

相続税を支払った場合は3年以内の売却も検討する

相続税には取得費加算の特例があります。この特例では、相続してから3年以内に売却を行う等の要件を満たすことで、相続税額のうち一定金額を譲渡資産の取得費に加算が可能です。

下記に取得費加算の特例の要件をまとめたのでぜひ参考にしてください。

【取得費加算の特例の要件】

(1)相続や遺贈により財産を取得した者であること。

(2)その財産を取得した人に相続税が課税されていること。

(3)その財産を、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡していること。

(引用::国税庁「No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」

(1)と(2)の要件を満たしている場合は、相続してから3年以内に売却することで、相続税が軽減されます。軽減される相続税と、短期譲渡所得税・長期譲渡所得税の差額を比較して、節税効果の高いタイミングで売却するようにしましょう。

土地売却の税金シミュレーション

土地売却の税金シミュレーション

それでは実際に土地売却をおこなった想定をして、税金のシミュレーションをしましょう。

この項では、500万円と1,000万円で土地を売却したケースを見ていきます。ご自身の所有する土地の価格や所有期間と、それぞれのケースを照らし合わせて参考にしてください。

300万円で購入し、500万円で土地を売却した際の税金シミュレーション

はじめに、300万円で購入した土地を500万円で売却したケースです。下記に土地の情報をまとめたのでご覧ください。

項目 金額
売却価格 500万円
譲渡時諸費用 50万円
取得価格 300万円
取得時諸費用 50万円

所有期間が5年以下の短期譲渡と5年超えの長期譲渡の2パターンの税金をそれぞれ確認していきましょう。

短期譲渡売買の場合

所有期間が5年以下の場合、短期譲渡所得になるので税率は39.63%となります。これを踏まえて税金を計算していきましょう。

【短期譲渡売買の場合の計算式】

  • 売却価格500万円-(譲渡時諸費用50万円+取得価格300万円+取得時諸費用50万円)=譲渡所得100万円
  • 譲渡所得100万円×39.63%=396,300円

上記の計算からもわかるように、300万円の土地を購入し、所有期間5年以下で500万円の土地を売却した場合の譲渡所得税は396,300円です。

長期譲渡売買の場合

次に、同じ条件で長期譲渡売買の場合を確認していきましょう。所有期間が6年以上の場合には、長期譲渡所得になるので税率が20.315%となります。

それでは、計算式に当てはめて譲渡所得税を計算していきます。

【長期譲渡売買の場合の計算式】

  • 売却価格500万円-(譲渡時諸費用50万円+取得価格300万円+取得時諸費用50万円)=譲渡所得100万円
  • 譲渡所得100万円×20.315%=213,150円

300万円で購入し、所有期間5年超えで500万円の土地を売却すると、譲渡所得税は213,150円となりました。

500万円で購入し、1,000万円で土地を売却した際の税金シミュレーション

続いて、500万円で購入した土地を1,000万円で売却したケースです。下記に土地の情報をまとめたのでご覧ください。

項目 金額
売却価格 1,000万円
譲渡時諸費用 100万円
取得価格 500万円
取得時諸費用 100万円

所有期間が5年以下と5年超えの2パターンの税金をそれぞれ確認していきましょう。

短期譲渡売買の場合

まずは短期譲渡売買の場合で計算をしていきましょう。

【短期譲渡売買の場合の計算式】

  • 売却価格1,000万円-(譲渡時諸費用100万円+取得価格500万円+取得時諸費用100万円)=譲渡所得300万円
  • 譲渡所得300万円×39.63%=1,188,900円
  • 譲渡所得税1,188,900円

500万円で購入し、所有期間5年以下で、1,000万円で売却した土地にかかる税金は118万8,900円です。

長期譲渡売買の場合

所有期間5年超えの長期譲渡売買の場合の税金は以下の通りです。

【長期譲渡売買の場合の計算式】

  • 売却価格1,000万円-(譲渡時諸費用100万円+取得価格500万円+取得時諸費用100万円)=譲渡所得300万円
  • 譲渡所得300万円×20.315%=609,450円
  • 譲渡所得税609,450円

500万円で購入し、所有期間6年以上で1,000万円で売却した土地にかかる税金は60万9,450円です。

購入した物件に「実際に住んだ」場合の特別控除

これまで述べてきたように、土地を売却した時に利益(譲渡所得)が発生すると、税金(所得税と住民税)を支払わなければなりません。しかし、実際に住んでいた、つまりマイホームであった家付きの土地を売却する場合であれば、特例による税の優遇で税金の支払いが控除されます。その特例が、「3,000万円特別控除」です。

項目 金額
売却価格 1,000万円
譲渡時諸費用 100万円
取得価格 500万円
取得時諸費用 100万円

先程のシミュレーションで、3,000万円特別控除の要件を満たしている想定で計算していきます。所有期間が5年以下と5年超えの2パターンの税金をそれぞれ確認していきましょう。

短期譲渡売買の場合

まずは短期譲渡売買の場合で計算をしていきましょう。

【短期譲渡売買の場合の計算式】

  • 売却価格1,000万円-(譲渡時諸費用100万円+取得価格500万円+取得時諸費用100万円)=譲渡所得300万円
  • 譲渡所得300万円×39.63%=1,188,900円
  • 譲渡所得税1,188,900円-特別控除30,000,000円=0

3,000万円特別控除を利用した場合、1,000万円で売却した土地にかかる税金は0円です。

長期譲渡売買の場合

所有期間5年超えの長期譲渡売買の場合の税金は、以下の通りです。

【長期譲渡売買の場合の計算式】

  • 売却価格1,000万円-(譲渡時諸費用100万円+取得価格500万円+取得時諸費用100万円)=譲渡所得300万円
  • 譲渡所得300万円×20.315%=609,450円
  • 譲渡所得税609,450円-特別控除3,000,000円=0

長期譲渡売買で3,000万円特別控除を利用した場合も短期譲渡売買と同様に、1,000万円で売却した土地にかかる税金は0円です。

土地売却の税金に関するよくある質問

土地売却の税金に関するよくある質問

最後に、土地売却の税金に関するよくある質問に回答します。

  • 土地売却の税金と確定申告は関係ある?
  • 土地売却にかかる税金を支払うタイミングはいつ?
  • 相続した土地を売却した場合の税金は?

それぞれ詳しく見ていきましょう。

土地売却の税金と確定申告は関係ある?

土地売却をおこなった際、下記のケースに該当する場合には確定申告をおこなう必要があります。

  • 売却で利益が出た場合
  • 特別控除などの特例を利用する場合
  • 譲渡益がマイナスでも損益通算の特例を利用する場合

上記からもわかるように、確定申告は利益が出た場合のみではなく、特例を利用する時にも必要です。税金の支払いが不要な場合は確定申告も不要と思われがちですが、特例を利用する場合には必ず申請をしてください。

土地売却にかかる税金を支払うタイミングはいつ?

土地売却にかかる税金には、印紙税・所得税・住民税・登録免許税の4つがあります。それぞれを支払うタイミングは以下の通りです。

税金の種類 支払うタイミング
印紙税 売買契約時
所得税 不動産を売却した翌年の2月16日〜3月15日
住民税 確定申告した年の5月以降
登録免許税 土地を引き渡す時

相続した土地を売却した場合の税金は?

相続した土地を売却する場合には、取得費や所有期間を被相続人から引き継いで税金の計算をおこないます。

下記に相続した土地にかかる譲渡所得の求め方をまとめたので、ぜひ参考にしてください。

【相続した土地の譲渡所得の求め方】

譲渡所得=譲渡価格-被相続人が支払った取得費-譲渡費用

取得費が不明の場合には譲渡価格の5%で計算します。

まとめ

当記事では、土地売却にかかる税金について解説していきました。土地売却には、印紙税・登録免許税・譲渡所得税の3種類の税金がかかります。

印紙税と登録免許税の節税はできませんが、譲渡所得税は特別控除の要件を満たすことにより大幅な節税が可能です。当記事でご紹介した節税方法を参考に、賢い土地売却をおこなってください。

上野典行(プリンシブル・コンサルティング・グループ株式会社)
上野典行(プリンシブル・コンサルティング・グループ株式会社)

公益財団法人日本賃貸住宅管理協会会員
「プリンシプル 住まい総研」所長
住宅情報マンションズ初代編集長

1988年株式会社リクルート入社し、リクルートナビを開発。 2002年より住宅情報タウンズのフリーペーパー化を実現し、編集長就任。
現スーモも含めた商品・事業開発責任者に従事。2011 年 12 月同社退職。

プリンシプル・コンサルティング・グループにて2012年1月より現職。
全国の不動産会社のコンサルティング、専門誌での執筆や全国で講演活動を実施。

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