固定資産税とは、土地や家屋、償却資産に対して課税される税金です。土地や家屋には、住宅地だけではなく、農地や商業地も含まれます。
償却資産とは、法人や個人が事業を営むために所有しているものです。たとえば、工場の機械や備品、広告塔やフェンスなどが該当します。償却資産は、毎年1月31日までの申告が必須です。
固定資産を持っている人は、資産価値に応じて算出された税額を自治体に納めなければなりません。毎年1月1日現在、固定資産課税台帳に記載されている人、つまり固定資産を所有している人は納税が必要です。
納税時期は6月、9月、12月、2月の年4回にわかれており、第1期の6月に所有者に送付される納税通知書を使用して納付します。期限までに納付しないと督促状により延滞金を請求されるので、遅れないように納めましょう。
固定資産税は、税額計算の基礎となる課税標準額を基にして算出します。計算式は、以下の通りです。
固定資産税額=課税標準額×1.4%
(1)土地の固定資産額の計算方法
土地の課税標準額は、特例措置や負担軽減措置などを適用して算出された価額です。代表的な特例に、住宅用地に対する特例措置があります。
出典:固定資産税・都市計画税(土地・家屋) | 税金の種類 | 東京都主税局
たとえば、4,500万円の一般住宅用地の固定資産税の計算例は、以下の通りです。実際には、この数値から負担軽減措置がなされるので、税負担がさらに軽減する可能性があります。
(4,500万円×1/6)×1.4%=10万5,000円
(2)家屋の固定資産税の計算方法
固定資産税課税台帳に記載された価格が、家屋の課税標準額です。新築住宅には、床面積が50㎡以上280㎡以下の物件に限り、固定資産額が2分の1に減額される制度があります。
一般住宅では課税される年度から3年度分、長期優良住宅、3階建以上の耐火・準耐火建築物は5年度分の減額です。
たとえば、減額を利用した固定資産税額は、以下のような計算をします。
900万円×1.4%=12万6,000円(固定資産税額) 12万6,000円×1/2=6万3,000円(新築住宅の減額を利用)
固定資産税が高いと、家計にとっては大きな負担です。固定資産税は、同じ敷地面積でも条件によって納税額が変わります。
固定資産税が高くなる3つの理由をまとめました。
それぞれの理由について、詳しく説明します。
宅地の評価額を決める際の最初のステップは、用途地区の区分の確認です。これらの区分を基に土地の評価額が決められるので、最初から高めに課税される地区が存在します。
土地の評価額を決める方法は、「市街地宅地評価法」と「その他の宅地評価法」の2通りです。市街地宅地評価法は、都市部のように市街地を形成している地域で使用されます。
たとえば、東京都の市街地宅地評価法では、以下のような区分がされています。
出典:固定資産税・都市計画税(土地・家屋)
ただし、あまりにも高すぎる固定資産税は誤りの可能性もあります。主な原因は以下の2つです。
固定資産の評価額が間違っていると感じるときは、不動産鑑定士の鑑定をおすすめします。さらに、減額につながる特例が適用されているか納税通知書で確認してください。
通知に誤りがある場合は、自治体の固定資産課に相談をしましょう。
更地と、家屋が建っている土地では、更地の固定資産税の納税額のほうが高額です。
土地は、「住宅用地」と「非住宅用地」にわけられます。注意しなければならないのは、更地は住宅用地以外の土地なので非住宅用地に分類される点です。
住宅用地には、固定資産税の算出の際に「住宅用地の特例措置」が適用されます。更地の場合は、この「住宅用地の特例措置」が活用できません。
たとえば、評価額が3,000万円の住宅用地と、更地にした非住宅用地の固定資産税の違いはどうでしょうか。
(1)住宅用地の場合
まず、土地の評価額に「住宅用地の特例措置」を適用し、課税標準額を計算します。さらに税率を乗じた金額が住宅用地の固定資産額です。
小規模住宅用地の場合:(3,000万円×1/6)×1.4%=7万円 一般住宅用地の場合:(3,000万円×1/3)×1.4%=14万円
(2)更地(非住宅用地)の場合
非住宅用地の課税標準額は、固定資産評価額に70%を乗じた額です。課税標準額に税率を乗じ、固定資産額を算出します。
(3,000万円×70%)×1.4%=29万4,000円
以上のように、住宅用地よりも非住宅用地である更地のほうが、固定資産税が高くなると知っておきましょう。
価格が高い土地だと、固定資産税は高くなります。なぜなら、固定資産税の算出には、固定資産税路線価が使用されているからです。
固定資産税路線価とは、道路に面する宅地の1㎡あたりの価額を指します。1月1日を評価基準日とし、3年に一度評価が変わる制度です。
たとえば、同じ地区でも場所によって、1㎡あたりが1,000万円の土地もあれば、500万円の場合もあります。つまり、土地の価格が高ければ、路線価に基づいた固定資産額も高くなるわけです。
固定資産税路線価については、総務省のホームページや市町村で閲覧できます。固定資産税の額を自分で計算したい場合は、路線価を調べるとだいたいの地価の推測が可能です。
地価と比べて、固定資産税が高すぎると感じる場合は、自治体の固定資産評価審査会への審査の申出をしましょう。ただし、3年に1度の国定資産税の評価替えの年度に限られています。
所有する土地の価格が高いと固定資産税も上がりますが、本当に適正な税額なのか確認するのも必要ではないでしょうか。正しい固定資産税の額を把握するためにも、路線価や地価の知識は大切です。
固定資産税は、所有している土地や家屋の種類によっても異なりますが、納税額は一定にして高額です。家計や事業の負担にならないためにも、固定資産税を安くしたい方は多いでしょう。
以下に、固定資産税を安くする5つの方法をまとめました。
それぞれの方法について、順番にみていきましょう。
家屋の固定資産額の額を適正な金額に抑える基本的な方法の一つが、家屋調査を受けることです。新築や増改築をした場合に受けられます。
家屋調査とは、固定資産税の基となる家屋の金額を決定するために自治体がおこなう調査です。自治体の職員が家屋を直接訪問し、家の素材や間取りなどを調べます。
この家屋調査が、固定資産税を安く抑える重要なステップです。しかし、仕事が忙しかったり、時間が合わなかったりといった理由で、家屋調査を受けない方もいます。
家屋調査を受けないと、適切な価格に設定してもらえません。課税調整額が高くなる可能性があり、固定資産税がさらに高額になる恐れがあります。
また、納税通知書が届いてから納税額についての相談や申出をしたい場合、家屋調査のデータが存在しないのは大変な損失です。
家屋の正しい価格の設定と、適正な固定資産税の納付のためにも、家屋調査を必ず受けましょう。
固定資産額を算出する課税調整額には、軽減措置の適用があります。土地も建物のどちらも対象です。
軽減措置が適用されるかどうかで、固定資産税の額が大きく変わります。以下に代表的な特例と軽減措置をまとめました。
(1)住宅用地の特例措置
住宅やアパートなどの家屋の敷地、住宅用の敷地と一体となっている庭や駐車場を「住宅用地」と呼びます。一定の基準を満たした住宅用地に対して、固定資産税の軽減が受けられる制度が「住宅用地の特例措置」です。
住宅用地は「小規模住宅用地」と「一般住宅用地」に分類され、200㎡以下の小規模住宅用地は価格の6分の1、一般住宅用地は3分の1の減額が受けられます。
(2)新築住宅の減額
新築の住宅で、一定の床面積を満たす場合は、課税される年度から3年度分に限り、固定資産税の2分の1が減額されます。床面積の基準は50㎡以上280㎡以下です。
認定長期優良住宅については、課税される年度から5年度分、3階建以上の耐火・準耐火建築物は3年度分が減額できます。
クレジットカードで固定資産税を払うと、お得に納税できる場合があります。クレジットカードの利用によってポイント還元が受けられ、買い物やレジャーに活用できるからです。
ただし、クレジットカード納税を取り扱っている自治体でないと利用できません。所管の自治体での納税に、クレジットカードが利用可能かどうかを必ず確認しておきましょう。
クレジットカードの納付手続きでは、金額に応じたシステム利用料などの手数料がかかる点にも注意してください。ポイントの還元率より、システム利用料が高いと損をします。
たとえば、大阪市のシステム利用料は、以下の通りです。
出典:市税クレジットカード納付のご案内
大阪市の場合だと、納付金額の0.4%から0.9%のシステム利用料です。この割合よりも高い、ポイント還元率のクレジットカードで納付する必要があります。
空き家を相続した時の固定資産税を節税するためには、解体しないほうが安く抑えられます。空き家を解体して更地にした場合「住宅用地の特例措置」が使えなくなるからです。
ただし、更地でない場合でも自治体の調査で「特定空き家」に指定されると、住宅用地の特例措置が適用されません。更地と同じく、固定資産税の負担が増すので注意が必要です。
空き家に指定される要件は、以下の通りです。
固定資産税を安く抑えるためには、空き家を解体しない方法が最善です。ただし、空き家を活用できない場合は売却やリノベーションを検討しましょう。
賃貸アパートやマンションを建てて経営するのは、更地の最も有効的な活用法です。固定資産税の節約にもつながります。主な理由は、以下の通りです。
まず、貸アパートやマンションを建てることによって、非住宅用地から住宅用地へと変わります。住宅用地の特例措置が適用され、固定資産税の減額が可能です。
次に、賃貸住宅では200㎡×住戸数の面積が、小規模住宅用地として扱われます。よって、住宅用地の特例措置により価格の6分の1の減額です。ただし、住戸一戸あたりの面積が200㎡を超えた場合は一般住宅用地となるので、注意してください。
さらに、新築で貸アパートやマンションを建てた場合は、新築住宅の減額も利用可能です。新築された賃貸住宅では、一戸あたり120㎡の面積に対し、固定資産税の2分の1が軽減されます。
この記事では、固定資産税を節約したい方のために、安く抑える方法や計算方法について解説しました。
自治体によって決められる固定資産税も、さまざまな方法によって安く抑えられると実感できたのではないでしょうか。税金や土地、建物などの不動産の知識を頭に入れると、固定資産税の納税額について、これまでとは違った解釈ができるようになります。
特に、複数の不動産を所有する方にとっては、それぞれの固定資産額を比較する基準が必要です。土地や家屋によって異なる算出方法や制度の違いを学ぶことで、適正な納税額が把握できます。
固定資産税の負担を減らすためにも、賢く節税していきましょう。
関西学院大学法学部法律学科卒。
宅地建物取引士、管理業務主任者、2級FP技能士(AFP)、登録販売者など多岐にわたる資格を保有。 数々の保有資格を活かしながら、有限会社アローフィールド代表取締役社長として学習塾、不動産業務を行う。