確定測量とは、隣接地との境目を測ることです。その土地の保有者だけではなく、隣接地を所有している人に立ち会ってもらいながら測量するといったように、関係者が全て確認している状況でおこなわれます。
この確定測量によって明らかになった境界を図にしたものが、「確定測量図」・「確定実測図」です。
そもそも、土地の境界には大きくわけて、以下の2種類が存在しています。
確定測量はすべての境界を測るものなので、民々・官民どちらの境界も確定させることです。
確定測量をおこなうことで、隣接地の所有者と確定測量の依頼主の間で境界に対する合意が取られたことになります。つまり、境界に関するトラブルなどがないことを意味し、その点において実測図などとは違いがあるのです。
不動産売買をおこなう際には、必ずこの「確定測量」を行うことで、買い手が安心して購入できる状況を作ることが条件となっています。
確定測量図と似ている言葉に、「地積測量図」というものがあります。この地積測量図と確定測量図は似て非なるもので、違いは以下の通りです。
両者の一番の違いは、境界が保証されているかどうかです。確定測量図は隣接地の所有者が立ち会って境界を確定させますが、地積測量図には境界担保能力がありません。
このことから、原則として不動産の売却時には確定測量図の取得と買主への共有をおこなう必要があるのです。
このように確定測量図は、境界を示す図としては最も担保されています。
確定測量は個人でおこなうことはできないので、測量を専門として業者に依頼しなくてはいけません。その際の相場は、35万円〜80万円です。
特に、売却予定の不動産が道路や河川などの国・行政の保有している土地である場合には、官民査定になるため費用が60万円〜80万円ほどと高額になります。
費用は業者にもよりますが、以下のような内訳が一般的です。
保有している土地の形が一般的なものでない場合(いびつな形である場合)には、追加費用がかかるケースもあります。
事前に不動産会社などに確定測量の見積もりを取っておくことが、おすすめです。
ここまでで確定測量の概要について解説してきましたが、なぜおこなう必要があるのかについても解説します。
【確定測量が必要である3つの理由】
上記の理由を知り、土地を売却する際に損することを防ぎましょう。
最初の理由は、「隣地の所有者との境界点を明確にできる」ためです。「隣地の所有者との」が大きなポイントです。
もし、確定測量をおこなわずに土地の売却をした場合、以下のような問題が起こりえます。
【隣地所有者と境界の合意をしないと起こること】
上記のようなことが起こった場合、隣接地の所有者や買主から損害賠償請求をされることもありえます。
もし損害賠償請求をされなかったとしても、買い手がつかなかったり、途中まで進んでいた契約を解除されたりとトラブルが起こる可能性があります。
これらのトラブルを避けるためにも、確定測量をおこない、隣接している土地の所有者と合意を取っておく必要があるのです。
2つ目の理由は、そもそも「土地や戸建ての売買で義務づけられている」ためです。
土地や戸建ての売買ではトラブルを避けるために、契約書面で確定測量をおこなうことを義務づけられるケースがほとんどです。
ただし、例外として以下のようなケースでは、確定測量をおこなわなくても良い場合もあります。
【例外的に確定測量をおこなう必要がないケース】
このようなケースでは、買い手と売主の間で合意できれば確定測量は必要ありません。
しかし、上記に当てはまるケースは限られます。そのため、土地や戸建ての売買時には義務づけられていると考えて問題ありません。
相続税の申告をおこなう際に、確定測量図が求められることも理由のひとつです。
両親が亡くなり相続をする際や、自分の子どもに相続させる場合には相続税を支払う必要があります。その際に、「相続税評価額」という土地や建物にどの程度の価値があるのかを計算するのですが、このときに正確な土地の大きさを把握している必要があるのです。
もし、確定測量をおこなっておらず、実際よりも広い土地で計算してしまった場合には、実際に支払う必要のない税金を納めることになります。
そのような事態を防ぐためにも、必ず確定測量はおこなっておくべきなのです。
確定測量は、以下の7ステップで実施されます。
スムーズに確定測量をおこなうためにも、それぞれステップごとに把握しておきましょう。
確定測量の最初のステップは、土地家屋調査士に依頼することです。土地家屋調査士とは、不動産の登記の専門家で、一般的には不動産会社から紹介を受けられます。確定測量だけおこなう場合には、法務局で企業を紹介してもらうことも可能です。
土地家屋調査士に依頼することが決まれば、土地の所在を伝える必要があります。土地家屋調査士には事前に地番を伝えますが、一般的な「住所」とは異なることに注意しましょう。地番は、固定資産税納税通知書や課税明細書などに記載されているものを伝える必要があります。
地番を伝えたら、委任状に記名捺印をして、正式に依頼をしたことになります。
依頼をしたら、確定測量時に必要な以下の書類を準備しておきましょう。
【確定測量時に必要な書類一覧】
これらはすべて本人が揃えることが一般的ですが、土地家屋調査士も取得が可能です。そのため、依頼をする際に上記の書類を揃えてもらえるか確認をしておきましょう。
上記の書類だけでも十分ですが、より調査がスムーズにおこなえるように古い書類があれば理想的です。過去に公道や河川・公園などと境界確認をしたことはないかを役所で調べ、資料を提供してもらっておけば、調査士の参考になります。
書類が揃えば、土地家屋調査士が現地での測量を開始します。
ただし、最初は確定測量ではなく現況測量をおこないます。現況測量では、土地家屋調査士が現場を訪問し、確定測量をおこなう際に問題がないかを調査します。いわば、確定測量のための下調べをするのがこの現況測量です。
また、確定測量の際には隣地の所有者にも立ち会いを依頼するため、実際に隣地にも訪問し挨拶もおこないます。測量を始めるお知らせや隣地に入る必要があることの説明などもこのときにします。
現地調査の際に決めた予定をもとに、隣地の所有者や依頼主が立ち会い、境界線を確認して「仮杭」を打ちます。この時点で、隣地の所有者も立ち会っているため、この時点で境界に対する大まかな合意は取れている状態です。
測量図が完成次第、隣地の所有者と確定測量の日程調整をおこないます。
現況測量の際に問題がなければ、隣地の所有者などと予定を合わせて依頼主と土地家屋調査士が確定測量を開始します。確定測量でおこなう内容は、以下の通りです。
もし仮杭が壊れていたり、新たに設定する必要があったりする場合には、このときに依頼主と隣地の所有者と話し合いのもと、永久杭を打っていきます。
永久杭が打ち終わり、図面をもとに境界の合意が取れたら「境界確認書」を作成します。この書類に依頼主と隣地の所有者の両者で署名と捺印をおこなうことで、図面が「確定測量図」として意味を持つのです。
境界確認書は2通作成されるため、依頼主と隣地所有者が1通ずつ保管をしておきます。
最後に登記をおこないます。これによって登記簿謄本に記載されている面積と確定測量図が一致している状態となり、正式に確定測量が完了したことになります。
登記をするには、これまで作成した以下の3点の書類が必要になるので、紛失しないように保管しておきましょう。
【登記に必要な書類一覧】
確定測量を依頼する際の注意点を最後に確認しておきましょう。
【確定測量を依頼する際の注意点】
トラブルのない確定測量のためにも、それぞれ理解する必要があります。
確定測量の際には、隣地の人にも協力してもらうので、普段から良好な関係を築いているかが重要になります。実際に、隣地の所有者が立ち会いを拒否したために、確定測量がおこなえないケースも数多く存在しています。
そのような状況を避けるためにも、日頃から隣地との関係は良好に保っておきましょう。
確定測量は自分だけではなく、土地家屋調査士や隣地の所有者などさまざまな人が関係します。そのため、時間に余裕を持って依頼しておきましょう。
通常、確定測量には1カ月半〜3カ月ほどの時間がかかります。そのため、確定測量図が必要になる3カ月前には依頼しておくことがおすすめです。
また、特に以下のような土地は時間がかかるケースがあります。
隣地の共有者などは確定測量の依頼主側ではわからないため、できるだけ早い依頼を心がけましょう。
この記事では確定測量とはそもそも何か・確定測量の必要性・流れ・注意点について解説してきました。
確定測量は、あなただけではなく依頼主や業者などさまざまな人が関わります。そのため、思わぬトラブルが起きてしまう可能性を秘めているのです。
この記事で解説していることをもとに、早めの対応をおこないましょう。
関西学院大学法学部法律学科卒。
宅地建物取引士、管理業務主任者、2級FP技能士(AFP)、登録販売者など多岐にわたる資格を保有。 数々の保有資格を活かしながら、有限会社アローフィールド代表取締役社長として学習塾、不動産業務を行う。