中古住宅市場の実情としては、下記の点が挙げられます。
それぞれ詳しく解説していきます。
中古住宅において、2018年4月の法改正よって大きくルールが変化しました。
不動産会社が中古住宅の売買を仲介する際に、不動産会社は中古住宅を売買する買主に対して建物状況調査(ホームインスペクション)の説明と、希望に応じて専門家の斡旋をおこなうことを義務化。
ただし、義務となるのは斡旋までで、実施の義務はありません。
ホームインスペクションは、住宅診断や住宅検査とも呼ばれており、建物の施工不具合の有無や劣化状態を確認する建物調査を指します。また、広義では建物の不具合の原因と被害状況の調査をおこなうことを、インスペクションと呼ぶこともあります。
中古住宅を取り扱う業者が多く参入し、売買等の取引に関係のない第三者の立場で調査するケースもあれば、不動産会社や建築会社が調査するケースもあります。ニーズや目的に応じて適切なホームインスペクション業者を選定しなければなりません。
また、民法改正から既に2年以上経過していますが、不動産業界においてすべての買主への実施は実現していない状況です。大手不動産会社では、サービスの一環として調査費用を自社負担とし、地元の不動産会社は斡旋のみを担当するケースがあります。
売主がホームインスペクションを実施して建物に問題があるとした場合、不動産査定価格に影響する可能性があり、欠陥住宅と思われるのを恐れて積極的に実施が推奨されていないのが実情です。
中古住宅ならではの特徴でもありますが、事前に説明を受けて納得した形で売買契約を結ぶことが重要となります。
中古住宅は新型コロナウイルスの流行に伴い注目されていますが、実際に中古住宅購入者は増加傾向にあります。
「不動産流通業に関する消費者動向調査」のデータによると、新型コロナウイルスが住宅購入に影響したと考える割合は全体の約3割、特に影響があったのは購入時期で、5割強が購入時期を早めているのです。
また、住宅の機能のうち「換気設備」を考慮した割合は 46.6%と増加傾向にあります。
さらに、中古住宅購入者の割合は、次の通りです。
単純に、新型コロナウイルスの流行する前の2019年度と比較すると、中古住宅の購入者は10%以上増加しています。
中古住宅は、次のようなステップで購入まで進みます。
各ステップの詳細は、以下の通りです。
まず始めに、どのような条件で中古住宅を購入するのかを明確にします。この際、絶対に譲れない条件と、できれば実現したい条件を分けて考えるのがおすすめです。
そして、絶対に譲れない条件ではどの程度の費用が必要になるのか、そして、できれば実現したい条件を付帯するとどれだけ値上がりするのかを見積もります。
次に、中古住宅を購入するための資金計画を立案してください。借入金額だけでなく、金利や返済期間、頭金の割合などをしっかり決めておくことで、返済負担額が明確になり返済計画も立てやすくなります。
資金計画に目途が付いたら、インターネットや不動産会社などで実際の物件選びをおこないますが、この際に住宅購入相談を受けるのがおすすめです。気に入った物件を見つけたら、現地調査や内見をおこなって物件の善し悪しを判断し、希望条件を満たしているか判断します。
物件を探す際は、数件の候補物件の内見をおこなって比較検討するのがおすすめです。複数の物件を比較すればメリットやデメリットがくっきりと見えてきます。
内見を行い、購入したい住宅を決定したら、売主に買い付けを申し込みます。直接申し込む場合は売主に買付申込書を提出しますが、不動産会社を経由する場合は不動産会社が準備する購入申込書に希望する価格や条件を記載して提出してください。
売主が確認した後に、契約日や契約条件を調整するなど、具体的な商談に入ります。この時点ではあくまでも交渉段階で、契約まではしていないため購入希望を撤回することも可能です。
また、申し込み途中で、ある程度話がまとまりそうな場合は、最大10万円程度の申込証拠金を支払うケースもあります。申込証拠金に法的な拘束力はなく、必須ではありません。しかし、売主に住宅購入の本気度をアピールして優位に交渉を進められます。
売買契約の際には、宅地建物取引士から重要事項の説明を受けて、内容に相違がないか確認します。
重要事項説明は不動産会社に対して義務付けられている手続きの一つです。不動産売買契約の前に物件の詳細や取引条件について買主へ説明することを指します。もし不明な点がある場合にはしっかりと確認することが重要です。
ホームインスペクションの説明や不動産会社からの重要事項説明を受け、納得したうえで不動産売買契約を締結します。売買契約時には、不動産の譲渡代金だけでなく以下の諸費用が必要です。
また、2022年5月以降で電子契約が可能になれば、印紙代は不要というケースもあり得ます。
諸費用は概ね10万円から100万円以上で、物件の譲渡金額に応じて変動します。中古住宅を購入する際には、物件の価格だけでなく諸費用も概算しておきましょう。
売買契約を締結したら、融資を受ける方は住宅ローンの審査を受けます。
住宅ローンの本審査では、以下の書類が必要です。
事前審査を通過した場合でも、本審査で落ちてしまう可能性があります。候補としていくつかの金融機関を見つけておくとよいでしょう。
中古住宅の購入契約をおこなう際は、目安となる契約日を決定しておき、期日に「残代金」を決済、物件の引き渡しを受けます。
残代金とは、住宅購入費用から前払いの手付金や支払った諸費用を差し引いた残金のことです。このタイミングまでにまとまったお金を用意しておきましょう。
引き渡し日に名義の変更や登記手続きをおこなえば、すぐに引っ越して居住することも可能です。即日入居を予定している場合は、前もって引越し業者への依頼を済ませ、引越しの準備を並行して進めましょう。
中古住宅の購入時には、以下の点に注意する必要があります。
中古住宅を選ぶ際は、今後のライフプランを明確にし、それに適した住宅なのか判断することが重要です。
例えば若い夫婦が住宅探しをしている場合は、子供が生まれて家族が増えたり将来的に親と同居したりする未来も想定して、部屋数が多くて広めの住宅を選びましょう。
現時点での家族構成だけでなく、将来の家族構成やライフプランを見据えて住宅を選べば、長く生活を続けられる素敵なマイホームが手に入ります。
1978年に発生した宮城県沖地震を教訓とし、1981年に新耐震基準が導入されました。そのため、1981年6月1日以降に、建築確認申請がされた建物は、新耐震基準を満たしていると言えます。まずは1981年以降に建築された住宅かどうかを確認しましょう。
次に、木造住宅の耐震を判断するための基準として、2000年基準があります。
1995年の阪神淡路大震災で、新耐震基準をクリアした建物が多く倒壊したため、基準が見直されました。これを2000年基準と呼びます。
つまり、2000年以降に建築された木造住宅は、新耐震基準よりも厳しい耐震基準をクリアしており、耐震性が高いと言えます。特に地震が多いエリアで住宅を探す場合は、耐震性も重視して選ぶと良いでしょう。
相場よりも安く販売されている住宅の中には、現在の法律では違法建築の建物も存在します。
例えば、都市計画区域内に存在し、建築基準法で定める道路に2m以上接していない建物があります。こうした違法建築物件を購入する場合は、住宅ローンが借りられない可能性もあります。築古の古民家などを購入する際は、特に気を付けたいところです。再建築が「不可」となる場合もあります。
こうした建物は「既存不適格物件」と呼ばれ、増改築や再建築に制限が設けられています。名前に「不適格」と付いていますが、「現代の法律では違法」というだけで、建てたタイミングでは問題はありませんでした。購入も問題なくおこなえますが、制限が強くて使い勝手が悪いと言えます。
購入後に大規模なリフォームを検討していたり、敷地内に同規模の建物を建てることを考えている方は、望んだ使い方ができない可能性が高いため、購入前に確認しましょう。
中古住宅の中には、そのまま住むことができずリフォームが必要な物件も存在します。
価格が安いからといって、安易に購入すると高額なリフォーム費用がかかる可能性があるので要注意です。
リフォーム費用は、建築年数によって目安が大きく左右されます。築5年未満であれば、ハウスクリーニング費用程度で済むため、10万円前後で対応可能なことが多いでしょう。
築年数が10年を越える場合、家屋全体のクロスを張り替えることもあります。その場合は50万円程度の費用がかかることもあり、さらに外壁や屋根なども補修すると、150万円程度のリフォーム費用が必要なこともあります。
住宅の築年数に合わせてリフォーム費用も見込んだシミュレーションをおこないましょう。
リフォーム一体型住宅ローンとは、住宅購入費用とリフォーム費用を低金利で借り入れる融資で、中古住宅の購入を検討している方におすすめです。リフォームローンよりも低金利で、居住までの費用を一括で借り入れられるのでシミュレーションを行いやすいのもメリットです。
一方で、リフォームローンと呼ばれるリフォーム専用の融資を受ける場合は、物件の購入費用に充てられない可能性があるので注意しましょう。
中古住宅購入時に発生する諸経費の目安をまとめました。
ただ、2022年5月宅建業法が改正されることで電子契約が可能になり、その結果印紙税を支払う必要がなくなる場合も出てきます。
住宅ローンにかかる諸経費をシミュレーションすると、
物件価格が1,000万円、借入金額500万円の場合にかかる諸費用は、約150万円弱です。
中古住宅を購入する際に、税制優遇制度や補助金を活用すると、購入費用やリフォーム費用が大幅に削減できます。主な税制優遇制度や補助金は、以下の通りです。
税制優遇制度としておすすめしたいのが、住宅ローン減税です。年末時点でのローン残高のうち、1%に当たる金額が所得税から控除されます。所得税などから減税される控除額の計算式は、以下の通りです。
ローン控除額 = 年末借入金残高 × 控除率(1%)
中古住宅でも利用でき、購入した建物が適用要件を満たしている場合は、最大400万円までの課税額が10年にわたって控除されます。ただ、毎年議論される項目になるため、最新の情報で必ず確認をするようにしましょう。
中古住宅でも、各種条件を満たしていれば補助金を得られます。
代表的な補助金として、最大60万円が受け取れるZEH補助金制度を紹介します。
ZEHとは「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」の略称です。断熱性能の大幅な向上や、高効率な設備・システムを導入し、再生可能エネルギーを有効活用します。 年間の一次エネルギーの収支をゼロにする次世代住宅を指します。
ZEH補助金と併せて検討したいのが、地域型住宅グリーン化事業です。国土交通省の採択を受けたグループが建築する省エネルギー性や耐久性に優れた木造住宅に対して、補助金が交付される制度です。
地域型住宅グリーン化事業を活用するには、採択を受けたグループに建築の発注をしなければならず、補助金は住宅購入者に直接支払われるわけではありません。採択を受けたグループに対して支払われ、リフォームを発注した人はその業者を通じて間接的に補助を受けることになります。
中古住宅における減税措置として、登録免許税の軽減制度が有名です。登録免許税とは、登記簿謄本に権利の設定などをする際に法務局で支払う税金で、以下の式を使って算出されます。
登録免許税 = 土地や建物の固定資産税評価額 × 2%
また、不動産取得税の軽減制度もぜひ適用したい減税措置です。
不動産取得税とは、土地や建物といった不動産を取得した際に支払う都道府県税を指します。中古住宅を購入した際、土地や建物を取得した旨を期日までに都道府県税事務所に申告し、納税します。
不動産取得税の計算式は、原則として以下の通りです。
不動産取得税 = 土地や建物の固定資産税評価額 × 4%
中古住宅を安く購入し、リフォームを通して理想の住宅に近づけたい場合は、増改築が可能かどうかを確認しましょう。購入後に再建築不可だと発覚しても手遅れになってしまいます。
事前に告知されている事項や住宅の概要を把握し、接道義務も含めてよく確認しましょう。
瑕疵担保責任とは、住宅に隠れた瑕疵(問題点)が見つかった場合に契約を無効にしたり、瑕疵を無くすための費用を売主が負担したりする責任があると、売主側に定められた民法上の義務です。
瑕疵担保責任の期間は、売主が不動産会社なのか個人なのかによって異なります。個人の場合は売主と買主の交渉によって決まり、通常は1~3カ月程度が目安です。不動産会社の場合は個人よりも責任が重く、有効期間は引渡しから2年間と定められています。
しかし、中古住宅は築年数が経過しすぎて、瑕疵を全て発見するのが難しいことも少なくありません。中古住宅の売買では特約として瑕疵担保責任の期間を別途定めたり、瑕疵の範囲を限定したりするケースもあるため、契約書の内容には注意しましょう。
中古住宅を購入することには、メリットとデメリットの両方があります。実際に購入に進む前に、双方をよく理解しておくことが重要です。
中古住宅購入のメリットには、主に以下の3つが挙げられます。
それぞれ詳しく解説します。
中古住宅の場合、新築と比較して物件数が非常に多いという特徴があります。多くの選択肢の中から選べるので、価格はもちろん、立地や内装、広さなどにもこだわりながら、理想の住みたい家を探せるのは大きなメリットです。
中古住宅は、これから建築をおこなう新築住宅と異なり、現物を見て検討できます。隅々まで確認して、納得したうえで住宅を購入できるのは、新築にはない魅力の一つです。
ハウスメーカーと打ち合わせながら家を建てたとしても、細かなイメージが合わなかったり、ニュアンスが伝わりきらずに満足できなかったりする可能性があります。内見しながら理想の住宅を見つけられる中古住宅は、合理的な選択と言えます。
中古住宅を購入するデメリットには、次の3つが挙げられます。
各デメリットの詳細を見ていきましょう。
不動産会社の仲介で中古住宅を購入する場合は、仲介手数料が加算されます。
仲介手数料無料を謳うサービスもありますが、実際は手数料以外の名目で費用が請求されるケースもあるため注意しましょう。
新築住宅は設備が全て新品なので、修繕費用を削減できます。
一方、中古住宅では外壁や内装などが徐々に経年劣化し、基幹の設備に関しても耐久年数を越えたものは定期的に修繕しなければなりません。
築年数が経過しているほど修繕費用が高くなるため、修繕費用を加味してシミュレーションしてみると想像よりも割高になる可能性もあります。
購入時にかかる費用だけでなく、外装や内装、設備の修繕費も組み込んで取得費用を算出しましょう。
中古住宅も住宅ローンで融資を受けて購入できますが、一般的には住宅ローンの審査は新築物件購入時より厳しいと言われています。新築住宅に比べて担保としての価値が低いので、申込者の属性が重視され、融資金額が低くても審査基準は厳しくなるのです。
頭金なしで住宅購入代金の全額を融資してもらえるフルローンについても、同様の理由から物件の状態によって融資が受けられない可能性があります。
あらかじめ入念なシミュレーションを行い、返済計画を立てたうえで住宅ローンを申し込むと良いでしょう。
様々な税制優遇制度や補助金などを用いて「中古住宅をお得に購入したい」という方も少なくありません。
この記事で紹介した制度を活用して、ぜひ具体的な購入計画を立ててみましょう。
新築よりも安く購入できる一方で、リフォームや修繕費用がかかるデメリットも忘れてはいけません。トータルでかかるコストを念頭に置きながら、一期一会の中古住宅との出会いを楽しんでみませんか。
公益財団法人日本賃貸住宅管理協会会員 「プリンシプル 住まい総研」所長 住宅情報マンションズ初代編集長
1988年株式会社リクルート入社し、リクルートナビを開発。 2002年より住宅情報タウンズのフリーペーパー化を実現し、編集長就任。 現スーモも含めた商品・事業開発責任者に従事。2011 年 12 月同社退職。
プリンシプル・コンサルティング・グループにて2012年1月より現職。 全国の不動産会社のコンサルティング、専門誌での執筆や全国で講演活動を実施。