住宅ローンが残ったまま家を賃貸に出せる?出せるケースや注意点を解説

住宅ローンが残ったまま家を賃貸に出せる?出せるケースや注意点を解説

住宅ローンが残ったまま賃貸に出すことは基本的にできませんが、親の介護や転勤などのやむを得ない理由があれば例外的に認められる場合があります。金融機関に無断で賃貸に出すと、一括返済を求められたり詐欺罪に問われたりする可能性があるので注意が必要です。

この記事では、住宅ローンが残った家を賃貸に出す方法や注意点を詳しく紹介します。賃貸と売却のメリット・デメリットもまとめているので、住宅ローンの返済が難しい人は、ぜひ参考にしてください。

住宅ローンが残ったまま家を賃貸に出せる?

住宅ローンは、契約者自身が居住することを要件としているケースが多いため、ローン返済中に賃貸に出すことは基本的にできません。

住宅ローンで借り入れた資金は、住宅購入やリフォームといった用途が限定されていることが多く、ほかの用途に使えない場合がほとんどです。たとえば、住宅金融支援機構が提供しているフラット35では、投資目的の住宅や自動車の購入に資金を活用することを禁止しています。

住宅ローン契約で指定されている用途以外に資金を使うと、一括返済を求められたり、詐欺罪に問われたりする可能性があるため、金融機関に無断で賃貸に出さないようにしましょう。

住宅ローンが残ったまま家を賃貸に出せるケース

住宅ローンが残っていても、以下のようなやむを得ない理由があれば賃貸物件として貸し出すことが認められる場合があります。ただし、すべてのケースで認められるわけではないので注意が必要です。

  • 転勤
  • 単身赴任
  • 親族の介護

なお、金融機関によっては転居先の住所を知らせたり、将来的に住宅に戻ったりすることを条件としている場合があります。どのような条件が設定されているのかは、金融機関に相談する際に確認しておきましょう。

住宅ローンが残っている家を黙って賃貸に出すとばれる?

金融機関に黙って賃貸に出せば、ばれることはないと考えている人もいるでしょう。しかし、金融機関からの郵送物や調査によって賃貸に出していることがばれてしまうケースも少なくありません。

物件を第三者に貸し出している場合は、金融機関から送られてくるローン残高証明書や返済予定表などの書類が「宛先不明」として返送されてしまうことがあります。郵送物が返送されたことに疑問を感じた金融機関は、対象物件に契約者が居住しているのかを調査することとなります。調査の結果、契約者の居住が確認できなければ、契約違反として一括返済を求めることになるので注意しましょう。

なかには、住宅ローンの不正利用を防止するために融資実行後の利用状況を定期的に調査している金融機関もあります。たとえ郵送物の転送依頼をしていても、金融機関にばれる確率をゼロにすることはできません。住宅ローンによるトラブルに巻き込まれないためにも、金融機関に相談したうえで賃貸に出すようにしましょう。

住宅ローンが残った家を賃貸に出すには

住宅ローンの借り入れ先から許可が得られない状態で住宅を賃貸に出すには、不動産投資ローンへの借り換えが必要になります。

不動産投資ローンとは、賃料収入を得ることを目的とした物件を購入するためローンのことです。住宅ローンと比べて適用金利が高く、物件の収益性が見られることで審査のハードルが高くなる傾向があります。

不動産投資ローンに借り換える際は、不動産投資ローンの借入金で住宅ローンの残債を一括返済することになります。住宅ローンの残債が不動産投資ローンの借入額を上回っている場合は、手元現金で補填しなければならないケースもあるので、借り換え前にローン残債と借入金の金額を確認しておきましょう。

住宅ローンが残った家を投資ローンに借り替えて賃貸に出す際の注意点

住宅ローンが残っている家を不動産投資ローンに借り換える場合には、以下の注意点があります。

  • 返済の負担が大きくなる
  • 借り換えに手数料がかかる
  • 住宅ローン控除が受けられなくなる
  • 元の住宅に戻れない可能性がある

返済の負担が大きくなる

不動産投資ローンは、住宅ローンより金利が高く、融資期間が短くなる傾向があるため、返済の負担が大きくなる可能性があります。

住宅ローンは、生活の基盤となる住宅の購入費を貸し付けているので、貸し倒れリスクが比較的小さいといわれています。一方、賃貸経営をすることが前提となる不動産投資ローンは、立地や物件需要による空室リスクがあるため、資金繰りが困難になった場合に融資資金が回収できない事態も考えられるでしょう。

そのようなリスクを軽減するために、住宅ローンより金利を高くしたり、融資期間を短く設定したりする金融機関が多く見られます。不動産投資ローンに借り換える際は、返済の負担がどれほど増えるのかを確認しておくことが大切です。

借り換えに手数料がかかる

不動産投資ローンに借り換える際は、以下のような費用がかかります。

  • 事務手数料
  • 繰上げ返済手数料(住宅ローン)
  • 印紙代
  • 登記手数料(抵当権抹消・設定)

事務手数料や繰上げ返済手数料の金額は、借り入れ先によって異なるので、事前に借り換えシミュレーションをするのがおすすめです。また、住宅ローン残債の全額を繰上げ返済する場合に「違約金」が発生する場合があるので、借り換え前に住宅ローン契約書や商品説明資料を確認しておきましょう。

住宅ローン控除が受けられなくなる

住宅ローン控除は、適用年の12月31日まで住み続けていることが適用要件となっているため、第三者に貸し出した場合は適用を受けることができません。

住宅ローン減税の適用を受けると、その年の12月31日時点の住宅ローン残債に一定割合を乗じた金額を、所得税と住民税から差し引くことができます。そのため、住宅ローン減税の適用期間中に賃貸に出すと、減税効果が受けられず、税金の負担が大きくなってしまいます。

住宅ローン控除の減税効果を得たいのであれば、適用期間が終了するまで借り換えを見送るのも手段のひとつです。

元の住宅に戻れない可能性がある

住宅を貸し出した場合は、借地借家法によって正当な理由がなければ、借主に退去を求められないため、元の住宅に戻れない状況に陥るケースも少なくありません。

自身が居住することが正当な理由として認められる場合もありますが、借主に立ち退き料を支払わなければならないことも考えられます。また、賃貸借契約の解約は、6か月前の予告が必要となるため、すぐに退去を求められるわけではないので注意しましょう。

このような状況を避けたい場合は、「定期借家契約」を活用するのがおすすめです。定期借家契約とは、あらかじめ契約期間を定めた賃貸借契約のこといい、契約期間の満了することで賃貸借契約が終了します。そのため、転勤期間が2年と決まっている場合は、契約期間も2年に設定することで元の住宅に戻りやすくなります。

なお、居住期間が限定される定期借家契約は、入居者が決まりにくくなる傾向があるため、不動産会社と相談しながら手続きを進めていくことが大切です。

返済が難しい場合は売却も検討しよう

住宅ローンの返済が難しい場合は、物件売却をするのも手段のひとつです。住宅を売却するべきかを検討する際は、賃貸と比較したうえで判断することが大切です。

住宅を賃貸にする場合と、売却する場合のメリット・デメリットは以下の通りです。

メリット デメリット
賃貸
  • 住宅を手放す必要がない
  • 賃料による収入が得られる
  • 金利上昇や返済期間の短縮によって返済の負担が大きくなる
  • 空室リスクがある
  • 入居者とのトラブルが発生する可能性がある
  • メンテナンス費や固定資産税などのランニングコストがかかる
売却
  • メンテナンス費や固定資産税などのランニングコストがかからない
  • 手元現金が増える
  • 住宅を手放さなければならない
  • 売却価格が安ければ、手元現金で住宅ローンを返済する必要がある

住宅を賃貸に出すことで賃料による収入を得られますが、ローン返済やランニングコストの負担が大きくなってしまう可能性があります。空室が発生した場合は、手元現金で不動産投資ローンを返済しなければならない状況になるので注意が必要です。さらに、入居者の賃料滞納やトラブルなどのリスクもゼロではありません。

一方、住宅を売却した場合は、メンテナンス費や固定資産税などの負担が抑えられ、売却金によって現金が得られるメリットがあります。ただし、住宅の売却金額がローン残高より少なければ、不足分を手元現金で補填しなければならないので注意しましょう。

住宅ローン返済中の家を売却する際は、適正な査定を受けたり、売却の流れを押さえたりすることが大切です。

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住宅ローンが残った家を賃貸に出したい場合のよくある質問

最後に、住宅ローンが残った家を賃貸に出したい場合のよくある質問について回答します。

Q.賃貸と売却はどちらがいい?

賃貸と売却のどちらがいいかは、物件の査定価格や住宅ローン残債の金額によって異なるため、それぞれのメリット・デメリットを比較しながら最適な方法を選ぶことが大切です。

物件の査定価格がわからない場合は、不動産会社に相談してみるとよいでしょう。

Q.住宅ローン完済後は賃貸に出せる?

住宅ローン完済後は、賃貸物件として貸し出すことが可能です。

物件に抵当権が残っていると、物件を売却したり担保にしたりすることが難しくなってしまうので、抵当権の抹消登記をしておきましょう。抵当権の抹消には、住宅ローンを完済したことを証明する「弁済証書」または「解除証書」が必要になるので、金融機関から受け取っておきましょう。

まとめ

住宅ローン返済中の家を賃貸に出すことは基本的にできません。金融機関に無断で賃貸に出すと、一括返済を求められたり詐欺罪に問われたりする可能性があるので、金融機関に相談したうえで行動するようにしましょう。

住宅ローンの返済が難しい場合は賃貸だけでなく、物件売却を検討するのも手段のひとつです。物件売却する際は、いくらで売れるのか、いつ売るべきなのかを知るためにも不動産会社に相談してみるのがおすすめです。