空き家の売却方法は、大きくわけて3つあります。
事前に知っておくと、売却もよりスピーディに決まるものです。それぞれ売却価格・売れるまでの時間も大きく異なるので、知っておきましょう。この章では、空き家を売る方法を3つ解説します。
空き家をそのままの状態で販売する方法です。負担が少なく、高く売れます。築年数が浅く、状態が良い家ほど早く買い手が望めます。築10年以内であれば、中古住宅として売れやすくなります。
築20年以内であっても、「新築よりも安く中古住宅を買って、必要なところだけリノベーションしたい」という世帯や、「一人だけど、リモートワークもあるし、小さめの中古住宅で暮らしたい」という単身者も増えており、一定のニーズがあります。
ただし、場所によっては買い手といつ出会えるかはわかりません。買い手が見つかるまで、家が劣化して価値が下がらないように管理が必要となります。
築22年を超えると、「一戸建ての住める家」であっても法定耐用年数を超えてしまい、税務上は建物の価値がなくなります。土地そのものの価値はあっても、上物の建物の価値がないことになり、売値が低く査定されてしまいます。
あまりにも古い家・劣化のひどい家の場合は、買い手がつきにくいものです。劣化した空き家は解体し、更地化しての販売がおすすめです。
劣化した空き家は、「古家付き土地」という扱いになります。一般的に、古家付き土地よりも、自分で好きに活用できる更地のほうが、買い手がつきやすい傾向にあります。売却価格も高めです。
ただし、更地化には解体業者に依頼するための費用が発生します。土地の状態や広さにもよるものの、100万円以上と見積もってください。また、更地化すると、高く売れるというメリットがある一方、固定資産税が上がるというデメリットがあります。中古住宅か更地で売るかは、不動産会社と相談した上での決定をおすすめします。
通常は、不動産会社に仲介を依頼して買い手を探してもらう方法がおすすめですが、早く手放したい場合は不動産会社に「買取」をしてもらう方法もあります。管理をしたくない・離婚などで早く家を処分したい方向けの手段です。
買い手が見つかるまで待たなくてよい分、早く売却できるメリットがあります。ただし、通常の売却よりも売却価格が下がる点がデメリットです。2~5割下がると覚悟しておきましょう。
「駅から遠い」「過疎地域」などの理由で買い手がなかなか探せそうにない場合は、不動産会社から買取を拒否されることもあります。
空き家売却は、ノーリスク・ハイリターンではありません。土地とお金が動く分だけ、税金や費用が発生します。
【空き家の売却にかかる費用・税金】
売れた後で「売ったのにお金がかかるなんて知らなかった!」とならないように、売却前後で発生する費用について知っておきましょう。
この章では、空き家の売却に関連して発生する費用・税金について、安く抑えるための対策と合わせて解説します。
空き家・土地などの不動産を売却した際、売却利益に対して税率をかけた「譲渡所得税」が発生します。購入したときの金額と売却したときの差額で、利益が出ているかどうかが問われます。
譲渡所得税に対する税率は、空き家の所有期間が5年以上かどうかがポイントです。所有期間は満〇年ではなく「空き家売却した年の1月1日時点で5年以上になるか」のカウントになります。
2017年5月に取得した空き家が2022年12月に売れた場合は、実質的には5年過ぎていますが、譲渡所得税では短期譲渡所得です。長期譲渡所得の税率になるためには、2023年1月まで待つ必要があるのです。
空き家を売却できるのは、その物件の所有者のみです。相続時に登記をしていなければ、売却できません。空き家を相続した際に相続登記をしていない場合は、売却活動をスタートする前に登記を済ませておきましょう。相続登記には、以下の費用がかかります。
相続登記では、その物件の名義人の変更を法務局に申請します。相続登記は煩雑な作業があり、司法書士に依頼するのが一般的です。
相続では、名義変更に必要な書類(戸籍謄本や住民票など)の取得も必要です。相続にかかわる人(親・兄弟)の分だけ必要になるため、結婚・離婚・本籍の異動をしている人は、取り寄せにも時間がかかります。
空き家を解体し、更地として売るには解体費用がかかります。解体費用は、空き家の構造や周辺に他の建物があるかなどで金額が変動するものの、100万~300万円が相場です。
自治体によっては、空き家解体工事に補助金・助成金が使える場合もあります。安く抑えるためには解体工事は複数社見積もりも大切です。ただし、金額だけで決めると悪質な業者に当たってしまうこともあるため、口コミも参考にしてください。
更地後のアフターサービス(除草剤散布や立ち入り禁止のローブを張るなど)がある業者もあります。
不動産会社に仲介を依頼し、空き家の売買の際に発生する費用が、仲介手数料です。仲介手数料は、空き家を売る側・買う側双方が不動産会社に支払います。
仲介手数料は売れた金額によって変わりますが、上限は法律で決められています。不動産会社側は、上限額で仲介手数料を請求してくるのが通常です。
他にも売る物件があるなど、交渉材料がある場合は、仲介手数料の減額を相談してもよいかもしれません。
管理の手間や費用・固定資産税を思うと、空き家は一日も早く売却処分したいもの。売却の流れをあらかじめ知って準備をしておけば、スムーズに売却できます。
【空き家を売却するための5ステップ】
この章では、空き家をスムーズに売却するための手順と準備を解説します。買い手を逃さないためにも、対策しておきましょう。
不動産会社に仲介を依頼する場合でも、さまざまな流れを経ています。まずは、査定を依頼するところからスタートです。査定では、「その不動産会社であればいくらで売却できるか」をチェックしてもらいます。
査定は一社だけでなく、複数の不動産会社に依頼してください。不動産会社ごとに、「中古住宅専門」「マンション売買が得意」など、得意分野もあるため、査定額も異なります。
インターネットでは、一括で複数の不動産会社に査定申し込みができるサイトもあるので、上手に活用しましょう。申し込み後、実際に不動産会社の担当者が訪問して査定してもらうことになります。
査定額や不動産会社担当者に信頼がおけそうかを比較し、実際に依頼する不動産会社を決定します。媒介契約は、契約内容によって3種類あるので、事前に決めておくとよいでしょう。
【媒介契約の種類】
複数の不動産会社と契約したい場合は、「一般媒介契約」を結びます。契約上、自分でも買主を探して売却できるのは「一般媒介契約」「専任媒介契約」です。ただし、不動産会社には利益が少ない分、不動産会社側の活発な販促は期待できません。
一社限定で契約し、買い手探しも一任する「専属専任媒介契約」は、不動産会社側に利益が大きい分、売却活動にも力を入れてくれます。
価格が高すぎても買い手が見つかりません。最初の売り出し価格は、自分の希望だけでなく不動産会社側と十分に話し合って決定してください。
買い手が見つかった場合、価格交渉になるのが通常です。先々値引きする可能性も含めた金額を見積もっておきましょう。
また、価格が低いほど買い手も早く現れます。早く売却したいか、多少時間がかかっても高く売りたいかなどの事情によっても、価格は変更されます。
買い手が現れた場合は、価格交渉を経て、売買契約を締結します。トラブルを避けるためにも、契約では条件・引き渡し日など、細かい条件を話し合い、契約書上での合意が重要です。
契約時は、買主から手付金を受け取ります。手付金は、実際の売買価格の一部です。
仲介手数料は、その一部から半額を、売買契約時に不動産会社に支払うのが一般的です。
物件の引き渡しと支払いは、通常は同じ日におこないます。都合が悪い場合は、別の日の指定も可能ですが、その旨も契約書上に記載が必須です。
買主は、手付金を引いた残額を支払い、精算終了です。支払いが確認できたら、必要書類を交わし、空き家の鍵を渡します。
引き渡しが終われば、売却作業はすべて終わりです。
「どうせ売るならできるだけ高く売りたい」と思うのは、当然のことです。高く利益を出すためには、それなりの準備をして挑みましょう。
【空き家を高く売るためのポイント】
この章では、空き家を高く売り抜くための重要ポイントを解説します。売却検討中の方は参考にしてください。
高く売れれば、その利益分には税金が発生することを忘れてはいけません。ただし、特別控除や特例を活用して負担を減らす方法があります。
住民税の請求で「こんなに高いなんて!」と動揺しないためにも、税金のことも頭に入れておきましょう。
【不動産売却の特別控除・税制優遇できるもの】
控除・特例は、それぞれの適用条件が設定されており、該当しなければ利用できません。条件に当てはまるかは、売却契約を結んだ不動産会社に問い合わせてください。
希望者が現れたら即購入とはいきません。通常は、価格交渉によって値下げすることになります。このため、最初の売り出し価格は、値下げも考慮して少し高めに設定するのがセオリーです。
購入希望者がなかなか現れない場合は、不動産会社の提案で価格設定を下げる流れになります。不動産会社が広告を打つと、不動産に興味を持つ人の目に触れやすくなります。価格の下げ幅やタイミングも、不動産会社と相談して決めてください。
当然、あまり相場と離れた高い価格で売り出すと、なかなか買い手は見つからず、売却は長期化します。
「そのうち売ろう」と思いつつ、空き家のために固定資産税だけ払い続けている人は、意外に多いものです。空き家は早く行動するほど高く売れます。可能であれば、空き家は手に入れて3年以内の売却がおすすめです。
3年以内であれば、税金面でも優遇されます。空き家を相続した場合・転居によって空き家になった場合と、状況によって控除内容が異なります。
※ただし、相続開始から3年以内であることが条件
特例・控除は、それぞれ「空き家になってから3年」「相続開始から3年以内」などの期間が設けられています。売却利益とは関係ありませんが、その後の税金の金額が大きく影響を受けるので、自分が該当するかを確認しておきましょう。
空き家の傷み具合によっては、修繕しなければ買い手がつきにくいこともあります。売却価格をなるべく下げたくない場合は、できる範囲で修繕しておいたほうがよいでしょう。
ただし、修繕費用を掛けたからといって売却価格が大きく上がるわけではありません。修繕費と売却価格とのバランスを見て、生活に必要な箇所・見た目の印象に大きく影響する箇所の修繕を検討します。
あまり大規模なリフォームやリノベーションは、嗜好性も高く、売れなかった場合リスクも高くなるので注意してください。
最初に査定や相談をする不動産会社は、一社だけでなく複数をあたります。不動産会社によって得意分野や、力を入れているエリアが異なるためです。不動産会社の得意・不得意によって、査定額も変わります。
ホームページやチラシを見ると、「〇〇エリアのマンション販売実績No.1」「相続した空き家売却は□□」「中古住宅販売は△△」など、うたい文句によってその不動産会社の得意分野がわかります。また、何件の販売をこれまでしてきたかといった実績や、その地域での評判も目安になります。
相続の際は、そうした不動産の扱いに慣れた会社・担当者もいるので、複数の不動産会社をチェックしてみましょう。
住まない空き家をできるだけ早く・高く売りたいのなら、すぐにでも行動を起こしましょう。築年数が浅く、状態がよい物件ほど買い手もつきやすく、税金面でも優遇されます。
空き家は不用品撤去や庭の管理などもあり、なんとなく後回しにしがちです。「空き家になりそう」「将来相続を予定している」「一人暮らしの老親が施設に入居して空き家になりそう」など、予定がわかっている場合は、スピード売却のために備えておくと良いでしょう。
公益財団法人日本賃貸住宅管理協会会員 「プリンシプル 住まい総研」所長 住宅情報マンションズ初代編集長
1988年株式会社リクルート入社し、リクルートナビを開発。 2002年より住宅情報タウンズのフリーペーパー化を実現し、編集長就任。 現スーモも含めた商品・事業開発責任者に従事。2011 年 12 月同社退職。
プリンシプル・コンサルティング・グループにて2012年1月より現職。 全国の不動産会社のコンサルティング、専門誌での執筆や全国で講演活動を実施。