不動産価格とは、土地や家などの動かすことができない財産の価値を表したものです。不動産会社の担当者や不動産鑑定士がその価値を推定します。
不動産価格には定価というものがありません。世の中には全く同じ不動産が存在しないため、物件や土地ごとに価格は異なります。また、土地のみなのか、建物を含めるのかなどによっても、価格は大きく変わります。
不動産の価格は一定ではありません。定価がないだけでなく時期によっても相場が変わるため、不動産売買の際には、その時の価格相場を知る必要があります。また、不動産価格は居住用と商業用でも異なるため、用途についても分けて把握しておきましょう。
ここでは、住宅と商業用不動産の価格推移を紹介します。不動産価格の推移が気になる方は、ぜひ確認してみてください。
引用:国土交通省「動産価格指数(令和3年10月・令和3年第3四半期分)」
令和3年10月時点での価格推移は上記の通りです。住宅地・戸建て住宅の価格は、2020年頃に一度下がりましたが、現在ではまた上昇傾向にあります。新型コロナウイルスの拡大によって一時的に価格は落ちたものの、ステイホームにより、住宅への関心が高まり、マイホームの購入を考える人が増えたのがその理由と考えられます。
また、このグラフで注目したいのがマンションの価格推移です。マンションの価値は2013年頃から急激に上昇しており、今後も引き続き上昇していく可能性があります。
一方で、商業用不動産の価格推移は上記の通りです。全体的に2020年頃に一度価格が落ち込んでいます。しかし、その後は回復しており、直近では全体的に見ると上昇傾向にあるといえるでしょう。
商業用不動産でも注目したいのが、マンション・アパート(一棟)です。住宅の価格推移と同様に、商業用不動産でもマンションやアパートの価格が堅調に上がっているといえます。
住宅用・商業用不動産のいずれでも価格が上昇傾向にあったマンションですが、地域によっては違いがあるのでしょうか。
ここでは、マンションの価格推移が地域によって異なるのか確認するために、南関東圏・名古屋圏・京阪神圏の3つのエリアの価格推移を紹介します。1年分のデータをもとに価格がどう変化しているのか紹介するので、ぜひ確認してみてください。
出典:国土交通省「動産価格指数(令和3年10月・令和3年第3四半期分)」
不動産価格指数は、年間30万件の取引をもとに価格の動向を表したもので、国土交通省が公表しています。2010年の平均を100として数値を算出しており、おおまかな動向の把握が可能です。
南関東圏のマンションの価格推移は、前月比がプラスになっている月が多いのが特徴です。マイナスとなっている月はあるものの全体的に安定して上昇しているので、今後も急激な上下はなさそうにみえます。
名古屋圏は、南関東圏と比較すると対前月比がマイナスとなっている月が多いです。しかし、全体的にみると価格は上昇しています。
2021年6月・10月のように、対前月比が5%を上回る月もあるため、価格変動には注意が必要です。
京阪神圏の価格は非常に安定して推移しています。対前月比がマイナスになることがあるものの、全体的に上昇しているのが特徴です。今後も安定して価格が上昇していくことが予想されます。
価格が変動する不動産は、アパートやマンションだけではありません。一戸建て住宅も時期によって大きく価格が変動しています。
ここでは、一戸建ての価格推移について地域別に紹介します。日本の主要都市である3つの地域について解説するのでぜひ確認してみてください。
南関東圏での一戸建ての価格は、1年間で約1.1倍上昇しています。全体的に比較的緩やかに価格が上昇しているといえるでしょう。
また、南関東圏では対前月比がマイナスになることもありますが、その値は小さく、安定的に上昇しているといえるでしょう。
名古屋圏の一戸建ては1年間でみると上昇しているものの、マイナスとなっている月が5ヶ月あるため、比較的上下変動があると考えられます。2021年8月に大きく価格が上昇しているものの、翌月には下落しています。
京阪神圏は、ほかの2つの地域と比較すると価格の上下動が大きいことが特徴です。京阪神圏で価格が大きく動いたのは2021年5月で、対前月比は12%と非常に高い結果となりました。その後、一度下落するものの再び価格が上昇しました。
ここからは、土地の価格推移について紹介します。土地の不動産取引では、地域による差が大きく出ています。また、時期的な影響も大きいので、土地の取引を考えている人は確認しておきましょう。
こちらもマンション・住宅の価格推移と同様に、南関東圏・名古屋圏・京阪神圏の3つの地域に分けて紹介します。
南関東圏の土地の価格推移は、2020年10月と2021年10月のみを比較すると上昇しています。しかし、毎月の結果を見ると対前月比がマイナスとなっている月が多く、また2021年6月には10.8%も上昇するなど、価格が安定しているとはいえないでしょう。
名古屋圏の価格推移は、南関東圏のように大きく上昇・下落する月はないものの、対前月比はマイナスが多いです。最終的に価格指数は下がっており、緩やかに価格が下落しているといえます。
また、南関東圏や京阪神圏では不動産価格指数が100を超えているのに対して、名古屋圏では1年間で一度も100を上回っていません。ほかの地域と比較すると、相対的に土地の価格が下がっていることが分かります。
京阪神圏の土地の価格推移は、月ごとの差が大きく、不安定になっているのが特徴です。大きく上昇する月はあるものの、下落幅も大きく、1年間でみると結果的に価格が下がっています。
ここからは、不動産市場に影響を与えるであろう3つの要因について紹介します。
社会的な要因が不動産市場にどのような影響を及ぼすのか確認しておくことで、不動産の価値が今後どう変化するかを予想することができます。3つの要因について詳しく紹介するので、ぜひ確認してみてください。
日本では2020年から感染が拡大した新型コロナウイルス感染症は、2022年2月現在でも終息することなく、感染拡大が続いています。「Withコロナ」や「Afterコロナ」としてコロナとの共存が進むなかで、感染拡大により新たな生活様式が生まれたり、価値観が大きく変化したりしました。不動産業界ではホテルや旅館・商業施設や飲食店などを中心に大きな打撃を受けましたが、現在は回復傾向にあります。
また、新型コロナウイルスによってリモートワークが促進され、人々の生活が大きく変化しました。家での生活を重視する人が増えたことや、オフィスでの働き方が変化していくことで、不動産の価値は今後も見直されていくことでしょう。
「生産緑地法によって保全されていた農地が、一斉に売却され市場に影響を及ぼすのではないか」と懸念があるのが、生産緑地問題です。
1992年に改正された生産緑地法により、指定された農地に「税制上の優遇を受けられることを条件に30年間は農業を行わなければならない」という制限が設定されました。2022年は1992年から30年が経過した年であることから、市場に多くの農地が出回り、価格が大きく下落すると考えられています。
しかし、2018年に再度生産緑地法が改正され、10年間の延長ができるようになったほか、対象となる農地の面積も狭くなりました。そのため、売却される農地はあるものの大量放出される可能性は低いと考えられます。
東京五輪に続く大きなイベントが、2025年の大阪万博です。大阪万博に向けて都市インフラの整備が進み、暮らしやすくなることから不動産価格が上昇するといわれています。
ただし、不動産価値が大きく上昇するのは、インフラ整備がおこなわれる地域のみです。そのほかの地域では、人口減少や高齢化などを背景に不動産を手放す人が増えて、価格が下落する可能性も考えられます。
大阪万博の影響で不動産価値が上昇するのは限定的だといえるでしょう。
ここまで、不動産価格の推移について紹介してきました。ここからは、不動産価格に関する以下2つの質問に回答します。
不動産の売買を予定している人は、ぜひ確認してみてください。
不動産も一般的な商品と同様に、需要と供給で価格が決定します。ただし、世の中には2つとして同じ物件が存在しないことから、不動産には一般的な商品のような定価は存在しません。
そのため、不動産の売買にあたっては、売り主が提示する価格に対して、買い主も希望の金額を伝えることができます。そして、その双方の希望を基に価格が決まるのが、不動産の価格の決まり方の特徴です。
不動産価格が変動するのは、経済や社会情勢に変化があった時です。多くの商品は経済の状況によって価格が変化します。不動産もそのひとつで、近年では新型コロナウイルスによる経済の影響を受けて、価格が大きく変動しました。
また、需要や供給が変化したタイミングでも、不動産の価格は変動します。新型コロナウイルス感染症の拡大による不動産に対するニーズの変化や、法整備により生産緑地であった土地の供給が促進されるなどは一例ですが、不動産の価格は常に変動していくでしょう。
今回は不動産価格について紹介しました。不動産の売買をおこなうときは、提示された価格が適切か判断することが大切です。その判断材料になるのが、不動産価格の相場・推移です。
不動産価格の相場や推移を把握することで、売主も買主も納得のいく取引ができるようになるでしょう。不動産の売買をおこなう際は、ぜひこの記事を参考にしてみてください。
大学卒業後、2011年に大手不動産会社に入社し現在まで不動産メディアづくりや組織づくりに従事。 不動産に興味を持ち個人でも戸建てや区分マンション、商業ビルなどの売買を経験。 会社員を続ける傍ら、学生時代に起業した会社とあわせて現在は株式会社を2社経営。投資家として若手実業家の支援なども手がけている。