実際に売却したときに、相場と同じ価格になるとは限りません。しかし、売却相場を知っておくと、売り出し価格や値下げ幅も決められるので、損を少なく抑えられます。
【家の売却相場を自分で調べる方法】
この章では、家の売却相場を簡単にチェックできる方法について紹介します。その後、家の細かい状態・設備も含めた査定額を知るためには、不動産会社に相談してください。
リノベーションの有無・耐震工事などで上下するものの、中古住宅は築年数が長いほど価格が安くなるのが一般的です。売りたい住宅を購入したときの価格と築年数で、だいたいの売却価格を予想できます。
【新築・購入時の価格を100%とした場合の下落率】
参考:東日本レインズ「首都圏中古マンション・中古戸建住宅 地域別・築年帯別成約状況【2022年01~03月】」から算出
仮に、4,000万円で購入した住宅の場合、築年数10年未満で売却する場合は「4,000万円×5.4%=216万円減(3,784万円)」、築年数15年未満であれば320万円減(3,680万円)、築年数20年未満であれば568万円減(3,432万円)という計算です。ただし、あくまで目安となります。
建物の構造によってもこのシミュレーションは変わります。木造住宅の場合は、法定耐用年数が22年と短く、建物価値は急激に下がります。土地の価値は変わりませんが、上物価値は、税務上は築22年で戸建てはゼロとなってしまいます。
もちろん、人気エリアや利便性の高さ・物件の状況によっても、この金額は変動するので、実際の査定は不動産会社に依頼しなければわかりません。
インターネットでは、各不動産会社が査定シミュレーションのサービスを提供しています。どこも無料で利用できる上、サイトによっては複数社の査定を同時に依頼できるものもあるので、「戸建て査定シミュレーション」で検索してみてください。
会員登録や個人情報の入力をする必要はないので、安心してください。場所・築年数・面積などの物件情報の入力だけで、簡単なシミュレーションをしてくれます。
不動産会社のサイトによっては、戸建て住宅売却データベースを公開しているところもあります。エリアごとに実際の売却事例がチェック可能です。
売却したい家のあるエリア・築年数・面積に近い事例が見つかれば、だいたいの価格を予測できます。
その不動産会社の実績もわかるので、依頼するかどうかの検討材料としても有効です。
木造住宅の場合、築22年を超えると住宅としての価値はゼロとなり、「古家付き土地(ふるやつきとち)」として売りに出されます。このため、築22年以上の古い家の場合は、土地の価格=売却価格の目安と考えてよいでしょう。
「古家付き土地」は、建物の価値はないため、土地がメインです。土地を買いたい人向けに訴求した売り方となります。
近年は、古家や古民家を安く購入し、リノベーションする方法も人気です。
築年数が長いほど、家の売却相場は下がる傾向にあります。不動産会社のサイトで、エリア・面積・築年数で簡易シミュレーションが可能ですが、「面積はすぐにわからない」という人もいることでしょう。
この章では、「面積はわからないけど築年数はだいたいならわかる」という人向けに、築年数ごとの一戸建てのだいたいの売却相場を紹介します。
築5年未満の物件は、ほとんど新築に近い分、下落率も低めになります。売却相場もかなりの高値です。
新築時の価格よりは落ちるものの、それほど値下がりしない状態で売却できます。
【関東エリアの中古一戸建ての売却価格例(築5年未満)】
出典:レインズ「首都圏中古マンション・中古戸建住宅 地域別・築年帯別成約状況【2022年04~06月】」
もちろん、立地や広さ、あるいは日当たりや周辺環境によっても大きく異なりますので、あくまで目安です。
築5年~10年未満の物件は、築5年未満の物件に比較すると、それほど価格は下落していません。10年未満であれば、まだまだ人気物件として高く売却できる可能性があります。
【関東エリアの中古一戸建ての売却価格例(築5~10年)】
築10年未満の物件に比べると、築10年~15年でもそれほど価格は下落していません。ただし、東京・神奈川では、築10年未満よりも売却価格が上がっており、地域ごとによって下落率に差が目立つようになってきました。
【関東エリアの中古一戸建ての売却価格例(築10年~15年)】
築10年以上の物件は、まだまだ綺麗で、多少修繕すれば新築に近い状態になります。「築10年を超えると少し安くなるかもしれない」と考える層から人気があるようです。もちろん、立地や広さ、あるいは日当たりや周辺環境によっても大きく異なりますので、あくまで目安です。
築15年を超えると下落率も大きくなり、エリアごとの相場の差も開いてきます。売却したい家が築15年以上となる場合は、価格が下がりやすいため時間との勝負になります。20年を超える前に、早めに売却活動をスタートしてください。
【関東エリアの中古一戸建ての売却価格例(築15年~20年)】
築20年を超えた物件は、木造住宅の場合は住宅建物としての価値がゼロの物件も出てきます。エリアによってはかなりの下落です。築20年が近くなった木造住宅の売却は、耐用年数22年を超えてしまう前に活動しましょう。
【関東エリアの中古一戸建ての売却価格例(築20~25年)】
東京・神奈川ではまだまだ高めですが、築25年を超えた一戸建てはかなり安くなっています。築22年の耐用年数を超えた木造住宅は、価値が一気に下がるためです。
また、25年を超えると、家だけでなく、設備全体も老朽化しています。雨漏りや排水に欠陥がある場合は買い手もつきにくいため、不動産会社に調査をしてもらって売却できるかどうかを相談してください。瑕疵担保責任(万が一、欠陥があったまま売却してしまうと、責任問題を問われる事態)にもなりかねません。
【関東エリアの中古一戸建ての売却価格例(築25年~30年)】
築30年以上の物件は、立派な古屋です。築5年未満の売却相場と比較すると、半額くらいにまで落ち込んでいます。40年・50年と古くなるほど、さらに売却価格は下がっていくため、早めの行動が重要です。
ほぼ、建物価値はなくなり、「土地」の価値であり、解体費用がかかる「古家付きの土地」の売却としてマーケットからは捉えられます。
住宅としてではなく、土地に価値が出る場合もあります。不動産会社と活用方法を相談してみましょう。
【関東エリアの中古一戸建ての売却価格例(築30年~)】
一戸建て住宅の売却価格は、金利やニーズなどによって常に値動きがあります。売却を考えている場合は、できるだけ高く、ベストなタイミングで売り出せるように、常に最新の相場情報を知っておきましょう。
以下は、2022年03月度の県別の平均売却価格・築年数・土地面積の情報です。
市町村によっても、広さによっても違いますので、あくまでも目安ですが、地域によってかなり差があることを認識しましょう。
中古マンションや一戸建て住宅の売却価格は、そのときの状況によって常に変動があるものです。金利の影響や長引く新型コロナウイルス感染症によって、一戸建て住宅のニーズも高まっています。
また、テレワーク生活が浸透したことで、都心から地方に移住を考える人も増えてきました。今後、都心だけでなく、地方の住宅価格にも変動が起こると考えられます。
この章では、2022年の戸建て住宅の売却相場価格推移について、以下の点について解説します。
国土交通省公表の「不動産価格指数」によると、戸建て住宅の価格は2020年度から上昇傾向にあります。不動産価格指数とは、年間約30万件の不動産の取引価格情報から不動産価格の動向を数値化したものです。
出典:国土交通省「不動産価格指数 最新データ」(2022年11月25日現在)
データを見ると、対前月比がマイナスになっている月もあるものの、2021年から不動産価格はじわじわと上昇を続けています。円安などにより、建築費は上昇しており、新築戸建ての金額が上昇。それにともない、中古住宅の相場も高くなっています。
前述の国土交通省公表の「不動産価格指数」の推移から、2022年3月以外は価格上昇を続けているとわかります。
国土交通省発表の地価公示でも、2年ぶりに全国平均の数値が上がりました。
参考:国土交通省 地価・不動産鑑定「地価公示」
不動産価格はその時期の情勢にも左右されるものの、しばらくはこのまま価格上昇が続くのではないかと期待できそうです。
しかし、国内の人口は減少傾向にあり、世帯数も減少していきます。現在の高値水準を支えているのは、金利が低いという国内事情にも起因しています。仮に金利が上がれば、高い不動産物件には手が出にくくなり、人口減少は需給バランスを崩し、物件価格の下落も考えられます。特に、金利の動向には注意しましょう。売るなら、高値で推移している間に急いだほうがよいかもしれません。
築年数が長いほど、物件は価格が下がる傾向にあります。しかし、早く売ろうと焦って、相場より低い価格で売り出しては、ローン返済やその後の生活に支障が出かねません。最新の相場をチェックし、適正な価格で売り出しましょう。
近年、一戸建て住宅はじわじわと人気が高まり、売却価格も上昇中です。不動産会社と相談しながら、売却活動の計画を立てることをおすすめします。
公益財団法人日本賃貸住宅管理協会会員 「プリンシプル 住まい総研」所長 住宅情報マンションズ初代編集長
1988年株式会社リクルート入社し、リクルートナビを開発。 2002年より住宅情報タウンズのフリーペーパー化を実現し、編集長就任。 現スーモも含めた商品・事業開発責任者に従事。2011 年 12 月同社退職。
プリンシプル・コンサルティング・グループにて2012年1月より現職。 全国の不動産会社のコンサルティング、専門誌での執筆や全国で講演活動を実施。