マンションの売却を成功させるには、十分な準備が大切です。しっかり準備をおこなうことで、スムーズにマンションの売却をおこなうことができます。 まずは、マンション売却に進む前に確認すべきことを見ていきましょう。
マンション売却にあたって、自分で相場価格を把握することは重要です。 売却を検討しているマンションと同じくらいの間取りや専有面積、築年数、周辺環境の物件が、その地域ではいくらで売却されているのかを調べることで、実際にいくらで売れるのかイメージしやすくなるでしょう。
事前に相場観を身につけておくことで、査定価格が妥当かどうかを判断できるようになります。 不動産相場を調べる際に便利なのが「土地総合情報システム」や「レインズ・マーケット・インフォメーション」といった不動産情報サイトです。
「土地総合情報システム」とは、「不動産の取引価格情報提供制度」に基づき、国土交通省が運営している不動産の取引情報サイトです。
「土地総合情報」と名前がついていますが、土地だけでなくマンションの取引情報も確認できます。掲載しているデータは国土交通省が不動産の取引当事者におこなっているアンケート結果が基になっているため、価格情報の信頼性は高いと言えるでしょう。
土地総合情報システム|国土交通省
「レインズマーケットインフォメーション」とは、国土交通省から指定を受けた全国4か所の不動産流通機構が運営している全国の物件情報が集められたインターネット総合サイトです。現在売り出している物件情報や、過去の成約事例を閲覧できます。
物件の売出価格だけではなく、成約価格を知ることができるので、より精度の高い相場観を養うことができるでしょう。
レインズ・マーケット・インフォメーション|不動産流通機構
マンションは大きな資産のため、売却時には多くの書類が必要になります。スムーズに取引を進めるためにも、入手漏れがないように注意しましょう。
マンションの権利証や管理規約など、身分証と合わせて以下5点については売却前に確認するのがおすすめです。
マンション売却を検討していると、売れるまでどのくらいの期間がかかるのかを疑問に思う方もいるでしょう。マンションを売り出してから、買主が現れて売却が完了するまでにかかる期間の目安は約6か月です。
6か月というと長く聞こえますが、実際は物件への問い合わせ、内覧、値段交渉、売却先の決定、契約と、やることは大量にあるため成約するまでは忙しい日々が続きます。焦って失敗しないためにも、6か月前から売却の準備を始めておくのがおすすめです。
ローン残債がある状態でもマンションの売却は可能ですが、売却に制限がかかることもあり得ます。 そのため、マンションを売却する前に、残債がいくらあるのかを必ず確認することが重要です。
売却予定のマンションのローン残債がいくらか分からない場合は、融資元の金融機関に連絡して現在のローン残債がいくらか確認してみましょう。
ローン残債のあるマンションを売却するには、原則、売却時にローンが返済できている状態になっていなければなりません。これには、マンションに設定されている「抵当権」が関係しています。
抵当権とは、金融機関が万が一お金を返せなくなった場合の保険として、契約者の土地・建物を担保にする権利のことです。抵当権が残ったままでは購入後のマンションを取り上げられるリスクを伴うため、買主が簡単には見つかりません。
マンションの売却金額がローン残高を上回れば、売却金をローンの返済に充てられます。しかし、マンションの売却価格がローン残債を下回る場合、基本的には自己資金でローン残債の差額分を補う必要があるので注意しましょう
マンションの売却を考えている場合、最適な売却タイミングを見極めることが重要です。
景気や立地、築年数は、中古マンションの価格に大きな影響を与えます。中でも築年数は影響が大きく、一般的に築年数が増えるごとに価格は下落するため注意しましょう。
下記は、築年数帯別に、新規に売り出された物件に対する成約物件の割合を示す図です。築20年以下の物件は動きが良いものの、築20年を超えると物件価格がガクンと下がっています。
<中古マンションの対新規登録成約率(新規登録件数に占める新規契約件数の割合)> 引用:東日本不動産流通機構「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2020年)」
しかし、ここ数年は、全国的に中古マンション価格は上昇基調が継続中です。 新型コロナウイルスの影響でマンションの売却相場に悪影響が出ると考えられていましたが、前年と変わらず中古マンションには需要があります。築年数の浅い段階で売却できれば、高く売れやすいタイミングと言えるでしょう。
<不動産価格指数(住宅)(令和3年4月分・季節調整値)> 引用:不動産価格指数(令和3年4月・令和3年第1四半期分)|国土交通省
それではマンション売却の流れを見ていきましょう。全体の流れは以下の通りです。
前章で、事前に相場を確認することの重要性を解説しましたが、おおよその相場観を把握した後は査定サイトを利用するのもおすすめです。
不動産会社にマンションを査定してもらい、金額を把握することで、売りたい物件の価格目安をイメージできます。マンションの価格目安を簡単に把握できることが、査定サイトの魅力です。
マンションを売却することに決めたら、不動産会社に査定を依頼しましょう。査定を取ることで、適正な売出価格を決めたり、資金計画を立てたりするのに役立ちます。
また、査定には「机上査定」と「訪問査定」の2種類があります。 それぞれの特徴を把握して、自分に適した査定方法を選びましょう。
実際の物件を見ることなく、データを基に査定価格を求める査定方法です。 価格幅が大きく、正確な査定結果を出すのは難しいものの、忙しい方やおおよその相場を早く知りたい方に向いています。
不動産会社の担当者が実際にマンションを訪れ、査定結果を算出する方法です。 査定価格が出るまでに約1週間程度かかりますが、現場の状況を加味しているため正確な査定結果になりやすいのが特徴です。
また、査定を依頼する際は手ぶらでも問題ありませんが、物件に関する書類を用意しておくとより正確な査定が可能になります。
査定を依頼する会社は、最低3社を選ぶと良いでしょう。複数の不動産会社から査定価格を出してもらうことで、より適正な売出価格を見極めやすくなります。
媒介契約とは、マンションを売るとき、不動産会社に仲介に入ってもらい、買主を探してもらうために結ぶ契約のことです。
マンションを売却する場合は、自分1人で買主を探すことは容易ではありません。そのため、マンション売却では、不動産会社に間に入ってもらうことが一般的です。
それぞれに特徴があるため、よく比較して自分に合った種類を選択することが大切です。 1社のみに任せたい場合は「専任媒介契約」または「専属専任媒介契約」で結び、複数の不動産会社に依頼したい場合は「一般媒介契約」で依頼しましょう。
一般媒介契約は、複数の不動産会社に依頼できる契約です。
3つの媒介契約の中ではもっとも自由度の高い契約と言えます。複数の会社に媒介を依頼できるため、多くの方に不動産の情報を届けやすくなり、成約のチャンスを高めることができます。
専任媒介契約を1社の不動産会社のみとおこなう契約です。
売主にとっては1社とだけやり取りすることになるため、状況が把握しやすく、手間が少ないので対応が楽になるでしょう。 不動産会社にとっても他社で売買契約が成立することはないため、販売活動に注力しやすいのが特徴です。
専属専任媒介契約とは、1社の不動産会社とのみ結べる契約です。 この点は専任媒介契約と同じですが、専属専任媒介契約の場合は、自分で買主を見つけても必ず不動産会社を介さなくてはなりません(直接契約の禁止)。
マンションをいくらで売出すかは、売主が自由に決められます。不動産会社が出した査定価格を参考にして、売出価格を決定しましょう。
マンションの売出価格は、不動産会社の査定額に5〜8%上乗せした金額に設定するのがおすすめです。
売出期間中に値下げをしたり、買主から値下げ交渉されたりするため、最初は少し高めの価格設定にしておくといいでしょう。
売り出しの開始後、不動産会社は購入希望者の募集(集客)をおこなってくれます。ただ、不動産会社に任せきりでは理想的な売却につながりません。売主は内覧前の清掃や内覧の対応、条件の交渉など様々な活動が必要です。
また、不動産会社が効果的な販促広告を出しているかもチェックしましょう。物件情報をしっかり拡散し、多くの買主の目に留まれば、高額や早期での売却が可能です。
購入を検討してくれる人が現れたら、「買付証明書(購入申込書)」を不動産会社から受け取り、手付金の額や購入希望額、購入希望時期などを確認します。この際に、購入検討者から希望条件の交渉をされることもありますが、どこまでなら譲れるかを決めて、不動産会社の担当者にこちらの希望条件を伝えましょう。
条件が整ったら売買契約の締結に進みます。売主と売主側の仲介業者、買主と買主側の仲介業者が集まって、契約書の読み合わせや重要事項の説明、契約書への署名・捺印が済めば売買契約は完了です。
売却方法にもよりますが、売買契約時には一般的に以下の書類を持参する必要があります。事前に必要書類を確認して、余裕をもって準備しましょう。
また、売買契約書を取り交わす際には、買主から売買価格の10%程度の手付金を受け取ります。契約の締結に加え、お金のやり取りもおこなうことになるので注意しましょう。
決済と引き渡しの手続きは、売買契約を結んでから約1か月以内におこなわれます。 不動産の決済時に必要となる書類や持ち物は主に以下の通りです。
手付金を差し引いた売買代金の残代金を受領し、決済が完了したことを確認したら、マンションの引き渡しへと進みます。
なお、決済の段階で住宅ローンが残っている場合は、融資先の金融機関との間で同時に住宅ローンの一括返済をおこないます。また、同じタイミングで売却時に必要な「抵当権抹消登記」も必要です。
抵当権抹消登記とは、マンションに設定されている抵当権を抹消することを指します。手続きは自分ですることもできますが、司法書士や弁護士に依頼する方法が一般的です。
マンションの引き渡しが終わると売却手続きに一段落が付きますが、忘れてはならないのが確定申告です。
土地を売却して得られる所得を「譲渡所得」と言い、譲渡所得には住民税・所得税・復興特別税が課税されます。これらの税金は、確定申告を経て納税する必要があります。
確定申告は、売却した翌年の2月16日~3月15日の1か月間におこなわなければいけません。マンションの売却にかかった仲介手数料や引っ越し費用などは経費として計上できるので、領収書は取っておくようにしましょう。
また、譲渡所得が出て確定申告の必要があるにもかかわらず、その手続きをおこなわなかった場合は、不利益を被ったり、ペナルティを与えられたりする可能性もあるので十分注意が必要です。
マンションを売却できれば大きな資金になりますが、売却手続きには様々な費用がかかるのも事実です。 この章では、マンション売却にかかる費用と税金について詳しく説明します。
マンションの売却時に必要な諸費用を紹介します。 いざという時に慌てないように、あらかじめ確認しておきましょう。
必ずかかる訳ではありませんが、発生する可能性がある費用についても紹介します。
マンション売却には以下の税金がかかります。 「印紙税」「抵当権抹消の登録免許税」は売却する際に必要な税金で、「譲渡所得税」は売却後に支払う税金です。
保有期間が5年超なら譲渡所得の「20.315%」
マンション売却は高額な取引のため失敗は避けたいものです。 この章では初めてマンションを売却する人に陥りがちな失敗例を紹介します。
その地域の相場からかけ離れた高すぎる価格で売り出してしまい、買主が付かなくなってしまったという失敗です。売却を開始してから時間が経っても反響がない場合は、価格の見直しを検討しましょう。
適正な売出価格で販売するためには、査定を複数社に依頼することと、適正価格から1割程度高く設定した価格で販売するのがおすすめです。
同じマンション内の別住戸が同時に売り出された場合などのケースで、競合物件に買主を取られないように大幅に値下げしてしまったという失敗です。競合物件が出ている場合、安易に値下げをするのは危険です。
以下のような、自身の物件ならではのアピールポイントを整理して「ここはうちにしかないポイントだ」と言えるところをアピールしましょう。
買主の住宅ローンの本審査は、売買契約後におこなわれます。マンション売却の契約が決まっても、買主のローン審査が通らず、契約解除になることもあります。
ただ、契約内容によっては買主にはペナルティなしで契約を白紙に戻せる場合もあります。 契約が決まってから売主が注意したほうが良い点は、以下の2つです。
売買契約書に記載されている契約解除の条件には、必ず目を通しましょう。特に「住宅ローンの仕組み」や「ローン特約」、「手付解除」については、よく確認しておくことがおすすめです。
二重ローン(ダブルローンとも言います)とは、2つの住宅ローンの返済をする状態のことです。
所有マンションを売却してから新居を購入しようと考えている人が、買主を見つけるのに苦戦したり、買主との交渉によって引き渡しの時期が先延ばしになったりした場合、売却予定の住まいと新居の2つのローンを返済するケースがあります。
ベストは売却期間に余裕をもたせることですが、一時的な資金不足をカバーするためなら「つなぎ融資」を検討するのもおすすめです。つなぎ融資とは、住宅ローンが実行される前に必要な資金を肩代わりしてくれる制度のことです。
自力で必要な資金を貯めることができない場合に有効なので覚えておきましょう。
マンションが購入時より売れた場合に発生する譲渡所得には、所得税と住民税が課税されます。この課税額は、売ったマンションの所有期間によって異なり、年数が短いと税率が高くなるのです。
譲渡所得の税率は、マンションを所有していた期間によって3種に分けられています。
マンションの売却を検討する際は、マンションの所有期間を念頭に置いておくと良いでしょう。
譲渡所得の金額によって異なる税額は、控除特例を受けることで負担を軽減することが可能です。 控除を上手く使えば税金がゼロになることもあるので、必ずチェックしましょう。
ここからはマンション売却で得た利益(譲渡所得)における税金特例を3つ紹介します。
所有期間が10年超となるマンションに適用できる制度です。次に紹介する3,000万円特別控除との併用ができます。
特例を適用した場合の所得税率は以下の通りです。
3,000万円特別控除は、不動産を売却した際に出た利益に対し、3,000万円までは課税対象から除外できる制度です。譲渡所得税の特別控除の中でも代表的な制度と言えます。
3,000万円特別控除を利用すると、譲渡所得は以下のように計算できます。
譲渡所得=譲渡価額-取得費-譲渡費用-3,000万円
売った金額より、買い替えたマンションの取得金額の方が大きければ、課税を将来に繰り延べられる制度です。居住用の不動産の所有期間が10年を超え、かつ居住期間が10年以上の場合に適用できます。
売却時に得た譲渡所得は新居を売却する際に上乗せして計算し、新居売却で得た譲渡所得と合わせて課税の対象になります。
あくまで将来に先延ばしにしているだけで、免除ではないことに注意しましょう。
ここからは、ケース別にマンション売却時の注意点を紹介します。
買替え(住み替え)を検討するとき、家の売却と購入を同じタイミングでおこなうため、同じ不動産会社に依頼しようと考える人は多いでしょう。特に、売り買いを同時進行でおこなうとなると、同じ会社に依頼した方がスムーズに手続きが進みそうですよね。
しかし、売却と購入を同じ不動産会社に依頼すべきではないケースもあります。
不動産会社にも得手不得手があるので、必ずしも購入時に関わった不動産会社が最適という訳ではありません。あくまでマンション売却の実績がある不動産会社を選ぶことが重要です。
マンションの取引実績は十分か、査定結果の根拠は提示できているか、評判は悪くないかなどをしっかり確認しましょう。
不動産を売却したい理由は様々ですが、中でも一番多いのは離婚をきっかけにしたものだと言われています。離婚を機にマンション売却を考えている場合は、まずはマンションの名義(所有権)を確認しましょう。
不動産の売却には、名義人本人に売却の意思がないと売却することはできません。共同名義の場合は不動産売却時に両者の承諾が必要となります。自分は売却したいと思っても相手が同意しなければ売却はできません。
名義が誰になっているかで対応が変わるので、離婚前にしっかり両者で話し合い、問題をクリアにしておくことが重要です。
不動産の所有者が亡くなり、相続が開始されると、相続人に不動産の所有権が移転します。そのため、まずは不動産の名義を相続人に変更することが必要です。この手続きを「相続登記手続き」と言います。
相続登記ができていない場合は相続人たちの共有財産としてみられ、売却ができないといった事態になるので注意しましょう。
なお、相続したマンションを売却したときにかかる所得税は、被相続人が死亡した日(相続開始日)から3年10か月以内に売却すると、「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」として譲渡所得にかかる税金が軽減されます。
この期限を過ぎてしまった場合は特例を利用できないので、遺産分割協議を速やかにおこないましょう。
自分が所有しているマンションを賃貸にしており、賃借人がいる場合でも、売却を進めることができます。ただ、賃貸中のまま売るのか、空室にしてから売るのかで、売却価格が変わるので注意が必要です。
賃貸中の場合、価格が空室物件よりも安い傾向にあります。室内の状況を確認しにくいことや、買主が不動産投資家に限られることが主な理由です。
一方、空室にしてから売る場合はリフォームを自由にできる、投資用・居住用どちらの用途としても利用できるので購入希望者の幅が広がります。 リフォームの場合は初期投資が必要ですが、高く売れる可能性は高まるでしょう。
この記事では、マンション売却の流れや注意点、よくある失敗談について紹介しました。早めに準備を進めておくことで、売却手続きをスムーズにおこなうことができます。
この記事を参考にしながら売却計画を固めて、理想的な売却につなげましょう。
関西学院大学法学部法律学科卒。
宅地建物取引士、管理業務主任者、2級FP技能士(AFP)、登録販売者など多岐にわたる資格を保有。 数々の保有資格を活かしながら、有限会社アローフィールド代表取締役社長として学習塾、不動産業務を行う。