35年ローンの家を返済途中で売るにはどうすればいい?返済中の売却方法や流れを解説

ローンが残っている家を返済途中で売ることに不安や迷いを感じていませんか?
「ローンが残っていても本当に売れるのか?」「どんな費用や手続きが必要になるのか?」など、不安を感じる方も多いでしょう。
この記事では、35年ローンの家を返済途中で売却する方法から、判断基準、実務の流れ、費用や税制のポイントまでを、わかりやすく解説します。

【この記事でわかること】
  • ローンが残っている家を売却できる条件
  • オーバーローン時に取れる3つの対応策
  • 売却の流れや費用、税制の特例

35年ローンの家を売却できるかの判断基準

35年ローンの家を返済途中で売るかどうかを判断するには、「ローン残高・売却額・諸費用」の3点を基に計算します。
家を売る前に特に試算すべきなのは、「売却によってローンを完済できるかどうか」です。

売却可否を見極める3つの要素

  • ローン残高:金融機関のマイページや残高証明書で確認
  • 査定価格:複数の不動産会社に無料査定を依頼
  • 諸費用:仲介手数料・登記費用・印紙税など(売却価格の5~10%が目安)

「ローンが残っているから売れない」と決めつける必要はありません。
正確な試算によってアンダーローンであることがわかれば、売却は十分に可能です。
まずは状況を数字で整理することが、売却戦略の第一歩となります。

【監修者コメント】

法律上、ローンが残っていても売却は可能です。ただし、他人の抵当権が付いたままの不動産を購入する買い手はいません。そのため、引き渡し時にローンを完済する計画があることが売却の実現条件となります。

ローン残高と査定価格のバランスを見る

まず最初に確認すべきなのが、ローンの残高と不動産の査定価格です。
この2つの数値を比較することで、自分がアンダーローンかオーバーローンかを判断できます。

比較のチェックポイント

  • ローン残高を正確に把握する
  • 複数社の査定価格を比較する
  • 差額がプラスなら売却は進めやすい

正確な査定とローン残高の確認で、売却判断に確信が持てるでしょう。
ただし、手数料などで逆転することもあるため、慎重に比較検討しましょう。

アンダーローンとオーバーローンの違い

アンダーローンとは、不動産の売却価格がローン残高と諸費用を上回る状態です。この場合、売却代金でローンを完済できるため、売却がスムーズに進みます。

一方で、不動産の売却価格がローン残高と諸費用を下回ってしまうオーバーローンでは、自己資金の用意が必要です。

状態 説明
アンダーローン 売却価格 > ローン残高+諸費用
オーバーローン 売却価格 < ローン残高+諸費用(補填要)

ただし、オーバーローンでも売却できないわけではないため、対応策を選ぶことが重要です。

諸費用と手残り資金の計算方法

売却価格からそのままローン残高を引くだけでは、手取りはわかりません。そのため、仲介手数料・登記費用・印紙税などの諸費用を差し引く必要があります。

この差額が手残り資金であり、住み替えや引越し資金に充てられる原資になります。

主な諸費用の目安

  • 仲介手数料:売却価格×3%+6万円+税
  • 抵当権抹消登記費用:1,000円+司法書士報酬
  • 印紙税:1万円程度が目安(契約価格により変動)

たとえば、売却価格が3,000万円の場合、諸費用だけで100万円程引かれるケースもあります。正確な試算を行うことで、資金計画のズレを防ぐことができるでしょう。

返済途中でも家は売却できる

「ローン返済中=家を売れない」と思われがちですが、適切な手続きを踏めば売却は可能です。

売却可能な条件

  • 売却代金でローンを完済できる(または自己資金で補填)
  • 金融機関が抵当権抹消に同意する
  • 決済・引き渡しの段取りが整っている

売却とローン完済は「同時に」行うのが実務の慣習です。早期に金融機関に相談し、必要書類や返済計画を整えておきましょう。

【監修者コメント】

売却の際に最も多いトラブルは、決済日にローンが完済できないことです。そのため、不動産会社、金融機関との事前調整を徹底します。

家を売却する3つの方法

オーバーローンの状態であっても、家を売却する方法は複数あります。それぞれの方法には異なる要件と注意点があるため、自身の資金力や信用状況に応じて、最適な手段を選ぶことが重要です。

売却時の3つの代表的な方法

  • 自己資金による補填:不足分を現金で完済する
  • 住み替えローンの利用:旧居の残債と新居の費用を一本化して借り入れる
  • 任意売却の実行:返済困難時に金融機関の同意を得て売却する

現金の有無、収入、ローン審査通過の見込みなどを踏まえて、現実的な方法を選びましょう。

自己資金による補填

売却金額がローン残高を下回る場合、不足額を預貯金や援助で補い、決済時に完済する方法です。審査も信用情報への影響もないため、最もスムーズな対応策です。

補填の特徴

  • 審査が不要で、売却が進みやすい
  • 信用情報に影響しない
  • 資金が必要なため、事前準備が重要

まとまった資金を用意できるかどうかが鍵となります。

【監修者コメント】

親族からの資金援助を受ける場合は、贈与税の非課税枠(110万円)に注意しないと課税対象となることがあります。(参照:国税庁 No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)

住み替えローン

住み替えローンは、ローン残額と新居の費用を合わせて借り入れる住宅ローンです。自己資金がない人でも住み替えが可能になる選択肢ですが、審査は通常より厳格です。

特徴

  • 残債があっても新居購入が可能
  • 審査基準が高く、取扱金融機関が限られる
  • 決済スケジュールの調整が必要

同日決済が原則となるため、スケジューリングも含めて事前準備が求められます。

【監修者コメント】

住み替えローンの審査では、返済負担率(年収に対する年間返済額)30〜35%以内が基準とされることが一般的です。また、対応可能な金融機関(例:りそな銀行、三井住友銀行)は限定されているため、事前に金融機関へ照会が必要です。

任意売却

任意売却は、ローン返済が困難になった際、金融機関の同意を得て物件を市場で売却する方法です。競売よりも高く売れる可能性があり、生活再建を目指すための選択肢となります。

任意売却の概要

  • 金融機関の合意が必要
  • 信用情報に影響が出る
  • 専門家の関与が必要(任意売却業者・弁護士など)

滞納が進行すると競売に移行してしまうため、ローン返済が困難になった場合は早期の対応が重要です。

【監修者コメント】

任意売却を利用する際には、JICCやCICなどの信用情報機関に事故情報が登録されます(※延滞が原因)。また、債権者との交渉や同意取り付けは、専門の任意売却会社や弁護士が介在するのが実務上の慣習です。

売却までの手続きの流れ

売却の流れは「不動産会社の選定」→「金融機関への相談」→「売買契約と決済」が基本です。複雑に感じるかもしれませんが、順を追って進めれば問題なく完了できます。

売却までの流れ

  • 不動産会社に査定を依頼し、媒介契約を結ぶ
  • 金融機関と残債や手続き方法を相談する
  • 買主と契約し、決済・引き渡しで完了する

手続きの一つひとつを丁寧に進める必要があり、早期の相談と書類準備が重要です。

不動産会社の選定と査定依頼

査定価格は売却の成否を左右する重要な指標です。複数社に依頼し、対応力や実績を比較しましょう。

査定時のポイント

  • 査定額の妥当性を複数社で比較
  • 担当者の提案力・実績を確認
  • 媒介契約の種類(専属専任・専任・一般)を理解する
【監修者コメント】

媒介契約の違い(専属専任・専任・一般)は国土交通省の媒介契約制度にも明記されています。専属専任の場合、自分で買主を見つけても契約不可という制限があるため、注意が必要です。

金融機関との相談と残債確認

住宅ローンの残高は売却前に正確に把握し、金融機関との相談で一括返済の流れを確認することが必須です。

主な確認項目

  • 残高証明書の取得
  • 一括返済手続きと手数料の確認
  • 抵当権抹消に必要な書類の確認

金融機関とのやりとりが遅れると、決済に間に合わない恐れがあります。そのため、売却活動開始前の相談が理想的です。

【監修者コメント】

三菱UFJ銀行では、インターネット経由での繰上返済は手数料無料、窓口では16,500円が必要です。
詳細:三菱UFJ銀行「住宅ローンの一括返済手数料」

売買契約・決済・引き渡しの流れ

買主との売買契約が成立した後は、決済・登記・引き渡しを一括で行うのが一般的です。

流れのステップ

  • 売買契約を締結する
  • 買主から残代金を受け取る
  • ローン完済と抵当権抹消を行う
  • 所有権を移転し鍵を引き渡す

決済当日は、金融機関、司法書士、買主、売主が同席します。登記と支払い、引き渡しが1日で完了するため、事前準備が非常に重要です。

【監修者コメント】

「引渡し猶予特約」を利用すれば、決済後も一定期間住み続けることができます。また、法務省の登記オンライン申請制度を使うと、登録免許税の軽減措置が受けられることがあります。

売却にかかる費用と税金

売却によって得た金額から、仲介手数料・登記費用・税金などが差し引かれます。

主な費用例

  • 仲介手数料
  • 抵当権抹消登記・司法書士報酬
  • 印紙税
  • 譲渡所得税(利益が出た場合)

正確な資金計画を立てるには、これらの費用を踏まえた手取り試算が必須です。

主な費用項目

不動産売却でかかる主な費用の概算は、以下の通りです。

費用項目 概算
仲介手数料 売却価格×3%+6万円+税
抵当権抹消費用 登録免許税1,000円+司法書士報酬
印紙税 契約書に貼付(例:3,000万円→1万円)
返済手数料 金融機関ごとに異なる(〜3万円)
【監修者コメント】

登記費用は一律ではなく、登記内容や司法書士の報酬体系で変動します。印紙税の詳細は国税庁:印紙税額一覧表で確認可能です。

税金と特例

売却益が出た場合、譲渡所得税がかかりますが、マイホーム売却には強力な特例が多数用意されています。

主な税制と特例

  • 3,000万円特別控除
  • 所有期間10年超の軽減税率
  • 損益通算・繰越控除(売却損時)

これらを適用すれば、税金が0円になることもあります。ただし、適用には確定申告が必須で、条件を満たさないと適用不可です。

【監修者コメント】

3,000万円特別控除の詳細は国税庁:No.3302に明記されています。繰越控除は「初年度に申告しないと無効」とされ、申告漏れによる損失の持ち越し不可が実務上よくあるので注意が必要です。

まとめ

35年ローン返済中の家であっても、返済途中で売ることは可能です。大切なのは「売却代金でローンを完済できるかどうか」の見通しを正しく持つことです。

【この記事で解説したポイント】
  • アンダーローン/オーバーローンの判断方法
  • 売却方法の選び方(自己資金による補填・住み替えローン・任意売却)
  • 費用・税金・スケジュールを含めた売却の流れ

ローンがあるからといって諦めずに、まずは査定と金融機関相談からスタートしてみてください。不安を抱えるより、行動することで道は開けるでしょう。

八木友之
八木友之

保有資格:行政書士/不動産コンサルティングマスター/宅地建物取引士(登録失効中・更新手続き可能)
経歴:大手不動産仲介会社にて18年間、売買仲介の最前線で活躍し、契約書作成から引き渡しまでの一連業務を担当。豊富な実務経験と交渉力を強みに、顧客満足度の高い取引を多数実現してきた。2022年3月より専業Webライターとして活動を開始し、不動産・金融分野の記事を中心に執筆。現場で培った法律・税務の知見を反映させた解説と、ユーザーニーズを踏まえた構成により、専門メディアや不動産ポータルで高い評価を得ている。

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