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不動産取引を進める中で、「仮登記(かりとうき)」という言葉を見聞きしたことはありませんか?
仮登記は、将来の権利を保全するために重要な役割を果たす法的手続きです。
しかし、「仮登記って何のためにするの?」「本登記とはどう違うの?」「どんなときに必要になるの?」といった疑問を持つ方も多いはずです。
この記事では、
などを、わかりやすく解説していきます。
仮登記とは、不動産登記簿に記載される登記の一種です。将来的に行われる予定の本登記の順位をあらかじめ確保する目的、または本登記を行うための法律上の要件が完全に整っていない場合に、暫定的に行われる予備的な登記手続きを指します。
この予備的な登記手続きで権利が最終的に確定するわけではありませんが、将来の権利関係を公示し、特定の法的効果を生じさせる点で意義深い手続きです。特に順位保全効は、仮登記制度の根幹をなす効力といえるでしょう。
仮登記は、不動産取引の安全性を高めるために活用されています。たとえば、売買契約から実際の引き渡しまでに期間が空く場合、その間に発生しうるリスクから買主の権利を守ります。仮登記は、不動産の権利をより確実に保全するための第一歩です。
仮登記の最も主要な目的は、将来行われる本登記に備えて、その登記の順位を確保する点にあります。
不動産に関する権利の優先劣後は、原則として登記された順序によって決定します。
そのため、契約締結から本登記が完了するまでに時間を要する場合、その期間中に第三者の権利が先に登記されてしまうと、本来得られるはずだった権利が侵害される恐れがあるのです。
仮登記は、将来の権利取得をより確実なものにするための役割を担います。
具体的には、権利変動が生じる可能性を登記簿に示すことで第三者への注意を促し、特定の請求権などを保全する機能を発揮するのです。この役割により、不動産取引の安定性に寄与しています。
仮登記の主要な効力は「順位保全効(じゅんいほぜんこう)」です。順位保全効には、仮登記に基づいて後日適法に本登記がなされた場合、その本登記の効力が発生する順位が、仮登記が行われた時点の順位に遡って認められるという効果があります。
この効力は、不動産登記法第106条に規定されています。
【監修者コメント】
「順位保全効は、仮登記制度の核心であり、権利保護の観点から非常に重要です。特に不動産売買のような複雑な取引では、契約成立から所有権移転の完了までに様々な不確定要素が存在し得ます。たとえば、この間には、売主が二重譲渡を試みたり、差押えを受けたりするリスクも考えられます。順位保全効は、このような不測の事態が発生した場合でも、仮登記権利者が将来的に優先的な地位で本登記を具備し、権利を実現できる可能性を高めるものです。法的には、この効力によって、取引の安全と権利関係の安定が図られると解されています。」
仮登記に基づく本登記が無事に完了すれば、第三者の権利に対して自己の権利を主張できます。
仮登記と本登記には、それぞれ異なる役割と法的な効力があります。これらの相違点を理解することは、仮登記制度の意義と、その効力を理解するうえで不可欠といえるでしょう。
これらの違いを理解することで、どのような状況で仮登記が有効な手段となり、また、仮登記だけでは不十分なことがわかります。
仮登記の主たる目的は、将来行われる本登記の順位を保全することです。たとえば、本登記を行うための法律上の要件が完全に整っていない場合に、暫定的に権利関係を公示し、特定の請求権を保全できます。。
本登記に必要な全ての要件が整っていなくても、仮登記は一定の法律上の要件を満たせば申請することができます。
項目 | 仮登記 | 本登記 |
目的 | – 将来の本登記の順位を確保
– 暫定的な権利関係を公示 – 請求権を保全 |
– 不動産に関する権利変動を最終確定
– 第三者に対する対抗力を付与 |
申請条件 | – 本登記の全要件がそろわなくても、一定の法的要件を満たせば申請可能 | – 権利変動を立証する書類提出が必須
– 法律上の要件をすべて充足していること |
本登記の目的は、不動産に関する権利の変動(発生、移転、変更、消滅など)を最終的に確定させ、その権利を第三者に対抗できる公示力を持たせることです。
申請には、権利変動の事実を証明する売買契約書などの情報や、その他法律上の要件が全て満たされている必要があります。
法的効力においても、仮登記と本登記には決定的な違いが存在します。仮登記の主要な効力は、前述の通り順位保全効であり、将来の本登記の順位を確保するものです。
しかし、原則仮登記で登記された権利に対抗力はなく、権利関係を最終的に確定させる力もありません。
比較項目 | 仮登記 | 本登記 |
主な目的 | 本登記の順位保全、将来の権利(請求権)の保全 | 不動産の権利変動の確定、公示、第三者対抗要件の具備 |
順位保全効 | 有り | -(本登記自体が順位を確定させるため、この概念は適用されない) |
対抗力 | 原則として無し | 有り |
権利確定力 | 無し | 有り |
申請要件 | 本登記の要件が未充足でも、不動産登記法所定の一定の条件下で申請可能 | 権利変動の事実及び法律上の全要件の充足が必要 |
本登記は、第三者に対してその権利を主張できる対抗力を持ちます(民法第177条など)。さらに、権利関係を法的に確定させる力も有しています。
仮登記には、不動産登記法第105条において主に2つの類型があります。
1号仮登記は、登記の目的となる権利(所有権、地上権、抵当権など)の設定、移転、変更または消滅に関する「請求権」を保全しようとするときに用いられます。請求権とは、相手方に対して特定の行為(登記手続きへの協力など)を求められる権利を指します。
たとえば、不動産売買契約を締結した場合、買主は売主に対して「契約に基づき所有権を移転する登記手続きをしてください」と請求する権利(所有権移転請求権)を有します。この所有権移転請求権を、本登記が完了するまでの間、保全するために行われるのが1号仮登記の典型的な例といえるでしょう。
2号仮登記は、1号仮登記の対象となる請求権が、以下のような特殊な状況にある場合に利用されます。
さらに2号仮登記は、民法その他の法律の規定により形成される法律関係(契約の解除権や取戻権、買戻権など)について、これらの権利に係る移転もしくは変更の請求権を保全するためにも用いられます。このように、権利の発生や効力に何らかの条件が付いている場合に活用されるのが特徴です。
個人の不動産購入や売却といった一般的な不動産取引においては、前述した2つの類型のうち、1号仮登記が利用される場面が多く見られます。これは、不動産売買契約が締結された後、最終的に所有権移転の本登記が完了するまでの間に、買主が有する所有権移転請求権を保全するという目的で利用されるからです。
本登記が完了するまでの期間は、売主による二重譲渡のリスクや、売主の経済状況の変化による差押えといった不測の事態が発生する可能性も否定できません。
1号仮登記を行うと、買主はこのようなリスクに備え、将来の権利確保の確実性を高めることができます。したがって、特に契約から本登記までに期間が空く取引では、1号仮登記が利用されることがあります。
仮登記制度を利用することには、権利保全上のメリットがある一方で、その効力の限界や注意すべきデメリットも存在します。
メリット | デメリット(注意点) |
将来の権利の順位確保(順位保全効) | 対抗力の欠如 |
手続き・費用負担の相対的軽微性 | 本登記への移行の必要性 |
登記義務者の非協力時における単独申請の可能性 | 権利保全の限界と無効リスク |
本章では、仮登記のメリットとデメリットについて解説します。
仮登記の最も重要なメリットは、順位保全効です。これにより、後日適法に本登記を行う際に、仮登記の時点での順位が確保され、その後に登記された第三者の権利よりも優先される可能性が高まります。
仮登記は、一般的な本登記と比べて、申請に必要な書類が少なく済むケースも多く、登録免許税の税率が低く設定されています。
このため、本登記の要件が整うまでの間、比較的少ない負担で権利保全の措置を講じることが可能です。また、登記義務者の協力を得にくい状況でも、一定の要件を満たせば登記権利者が単独で申請できる場合があることも、迅速な権利保全を図る上で有効な手段といえます。
一方で、仮登記のデメリットは、原則その登記された権利を第三者に対して主張できる対抗力がないことです。
つまり、仮登記をしただけでは、その不動産が完全に自分の権利に属すると第三者に法的に主張することはできません。この点は実務上でも誤解が生じやすい部分であり、慎重な理解が求められます。
【監修者コメント】
「仮登記の『対抗力がない』という点は、実務上、依頼者の方に誤解が生じやすい部分です。仮登記はあくまで『順位の予約』のようなものであり、それだけで絶対的な権利保護が得られるわけではないことを理解していただく必要があります。また、本登記への移行を怠ると、時間の経過とともに証拠が散逸したり、関係者の状況が変化したりして、本登記手続きが困難になる、あるいは不可能になるケースも散見されます。仮登記は、本登記へ至るための一時的な保全措置であるという認識を持ち、適切な時期に本登記へ移行することが重要です。」
仮登記はあくまで予備的かつ暫定的な登記であり、権利が最終的に確定するものではありません。仮登記によって保全された順位を生かし、権利を完全に有効なものとするためには、後日必ず法律上の要件を具備したうえで本登記の手続きを行う必要があります。
なお、仮登記が法的に無効もしくは取り消された場合には、当然に仮登記の効力も失うこととなります。
本章では、仮登記が必要となる具体的なケースについて見ていきましょう。
以下の5つの事例について解説します。
1つ目の事例は、不動産の売買契約を締結してから実際に物件の引渡しを受け、所有権移転の本登記が完了するまでに一定の期間(数週間から数ヶ月、場合によってはそれ以上)を要するケースです。
たとえば、新築マンションや建築条件付土地の購入契約で、建物の完成・引渡しまでに相当の時間を要する場合があります。
他にもこのような期間中には、売主が第三者に同じ不動産を二重に売却してしまうリスク(二重譲渡)や、売主の経済状況が悪化して不動産が差し押さえや破産するリスクがあります。
こうした事態から買主の所有権移転請求権を保全するために、仮登記(特に1号仮登記)の利用が検討されます。
2つ目の事例は、不動産の売買代金を一括ではなく数回に分けて支払う契約や、特定の法律上の条件(農地法上の許可、都市計画法上の開発許可など)が成就して初めて権利が完全に移転するような契約(停止条件付契約など)のケースです。
このような状況では、買主や将来権利を取得する予定の当事者が、代金の完済や条件成就までの間の権利を保全するために仮登記を利用することがあります。
仮登記を行うことで、相手方が契約に反して不動産を処分したり、不利な権利を設定したりするリスクを軽減できます。そのため、権利が確定するまでの間の不確実性を少しでも減らし、当事者の権利を守るために有効な手段といえます。
特定の契約類型においても、仮登記がその権利保全のために活用されることがあります。たとえば、売買予約では、将来的に特定の不動産を一定の条件で購入する権利を予約する契約(買戻特約、再売買の予約など)であり、その予約から生じる権利(予約完結権など)を保全するために仮登記が利用されます。
また、代物弁済予約は、金銭債務の担保として債務者がその債務を期限までに履行できなかった場合に、代わりに特定の不動産をもって弁済することを予約する契約です。
この代物弁済予約の場合、債権者は、債務不履行に備えてその不動産に対する代物弁済予約を原因とする所有権移転請求権の仮登記をすることがあります。
将来の権利行使を確実にするために、予約段階で仮登記することは実務上よく見られる対応策です。
仮登記を行わないとどのようなリスクがあるのでしょうか?
最も深刻なのは、二重譲渡による権利喪失の可能性です。売主が同じ不動産を悪意で第三者にも売却し、その第三者が先に有効な本登記を備えてしまうと、当初の買主はその不動産に対する権利を主張できなくなる恐れがあります。
このような事態は、支払った手付金などの回収問題が生じ得るだけでなく、不動産を取得できなくなるという重大な損失につながる場合があります。
また、本登記完了前に売主が倒産した場合(破産、民事再生など)には、当該不動産が破産財団などに組み入れられるなど、買主の権利が著しく侵害される可能性も否定できません。これらのリスクは、取引の安全性を大きく損なうものであり、仮登記の検討が推奨される主な理由といえます。
本章では、実際に仮登記を申請する際の一般的な手続きの流れについて解説します。なお、仮登記は専門的な部分が多いため、司法書士への依頼が一般的です。
まず、仮登記の申請に必要な書類を収集し、登記申請書を作成します。主な必要書類には、仮登記の原因となる法律行為(売買契約など)があったことを証明する登記原因証明情報、登記識別情報(または登記済証)などがあります。また、登記義務者の印鑑証明書、司法書士などの代理人に申請を依頼する場合には委任状も必要です。
登記申請書は、法務局所定の様式に従い、不動産の表示、登記の目的(例:所有権移転請求権仮登記)、登記原因とその日付、当事者の氏名・住所などを正確に記載します。
次に、準備した申請書類一式を、対象となる不動産の所在地を管轄する法務局(登記所)へ提出し、登記申請を行います。申請方法には、法務局の窓口に直接書類を持参して申請する方法、書類を郵送して申請する方法があります。また、一定の条件を満たせば、インターネット経由でのオンライン申請も可能です。
提出された申請書類について、法務局の登記官により、形式的要件(書類の具備、記載事項の正確性など)および実質的要件(登記原因の有効性、当事者の能力、法令への適合性など)に関する審査が行われます。
審査の過程で書類の不備や記載内容に疑義が生じる場合は、法務局から補正(修正や追加書類の提出)を求められることがあります。補正指示があった場合は、迅速かつ的確に対応し、スムーズな登記完了に務めましょう。。
登記官による審査を経て、申請内容に問題がないと判断されれば、仮登記が不動産登記簿(現在は電子化された登記記録)に記録され、手続きは完了となります。
登記が完了すると、新たに登記名義人となる者(仮登記権利者)に対して、登記識別情報通知書などが交付されます(オンライン庁の場合)。登記識別情報は、将来的にこの仮登記を抹消したり、本登記を申請する際に必要です。
登記識別情報通知書は、万が一紛失すると再発行されないため、厳重に保管しましょう。
「仮登記をしたいけれど、費用はいくらくらいかかるの?」という疑問を持つ人は多いでしょう。本章では、仮登記を行う際の費用について解説します。
費用項目 | 目安 | 備考 |
登録免許税 | 不動産の固定資産税評価額 × 税率(仮登記の種類・軽減措置により変動) | 国税庁のウェブサイトなどで最新情報を確認するか、司法書士に照会することが推奨されます。 |
司法書士報酬 | 5万円~15万円程度 (※一般的な目安) | 事案の複雑性、不動産の数や価額、必要書類の量などに応じて変動します。複数の事務所から見積もりを取得し、サービス内容と合わせて比較検討することが望ましいです。 |
その他実費 | 登記事項証明書取得費用、郵送費、交通費など (数千円~1万円程度) | 実際に発生した費用が請求されます。 |
登記費用は個別の事案によって変動するため、これらはあくまで一般的な目安です。また、登記事項証明書の取得費用や郵送費、交通費などの実費も発生します。
【監修者コメント】
「登録免許税は法律で定められており一義的ですが、司法書士報酬は各事務所の料金体系や提供するサービスの範囲によって異なります。報酬額は、円滑な申請に至るまでの専門的なコンサルティングや書類作成業務全体を反映したものです。
見積もりを取得する際には、総額だけでなく、どのような業務が具体的に含まれているのか、追加費用が発生する可能性はあるのかなどを詳細に確認することが大切です。また、その司法書士の専門性や経験なども総合的に考慮して、信頼できる専門家を選ぶことが結果的に費用対効果の高い権利保全につながると考えられます。
安易に費用だけで判断するのではなく、提供される価値をしっかり見極めましょう。
仮登記は、不動産取引における将来の権利を保全するための重要な予備的登記制度です。
本登記との明確な違い、仮登記が持つ独自の効力(特に順位保全効)、メリットとデメリット、具体的な活用ケース、手続きの流れ、関連費用について理解することは、安全かつ円滑な不動産取引を行ううえで非常に有益といえるでしょう。
仮登記の最大の効用は順位保全効にありますが、対抗力がない点や最終的に本登記が必要となる点など、留意すべき事項も存在します。
【この記事のまとめ】
特に、契約から本登記完了までに期間を要する場合や、権利関係が複雑な不動産取引においては、専門家である司法書士に相談することが推奨されます。
適切な法的知識と専門家のサポートを活用することで、不動産取引に伴う潜在的なリスクを効果的に軽減することができるでしょう。