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42条1項5号の位置指定道路は、公道と異なり管理や維持は所有者に委ねられるため、通行や修繕・税負担などの特有のリスクが存在します。
「公道とどう違うの?」「費用や手続きは?」「売却や建築時にデメリットはあるの?」と疑問を持っている方も多いでしょう。
この記事では、位置指定道路の基礎知識からセットバックの基準、調査手順、費用やリスク、売買時の注意点までをわかりやすく解説します。
42条1項5号道路(位置指定道路)とは、建築基準法第42条第1項第5号に基づき、行政から「位置の指定」を受けて作られた道路です。指定を受けるとその道路は建築基準法上の「道路」として取り扱われるため、建築確認における接道要件を満たし、建物を新築したり再建築することが可能になります。
建築基準法第42条第1項第5号は、特定行政庁がその位置を指定した道路を、建築基準法上の道路とみなす規定です。指定を受けた私道は、建築確認において「道路」として取り扱われ、接道義務の要件を満たすために利用できます。
位置指定道路として認められるためには、建築基準法施行令第144条の4に定められた基準を満たす必要があります。
位置指定道路として認められるためには、幅員4m以上(区域によっては6m以上)を確保することが原則で、舗装・排水施設・隅切りなど政令基準(建築基準法施行令第144条の4)を満たす必要があります。
申請者(開発者・土地所有者など)が構造・舗装を整備し、特定行政庁が完了確認・公告を行うことで、正式に位置指定道路として扱われます。
取引前や建築計画時には、自治体の窓口で、番号・幅員・構造基準への適合状況を必ず確認することが重要です。
公道は、道路法に基づいて自治体が管理するため、修繕や維持は税金で行われ、一般公衆の自由な通行が可能です。
一方で、位置指定道路は私道であるため、建築基準法上の道路として扱われるものの、維持や管理の責任は所有者または共有者が負います。通行や掘削についても、原則として所有者の承諾や地役権の設定などにより権利関係を整備する必要があります。
比較項目 | 公道 | 位置指定道路(私道) |
---|---|---|
管理者 | 国や自治体 | 所有者(共有者) |
通行権 | 公衆の通行は自由 | 原則として、所有者以外の人に通行権は認められない |
修繕費 | 税金 | 所有者負担 |
位置指定道路は、見た目は公道と同じように使えますが、公道のように「誰でも自由に使えて自治体が直してくれる道」とは違い、権利関係や費用分担を住民同士で調整しなければならない道路といえます。
不動産取引の実務上は、重要事項説明(宅建業法35条書面)で道路の種別や幅員、位置指定番号や指定年月日を正確に記載することで、金融機関の審査や買主の理解を進めやすくなります。
位置指定道路であっても、調査の結果、幅員が法定基準(4mまたは6m)を満たしていないと判明した場合、敷地を後退させて道路幅を確保する必要があります。これをセットバックと呼びます。
売買の際は、地積測量図や現地で境界標を確認し、建築プランへの影響を把握しておくことが重要です。
位置指定道路は、指定時に原則4m(区域によっては6m)以上の幅員を確保する必要があります。古い指定道路や測量の誤差などにより現況が基準に満たないと判明する場合は、現地と公的資料を照合して幅員を確認します。
幅員が基準に満たない場合は、敷地を後退させて基準幅員を確保する必要があります。図面と実測に差異がある場合は、境界確定測量や筆界特定などによって後退線の確定が必要な可能性もあります。
幅員不足を解消するために必要な「道路後退(セットバック)」は、後退線を正確に確定しておくことが重要です。確定作業は以下の流れで進められます。
確定線を明示しておくと、将来の建て替えや隣地開発時に根拠を示しやすくなるため、余計な交渉コストを低減できます。
セットバックで敷地の一部を道路として提供した部分は、建ぺい率・容積率の算定対象外となり、固定資産税や都市計画税が非課税になる場合があります。ただし、非課税適用には市区町村への事前協議や申請が必要で、手続きを経なければ課税が継続する点に注意が必要です。
売買や建築計画の前には、対象地が接している道路が位置指定道路に該当するかどうかを確認する必要があります。位置指定番号や指定図面、調書を確認し、現況と一致しているかを照合しておくことで、トラブルを防げるでしょう。
建築指導課などの担当窓口で道路位置指定図を閲覧します。
これらの一次情報は、売買契約時の重要事項説明事項にあたるものです。
位置指定道路に関する書類は、以下のものが中心となります。
これらの図面を確認することで、後退部分の扱いや共有持分の割合を把握しやすくなります。
自治体によっては、都市計画情報システムやGISで位置指定道路の情報をオンラインで公開しています。
ただし、オンラインの情報はあくまで参考資料とし、正式には窓口で取得する図面や調書で正確性を裏付けるようにしましょう。
位置指定道路は、利便性の反面、通行・ライフライン・共有持分・再建築不可などのさまざまなリスクを伴います。事前に性質を理解し対策を講じることで、資産価値の毀損を防げるでしょう。
位置指定道路は私道であるため、所有者が通行を制限したり、工事の際に承諾を求めたりするケースがあります。特に上下水道・ガスなどのライフラインを埋設する際は「掘削承諾」が必要で、費用分担をめぐってトラブルになる場合もあります。
こうしたトラブルを回避するには、私道の通行・掘削承諾書を取得する、あるいは工事費用の負担割合を協議するなどが考えられます。永続的に私道の利用を安定させるために、通行地役権(民法第280条)を設定することも考えられるでしょう。
位置指定道路を複数人で共有している場合も多く、共有者の相続により持分がさらに細分化すると、維持管理などの意思決定が難しくなります。相続登記していなければ所有者が確定せず、工事承諾が得られないケースも考えられるでしょう。
また、所有者が不明になったり登記未了のまま放置されると、協議に時間がかかり、建築や売買にも影響する可能性があります。
位置指定道路は本来、幅員4m以上を確保して指定されますが、現況が基準を満たさない場合には、再建築不可となるリスクがあります。たとえば次のような状況です。
共有者の一人が音信不通になると道路工事や建替えの承諾が取れず、新築の建築計画が数年遅れる可能性もあります。特に、相続後に持分が細分化した位置指定道路では合意形成自体が難航するケースもあるため、道路管理の取り決めを早めに文書化しておくことが重要です。
位置指定道路には、申請費用・維持管理費・固定資産税など、所有者が負担すべきコストがあります。これらを正しく把握し、共有者間でルールを整備することが、将来のトラブル防止と資産価値維持につながります。
位置指定の申請には、自治体の審査・検査手数料に加えて、測量・設計・舗装工事などの費用がかかります。
費用は、道路の距離や仕様によって大きく変わります。また、代理申請には15万円以上の費用がかかるのが一般的です。
位置指定道路は私道のため、舗装や側溝の補修などの費用は所有者が負担します。舗装や排水施設の劣化に備えて長期修繕計画を立案し、共有者で積立金を管理するケースも見られます。
セットバック部分や位置指定道路の用地は、一定の条件を満たせば固定資産税が非課税になる場合があります。
たとえば、その部分を自治体に寄附して公道として移管すれば非課税となります。また、セットバック用地の地目を「公衆用道路」に地目変更の登記をするなど、所定の手続きを行うことで非課税扱いとなる場合もあります。
ただし、私道として所有者の名義のまま残す場合には課税が継続する可能性があるため、固定資産税通知を確認し、早い段階で自治体に相談することが重要です。
位置指定道路に接する土地や建物を売買する際には、通常の公道に面する物件以上に慎重な確認が必要です。
まず、重要事項説明(宅建業法35条書面)では、道路の種別や位置指定番号を明記し、位置指定図面の有無なども調査しておく必要があります。
また、後退部分については測量図で位置と面積を明らかにし、共有私道であれば登記簿で持分割合を確認しておくことも不可欠です。
さらに、金融機関の融資審査では「再建築が可能かどうか」が担保評価に直結します。こうした点を売主・買主双方が事前に把握し、提示することで、交渉を円滑に進め契約トラブルを防ぐことができるでしょう。
なお、業者による買取再販を利用する場合は、セットバックによる敷地面積の減少や再建築不可を織り込んで査定が行われるため、市場価格に比べて売却価格に差が出やすくなります。
位置指定道路は、建築基準法上「道路」とみなされる私道であり、建築物の接道義務を満たすために重要な役割を果たします。ただし、公道と異なり管理は所有者に委ねられるため、通行や修繕・税負担など特有のリスクが存在します。
位置指定道路に関わる土地を売買・活用する際は、幅員やセットバックの有無、位置指定番号の確認、共有持分の整理といった調査を行うことが欠かせません。
不明点がある場合は、早めに建築士や司法書士、不動産業者などに相談し、必要な測量や書面整備を進めることが重要です。