「事故物件になってしまったら、売却は難しいだろうか…」と不安を抱えている人もいるでしょう。自殺や他殺など、人の死があった物件は事故物件と呼ばれ、通常の物件よりも売却が難しくなります。
ただし、人の死があった物件が事故物件となるわけではなく、内容よっては事故物件に該当しないケースもあります。また、事故物件に該当した場合は、告知義務などがあるので注意しなければならない点も多くあります。
とはいえ、事故物件でも売却することは可能です。そこで、この記事では事故物件の定義や告知について、また売却方法やポイントまでわかりやすく解説します。
事故物件とは、心理的瑕疵のある物件のことをいいます。具体的には、自殺や他殺、事故など、人の死があった物件が事故物件となるのです。
ただし、すべての人の死が事故物件につながるわけではありません。事故物件に該当するかは、国土交通省がそのガイドラインを公表しています。
ガイドライン制定までは、事故物件の定義は明確でなく、告知されなかったなどでトラブルに発展するケースもありました。事故物件の売買でのトラブルを未然に防ぐため、事故物件の定義や告知義務について明確な判断基準を制定したのです。
国土交通省のガイドラインによると、以下のようなケースが事故物件に該当します。
人の死であっても、病死や老衰といった自然死であれば事故物件には該当しません。転落や転倒など日常生活においての不慮の事故での死亡も事故物件にはならないのです。
反対に、それ以外の人の死の場合は事故物件に該当します。また、不慮の事故死や自然死であっても、長期間放置され特殊清掃が必要な事態になった場合は、事故物件に該当するので注意が必要です。
参照:国土交通省|宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン
そもそも不動産においての瑕疵とは、「土地や建物にある何らかの欠陥」のことをいい、大きく次の3つに分かれます。
心理的瑕疵とは、人の死など嫌悪すべき事案があり、生活するのに心理的な抵抗感のある欠陥のことをいい、心理的瑕疵がある物件が事故物件といわれます。
一方、構造など物理的な欠陥が物理的瑕疵です。建物であればシロアリ被害や雨漏り・水漏れ、土地の場合は土壌汚染や廃棄物の埋設などが代表的でしょう。
建物を建築するには、建築基準法などを満たす必要があり、満たすべき法律を満たしていない状態を法律的瑕疵といいます。
なお、どの種類の瑕疵であっても不動産取引をする際には、告知義務があります。以下では、事故物件の告知について詳しくみていきましょう。
事故物件に該当する物件を売却する場合、売主は買主にその事実を告知する義務があります。告知する場合は、告知内容に明確な定義はありませんが、主に以下のような内容を伝えます。
国土交通省では、媒介する不動産会社に心理的瑕疵の調査義務の範囲も示しています。そのため、売主は不動産会社の心理的瑕疵の調査に対して正確に応える必要があるのです。
買主への告知は口頭でも問題ありませんが、後々言った・言わないでトラブルになりかねません。告知する際には、告知内容を書面にして相手に伝えることでトラブルを避けやすくなるでしょう。
また、告知するタイミングは売買契約の際の重要事項説明時が一般的です。しかし、契約時に告知すると買主が契約をキャンセルする恐れがあるので、早めに告知しておくことが大切です。
基本的には、売り出しの公告時には「告知事項あり」などと記載できるようにしておくことが望ましいでしょう。
事故物件に関わらず、告知義務のある物件で告知せずに売却した場合、告知義務違反を問われる恐れがあります。事故物件であることを買主が後から知った場合、契約の解除や損害賠償請求を受ける可能性があるでしょう。
また、買主からだけでなく不動産会社から請求される可能性もあるので、告知義務は正確に告知しておくことが大切です。
事故物件の告知義務は、賃貸物件の場合で告知すべき事案が発生してからおおむね3年とガイドラインで制定されています。ただし、3年という期間は賃貸物件のことであり、売買物件に対しては期間が定められていませんが、一般的には賃貸物件よりも長期間にわたって告知義務があると思ってよいでしょう。
過去には10年を超えたケースでも告知義務違反となったケースもあり、いつまでが告知義務となるかは事故の内容は買主次第になってくるともいえます。
告知時期に悩む場合は、不動産会社や弁護士に相談すると後々のトラブルを回避しやすくなるでしょう。
告知義務については、以下の記事でも詳しく解説しているので参考にしてみてください。
関連記事:不動産(家)を売却する理由10選|理由による売却額の変動や告知義務について解説!
事故物件は、不動産取引の件数自体がそう多くはないことから、相場といえるほどのものはありません。必ずしも安値で取引しなければならないわけでもないため、実際にどれくらいの売値になるかは、売主や不動産会社、買主によって大きく異なるものです。
もちろん通常の相場と同じ値付けをすることも可能ですが、基本的には買い手に避けられやすい物件であることから、価格を落とす必要があるでしょう。
ただし、どれくらい相場から下げるかは事故物件の内容によっても異なってきます。一般的には、相場の10~30%程低くなるのが目安です。孤独死や自殺といったケースでは10~30%程ですが、印象に強く残るような重大な事件であればそれ以上低くなる可能性があります。
また、事故物件の価格は、立地や買い手の考えによっても価格が変わってきます。駅が近いなど条件の良い物件であれば、事故物件でもそこまで価格を落とさずに売却できるケースもあります。
心理的瑕疵は人によって受け止め方も異なるので、同じ事案であっても気にしないという人もいれば、一般的な死であってもダメという人もいるでしょう。気にならないという人の場合でも、事故物件を理由に値下げ交渉されることが多いため相場よりは安くなる傾向がありますが、そこまで大幅に下げなくても売却できる可能性が高くなります。
このように、事故物件の売却価格はさまざまな要因で異なってくるので、一概にいくらが相場とはいえないのです。事故物件の売り出し価格を決める際には、不動産会社に相談しながら慎重に決めるようにしましょう。
ここでは、事故物件を売却する方法についてみていきましょう。事故物件の売却方法としては、次の2つが挙げられます。
それぞれの売却方法によってメリット・デメリットが異なるので、比較したうえで売却方法を選ぶことが大切です。それぞれのメリット・デメリットを一覧で確認しましょう。
それでは、以下でそれぞれの売却方法について詳しく解説します。
事故物件だからといって、一般の売却方法で売れないわけではありません。事故物件でも、通常の不動産と同様の方法で、市場での売却が可能です。
市場で売却する場合は、通常の不動産同様不動産会社に査定依頼し、媒介契約後販売活動に入り売却していくという流れになります。市場で売却すれば、条件がよければ通常の売却に比較し、そこまで価格を落とさずに売却できるでしょう。
ただし、事故物件は一般的に通常の物件よりも売れにくく、売り出し価格はある程度低くする必要があるものです。それでも、売却できないケースも珍しくなく、売れてもかなり価格が落ちる可能性もあります。
また、そもそも不動産会社に仲介を依頼しようとしても、事故物件を取り扱ってもらえない不動産会社も少なくないので、注意しましょう。
不動産売却の基本的な流れや不動産会社選びについては、以下の記事で詳しく解説しているので参考にしてみてください。
関連記事:不動産売却の基礎知識をプロが解説!知らなきゃ損する売却時の心構えと不動産会社の選び方
不動産会社に直接買い取ってもらう方法を買取といます。仲介での売却は、不動産会社はあくまで間に入るだけで買い手は第三者です。一方、買取の場合は買い手が不動産会社となります。
買取は、不動産会社が買主なので、不動産会社との価格交渉がまとまれば、すぐに売却が可能です。販売活動が必要ないので、チラシ掲載などがなく周囲に売却したことが知られにくいというメリットもあります。
ただし、買取は通常の物件であっても市場価格の70~80%程と低い価格での売却となるのが一般的です。事故物件の場合は、それよりもさらに価格が下がる恐れがあります。
買取は安値での売却になりますが、スムーズにいけば1か月かからずに売却が可能です。安くてもすぐに物件を手放したいという場合は、買取を選択するとよいでしょう。
売りにくい事故物件であっても、工夫することで売却の可能性を上げることができます。事故物件の売却では、次のようなポイントを意識して売却を進めていくとよいでしょう。
特殊清掃とは、ハウスクリーニングでも落としきれない汚れや臭いを専用の機材や薬剤などを使ってきれいに清掃することをいいます。
孤独死や自殺などで長期間死体が放置された場合、部屋に汚れ臭いが染みついてしまいます。また、目に見える汚れだけでなく、害虫の発生や病原菌など衛生的にも問題があるケースもあるのです。
これらの汚れや臭いは、素人の清掃はもちろんプロのハウスクリーニングでも落としきれません。そのような状況で依頼するのが、特殊清掃となります。
特に、死体の発見が遅れた場合、特殊清掃は必須です。場合によっては、リフォームをして室内を一新してしまうのもひとつの手となるでしょう。
事故物件はただでさえ印象が良くないため、通常の清掃くらいでは印象が良くなることはあまりないものです。できる限り室内の状況をよくすることで、買い手の印象を上げるようにしましょう。
事件や事故が発生した直後は、その印象が強く、なかなか買い手がつきにくいものです。ある程度期間を空けて売却することで、事件に対する印象が薄れ売りやすくなる可能性があるでしょう。
ただし、どれくらいの期間を空ければいいかは事故の内容によって異なります。一般的な死であっても数年は空けることが好ましく、印象の強い事故の場合はそれよりも期間が長くなる恐れがあります。
長期間にわたる場合、その期間事故物件を所有し続けることで、売主に精神的な負担がかかる可能性もあるものです。また、期間を空けたとしても告知義務はなくならないので、必ず不動産会社・売主に告知するようにしましょう。
特殊清掃やリフォームくらいでは、印象が良くならない場合は、建物を解体して更地での売却を視野に入れるのをおすすめします。建物が無くなるだけでも、買い手の印象はずいぶん変わってくるものです。
また、一度更地にして駐車場などで活用し、イメージが払しょくされてから再活用や売却を検討する方法もあります。
しかし、更地にするには解体費用がかかるものです。解体後は固定資産税も高くなるので、費用についても考慮したうえで更地にするかを判断することが大切です。
今回は、事故物件の売却について解説してきました。人の死があった事故物件は、通常の売却よりも難しい物件です。ただし、人の死がすべて事故物件に該当するわけではないので、どのようなケースが事故物件に該当するのかを理解しておくことが大切です。
そのうえで、事故物件に該当する場合は、告知義務などに注意しながら売却を進める必要があります。事故物件を売却する方法には、以下のようなものがあります。
どの方法を選ぶにせよ、事故物件を取り扱ってくれて、なおかつ信頼できる不動産会社を選ぶことが大切です。
特殊な物件である事故物件を任せられる不動産会社を選ぶのは簡単ではありません。不動産会社を選ぶ際には、できるだけ多くの不動産会社を比較して、あなたに物件にぴったりの不動産会社を選びましょう。