まずは、土地売却の流れを把握しておく必要があります。トラブルや失敗を避けて有利に売却を進めるためにも、正しい手順で準備・手続きをおこないましょう。
土地売却の具体的な手順は、以下の通りです。
スムーズに売却をおこなうためには、不動産会社に依頼する前の準備段階が重要になります。また、土地売却後は忘れずに確定申告し、所得を申告しなければなりません。上記の9つの手順をそれぞれ詳しくみていきましょう。
土地売却をする際は、いかに情報整理できるかがポイントになります。まずは、土地の立地条件や情報を把握するところから始めるとよいでしょう。
【土地の立地条件の確認事項】
自分が住んでいる土地なら把握できることでも、相続した馴染みのない土地は周辺状況などわからないことが多いものです。不動産会社へ相談する前にできる範囲で調査をおこない、土地の情報や現状を把握しておきましょう。
土地の情報把握と並行して、土地売却に必要な書類を揃えておきましょう。不動産会社との契約・土地の売却時に必要な書類・資料は、以下の通りです。
売主の本人確認のため、身分証明書・実印・印鑑証明書は必須です。さらに、土地の名義が親子・兄弟で共有になっている場合は、共有者全員分の実印・印鑑証明書が必要になるので、注意しましょう。
また、土地の地盤調査報告書や購入時の契約書がある場合は、集めておけるとよいでしょう。これらの必要書類のなかには発行まで時間がかかるものもあるため、早い段階で揃えておくことをおすすめします。
さらに、隣接する土地と自分の所有する売却予定地との境界線をはっきりさせておくことも重要です。敷地面積の誤差があると、土地の買主と後々トラブルになってしまう可能性があります。
土地の境界は、隣接地との境界線を明記した「境界画定図」や「地積測量図」を取得することで明らかにできます。また、実際に現地へ足を運び、コンクリートなどで作られている「境界標」があるかどうかもあわせて確認しておきましょう。
地積測量図などの書類は、土地の売買・分筆などの必要に応じて作られるため、すべての土地で作られているわけではありません。書類や境界標がない場合は、売主の責任で作成しなくてはならないので、覚えておきましょう。
その場合は土地家屋調査士に依頼し、書類の作成や境界標の設置をしてもらう必要があります。しかし、手続き完了まで数か月かかり、数十万円の費用がかかるので注意してください。
依頼準備が整ったら、不動産会社に査定を依頼します。この査定額は、「その不動産会社に仲介依頼した場合いくらで売れそうか」というおおよその金額です。
土地の査定方法は、2種類あります。
依頼する不動産会社はすぐに決定せず、複数社に査定してもらい比較検討するのがおすすめです。可能であれば簡易査定を4社ほどに依頼して絞り込みをおこない、1〜2社に訪問査定してもらうのがよいでしょう。
土地の査定金額は、会社ごとに異なります。可能な限り好条件で売却するためにも、金額面・対応面をチェックしたうえで納得できる不動産会社を見つけましょう。
売却を依頼する不動産が決定したら、媒介契約を結びましょう。契約方法によってそれぞれルールが異なるため、自分の希望条件に該当する方法を選択してください。
土地売却における媒介契約方法には、以下のようなものがあります。
一般媒介契約は、複数の不動産会社と同時契約できるのがメリットです。
しかし、物件情報を指定流通機構である「レインズ」に登録することが義務づけられていないため、情報が効果的に拡散されない可能性があります。業務や進捗報告の義務もないので、定期的に連絡を取りたい人には不向きです。
専任媒介契約は、他社との同時契約はできませんが、売り手自身で買い手を探せます。専属選任媒介契約は、ルールが厳しくなる代わりに、最速でレインズに登録してくれる・細やかな連絡が受けられるのがメリットです。
立地条件の良い土地なら、一般媒介契約で複数社に依頼すれば早く買い手が見つかる可能性もあります。
一方、売却に時間がかかりそうな場合は1社に任せ、専任媒介契約・専属選任媒介契約で売却活動に注力してもらうほうがよいかもしれません。何を重視するかによって、選択すべき方法は変わってくるでしょう。
契約締結後は、実際に土地を売り出し価格を決めていきます。査定時の値段はあくまでも「不動産会社が売れそうな額を予想したもの」です。もちろん参考にすべき重要なデータですが、まったく同じ価格にする必要はありません。
少しでも多くの利益を得られるよう、実際の売り出し価格はやや高めに設定する人も多いようです。しかし、あまりにも査定額と乖離している場合は、買い手がつかずに大幅な値下げを強いられる可能性もあります。
土地の適正価格は、希望する売却期間や時価によっても変動するものです。不動産会社としっかり相談して価格を決定してください。
売り出し価格が決定したら、売却活動を開始します。不動産会社によってアプローチ方法は異なりますが、チラシ配布や店頭・物件情報サイトに掲載し、希望者へ見学を案内するのが一般的です。
売却が決定するまでの間は、不動産会社に任せっきりにするのではなく、雑草や不要物の撤去などをしておくとよいでしょう。土地の見栄えを整えておくことで見学時の印象も良くなり、買い手がつきやすくなります。
買い手が見つかり、双方が契約内容に納得したら、売買契約の締結により土地の引き渡しをおこないます。契約時に必要な「売買誓約書」や「重要事項説明書」などは、基本的に不動産会社が用意してくれます。
引き渡し当日は、宅地建物取引士の立会いのもとで内容確認をおこない、契約書類に双方が調印します。契約締結後に手付金または売買代金を受け取り、土地の必要書類などを買主へ渡せば売却完了です。
土地を売却した翌年には、確定申告で所得を申告する必要があります。特に、普段自分で確定申告をしない人は、忘れないようしっかり覚えておきましょう。万が一確定申告を忘れてしまうと、追徴課税される可能性もあります。
申告方法は「土地の売却により利益が出たかどうか」で異なります。売却益が発生したなら「譲渡所得の確定申告」、売却損となってしまった場合は「譲渡損失が出た場合の確定申告」が必要です。
また、「特例による特別控除」に該当する場合は、課税が軽減されるケースもあります。間違って納税したり、知らずに損をしてしまったりしないよう気をつけてください。
土地は、購入時だけでなく、売却時にもお金がかかるものです。売却時にかかるお金を把握しておくことで、最終的に手元にいくら残るのかが概算できます。
土地売却に必要な費用や税金は、以下の通りです。
費用・税金にかかる金額や、必要になるタイミングはそれぞれ異なります。資金が用意できず、直近になって慌てることがないようにしっかり把握しておきましょう。
土地売却にかかる税金は、主に契約締結時や各種申請時に必要になります。
【土地売却時に支払う税金】
土地売却に必要な税金は、金額がそこまで高くならないという特徴があります。もっとも高額になる「譲渡所得税」も売却後の利益から支払うため、特に費用を用意する必要はないでしょう。
しかし、課税されることを知らないと損したような気持になってしまう人もいるかもしれません。どのタイミングでどのくらいの税金がかかるのかを事前に把握しておくことが重要です。
印紙税は、印紙税法で定められている誓約書を交わす際に発生する税金です。土地の売買契約の際に必要な「売買契約書」がこれに該当します。
金額は土地代金によって変動し、誓約書に収入印紙を貼る形で納税します。収入印紙はコンビニなどでも購入できますが、取り扱い額が少ないというデメリットがあります。大きい金額が必要な場合は、郵便局で購入するとよいでしょう。
「譲渡所得税」は、土地売却によって利益が出た場合に支払う税金です。売却益は「土地購入時の金額+売却にかかった費用」よりも「売却金額-諸経費」が高くなった場合に発生します。
また、譲渡所得税は所得税と住民税の総称です。土地を所有している期間が5年以上か否かによって2つに区分され、それぞれ税率が異なります。
長期譲渡所得に区分されれば税率が低くなり、短期譲渡所得と比較するとその差は2倍近くになります。そのため、所有期間が5年前後の場合は売却のタイミングにも留意しましょう。
「登録免許税」は、抵当権抹消を法務局に申請する際にかかる費用です。売却する土地に抵当権がある場合、それを抹消登録しなければ土地の引き渡しができません。
抵当権とは、土地を担保にローンを組んだ場合に発生する「金融機関の差し押さえ権利」のことです。登録免許税は、この抵当権の抹消の届け出をする際に支払う手数料のようなもので、土地1つにつき1,000円かかります。
手続きは難しいものではないため自分でも対応できますが、専門家に依頼する場合は別途依頼費用が必要です。
土地売却にかかる費用は税金だけではありません。土地売却に関連した諸経費には、以下のようなものも含まれます。
土地売却に必要な諸経費は、主に専門家や業者への依頼費です。解体費用や測量費用・仲介手数料などは相場が幅広く、なかには100万以上かかってしまうケースもあります。
書類作成や登記などを売主自身でおこなえる場合は、費用節約が可能です。しかし、時間と労力がかかるので注意してください。各手順における費用がどのくらい必要かを概算し、資金を準備しておきましょう。
「仲介手数料」は、土地売買を不動産会社に仲介してもらい、売却が成立した場合に支払う成功報酬です。詳しい内訳は、以下をご覧ください。
仲介手数料は、売買契約時50%・引き渡し時50%で分割して支払うのが一般的だとされています。
表の金額は上限なので、不動産会社によってはこれよりも安く設定しているところもあるかもしれません。しかし、基本的には上限額での請求になることが多いでしょう。
登録免許税で説明した通り、売却予定の土地に抵当権が設定されている場合は、それを抹消しなければなりません。
慣れない手続きに時間と労力をかけたくない人は、司法書士などの専門家に抹消手続きを依頼することをおすすめします。司法書士に依頼した場合の費用相場は、1万5,000円〜2万円ほどです。
抹消手続きに必要な書類は、ローンや借金の完済後に受け取ることができます。そのため、金融機関などの債権者への返済がすべて完了していることが前提条件となるので注意しましょう。
確定測量とは、土地家屋調査士や測量士に依頼し、隣接地との境界線を明らかにして所有する土地面積を確定する測量作業のことです。確定測量の費用は、土地の面積や建造物の有無、依頼先の料金設定によって変動します。
測量時は、境界の位置が正しいかを相互確認する必要があるため、隣接地のすべての所有者の立ち合いのもとでおこないます。確認後に署名・実印をもらい、正式な承認のもと成立する作業です。
一般的に、商業地・住宅地では確定測量をしていないと土地売却ができないものとされています。隣接地との境界が明らかになっていない場合は、この費用を準備しておく必要があるでしょう。
解体費用は、売却予定地にある建造物を解体工事する際にかかる費用です。「解体しやすい構造かどうか」や「解体工事に適した周辺環境かどうか」によって費用も変動します。
解体費用の相場は、「坪単価×坪数」により決まります。以下はその一例です。
また、解体工事には廃材の処分費や重機のレンタル料など、解体費用にプラスして諸経費がかかります。そのため、目安金額よりも多く見積もっておかなければなりません。
売却予定の土地の状態によっては、上記の流れ以外にも追加で手続きが必要となるケースがあります。特に、以下の5つのパターンにおいて土地を売却する場合は注意しましょう。
ここからは、上記のような特徴を持つ土地を売却する際の注意点について詳しく解説していきます。
家つきの土地は解体費用がかかってしまうため、買い手がつきにくいデメリットがあります。買い手がついたとしても解体費用分の割引を請求されることが多く、更地にしてから売却するケースが一般的です。
しかし、更地にした場合は、家が建っていたときよりも土地の固定資産税が高くなります。買い手がすぐに決まらなければ、家が建っていたときよりも維持費がかかってしまうことは覚えておきましょう。
どちらのほうが適しているかはケースバイケースです。自分で状況を判断するのが難しければ、不動産会社に相談してみることをおすすめします。
相続した土地を売却したい場合は、「相続登記」により名義変更を済ませておく必要があります。すでに親から譲り受けている土地であっても、所有者の名義変更をしない限りは売却できないためです。
相続登記は、必要書類を収集し法務局へ申請することで対応できます。自分でも手続きできますが、煩わしい人は司法書士などの専門家に依頼することも可能です。その場合は5〜10万の依頼料が必要になります。
共有名義の土地に関しては、土地の所有権の割合である「持分割合」を明らかにしておきましょう。持分割合は法務局で取得できる「登記事項証明書」で確認できます。
共有名義の土地を売却する方法は、以下の3つです。
自分が持っている土地だけを売却することもできますが、土地の一部分だけを購入する人は少ないため、基本的には共有者同士で売買する形になるでしょう。
1つの土地を複数の地に分けて登記する「分筆」をおこない、自分の持分のみ売却できるようにする方法もあります。土地にそれなりの大きさがある場合は、持分のみを売却しても買い手がつくかもしれません。
また、共有者全員の合意のもとで、1つの土地として売却することも可能です。その場合は共有者全員が売主となり、売却して得た金額は持分割合に応じて分配されます。
しかし、売買契約時には共有者全員の同席が必要で、実印や印鑑証明書の提示などが求められるため注意しましょう。
実は、「農地」に登録されている土地を勝手に売却することはできません。農地は国の政策の一環として扱われているため、許可をもらうまたは届け出が必要です。
まずは、「農業委員会」に農地の区分を聞き、売却可能な土地か・宅地へ転用できるか確認しましょう。売却可能な土地である場合は、許可必須なのか・申請のみで通るのかもあわせて聞いておけるとスムーズです。
貸し出ししている土地は、「借地人の立ち退き後に売却する」または「借地状態のまま売却する」ことができます。賃貸借契約の種類によって注意すべきポイントが異なるため、しっかり覚えておきましょう。
契約の種類は、以下の2通りです。
「普通借地契約」では、所有者の一方的な理由で立ち退きさせることはできません。万が一、借地人が立ち退きを承諾しなかった場合は、そのままの状態で売却するしかないでしょう。
借地状態のままであっても売却は可能です。しかし、借地状態の土地は、借地料を得られるものの土地自体を自由に使うことはできません。そのため、売却価格は通常よりも大幅に安くなるでしょう。
貸し出している土地の売却を検討している場合は、借地も扱っている不動産会社に依頼・相談することをおすすめします。立ち退きなどの相談や、売り方のアドバイスをしてもらえるかもしれません。
せっかく土地を売り出すのであれば、可能な限り良い条件で売却したいものです。ここからは、土地を高値で売るコツを3つ紹介していきます。
高値で売るためのポイントを押さえて、土地売却を有利にすすめましょう。
できるだけ早く、なおかつ良い金額で土地を売却するためには、その土地の相場を事前に調べておくとよいでしょう。土地の価値を客観視できる有力なデータとして、売却額を設定する際の判断材料になります。
相場を調べる際は、自分の土地と同じくらいの広さで周辺環境が似ている土地を参考にしましょう。なるべく条件を揃えて比較することがポイントです。
しかし、実際の不動産取引では細かい条件も加味されるため、売却価格が変動することもあります。そのため、相場はあくまでも目安情報として認識しておくといいでしょう。
土地売却を有利に進めるためには、仲介してくれる不動産会社選びも大切になります。依頼先を探す際は、会社の規模や知名度だけでなく、得意とする分野やエリアについてもあわせて検討する必要があるでしょう。
不動産会社によって得意とする分野やエリアはさまざまで、賃貸を重視するところもあれば売買が得意な会社もあります。売却予定地の状況・条件に適した不動産会社を選択するためにも、複数社に相談して見積もりをとることが大切です。
また、媒介契約は不動産に丸投げするのではなく、綺麗な状態を維持できるよう努めましょう。
購入希望者が現地を見学した際の印象をよくするため、土地の手入れを欠かさないことも大切です。雑草が生い茂っていないか、ゴミが投棄されていないかなどを定期的にチェックしましょう。
また、売却地と居住地が遠く、定期的な状況確認が難しい人は、不動産会社にその旨を相談してみることをおすすめします。不動産会社が草刈りなどの手入れを代行してくれるかもしれません。
土地売却をスムーズに進めるためには、その流れやかかる諸経費について把握し、準備を万全にしておくことが大切です。なかには必要書類や資金の準備に時間を要するケースもあるので、早めに動き出すことをおすすめします。
また、売却予定地の条件や特徴によって、異なる注意点があることもしっかり覚えておきましょう。高く土地を売るコツを押さえて、土地売却を有利にすすめてください。